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脅
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おびやか
ふりがな文庫
“
脅
(
おびやか
)” の例文
異体の知れねえのに
脅
(
おびやか
)
されて、雲を霞と逃げたとあっちゃあ——第一、七兵衛兄いなんぞに聞かせようものなら、生涯の笑われ草だ。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
続きに続いた親しいものの死から散々に
脅
(
おびやか
)
された彼は
復
(
ま
)
たしてもその光景によって
否応
(
いやおう
)
なしに見せつけられたと思うものがあった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それが狂念となって潜んでいるが、時としては表面にあらわれてかれを
脅
(
おびやか
)
した。遺伝というものが
心頭
(
しんとう
)
に
絡
(
から
)
みついていて離れない。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
この送話器は、船橋に通じていて、もし本船の安全を
脅
(
おびやか
)
すような事件が近づくと看取された暁には、間髪をいれず船長に報告される筈だった。
地球発狂事件
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
脅
(
おびやか
)
された当の巡査自身のように、サアベルを
提
(
さ
)
げ長靴でもはき、ぴんと張った八字
髭
(
ひげ
)
でも撫上げながら、「オイ、コラ」とか何とか言いそうな
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
▼ もっと見る
日頃から物に騒がない本間さんが、
流石
(
さすが
)
に愕然としたのはこの時である。が、理性は一度
脅
(
おびやか
)
されても、このくらいな事でその権威を失墜しはしない。
西郷隆盛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
唯継
(
ただつぐ
)
の金力を以て彼女を
脅
(
おびやか
)
したらんには、またかの雅之を入獄の先に棄てたりけんや。
耀
(
かがや
)
ける
金剛石
(
ダイアモンド
)
と
汚
(
けが
)
れたる罪名とは、
孰
(
いづれ
)
か愛を
割
(
さ
)
くの力多かる。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
僕はふと夫人が第三者の為に土蔵の中へとじこめられているという想像に
脅
(
おびやか
)
されて、錠前の鍵を持って来る様に頼んだが、女中はそのありかを知らなかった。
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
自分の声をセルギウスに聞かすまいとして、小声で云つてゐるが、その癖語気は鋭く、
脅
(
おびやか
)
すやうである。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
その詮索し方の凄まじい周到さとはたしかに「あはよくば又頭を
擡
(
もた
)
げる時機も」と思つてゐた諸侯の心事を
脅
(
おびやか
)
し、その野望を断念せしめて行くには効き目は著しかつた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
今や世を挙げて西洋模倣の粗悪なる毒々しき色彩衣服に書籍に家屋に器具に
到処
(
いたるところ
)
人の目を
脅
(
おびやか
)
すにつけて、
僅
(
わずか
)
両三年
前
(
ぜん
)
まではさほどにも思はざりける風土固有の温和なる色調
一夕
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
ゆるらかに幾尺の水晶の
念珠
(
ねんじゅ
)
を引くときは、ムルデの河もしばし流をとどむべく、
忽
(
たちま
)
ち迫りて
刀槍
(
とうそう
)
斉
(
ひとし
)
く鳴るときは、むかし
行旅
(
こうりょ
)
を
脅
(
おびやか
)
ししこの城の
遠祖
(
とおつおや
)
も
百年
(
ももとせ
)
の夢を破られやせむ。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
むかし僧正
遍照
(
へんじょう
)
は天狗を金網の中へ籠めて焼いて灰にしたというが、我らにはなかなかそのような道力はないから、平生いろいろな天狗に
脅
(
おびやか
)
されて弱っている、俳句天狗や歌天狗
魔法修行者
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
竹のステッキで足もとの草を
薙
(
な
)
ぎ倒し、歯がみをしている太宰の姿よりは、「夜ふけと梅の花」の中の、電信柱の下で前後左右によろめきながら、自分を
脅
(
おびやか
)
す質屋の番頭の幻影に対し
井伏鱒二によせて
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
豪雨だ……そのすさまじき豪雨の音、そうしてあらゆる方面に落ち
激
(
たぎ
)
つ水の音、ひたすら
事
(
こと
)
なかれと祈る人の心を、有る限りの
音声
(
おんせい
)
をもって
脅
(
おびやか
)
すかのごとく、豪雨は夜を徹して鳴り通した。
水害雑録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
此
(
これ
)
にぎよつとしながら、いま
一祈
(
ひといの
)
り
祈
(
いの
)
りかけると、その
茸
(
きのこ
)
、
傘
(
かさ
)
を
開
(
ひら
)
いてスツクと
立
(
た
)
ち、
躍
(
をど
)
りかゝつて、「ゆるせ、」と
逃
(
に
)
げ
𢌞
(
まは
)
る
山伏
(
やまぶし
)
を、「
取
(
と
)
つて
噛
(
か
)
まう、
取
(
と
)
つて
噛
(
か
)
まう。」と
脅
(
おびやか
)
すのである。
くさびら
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
父親が非常に
巨
(
おほ
)
きな身体をしてゐて、力もこの周囲をとりまいてゐる夜の深い
脅
(
おびやか
)
すやうな印象をふせぐには十分だと云ふあの子供つぽい切ないやうな信頼の感じ、それをまざまざと思ひ出してゐた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
昂奮
(
こうふん
)
が
崇
(
たた
)
ったのか、寒い夜気がこたえたのか、帰途につこうとしていた清逸はいきなり激しい咳に襲われだした。
喀血
(
かっけつ
)
の習慣を得てから咳は彼には大禁物だった。死の
脅
(
おびやか
)
しがすぐ彼には感ぜられた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼の平静な安易な生活を
脅
(
おびやか
)
すごとく、彼の前に出現したのである。
青木の出京
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
脅
(
おびやか
)
すあらば彼必ず神を詛わん
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
パアンふと
脅
(
おびやか
)
しぬれば
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
その出動がはからずも、紙屑買であり、焼跡せせりであるところの、のろま清次の仕事を
脅
(
おびやか
)
す結果になったとは自ら知らない。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
脅
(
おびやか
)
そうというのか。貴様はよっぽど大馬鹿者だぞ。おれは、やろうと思えば、帝国の最新鋭艦でも、なんの苦もなく坐礁させるという恐しい力を
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
脅
(
おびやか
)
すやうな定まりない体温、肉体の動揺と不安、悲しい幻滅……色の白い
繊弱
(
きやしや
)
な姉さんと違ひ、もと/\夫人はそんな風に成りさうも無かつた人で
灯火
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
それがはげしい雨の音と共に、次第に重苦しく心をおさえ始めた時、本間さんは物に
脅
(
おびやか
)
されたような眼をあげて、われ知らず食堂車の中を見まわした。
西郷隆盛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
我の愛か、死をもて
脅
(
おびやか
)
すとも得て屈すべからず。宮が愛か、
某
(
なにがし
)
の
帝
(
みかど
)
の
冠
(
かむり
)
を飾れると聞く世界
無双
(
ぶそう
)
の
大金剛石
(
だいこんごうせき
)
をもて
購
(
あがな
)
はんとすとも、
争
(
いか
)
でか動し得べき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
常に美しいとばかり思っていた面貌の異様に変じたのに驚いて、
肌
(
はだ
)
に
粟
(
あわ
)
を生じたが、
忽
(
たちまち
)
また
魘夢
(
えんむ
)
に
脅
(
おびやか
)
されているのではないかと疑って、急に身を起した。女が醒めてどうしたのかと問うた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
さんざん耳から
脅
(
おびやか
)
された人は、夜が明けてからは更に目からも脅される。庭一面に
漲
(
みなぎ
)
り込んだ水上に水煙を立てて、雨は
篠
(
しの
)
を突いているのである。庭の飛石は
一箇
(
ひとつ
)
も見えてるのが無いくらいの水だ。
水害雑録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
彼はヒョイとおじぎをしてテーブルの側を離れると、人々が怪むのも構わず、部屋の出口の方へ走って行って、彼を
脅
(
おびやか
)
したあの顔の持主を物色した。併し、いくら探してもそんな顔は見当らないのだ。
幽霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
脅
(
おびやか
)
す
假
(
かり
)
裝
(
よそほ
)
ひに
松明
(
たいまつ
)
の
焔
(
ほのほ
)
つづきぬ。
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
しかし、よく見れば道庵の鼻は完全に付いているし、
四方
(
あたり
)
を見ても、何物も道庵を
脅
(
おびやか
)
しに来たものの形跡を認められない。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
忽ち多くの病室へ
伝
(
つたは
)
つて、患者は
総立
(
そうだち
)
。『放逐して
了
(
しま
)
へ、今直ぐ、それが出来ないとあらば
吾儕
(
われ/\
)
挙
(
こぞ
)
つて御免を蒙る』と
腕捲
(
うでまく
)
りして院長を
脅
(
おびやか
)
すといふ騒動。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
夜
(
よる
)
になると間もなく、板倉佐渡守から急な使があって、早速来るようにと云う沙汰が、
凶兆
(
きょうちょう
)
のように彼を
脅
(
おびやか
)
したからである。夜陰に及んで、突然召しを受ける。
忠義
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
期に
迨
(
およ
)
びて還さざらんか、彼は
忽
(
たちま
)
ち
爪牙
(
そうが
)
を
露
(
あらは
)
し、陰に告訴の意を示してこれを
脅
(
おびやか
)
し、散々に不当の利を
貪
(
むさぼ
)
りて、その肉尽き、骨枯るるの後、
猶
(
な
)
ほ
饜
(
あ
)
く無き慾は
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ことに開けると爬虫たちの生命を
脅
(
おびやか
)
すことになるという話のあった鴨田研究員苦心の三本のタンクみたいなものも、
此際
(
このさい
)
どうしても開けてみなければ
済
(
す
)
まされなかった。
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この卒は数年前に、陳が払暁に咸宜観から出るのを認めたことがある。そこで奇貨
措
(
お
)
くべしとなして、玄機を
脅
(
おびやか
)
して金を
獲
(
え
)
ようとしたが、玄機は笑って顧みなかった。卒はそれから玄機を怨んでいた。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
極度に千代子を
脅
(
おびやか
)
すのでした。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そのはず、今朝江戸を出て来たものとすれば、子供の足で七里の道、足が
腫
(
は
)
れ上って動けないらしい、そこを悪者どもに
脅
(
おびやか
)
されたものと見えます。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
が、この鷺の影を除いては、川筋一帯どこを見ても、ほとんど人を
脅
(
おびやか
)
すような、明い寂寞が支配していた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
母体が
肺結核
(
はいけっかく
)
とか
慢性腎臓炎
(
まんせいじんぞうえん
)
であるとかで、
胎児
(
たいじ
)
の成長や
分娩
(
ぶんべん
)
やが、母体の生命を
脅
(
おびやか
)
すような場合とか、母体が悪質の遺伝病を持っている場合とかに始めて人工流産をすることが
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
併し理を以て
推
(
お
)
せば、これが
人世
(
じんせい
)
必然の
勢
(
いきほひ
)
だとして
旁看
(
ばうかん
)
するか、町奉行以下諸役人や市中の富豪に進んで救済の法を講ぜさせるか、諸役人を
誅
(
ちゆう
)
し富豪を
脅
(
おびやか
)
して其
私蓄
(
しちく
)
を散ずるかの三つより
外
(
ほか
)
あるまい。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
ふと何かに
脅
(
おびやか
)
されたやうな心もちがして、思はずあたりを見まはすと、
何時
(
いつ
)
の間にか例の小娘が、向う側から席を私の隣へ移して、
頻
(
しきり
)
に窓を開けようとしてゐる。
蜜柑
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
大垣の兵に
遮
(
さえぎ
)
られて北国へ転じ、ついに一族三百余人が刑場の露と消えたのは誰も知っているはずであるに拘らず、その幽霊が、かくもこの辺の人心を
脅
(
おびやか
)
している。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ふうん、そんな鞄がどんどん現れて
管下一円
(
かんかいちえん
)
を
脅
(
おびやか
)
すことになれば、わし達は鞄狩りに手一杯となり、他の仕事が出来なくなるだろう。とにかく怪談にせよ引力にせよ、一大事件だ。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ふと何かに
脅
(
おびやか
)
されたような心もちがして、思わずあたりを見まわすと、
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか例の小娘が、向う側から席を私の隣へ移して、
頻
(
しきり
)
に窓を開けようとしている。
蜜柑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
こちらの船頭が舟の
舳先
(
へさき
)
で、あわただしくこう叫んだのが、また一座の沈黙の空気を
脅
(
おびやか
)
しました。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その時お君さんの描いた幻の中には、時々暗い雲の影が、
一切
(
いっさい
)
の幸福を
脅
(
おびやか
)
すように、底気味悪く去来していた。成程お君さんは田中君を恋しているのに違いない。
葱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
火事よりもこの方が人を
脅
(
おびやか
)
したものでございました……ところがその翌年の
丙午
(
ひのえうま
)
ですな、その正月がまた大変で、これは夕方から始まりましたが、小石川片町から出まして
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
今まで私を
脅
(
おびやか
)
したのはただ何とも知れない不安な心もちでございましたが、その後はある
疑惑
(
ぎわく
)
が私の頭の中に
蟠
(
わだかま
)
って、日夜を問わず私を責め
虐
(
さいな
)
むのでございます。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし道庵としては、かくうろたえるのがあたりまえで、ただいま投げ込まれた投げ文なるものは、確かに道庵に向って、生命を
脅
(
おびやか
)
すに足るべき果し状同様なものでありました。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
脅
常用漢字
中学
部首:⾁
10画
“脅”を含む語句
脅迫
脅威
脅喝
威脅
脅迫状
白痴脅
脅嚇
虚仮脅
鳥脅
一脅
音脅
脅退
脅迫談判
脅迫観念
脅迫者
脅迫感
脅腹
脅曳
脅怖
脅威挑戦
...