悶踠もが)” の例文
いたずらに恋愛の泥濘でいねい悶踠もがいているにすぎない彼に絶望していたが、下手にそむけば、逗子事件の失敗を繰り返すにすぎないのであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
威嚇いかくことばと誘惑の手からのがれて、絶望と憤怒に男をいらだたせながら、もとの道へ駈出かけだすまでに、お島は可也かなり悶踠もがき争った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それにどんな場合にも文学にすがりついて生きて行こうと悶踠もがいている、葉子の気持も哀れであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
可悔くやしい可悔い」跣足で飛出して来たお島にささえられながら、おゆうはあば悶踠もがいて叫んだ。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
文壇への更生をはかろうとして心血をそそいでいたもので、その衷情を訴えられてみると、庸三も一概に見切りをつける気にはなれず、打ちめされながらもまた起きあがろうと悶踠もがいている彼女に
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)