あせ)” の例文
それもみな我々が悪魔を駆って、かれの魂に啖い入らせたのじゃ。お身たちがいかに救おうとあせっても狂うても、及ばぬことじゃ。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
線路レールの枕木を切り出す山林やまを見に、栗山くりやまの方へ、仲間と一緒に出向いて行った。大分つかい込みの出来た叔父は一層もうけ口を見脱みのがすまいとしてあせっていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そがあかき色見むものとあせりつつ、さはあせりつつ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
半狂乱の幸之助はたけり狂って、抱かれている腕を振り放そうとあせっているところへ、二人の男がはいって来た。岡っ引の吉五郎と兼松である。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これまでに村の大火の火元をしたり、多勢の妹を片着けたりして、ようやく左前になりかけていた身上しんしょうを、従兄は盛り返そうとして気をあせった。お庄母子兄弟のことも始終気にかけていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
落ちつかむ、ねらたむとぞあせれども
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
めいめいが預かりの客をともかくも船のなかへ助け入れようとあせっているうちに、きょうはどうしたものか、予定の時刻よりも出潮でしおが少し早いらしく
半七捕物帳:32 海坊主 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いかにれても、あせっても、怪しい蝶はもうその影を見せないのである。ふたりはあきらめて顔を見合わせた。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
狼を見付けよう見付けようとあせっているので、人間の姿もつい狼のように見えてしまったのだ。
人狼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
れて、あせって、呼び止めようとするところを、母に揺り起こされたのである。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
車の両輪を失った南朝方がいかにあせっても狂っても、どうなるものではないと、どの人もみな楽観しているらしかった。かれらの敵は新田の一族でもない、楠の残党でもない、南朝方でもない。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「はは、くどくも言うようじゃが、お前たちの運命はわが手のうちじゃ。いかにあせっても狂うても、及ばぬ、及ばぬ。お身はその懐剣に手をかけてなんとする。お身はわれらの味方でないか。」
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おれはひどくあせっているな。」
真鬼偽鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)