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焦燥
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あせ
ふりがな文庫
“
焦燥
(
あせ
)” の例文
私はそうした神秘的な……息苦しい気持を押え付けよう押え付けようと
焦燥
(
あせ
)
りつつ、なおも、解放治療場内の光景に眼を注いだ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
もう痛いところは
何処
(
どこ
)
にもなくなってしまいました。旦那、私が、何とかして痛いところを見つけ出そうと
焦燥
(
あせ
)
った時の心持を御察し下さい。
按摩
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
むしろそれにぶら
下
(
さ
)
がりながら、幸福を得ようと
焦燥
(
あせ
)
るのです。そうしてその矛盾も兄さんにはよく
呑
(
の
)
み込めているのです。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夏
(
なつ
)
が
漸
(
やうや
)
く
深
(
ふ
)
けると
自然
(
しぜん
)
は
其
(
そ
)
の
心
(
こゝろ
)
を
焦燥
(
あせ
)
らせて、
霖雨
(
りんう
)
が
低
(
ひく
)
い
田
(
た
)
に
水
(
みづ
)
を
滿
(
み
)
たしめて、
堀
(
ほり
)
にも
茂
(
しげ
)
つた
草
(
くさ
)
を
沒
(
ぼつ
)
して
岸
(
きし
)
を
越
(
こ
)
えしめる。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
東京でもいろいろのことをやって
味噌
(
みそ
)
をつけて行った父親は、製糸事業で失敗してから、それを
挽回
(
ばんかい
)
しようとして気を
焦燥
(
あせ
)
った結果、株でまた手痛くやられた
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
やあ火の玉の親分か、訳がある、打捨つて置いて呉れ、と力を限り払ひ除けむと
踠
(
もが
)
き
焦燥
(
あせ
)
るを、
栄螺
(
さゞえ
)
の如き拳固で
鎮圧
(
しづ
)
め、ゑゝ、じたばたすれば
拳殺
(
はりころ
)
すぞ、馬鹿め。
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
一枚一枚丁寧に小判を出してやっていたが、そのうちに盗人の方が
焦燥
(
あせ
)
ってきて早くしろといった。
旧聞日本橋:20 西川小りん
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
この新しい権威である思想に向って
俄
(
にわ
)
かに自己の生活を適応させるために照準の大転換を行おうとして
焦燥
(
あせ
)
る者と、この思想に反抗して時代遅れの専制的、階級的、官僚的
激動の中を行く
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
彼が居なければ、私の苦痛はないと同時に、此ほど彼に捕われて
焦燥
(
あせ
)
る未練さもない。
日記:09 一九二三年(大正十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
馬だけは幾ら
焦燥
(
あせ
)
つたところで、とても婆芸者が乗れさうにもないので、上西氏に取つてこんな恰好な乗物はなかつた。氏は馬の
背
(
せな
)
で
好
(
い
)
い気持になつて、口笛を吹いたり、利子の勘定をしたりした。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
お花さんは日記帳を取返そうとして
頻
(
しき
)
りに
焦燥
(
あせ
)
ったが、富田さんは
矮小
(
ずんぐり
)
だけれどお花さんよりは
丈
(
せい
)
が高い。それに其度に渡すまいと丈伸をして手を高く揚げるから仕方がない。トウトウ読んで了った。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
ハッと思うと同時に、父の
眼顔
(
めがお
)
に、私を見附けたという
喜悦
(
よろこび
)
の表情の動くのを見ました。父は、口を
開
(
あ
)
いて、何かを叫び、両手を上へ揚げて、一心不乱に私の方へ突進して来ようと
焦燥
(
あせ
)
っている有様。
幕末維新懐古談:14 猛火の中の私たち
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
それから一年近くも過ぎ去った
今朝
(
けさ
)
に限って、こんなに訳もなく破ってしまったそのそもそもの発端の動機を思い出そうと
焦燥
(
あせ
)
ったが、しかし
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
焦燥
(
あせ
)
つて
堀
(
ほり
)
を
飛
(
と
)
び
越
(
こ
)
えようとしては
野茨
(
のばら
)
の
刺
(
とげ
)
に
肌膚
(
はだ
)
を
傷
(
きずつ
)
けたり、
泥
(
どろ
)
に
衣物
(
きもの
)
を
汚
(
よご
)
したり
苦
(
にが
)
い
失敗
(
しつぱい
)
の
味
(
あぢ
)
を
嘗
(
な
)
めねばならぬ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
そうして依然としてできるようなまたできないような地位を、元ほど
焦燥
(
あせ
)
らない程度ながらも、まず自分のやるべき第一の義務として、根気に
狩
(
か
)
り
歩
(
あ
)
るいていた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
やあ火の玉の親分か、わけがある、
打捨
(
うっちゃ
)
っておいてくれ、と力を限り払い
除
(
の
)
けんと
踠
(
もが
)
き
焦燥
(
あせ
)
るを、
栄螺
(
さざえ
)
のごとき
拳固
(
げんこ
)
で
鎮圧
(
しず
)
め、ええ、じたばたすれば
拳
(
は
)
り殺すぞ、馬鹿め。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
自ら
愧
(
は
)
じ、自ら
苦
(
くるし
)
み、自ら出来るだけそれを脱しようとして
焦燥
(
あせ
)
るので明かである。
母性偏重を排す
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
養母の鶴勝はその悦びを共にすることを得ず、もはや
鬼籍
(
きせき
)
にはいっていた。二人の心は一日も早くと
焦燥
(
あせ
)
りはしたが、
席亭
(
よせ
)
組合の懇願もだしがたく、綾之助の引退は一ヶ年の後に
延引
(
のば
)
された。
竹本綾之助
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そこで僕は
大
(
おおい
)
に考えたよ。大に
焦燥
(
あせ
)
ったよ。
ある自殺者の手記
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
その中を縦横無尽に、電光のように馳けめぐる……
?
(
インタロゲーションマーク
)
……を見た。そうしてその……
?
(
インタロゲーションマーク
)
……を頭の中で押え付けよう押え付けようと
焦燥
(
あせ
)
った。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
私は私の手にただ一本の
錐
(
きり
)
さえあればどこか一カ所突き破って見せるのだがと、
焦燥
(
あせ
)
り
抜
(
ぬ
)
いたのですが、あいにくその錐は人から与えられる事もなく、また自分で発見する訳にも行かず
私の個人主義
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
もっと以前の記憶を回復しよう回復しようと
焦燥
(
あせ
)
りながら、何一つ思い出せないでいる……というのが現在の貴方の精神意識の状態であると考えられます。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その癖、おそろしく
焦燥
(
あせ
)
ってジリジリしている事はたしかだ。これぞと思う本があればポケットを
空
(
から
)
にしても構わないぐらい
棄身
(
すてみ
)
の決心をしている事だけはたしかである。
探偵小説の正体
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
すると
焦燥
(
あせ
)
りに焦燥っている菊池武時は憤然として馬上のまま弓に
鏑矢
(
かぶらや
)
を
番
(
つが
)
えた。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“焦燥”の意味
《名詞》
焦 燥(しょうそう 「焦躁」の「同音の漢字による書きかえ」)
いらいらして焦ること。
(出典:Wiktionary)
焦
常用漢字
中学
部首:⽕
12画
燥
常用漢字
中学
部首:⽕
17画
“焦燥”で始まる語句
焦燥感
焦燥気味