翌日あす)” の例文
翌日あすは茫漠たる那須野なすのはらを横断して西那須野停車場ステーション。ここで吾輩は水戸からの三人武者と共に、横断隊に別れて帰京の途に着いた。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
合せしからは浮々うか/\江戸におち付ては居るまじ翌日あすくらきより起出おきいでて其の方は品川の方より段々だん/\に尋ぬべし我は千ぢゆ板橋いたばしなど出口々々を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「しかしそれだけじゃないのだからな。精細なる会計報告が済むと、今度は翌日あす御菜おかずについて綿密な指揮を仰ぐのだから弱る」
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「かたり申そうぞ。ただし物語に紛れて遅れては面目なかろう。翌日あすごろはいずれもさだめて鎌倉へいでましなさろうに……おくれては……」
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
姉妹きやうだいの娘は早く子供等の寝静まるのを待つた。その晩は叔父さんもめづらしく長く下の部屋に坐つて、翌日あすの仕度の話をした。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
じゃあこうしようね、一所に私のうちへ来て今夜お泊りでないか。そうして、翌日あすになったら一所に行って言訳をしましょうよ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
休日毎きうじつごとさそひに幻花子げんくわしつてられず。今日けふ望生ぼうせい翌日あす活子くわつしあるひは三にんそろつてうちに、土偶どぐうあしる。小土器せうどきる。大分だいぶ景氣けいきいてた。
ひとりの男……むらさきの着物をて、かんむりをかぶった上品な人でございました。それがわたくしの枕もとへ参りまして、自分の命はきょう翌日あすに迫っている。
半七捕物帳:44 むらさき鯉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
数度の喀血かっけつ、その間々あいあいには心臓の痙攣けいれん起こり、はげしき苦痛のあとはおおむね惛々こんこんとしてうわ言を発し、今日は昨日より、翌日あすは今日より、衰弱いよいよ加わりつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
飯「そんな事が出来るものか、翌日あす結納を取交とりかわす積りだ、向うでも来月初旬に婚礼を致す積りだ」
「おい、ここに一円二十銭ある、足りなかったら翌日あすの晩だ」と、云って急いで戸外そとへ出た。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
祭りの夜は田町の姉のもとへ使を吩附いひつけられて、くるまで我家へ帰らざりければ、筆やの騒ぎは夢にも知らず、翌日あすになりて丑松文次その外の口よりこれこれであつたと伝へらるるに
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
奈何いかなる事情わけ訊問たずねしに、昨夜廿一二にじゅういちにのこうこう云う当家こなたのお弟子が見えて、翌日あす仏事があるから十五軒前折詰おりづめにして、もって来てくれとあつらえられましたと話され、家内中顔を見合せて驚き
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
そして月琴を彈く者もあれば、明笛みんてきを吹く者もあり、姉妹がまた其がいけたので、やかましい合奏は十一時十二時まで續いた。母親はこツそり其の騒をけて翌日あすの米の心配に來たことも往々ま/\あツた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
御長座あるとも少しも厭はず、暮六ツからは芝居の御戻り、御遠方の御方もあれば、御誂は五ツ迄、お待たせ申さず出揃はせ、四ツから先の帳合も、元直限りに出精なし、翌日あすの仕込に九ツ八ツ
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
けれどただ、ばばも年齢としだけは如何いかんとも仕方がない。伊皿子まで往復した疲れに、今夜は腰が痛いというのだ。——そこで小次郎のとぎの刀を取りに行くのは差控え、翌日あすの夜を待つことになった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きょうの日も棒ふり虫よ翌日あすも又
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「気の毒だけども、家のほうに少しいることがあって、翌日あす行くのにぜひ持って行かなけりゃならないんだが……月給はまだ当分おりまいし、困ってるんだが、どうだろう、少しつごうしてもらうわけにはいかないだろうか。月給がおりると、すぐ返すけれど」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
書認かきしたゝめ有ける故夫なら翌日あすまたこれもたせて取に上ますが田舍者ゐなかもの兎角とかく迷路まごつきやすき故下谷と云てもわからぬことが有つて間取ひまどるから大屋さんの名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一所に交際つきあってくれたら、翌日あすとは言わず帰り次第藤沢(宿場女郎の居る処)をおごってやるが、と言えば四人よつたり顔見合わせ
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「朝ならば夜の前に死ぬと思え。夜ならば翌日あすありと頼むな。覚悟をこそとうとべ。見苦しき死にざまぞ恥の極みなる……」
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「駕籠の戸を笹尾が早う閉じたので、わらわだけは目を痛めなんだ。したが、皆の者、今宵は早う眠るが好い、左様致したなら翌日あすは治ろう。う一畑の薬師如来を信仰せよ」
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
いや、貴女でなくては不可いかんのです。ですから途方に暮れます。その者は、それにもう死にかかった病人で、翌日あすも待たないという容体なんです。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三五郎は否々いや/\何にしても此度は是非共ぜひともかしくれよ翌日あすにも仕合しあはせよければ返すべしとて何分承知せざれば段右衞門も心中に思ふやう彼奴かやつが身に惡事のあるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
翌日あすとも云わずこれから出掛けようと勇猛精進ゆうもうしょうじんの大決心を起して台所まで飛んで出たが「待てよ」と考えた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今日か翌日あすかと日和を見ていた。
備前天一坊 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
(晩の飯を内で食って、翌日あすの飯をまた内で食わないか、酒井の籠で飼ってやろう、隼。)と、それから親鳥の声を真似まねて、今でもさえずる独逸語だ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この間から米国の艦隊が四そう来ているんで、毎日いろいろな事をして遊ばせるのだが、翌日あすの晩は舞踏会をやるはずになっているから出て見ろと是公ぜこうが勧めた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
沢は此方こなた側伝かわづたひ、鍵屋の店をなぞを見る心持ここち差覗さしのぞきながら、一度素通すどおりに、霧の中を、翌日あす行く方へ歩行あるいて見た。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
次男ラヴェンは健気けなげに見ゆる若者にてあるを、アーサー王のもよおしにかかる晴の仕合に参り合わせずば、騎士の身の口惜しかるべし。ただ君が栗毛のひづめのあとにし連れよ。翌日あす
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
且つ寂しく、翌日あすの朝は結う筈の後れ毛さえ、眉をかすめてはらはらと、白き牡丹の花片に心の影のたたずまえる。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お前のに綺麗な衣服を、姉様と二人で縫い上げて、翌日あすは着せてあげようと楽みにして寝た晩から、あの邪慳じゃけんな得三に、こうされたのはよく御存じでないかい。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わざと迷児まいごになんぞおなり遊ばして、うござります、翌日あすは暗い内から婆々が店頭みせさきに張番をして、芸妓げいこさんとでも腕車くるまで通って御覧じゃい、おのぞみの蛸の足を放りつけて上げますに。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どこかへ行って酒を飲まして、ちょいと例の毒薬を飲ましゃあ訳は無い、酔って寝たようになって、翌日あすの朝はこの世をおさらばだ。「かしこまりました。しかし今時青楼おちゃやで起きていましょうか。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
翌日あすのが無いと言われるより、どんなに辛かったか知れません。お民さん。
女客 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
根ッから早やきつねでなければ乗せ得そうにもないやつじゃが、そこはおらが口じゃ、うまく仲人なこうどして、二月ふたつき三月みつきはお嬢様じょうさまがご不自由のねえように、翌日あすはものにしてうんとここへかつぎ込みます。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ツからきつねでなければさうにもないやつぢやが、其処そこはおらがくちぢや、うまく仲人なかうどして、二つきや三つきはお嬢様ぢやうさま御不自由ごふんじよのねえやうに、翌日あすはものにして沢山うん此処こゝかつんます。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)