あせ)” の例文
あせればあせるほど、藻掻けば藻掻くほどすべてが粗笨そほんに傾き、ますます空虚となってゆくばかりだ。そうではないか。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
そのまた女を追って火焔を上げた男が、女の火を叩き消そうとして狂気のようにあせっている。火の玉が三つどもえになって、互いに追っ駈け合っているのであった。
生不動 (新字新仮名) / 橘外男(著)
人間が見て、俺たちを黒いと云ふと同一おなじかい、別して今来た親仁おやじなどは、鉄棒同然、腕に、火の舌をからめて吹いて、右の不思議な花を微塵みじんにせうとあせつてるわ。野暮やぼめがな。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お内儀さんが亭主の妹の火を消そうともせずまた妹が兄の火を揉み消そうとあせらないで三人とも、それぞれに自分たちの身体についている火さえ消そうと努めたならば
生不動 (新字新仮名) / 橘外男(著)
人間が見て、俺たちを黒いと云うと同一おなじかい、別して今来た親仁おやじなどは、鉄棒同然、腕に、火の舌をからめて吹いて、右の不思議な花を微塵みじんにしょうとあせっておるわ。野暮やぼめがな。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ウィングに水を入れてキングストンを開け入れようとあせっているのであったが、すでにキングストン・ヴァルヴは水中に没したとみえて圧力で防水扉はあめのごとくに曲り
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
途端に戸口に現れたイスカーキが吃驚びっくりして姿を消したかと思うと、私は夢中でウェンデルの手を逃れようとあせっていたから気もつかなかったが、突然ウェンデルの手が緩んで
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)