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菱
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ひし
ふりがな文庫
“
菱
(
ひし
)” の例文
とにかくしかしそれにしてもと、あんまりお帽子の
菱
(
ひし
)
がたが神経質にまあ
一寸
(
ちょっと
)
詩人のやうに鋭く
尖
(
とが
)
っていささかご
人体
(
にんてい
)
にかゝはりますが
電車
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そこから山の宿までほんの一と息、平次の足は自然に、
菱
(
ひし
)
屋の大番頭の伜で、手代をしてゐるといふ、清次郎の小間物屋に向つてをります。
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
素振
(
すぶ
)
りをしてみてからに、懐中へ手を入れると、久しく試みなかった
菱
(
ひし
)
の実のような穂先を取り出して、しっかとその先を食いこませたものです。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
総角
(
あげまき
)
、
十文字
(
じゅうもんじ
)
、
菱
(
ひし
)
、
蟹
(
かに
)
、
鱗
(
うろこ
)
、それにも
真行草
(
しんぎょうそう
)
の三通り
宛
(
ずつ
)
有った。流儀々々の細説は、写本に成って家に伝わっていた。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
こうした生々した様子になると、赤茶色の水気多い長々と素なおな
茎
(
くき
)
を持った
菱
(
ひし
)
はその真白いささやかな花を、形の良い葉の間にのぞかせてただよう。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
▼ もっと見る
独木舟を操り、水狸や獺を
捕
(
とら
)
える。
麻布
(
あさぬの
)
の製法を知っていて、獣皮と共にこれを身にまとう。馬肉、羊肉、
木苺
(
きいちご
)
、
菱
(
ひし
)
の実
等
(
など
)
を
喰
(
く
)
い、馬乳や馬乳酒を
嗜
(
たしな
)
む。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
沼の水面は一面
菱
(
ひし
)
が密生して、水の色が見えないのである。沼のふちは雑草が延び放題で爬虫類なぞ想像させ、陰気の上に、うす汚くて、不気味である。
木々の精、谷の精
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
たとえば
井筒
(
いづつ
)
ならば井筒を
菱
(
ひし
)
にもすれば丸の中にも入れ、輪違いにもすれば四つ合せもするというように、一つの紋をいかほどにも変えて行くのである。
名字の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
植物質
(
ちよくぶつしつ
)
のものにして今日迄に
石器時代遺跡
(
せききじだいいせき
)
より發見されたるは
菱
(
ひし
)
の
實
(
み
)
、胡桃の
實
(
み
)
、及び一種の
水草
(
すいさう
)
の類にして、是等は
唯
(
ただ
)
有りの
儘
(
まま
)
の形にて
存在
(
そんざい
)
したるのみ。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
初めの日は島前の
赤灘
(
あかなだ
)
瀬戸から別府、
菱
(
ひし
)
に寄港して午後の四時頃に島後の西郷港に着し、二時間ほどそこにゐて、今度は
知夫里
(
ちふり
)
、崎の二外港に寄港して、終夜航行して
隠岐がよひの船
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
少し歩いてからしなびた
紅
(
べに
)
の
花殻
(
はながら
)
をやはり二三本
藁包
(
わらづと
)
にしたのを買った。また少し歩くと、数株の
菱
(
ひし
)
を舗道に並べて売っている若い男がいた。A君はそれも一株買った。
試験管
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
叔父は毛むくじゃらのような顔をして、古い二重廻しを着ていた。兄は
菱
(
ひし
)
なりのような顔の口の大きい男で、これも綿ネルのシャツなど着て、土くさい様子をしていた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ただひとりで、雨に濡れながらとぼとぼと、
蓴菜
(
じゅんさい
)
や
菱
(
ひし
)
の浮かんだ池の傍を通る時には、廃都にしめやかな雨の降るごとく君の心にもしめやかな雨が降ったことでしょう。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
青碧
(
せいへき
)
澄明
(
ちようめい
)
の
天
(
てん
)
、
雲端
(
うんたん
)
に
古城
(
こじやう
)
あり、
天守
(
てんしゆ
)
聳立
(
そばだ
)
てり。
濠
(
ほり
)
の
水
(
みづ
)
、
菱
(
ひし
)
黒
(
くろ
)
く、
石垣
(
いしがき
)
に
蔦
(
つた
)
、
紅
(
くれなゐ
)
を
流
(
なが
)
す。
月令十二態
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
菱
(
ひし
)
の花びらの半ばをとがったほうを上にしておいたような、貝塚から出る黒曜石の
鏃
(
やじり
)
のような形をしたのが
槍
(
やり
)
が
岳
(
たけ
)
で、その左と右に
歯朶
(
しだ
)
の葉のような高低をもって長くつづいたのが
槍が岳に登った記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
大猷院殿
(
たいゆういんでん
)
の寛永の末ごろは、草ばかり蓬々とした、うらさびしい場所で、赤羽の辻、心光院の近くまで
小山田
(
おやまだ
)
がつづき、三田の切通し寄り、
菱
(
ひし
)
や
河骨
(
こうぼね
)
にとじられた南
下
(
さが
)
りの沼のまわりに
ひどい煙
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
皆が食事をするテーブル、彼が隠れて遊ぶ
戸棚
(
とだな
)
、彼がはい回る
菱
(
ひし
)
形の
床石
(
ゆかいし
)
、おかしな話や恐ろしい話を彼にしてくれる種々な
皺
(
しわ
)
のある壁紙、彼だけにしか分らない
片言
(
かたこと
)
をしゃべる掛時計。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「
綸子
(
りんず
)
の
小袖
(
こそで
)
に
菱
(
ひし
)
の
紋
(
もん
)
だ。
武田伊那丸
(
たけだいなまる
)
というやつに
相違
(
そうい
)
ないぜ」と、いった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ガラス板の
外
(
そと
)
に、彼女を送迎する魚類の夥しさ、その鮮かさ、気味悪さ、そして又美しさ、
雀鯛
(
すずめだい
)
、
菱
(
ひし
)
鯛、
天狗
(
てんぐ
)
鯛、
鷹羽
(
たかのは
)
鯛、あるものは、
紫金
(
しこん
)
に光る縞目、あるものは絵の具で染め出した様な
斑紋
(
はんもん
)
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
水草と
菱
(
ひし
)
の新芽とが、散々にみだれて、しぶきをあげ、渦を巻いた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
長襦袢の
袖口
(
そでぐち
)
はこの時下へと滑ってその二の腕の奥にもし
入黒子
(
いれぼくろ
)
あらば見えもやすると思われるまで、
両肱
(
りょうひじ
)
を
菱
(
ひし
)
の字なりに張出して
後
(
うしろ
)
の
髱
(
たぼ
)
を直し、さてまた最後には
宛
(
さなが
)
ら
糸瓜
(
へちま
)
の
取手
(
とって
)
でも
摘
(
つま
)
むがように
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
齒竝びは
椎
(
しい
)
の
子
(
み
)
や
菱
(
ひし
)
の實のようだ。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
菱
(
ひし
)
の咲く夏のはじめの
水路
(
すゐろ
)
から
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
菱
(
ひし
)
の
實
(
み
)
とるは
誰
(
た
)
が子ぞや
草わかば
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
水
(
みづ
)
にもぐりて
菱
(
ひし
)
の
実
(
み
)
を
どんたく:絵入り小唄集
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
蘆
(
あし
)
と、
菱
(
ひし
)
とを分けて、水に沿うてめぐり
来
(
きた
)
ってみると、やや暫くして、先に立った柳田平治が突然声を揚げました。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「俺は堂宮を見て來る。いゝか、欄干の後を見るんだよ、大抵は消し炭だ。目印は二重になつた
菱
(
ひし
)
、判つたか」
銭形平次捕物控:135 火の呪ひ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
此所へ落ちたらそれ
限
(
ぎ
)
りだ。藻や
菱
(
ひし
)
が手足に
搦
(
から
)
んで、どうにも斯うにも動きが取れなく成るんだぞ。へへ、鯉でさえ、
鮒
(
ふな
)
でさえ、大きく成ると藻に搦まれて、往生するという魔所だ。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
鼬
(
いたち
)
が
覘
(
のぞ
)
くような、鼠が
匍匐
(
はらば
)
ったような、切って
填
(
は
)
めた
菱
(
ひし
)
の実が、ト、べっかっこをして、ぺろりと黒い舌を吐くような、いや、念の
入
(
い
)
った、雑多な隙間、
破
(
や
)
れ穴が、寒さにきりきりと歯を噛んで
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
方法は首吊りと、
菱
(
ひし
)
の密生した古沼へ飛び込むことの二つである。
禅僧
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
旧城のお
濠
(
ほり
)
の
菱
(
ひし
)
の
実
(
み
)
も今の自分には珍しいものになってしまった。
郷土的味覚
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
灯
(
ひ
)
もさし、
菱
(
ひし
)
の
芽生
(
めばえ
)
に
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
竿の先を
巾
(
きれ
)
で拭いているところを見ると、二寸ばかりの鋭利なる穂先が
菱
(
ひし
)
のように立てられてあるのでありました。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「俺は堂宮を見て来る。いいか、欄干の後ろを見るんだよ、大抵は
消炭
(
けしずみ
)
だ。目印は二重になった
菱
(
ひし
)
、判ったか」
銭形平次捕物控:135 火の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
鼬
(
いたち
)
が
覘
(
のぞ
)
くやうな、
鼠
(
ねずみ
)
が
匍匐
(
はらば
)
つたやうな、
切
(
き
)
つて
填
(
は
)
めた
菱
(
ひし
)
の
實
(
み
)
が、ト、べつかつこをして、ぺろりと
黒
(
くろ
)
い
舌
(
した
)
を
吐
(
は
)
くやうな、いや、
念
(
ねん
)
の
入
(
い
)
つた、
雜多
(
ざつた
)
な
隙間
(
すきま
)
、
破
(
や
)
れ
穴
(
あな
)
が、
寒
(
さむ
)
さにきり/\と
齒
(
は
)
を
噛
(
か
)
んで
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
方法は首吊りと、
菱
(
ひし
)
の密生した古沼へ飛び込むことの二つである。
禅僧
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
手に持った槍、柄は真赤に塗ってあって、
尖
(
さき
)
が
菱
(
ひし
)
のようになっている、それも看板と間違いはない。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
桟敷の上には、同じく鳩と
菱
(
ひし
)
とを描いた
幔幕
(
まんまく
)
が絞ってある。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
“菱(ヒシ)”の解説
ヒシ(菱、学名: Trapa jeholensis)はミソハギ科最新の植物分類のAPG体系ではミソハギ科であるが、古いクロンキスト体系や新エングラー体系ではヒシ科に分類されている。ヒシ属の一年草の水草。池沼に生え、葉が水面に浮く浮葉植物。種子は食用にされる。別名や地方名で、オニコ、オニノカワラ、ツノジ、ヘシ、フシ、ヌマビシ、ミズグリなどともよばれる。
(出典:Wikipedia)
菱
漢検準1級
部首:⾋
11画
“菱”を含む語句
菱形
花菱
菱屋
菱川
巻菱湖
菱垣
菱谷氏
大菱屋
菱殻
幸菱
三菱
剣菱
菱餅
菱川師宣
菱角
菊菱
菱垣船
三蓋菱
菱山修三
菱沼
...