薄雲うすぐも)” の例文
て、ぷんかをりのたか抽斗ひきだしから、高尾たかを薄雲うすぐも一粒選ひとつぶえりところして、ずらりとならべてせると、くだん少年せうねん鷹揚おうやうたが
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おおらかに張り渡した傾斜のうえにはおたまじゃくしに似た薄雲うすぐもがちらちらと散らばって、如何にも朝明あさけの風を思わしめる。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
前夜ぜんやあめはれそら薄雲うすぐも隙間あひまから日影ひかげもれてはるものゝ梅雨つゆどきあらそはれず、天際てんさいおも雨雲あまぐもおほママかさなつてた。汽車きしや御丁寧ごていねい各驛かくえきひろつてゆく。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
青い空の静まり返つた、上皮うはかはに、白い薄雲うすぐも刷毛先はけさきで掻き払つたあとの様に、筋違すぢかひに長く浮いてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
北方に佳人かじんありといひしも、北は陰位いんゐなれば女に美麗びれいを出すにやあらん。二代目の高尾は(万治)野州にうまれ、初代の薄雲うすぐもは信州にさんして、ともに北廓ほくかくに名をなせり。
嗚呼あゝ大事切迫だいじせつぱく/\と、わたくし武村兵曹たけむらへいそうかほ見合みあはしたるまゝ身體しんたい置塲おきばらぬほどこゝろなやましてる、ときしもたちまる、はるか/\の水平線上すいへいせんじやう薄雲うすぐもごとけむりあらはれ
薄雲うすぐものあいだから日が輝いてきました。農夫たちは荒野を横切って教会へ行きました。
そのは空に薄雲うすぐもがあって月の光が朦朧もうろうとしていた。人通りはますますすくなくなって、物売る店ではがたがたと戸を締める音をさしていた。仲店なかみせ街路とおり大半おおかた店を閉じて微暗うすぐらかった。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
蒼白い月が風に吹きかえされたかのように仰向きになって懸っていて、まるで透きとおった寒冷紗のような薄雲うすぐもが一つ空を飛んでいた。風のために話をすることも出来ず、顔には赤い斑が出来た。
何となくその遊女の高尾たかお薄雲うすぐもではなかったことをおもわしめる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
まぶしさうに仰向あをむいた。つきとき川浪かはなみうへ打傾うちかたむき、左右さいう薄雲うすぐもべては、おもふまゝにひかりげ、みづくだいて、十日とをかかげ澄渡すみわたる。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
北方に佳人かじんありといひしも、北は陰位いんゐなれば女に美麗びれいを出すにやあらん。二代目の高尾は(万治)野州にうまれ、初代の薄雲うすぐもは信州にさんして、ともに北廓ほくかくに名をなせり。
然ししばらくすると、其心持のうちに薄雲うすぐもの様なさみしさが一面にひろがつてた。さうして、野々宮君の穴倉に這入つて、たつた一人ひとりすはつて居るかと思はれる程な寂寞を覚えた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
で、高尾たかを薄雲うすぐも芳野よしのなど絶世ぜつせい美人びじん身代金みのしろきんすなは人參にんじん一兩いちりやうあたひは、名高なだか遊女おいらん一人いちにん相當さうたうするのであるから、けだ容易よういなわけのものではない。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またまねくのを、ためらうと、薄雲うすぐものさすやうに、おもてさつ気色けしきばんで、常夏とこなつをハツとぎんなべげて寄越よこした。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あかりが映つて、透徹すきとおつて、いつかの、あの時、夕日の色に輝いて、ちょうど東の空に立つたにじの、其の虹の目のやうだと云つて、薄雲うすぐもかざして御覧なすつた、奥様の白い手の細い指には重さうな
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かど青木堂あをきだうひだりて、つち眞白まつしろかわいた橘鮨たちばなずしまへを……うす橙色オレンジいろ涼傘ひがさ——たばがみのかみさんには似合にあはないが、あついからうも仕方しかたがない——涼傘ひがさ薄雲うすぐもの、しかしくものないさへぎつて
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)