“あせ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:アセ
語句割合
32.6%
29.6%
焦心12.6%
焦慮6.0%
5.5%
焦燥4.8%
1.8%
焦躁1.6%
1.4%
0.7%
(他:15)3.4%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
打見たよりも山は高く、思うたよりも路は急に、靴の足は滑りがちで、約十五分を費やして上り果てた時は、ひたいせなあせばんで居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
慚愧ざんぎあせそびらながれて後悔かうくわいねんむねさしつゝ、魔神ましんにや見入みいれられけん
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そうしてひと月ほどはすんだが、いつまでもごまかすわけにもゆかず、そこで男先生はとうとうオルガンのけいこをはじめ、そのためにあせを流した。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「何も急いだり、あせったりすることはいらないから、仕事なり恋なり、無駄をせず、一揆いっきで心残りないものを射止めて欲しい」と云った。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
取り亂した化粧部屋にはただひとり三歳みつつ四歳よつつの私が𢌞まはりながら何ものかを探すやうにいらいらと氣をあせつてゐた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
あせってはいけない」と、帆村は自分自身に云いきかした。「それより落着いて考えるのだ。人間の智慧を活用すれば、不可能なものは無い筈だ」
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あんまり相手が冷静なので、まとはずした思いがした。で彼は焦心あせって来た。もっともっとえぐい事を云って、反応を見たいと思い出した。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そちは、検断所でも、一、二を争う者なるに、こんどの変では、まだ何らの功も見せてはおらん。それゆえ、部下も焦心あせるのであろ。何しておるか」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
焦心あせる必要はもうない。今はそッとしておいて、又右衛門の気もちが、もう一歩、好転するなり、よい口ききが、他から現われるのを待つのが上策」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
訪問おとづれて往くと先づ籐椅子に腰を降して、對向つた永井と語るのは、世間へ出ようとお互に焦慮あせつて居る文學青年の文學談であつた。
永井荷風といふ男 (旧字旧仮名) / 生田葵山(著)
黒吉は、折角、直って来たらしい親方の機嫌を、又こじらしては大変と、焦慮あせって弁解に勉めたが、自分にもハッキリと判らないことが、親方に呑込めるだろうか。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
かれ焦慮あせつていつもするやうに大聲おほごゑして對岸むかうつたはずふねんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
近来一部の政治家と新聞記者とは各自党派の勢力を張らんがために、これらの裏長屋にまで人権問題の福音ふくいんいようとあせり立っている。
時に……あせったせいか、私の方が真先まっさきに二度すべった、ドンと手を突いてね、はっと起上る、と一のめりに見事にった。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは如何いかことこゝろばかりはあせれども、なんとしてもうまくはすげることらぬ口惜くやしさ、ぢれて、ぢれて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お花さんは日記帳を取返そうとしてしきりに焦燥あせったが、富田さんは矮小ずんぐりだけれどお花さんよりはせいが高い。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
私はそうした神秘的な……息苦しい気持を押え付けよう押え付けようと焦燥あせりつつ、なおも、解放治療場内の光景に眼を注いだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
二人の心は一日も早くと焦燥あせりはしたが、席亭よせ組合の懇願もだしがたく、綾之助の引退は一ヶ年の後に延引のばされた。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
半狂乱の幸之助はたけり狂って、抱かれている腕を振り放そうとあせっているところへ、二人の男がはいって来た。岡っ引の吉五郎と兼松である。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これまでに村の大火の火元をしたり、多勢の妹を片着けたりして、ようやく左前になりかけていた身上しんしょうを、従兄は盛り返そうとして気をあせった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
源五郎 月夜でも何でも、昼とは違う。まして不断とは違って今の場合だ。狼を見付けよう見付けようとあせっているので、人間の姿もつい狼のように見えてしまったのだ。
人狼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そう気がつくと同時に一層猛烈に藻掻きまわって、嬢次少年を一刻も早く引っ捕えるべく、焦躁あせりまわらずにはいられなくなった事がある。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
鍔迫り合いの危険さは、体の放れる一刹那にあった。遅れれば斬られ、はやまれば突かれる。さりとて焦躁あせれば息切れを起こして、結局斃されてしまうのであった。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
で——木村丈八も、ちょうど、江戸へもどって病床についたのを最後として、もう以前のような仕事に焦躁あせる事はしなかった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むやみに快楽を追おうとする所にいっさいの紛雑が生ずるのだ。あせればあせるほど、藻掻けば藻掻くほどすべてが粗笨そほんに傾き、ますます空虚となってゆくばかりだ。そうではないか。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
人間が見て、俺たちを黒いと云うと同一おなじかい、別して今来た親仁おやじなどは、鉄棒同然、腕に、火の舌をからめて吹いて、右の不思議な花を微塵みじんにしょうとあせっておるわ。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人間が見て、俺たちを黒いと云ふと同一おなじかい、別して今来た親仁おやじなどは、鉄棒同然、腕に、火の舌をからめて吹いて、右の不思議な花を微塵みじんにせうとあせつてるわ。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
十分に念を入れて描きたいと、あせればあせるほど其の筆は妙に固くなって、彼として相当の自信のあるような作物がどうしても出来あがらなかった。
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かく言捨てて蒲田は片手しておのれの帯を解かんとすれば、時計のひも生憎あやにくからまるを、あせりに躁りて引放さんとす。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
我と吾肉をくらはんと想ふばかりにあせれども、貫一は既に声を立つべき力をさへ失へるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
だから、結婚を必要事件と、初手から断定して、何時かこれを成立させようとあせる努力を、不自然であり、不合理であり、かつあまりに俗臭を帯びたものと解釈した。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だから、結婚を必要事件と、初手から断定して、何時いつか之を成立させ様とあせる努力を、不自然であり、不合理であり、且つあまりに俗臭を帯びたものと解釈した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「暗いじゃあないか、おい、おい。」とただあせる。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
益々ます/\あせつて、
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とあきらめたやうにつたが、また其處そこどころではささうな、こゑあせつて、
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とばかりありて、身を横さまに、格子戸にハタとあたりて、うめきつつ、片足踏出でてあせれる染をば、追い来し者ありて引捉ひっとらえ、恐しき声にて叱りたるが、引摺ひきずりて内にりぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まだ世馴れざる里の子の貴人きにんの前に出でしようにはじを含みてくれないし、額の皺の幾条いくすじみぞには沁出にじみ熱汗あせたた
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
額の皺の幾条の溝には沁出にじみ熱汗あせを湛へ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
私は見る見る血の気をうしなって行く自分自身を自覚した。タマラナイ興奮と、恐怖のために全身ビッショリと生汗あせを流しながら、身動き一つ出来ずにいた。
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
青年はたちまさっと赤くなった。そうしてまた急に青白くなって、房々した頭髪の下に隠れている白い額にニジンダ生汗あせを、平手でジックリと拭い上げた。
女坑主 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
板にもが。吾兄あせ三三を。 (歌謠番號一〇五)
尾津の埼なる 一つ松、吾兄あせ一〇
あまり心があせり過ぎて、乗出さぬ先から手綱をもつ手が震えました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さあ、源はあせらずにおられません。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
正一の気は、焦立あせって、こうしていることが出来なくなった。
過ぎた春の記憶 (新字新仮名) / 小川未明(著)
美しいお鯉——わたしは手箱に秘めてあったものが、ほどへて開いて見たおりに、色もあせずにそのままあったように、安心と、悦びと、満足の軽い吐息が出るのを知った。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
お鯉さんのこれからの生活は、かなり色のあせた、熱のないものであろうとその時わたしは思った。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
はゝ形見かたみ地赤ぢあかいろの、褪色あせのこるもあはれいたまし、ところ何方いづく
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)