若草わかくさ)” の例文
にわ若草わかくさ一晩ひとばんのうちにびるようなあたたかいはるよいながらにかなしいおもいは、ちょうどそのままのように袖子そでこちいさなむねをなやましくした。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
若草わかくさながら廣野ひろの一面いちめん渺茫べうばうとしてはてしなく、かすみけてしろ/″\と天中そらつきはさしのぼつたが、葉末はずゑかるゝわればかり、きつね提灯ちやうちんえないで
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おんな乞食こじきは、ふたたび、ままなからだになって、はな野原のはらや、うみえる街道かいどうや、若草わかくさしげ小山こやまのふもとなどを、たびしたくなったのであります。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
春日はるひすらつかきみかなしも若草わかくさつまきみつかる 〔巻七・一二八五〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
わかちもせず面白おもしろきこと面白おもしろげなる男心をとこごゝろ淡泊たんぱくなるにさしむかひては何事なにごとのいはるべき後世のちのよつれなく我身わがみうらめしくはるはいづこぞはなともはで垣根かきね若草わかくさおもひにもえぬ
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
若草わかくさいでかぜが、ならぬはるおくつてかほかすめる。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「おお、『若草わかくさ』が——」
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ここには匂ふ若草わかくさ
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
きみ若草わかくさを枕して
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
あだかもはるゆきれてかえってびるちから若草わかくさのように、生長しとなりざかりの袖子そでこ一層いっそういきいきとした健康けんこう恢復かいふくした。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かげろうののぼる、かがやかしい田畑たはたや、若草わかくさぐむ往来おうらいや、隣家りんか垣根かきねももはなや、いろいろの景色けしきかんで、なつかしいおもにふけると
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たゞたまのしるしばかり、髪は糸で結んでも、胡沙こさ吹く風は肩に乱れた、身はせ、顔はやつれけれども、目鼻立ちのりんとして、口許くちもとしまつたのは、服装なりうでも日本やまと若草わかくさ
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そして、しばらくたつとまた、若草わかくさをふいて、陽炎かげろうのたつ、はるがめぐってきたのであります。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たゞたまのしるしばかり、かみいとむすんでも、胡沙こさかぜかたみだれた、せ、かほやつれたけれども、目鼻立めはなだちのりんとして、口許くちもとしまつたのは、服裝なりうでも日本やまと若草わかくさ
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おんな乞食こじき門番もんばん居眠いねむりをしていましたので、だれにもとがめられることがなく、草履ぞうりおともたてずに、若草わかくさうえんで、しだいしだいにおしろ奥深おくふかはいってきたのであります。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
背後うしろかこつた、若草わかくさ薄紫うすむらさき山懐やまふところに、黄金こがねあみさつげた、ひかり赫耀かくやくとしてかゞやくが、ひとるほどではなく、太陽たいやうときに、かすかとほ連山れんざんゆきかついだ白蓮びやくれんしべごとくにえた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
若草わかくさながら曠野ひろの一面いちめん渺々べう/\としてはてしなく、かすみけてしろ/″\と、亥中ゐなかつきは、さしのぼつたが、葉末はずゑかるゝわればかり、きつね提灯ちやうちんえないで、時々とき/″\むらくものはら/\とかゝるやうに
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)