)” の例文
ゆるいかゆと、つぶした蔬菜そさいであるが、この頃ではあごがうまく動かないとみえ、口からこぼしたりするので、ずいぶん時間がかかる。
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あらをはつたとき枯葉かれはおほいやうなのはみなかまでゝうしろはやしならみきなはわたして干菜ほしなけた。自分等じぶんら晝餐ひるさいにも一釜ひとかまでた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
眺めていると雨竜が頭を出しそうでもあるし、この空にうずらで卵を一つぽんと落したら支那料理の燕巣湯にも思い取られそうです。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
でたジャガ芋二つの朝食をみこんで海岸の家を出ると、ぼくは六時二十九分の汽車で上京して、品川から四谷塩町行の都電に乗る。
煙突 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
これをでるのに十二月という新春のまじない木を焚き、また家に飼っている鳥けものにもこれを食べさせたということである(布部郷土誌)。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
夜は、これらの摘草をでて食卓しょくたくに並べた。色は水々しかったが、筋が歯にからんで、ひずるの工合ぐあいなどはまるで蒟蒻こんにゃくのようであった。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
おなかがすいて玉子をでたらいそいでいて何か工合がわるくて、カラをむいたらカラにくっついてまるであばたのゆで玉子が出来たでしょう。
ツルゲネフに出て来そうな道ばたの家で、で玉子を食べる。村の人が四、五人、喫煙と「主義の討論」にふけっていた。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
かないが塩でで、持って来よったようじゃが最初のうちは香気が高くてナカナカ美味おいしいものじゃよ。新牛蒡ごぼうのようなものじゃ。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大根おろしなども非常にお好きなのだそうですが、生が怖くてでて食べるといった風であり、果物なども煮ない限りは一切口にされませんでした。
泉鏡花先生のこと (新字新仮名) / 小村雪岱(著)
「どうかその、疼くだけでも早く医者の力で直らないものかねえ! あまり痛むなら、菎蒻こんにゃくでもでて上げようか?」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
その傍に、しをれ返つて居るのは、涙でであげたやうに、八郎兵衞の老妻のお妻、悲歎と激情と、絶望とにさいなまれて、まことに見る影もありません。
私が最も珍しく思ったのは頭足類で、烏賊いか章魚たこ(図26)もあり、中には大きいのもあったが、生きたのと、すぐ食えるようにでたのと両方あった。
米友の五体はで上げたように真赤になる、筋肉がピリピリと動き出した。ムクもまたその傍まで来て、兵馬を睨んで唸っている。絶体絶命と見えた時
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ざつとでて、酢味噌でたべる。いかにも春の初めらしい匂ひと苦味とをもつた、風味あるものである。
家のめぐり (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
その法と云うのは、ただ、湯で鼻をでて、その鼻を人に踏ませると云う、極めて簡単なものであった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
血腸詰プウダンやら、河沙魚グウジョンの空揚げやら、胎貝ムウル大蒜にんにくの塩汁、豚の軟骨のゼラチン、こうしの脳味噌をでたやつ
犂氏の友情 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
今来た入口はいりぐちに、下駄屋と駄菓子屋が向合って、駄菓子屋に、ふかし芋と、でた豌豆えんどうを売るのも、下駄屋の前ならびに、子供のはきものの目立ってあかいのも、ものわびしい。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ダリアは黒眼鏡をはずして見たが、左眼さがんはまるででたように白くなり、そうでないところは真赤に充血していた。右の眼はやや充血じゅうけつしている位でまず無事な方であった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その桑はむしろにつつんであるが、柔らかそうな青い葉はでられたようにぐったりと湿れている。私はいよいよ痛切に「どうも困ります」を感じずにはいられなくなった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だけどイタリーにはそんなものはなく食事はトロトロのスープとお魚をでたもの位で、この時位日本のものが食べたくなったことは私の長い西洋生活にはありませんでした。
お蝶夫人 (新字新仮名) / 三浦環(著)
一口に云えば、でた海老を千倍に拡大したような、かつて見た事もない怪動物であった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
夏に家の近くの海で泳ぐ時、もぐっては石崖に付着しているこの貝を取るのが面白く、十数個もたまると持って帰ってでてもらい、木綿針の先で、ぐるっと廻して、ほじり出しては食べる。
九年母 (新字新仮名) / 青木正児(著)
「紅茶をれましたからお上んなさい。少しばかりくりでましたから」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼の前に出された食卓の上には、豚の丸焼や真赤にだったマングローブ蟹や正覚坊の卵が山と積まれている。彼は事の意外に驚いた。夢の中ながら、夢ではないかと疑った。何か不安で仕方が無い。
南島譚:01 幸福 (新字新仮名) / 中島敦(著)
やがて馬春堂は、で上がった章魚たこのようになって
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
特に女の眼をよろこばせそうな冬菜ふゆなは、形のまま青くで上げ、小鳥は肉をつぶしして、枇杷びわの花の形に練り慥えてあった。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
或いはもう立帰って、料理場の隅に好きな栗でもでているのではないか、といった程度のものです。ところが、お雪ちゃんの不安な色は容易に去らないで
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
米の代りにたんぽぽをでて食わせたと云うてはなぐり、「お前はどうしてそう下品な女のくせがけないのだ。えりを背中までずっこかすのはどんな量見なんだ」
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
いもでるむっとした匂いの充ちたキッチンに入ると、彼は網戸の外を見ていた。女たちが、彼を恥じさせたのではなかった。彼は彼の空腹を恥じていたのだった。
その一年 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
たゞ、若芽のころ摘んでづればそのくさみは拔け、齒ざはりのいゝあへものとなるのである。
家のめぐり (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
あの人の手はいつも他人ひとのぽけっとへ這入りたがってうずうずしています。あの人は毎朝熱湯に入浴してじぶんの身体からだと一しょにでた玉子をお湯のなかで食べるのです。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
「そんなこといはねえでいくつでもつてけよ、なほぎはけねえぢやえかねえもんだから」勘次かんじ漬菜つけなはなして檐下のきしたた。あしでたやうにあかくなつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そっと小屋をのぞいてみると、蕗が山のように積んである中で、大釜おおがまにどんどん火をき浪江がせっせと蕗を小さく切る側から、家士たちがであげたのを大きな箱に詰めている。
蕗問答 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
給仕人が平蜘蛛ひらくものようになって謝っているがどうしても許さないのです。何かと思ったら、スパゲッティので方が悪いといって、お皿ごと床に叩きつけて怒ったのだそうです。
お蝶夫人 (新字新仮名) / 三浦環(著)
ミミに痛いところを突込まれ、ベランはだこのようになって、ただうなるばかりだった。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
曇っていたので、どうするか分らなかったが、大きいお握りや島田から頂いて来た玉子のでたのをもって池袋へ出かけたら、戸塚の子供二人が母さんをひっぱってピンつくやって来た。
みなも急に元気が出て、すぐにその蟹をではじめました。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ジャガ芋ので汁で洗うと一ペンに落ちるもんじゃが」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私はどこまで旧時代の底に沈ませられて行くか多少の不安と同時に、これより落着きようもない静な気分に魅せられて、傍でで卵などいていた。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
米友はでたようになって、かくれおかのわが荒家あばらやへ帰って来ると、戸棚に隠れていたお玉が出て
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
夕方井戸端で、うどんをでた汁を捨てていると、小里氏の子供が走って来て空を見上げた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
あの人はハンブルグの荷上にあげ人夫ではないのです——あの人は毎朝熱湯の風呂へ這入って自分の身体と一しょにで上った玉子をそのお湯のなかで食べるのです——それから
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
土筆を灰水に一夜漬けてあくを抜き、塩一つまみの熱湯でで、砂糖味噌にまぶして喰べた。〔うすき芳香あり。〕今日は「長」とのびるをとりに行った。小さい奴をしこたま採って来た。
三十分ばかり、私は、地獄の釜の中ででられているような苦しみを経験した。が、その後になって、多少気分がおちついてきたように思った。私はようやく考える力を取戻したのだった。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
で出しうどんで狐南蛮を拵えたものが料理場から丼に盛られて、お夜食に店方の者に割り振られた。くめ子もその一つを受取って、熱い湯気を吹いている。
家霊 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
さっと全身をで上げてしまった日には、ゲジゲジのめたあとまで見られてしまう。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのほか私の発明でうまいと思ったものに、パセリのげたのをパンに挟むのや、大根の芽立てをんだつみな、夏の朝々百姓が売りに来るあれを、青々とでピーナツバタにえてパンに挟む。
朝御飯 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
蝸牛は頑固な動物でよっぽどで無いと軟くならない。ようやく茹で上ったものから身を引出す。
食魔に贈る (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
さいぜんから暖められていた鍋の中のものは、栗がでられていたのです。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)