トップ
>
焦慮
>
あせ
ふりがな文庫
“
焦慮
(
あせ
)” の例文
訪問
(
おとづ
)
れて往くと先づ籐椅子に腰を降して、對向つた永井と語るのは、世間へ出ようとお互に
焦慮
(
あせ
)
つて居る文學青年の文學談であつた。
永井荷風といふ男
(旧字旧仮名)
/
生田葵山
(著)
これは大変だと気がついて、根気に心を取り直そうとしたが、遅かった。踏み答えて見ようと百方に
焦慮
(
あせ
)
れば焦慮るほど厭になる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
正に此新潮に
棹
(
さをさ
)
して彼岸に達しようと
焦慮
(
あせ
)
つて居る人なので、彼自身は、其半生に種々な黒い影を伴つて居る所から、殆ど町民に信じられて居ぬけれど
菊池君
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
目
(
め
)
を
掩
(
おほ
)
はれたやうで
心細
(
こゝろぼそ
)
い
霧
(
きり
)
の
中
(
なか
)
に、
其麽
(
そんな
)
ことで
著
(
いちじる
)
しく
延長
(
えんちやう
)
された
水路
(
すゐろ
)
を
辿
(
たど
)
つて
居
(
ゐ
)
ながら、
悠然
(
ゆつくり
)
として
鈍
(
にぶ
)
い
棹
(
さを
)
の
立
(
た
)
てやうをするのに
心
(
こゝろ
)
を
焦慮
(
あせ
)
らせて
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
父の嘉明の
小兵
(
こひょう
)
に似ず、六尺豊かな加藤式部少輔明成は、
足摺
(
あしず
)
りして
焦慮
(
あせ
)
った。主がこの気もちだから、血気な士は
逸
(
はや
)
りきって、何かというと殺気立った。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
▼ もっと見る
『……ああいう人気者は
蜉蝣
(
かげろう
)
だね、だから
僅
(
わず
)
かな青春のうちに、巨大な羽ばたきをしようと
焦慮
(
あせ
)
るんだ——ね』
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
ものが実力以上に出来過ぎたとき、さあ、この期を
外
(
はず
)
さず人に見せて喝采を博したい。こうも
焦慮
(
あせ
)
ります。ものが実力以下に出来たとき、さあ不安で堪らない。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
悠乎
(
ゆうこ
)
と読書に親しむことができたので、特に勉強の時間を定めて
焦慮
(
あせ
)
ってやるという必要はなく苦痛を感じながら机に向かうというようなこともさらになかった。
わが中学時代の勉強法
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
彼女を擁護しようと
焦慮
(
あせ
)
ったことが、二重に彼を
嘲笑
(
ちょうしょう
)
の
渦
(
うず
)
に
捲
(
ま
)
きこんで、手も足も出なくしてしまった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「騙しやせん。……早うして呉れ。お
娘
(
むす
)
があがると何んにもならん。」と、若い衆は
焦慮
(
あせ
)
つた。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
一日一日が彼を引き
摺
(
ず
)
っていた。そして裡に住むべきところをなくした魂は、常に外界へ逃れよう逃れようと
焦慮
(
あせ
)
っていた。——昼は部屋の窓を
展
(
ひら
)
いて盲人のようにそとの風景を
凝視
(
みつ
)
める。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「
焦慮
(
あせ
)
ってはならぬ。少しの間の辛抱だ」
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
正に此新潮に
棹
(
さをさ
)
して彼岸に達しようと
焦慮
(
あせ
)
つて居る人なので、彼自身は、其半生に
種々
(
いろん
)
な黒い影を伴つて居る所から、殆ど町民に信じられて居ぬけれど
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
黒吉は、折角、直って来たらしい親方の機嫌を、又こじらしては大変と、
焦慮
(
あせ
)
って弁解に勉めたが、自分にもハッキリと判らないことが、親方に呑込めるだろうか。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
耕耘
(
かううん
)
の
時期
(
じき
)
を
逸
(
いつ
)
して
居
(
ゐ
)
るのと、
肥料
(
ひれう
)
の
缺乏
(
けつばふ
)
とで
幾
(
いく
)
ら
焦慮
(
あせ
)
つても
到底
(
たうてい
)
滿足
(
まんぞく
)
な
結果
(
けつくわ
)
が
得
(
え
)
られないのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
餅は魔物だなと
疳
(
かん
)
づいた時はすでに遅かった。沼へでも落ちた人が足を抜こうと
焦慮
(
あせ
)
るたびにぶくぶく深く沈むように、噛めば噛むほど口が重くなる、歯が動かなくなる。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
飲食事
(
のみくひごと
)
をしながら、磯村は出来るだけ、彼女から話を引出さうと
焦慮
(
あせ
)
つた結果、少しづつ小出しにそれを引出させることはできたけれど、それは
真
(
ほん
)
の現在の身のうへくらゐのことであつた。
花が咲く
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
忠太郎 (もしやと思わず
焦慮
(
あせ
)
り)あるのか——お前に。(暗い気になる)
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
頻りに
焦慮
(
あせ
)
る様子を見ると、どうも
覚束
(
おぼつか
)
ない様子でございますねえ
或る秋の紫式部
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
再び女を捉へようと
焦慮
(
あせ
)
るけれど、女は其度男と反對の方へ動く、妙に落着拂つた其顏が、着て居る
職服
(
きもの
)
と見分けがつかぬ程眞白に見えて、
明確
(
さだか
)
ならぬ顏立の中に
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
彼
(
かれ
)
は
只
(
たゞ
)
其
(
そ
)
の
日
(
ひ
)
/\の
生活
(
せいくわつ
)
が
自分
(
じぶん
)
の
心
(
こゝろ
)
に
幾
(
いく
)
らでも
餘裕
(
よゆう
)
を
與
(
あた
)
へて
呉
(
く
)
れればとのみ
焦慮
(
あせ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
だが、忘れようと、
焦慮
(
あせ
)
れば焦慮るほど、私はあのネネの、真綿で造られた人形のような、柔かい曲線に包まれた肉体を想い出し、キリキリと胸に刺込む痛みを覚えるのだ。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
しかしそれがために、また会いたいの
焦慮
(
あせ
)
るのという熱は起らなかった。その当日のぱっとした色彩が
剥
(
は
)
げて行くに連れて、番町の方が依然として重要な問題になって来た。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
おはま (その駕籠に乗って、心も空に
焦慮
(
あせ
)
っている)
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
渠は、右から、左から、再び女を捉へようと
焦慮
(
あせ
)
るけれど、女は其度男と反対の方へ動く。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
Kの場合も同じなのですが、彼の
焦慮
(
あせ
)
り方はまた普通に比べると
遥
(
はる
)
かに
甚
(
はなはだ
)
しかったのです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼はいくら
睡
(
ねむ
)
ろうと
焦慮
(
あせ
)
っても、眠ることが出来なかった、この一座の未来が、つまり自分と葉子との未来に大きな関係のあるこの一座の「明日」が、一体、吉なのであろうか
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
すると彼の意志はその局部に対して全く平生の命令権を失ってしまう。
止
(
や
)
めさせようと
焦慮
(
あせ
)
れば焦慮るほど、筋肉の方でなお云う事を聞かなくなる。——これが過程であった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
喇叭節
(
ラツパぶし
)
を懸賞で募集したり、芸妓評判記を募つたり、頻りに俗受の好い様にと
焦慮
(
あせ
)
つてるので、初め私も其向うを張らうかと持出したのを、主筆初め社長までが不賛成で、出来るだけ清潔な
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
黒吉は、夢中で、神経を酒びたしにしようと
焦慮
(
あせ
)
った……。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
此
(
この
)
寒
(
さむ
)
さを
無理
(
むり
)
に
乘
(
の
)
り
越
(
こ
)
して、
一日
(
いちにち
)
も
早
(
はや
)
く
春
(
はる
)
に
入
(
い
)
らうと
焦慮
(
あせ
)
るやうな
表通
(
おもてどほり
)
の
活動
(
くわつどう
)
を、
宗助
(
そうすけ
)
は
今
(
いま
)
見
(
み
)
て
來
(
き
)
たばかりなので、
其
(
その
)
鋏
(
はさみ
)
の
音
(
おと
)
が、
如何
(
いか
)
にも
忙
(
せは
)
しない
響
(
ひゞき
)
となつて
彼
(
かれ
)
の
鼓膜
(
こまく
)
を
打
(
う
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「毎日」の
遣
(
や
)
り方は、
喇叭節
(
ラッパぶし
)
を懸賞で募集したり、藝妓評判記を募つたり、頻りに俗受の好い様にと
焦慮
(
あせ
)
つてるので、初め私も其向うを張らうかと持出したのを、主筆初め社長までが不賛成で
菊池君
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
いくらしようと
焦慮
(
あせ
)
っても、
調
(
ととの
)
わない事が多かった。それが病気になると、がらりと変った。余は寝ていた。黙って寝ていただけである。すると医者が来た。社員が来た。
妻
(
さい
)
が来た。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この寒さを無理に乗り越して、一日も早く春に入ろうと
焦慮
(
あせ
)
るような表通の活動を、宗助は今見て来たばかりなので、その鋏の音が、いかにも
忙
(
せわ
)
しない響となって彼の鼓膜を打った。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
要するに僕は
図
(
ず
)
を
披
(
ひら
)
いて地理を調査する人だったのだ。それでいて
脚絆
(
きゃはん
)
を着けて
山河
(
さんか
)
を
跋渉
(
ばっしょう
)
する実地の人と、同じ経験をしようと
焦慮
(
あせ
)
り抜いているのだ。僕は
迂濶
(
うかつ
)
なのだ。僕は矛盾なのだ。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“焦慮”の意味
《名詞》
焦慮(しょうりょ)
いらだつ(いらだたせる)こと。焦り。
(出典:Wiktionary)
焦
常用漢字
中学
部首:⽕
12画
慮
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
“焦”で始まる語句
焦
焦躁
焦燥
焦心
焦立
焦々
焦点
焦茶
焦眉
焦土