焦躁あせ)” の例文
嬢次少年に欺かれ、もてあそばれたという憤怒のほのおに熱し切っていた。そうしてその中に、今日の出来事の原因結果を整理しようと焦躁あせっていた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
で——木村丈八も、ちょうど、江戸へもどって病床についたのを最後として、もう以前のような仕事に焦躁あせる事はしなかった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遅れれば斬られ、はやまれば突かれる。さりとて焦躁あせれば息切れを起こして、結局斃されてしまうのであった。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
二人は遠眼にそれを見ていよ/\焦躁あせり渡らうとするを、長者はしづかに制しながら、洪水おほみづの時にても根こぎになつたるらしき棕櫚の樹の一尋余りなを架渡して橋として与つたに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そう気がつくと同時に一層猛烈に藻掻きまわって、嬢次少年を一刻も早く引っ捕えるべく、焦躁あせりまわらずにはいられなくなった事がある。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かすかに、庭面にわも静寂しじまをふるわせて来ると——男はやや焦躁あせり気味に——なお聞きとりにくい声をも聞こうとするように——前後もわすれていつか物蔭から這い出していた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人は遠眼にそれを見ていよいよ焦躁あせり渡ろうとするを、長者はしずかに制しながら、洪水おおみずの時にても根こぎになったるらしき棕櫚しゅろの樹の一尋余りなをけ渡して橋としてやったに
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
だが、いくら焦躁あせっても、進み得ない一線が前に云った探索たんさくの問題である。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
必死の勇気を絞り集めつつ対抗しようと焦躁あせっている魔神の姿であった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「自分から焦躁あせりをみせてはならん。疲れてはならん」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、堀部安兵衛などは、いとど焦躁あせる。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)