砂利じやり)” の例文
なるほど銀行家の家邸いへやしきを買つたと云ふだけあつて、御影石みかげいしの門柱には、鉄格子の扉がついて、玄関まで砂利じやりが敷きつめてある。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
それでからもう砂利じやりでもはりでもあれとつちへこすりつけて、とうあまりもひる死骸しがいひツくりかへしたうへから、五六けんむかふへんで身顫みぶるひをして突立つツたつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちやうどその時、車輪の音と、馬のひづめの地を蹴る音とが、砂利じやりの上から聞えて來た。驛傳馬車えきばしやが近づいて來るのであつた。
見るに浪人大橋文右衞門繩付なはつきまゝひかへ居る其外繩取役なはとりやく同心等嚴重に詰合つめあひけり又正面には大岡越前守殿出座有て砂利じやりあひだに屑屋一同平伏なし居るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かういへば、白洲しらす砂利じやりを掴んでまでも、徳松の無實を言ひ立てようといふ、勇氣のある篤志家とくしかは容易に出ないでせう。
おきみは、宿の主婦の膝元へひれ伏して、もう五六日泊めておいてくれと願つたが、主婦は、砂利じやりのやうな言葉を吐いて、おきみの頼みをはねつけた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
砂利じやりや瓦や川土かはつちを積み上げた物蔭にはきまつて牛飯ぎうめしやすゐとんの露店が出てゐる。時には氷屋も荷をおろしてゐる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
つきのないさかのぼつて、瓦斯燈ガスとうらされた砂利じやりらしながら潛戸くゞりどけたときかれ今夜こんや此所こゝ安井やすゐやう萬一まんいちはまづおこらないだらうと度胸どきようゑた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それから横手よこてさかはうかゝつてると、るわ/\、打石斧だせきふが、宛然ちやうど砂利じやりいたやう散布さんぷしてる。
本所会館の隣にあるのは建築中の同愛どうあい病院である。高い鉄のやぐらだの、何階建かのコンクリイトの壁だの、こと砂利じやりを運ぶ人夫にんぷだのは確かに僕を威圧するものだつた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
周三は、何と云ふ譯もなく此の音と響とを聞き分けて見やうと思ツて、じつと耳を澄ましてゐると、其の遠い音と響とを消圧けをして、近く、邸内の馬車廻ばしやまはし砂利じやりきしむ馬車のわだちの音がする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ごろ/\した荒い砂利じやりを敷いた新道しんだうを拔けると、自分の二番目の母になりさうなお時の家の横へ出た。古びた大きな藁葺の家の棟には、烏が何處からか物を銜へて來て、頻りについばんでゐた。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
しらぱつくれちやいけねえ。此處で口を開かなきア、お白洲しらす砂利じやりつかませるばかりだ。穩便に願つて身を退く方が、お前さんの爲ぢやないかね」
何心なにごころなく、まばゆがつて、すツとぼ/\、御覽ごらんとほ高足駄たかあしだ歩行あるいてると、ばらり/\、カチリてツちや砂利じやりげてるのが、はなれたところからもわかりましたよ。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
門をくぐると砂利じやりが敷いてあつて、その又砂利の上には庭樹の落葉が紛々ふんぷんとして乱れてゐる。
漱石山房の秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
にぎりてひかへたる其中にも彼丁山小夜衣の兩人はアツといひて砂利じやり鰭伏ひれふし戰慄ふるひわなゝき居たりけり長庵はをぎり/\と噛締かみしめ汝等一同確乎たしかに聞け汝等おのれらは揃ひも揃ひし鈍愚たはけなるに其の智慧ちゑたらざるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こいしの多い砂利じやりが軋つて私のゐるのを悟られぬやうに、私は芝生しばふの縁を歩いた。彼は私が通らなくてはならない處から一ヤードか二ヤード離れた花床の中に立つてゐた。確かにあの蛾が彼を惹きつけたのだ。
「をかしなやつ一人ひとり此方側こちらがは土塀どべいまへに、砂利じやりうへしやがみましてね、とほるものを待構まちかまへてるんです。」
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、あざのある人間を搜すのと違つて、痣も何んにもない人間を搜すとなると、砂利じやりの中から石を一つ選り出すやうで、まるつきり見當が付かなくなつて了ひます。
銭形平次捕物控:124 唖娘 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
門をくぐると砂利じやりが敷いてあつて、その又砂利の上には庭樹の落葉が紛々ふんぷんとして乱れてゐる。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
取り大岡殿へ差出せしかば大岡殿此久兵衞は浪人らうにん文右衞門がかねかゝあひの者なればとて直樣すぐさま白洲へ呼出され調べにこそはかゝられけれれば久兵衞は繩付なはつきまゝ砂利じやりうへ蹲踞うづくまるに大岡殿是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と同時に、馬車が砂利じやり道をきしませて歸つて來る音が聽こえた。
いゝえ御婦人ごふじんかぎつたことはありますまいとも。……げんわたくし迷惑めいわくをしたんですから……だれだつて見境みさかひはないんでせう。其奴そいつ砂利じやりつかんで滅茶々々めちや/\擲附ぶツつけるんです。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かぎも何にもない物置の中に、砂利じやりを詰めた千兩箱が三つ、ガラクタと一緒に投げ込まれてあつたのです。
着物きものまをすまでもなし、つち砂利じやり松脂まつやにあめぼう等分とうぶんぜて天日てんぴかわかしたものにほかならず。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「此處で千兩箱の中の小判を砂利じやりに詰め替へたといふんですかい、親分」
門辺かどべにありたる多くのども我が姿を見ると、一斉いつせいに、アレさらはれものの、気狂きちがいの、狐つきを見よやといふいふ、砂利じやり小砂利こじやりをつかみて投げつくるは不断ふだん親しかりし朋達ともだちなり。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
よしんばどんな證據があつたにしたところで、お吉さんにお白洲しらす砂利じやりを噛ませて、笹野の旦那の破滅はめつにはしたくねえ。解つたかい、石原の。お願げえだから、その繩を解いて俺に渡してくれ。
こいつが皆な大粒の砂利じやりになつてゐたといふから驚くぢやありませんか
「お前が五貫目もある竹筒を擔ぎ出したのでないことは、この平次がよく分つて居るが、お白洲しらす砂利じやりの上ではそんな辯解いひわけは通らねえぞ。さアお角、小判を何處から出した。此處でいふか、それとも」
中は砂利じやり古金屑ふるかなくづ、——山吹色の小判などは一枚もありません。