男女ふたり)” の例文
いいえ、一人じゃございません、二人でやりました、姦通同士の男女ふたりがやりました。ごらんなさいまし、あの通り、もう一つの穴を
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
男女ふたりの話こそ聞えなかったが、それだけの事実でも、範宴がいかに巧みな偽瞞者ぎまんしゃであるかは分るじゃないか。あいつにだまされてはいかん
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて、段々と様子をおきゝに成りますと、引立ひきたてられようと致した男女ふたりは品川の和国楼から逃亡した花里と伊之吉でございます。
そのためでもあろうか、この平和な屋敷町の往来を行き交う人は男女ふたり以外にはいなかった。二人の歩く靴の音だけが、規則正しく響いている。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しばらくして、男女ふたりは、台石のいわともに二丈六尺と称するその大銅像の下を、一寸ぐらいに歩行あるいていた。あわれに小さい。
お島は長いあいだ養父母の体を揉んでから、やっと寝床につくことが出来たが、お茶屋の奥の間での、刺戟しげきの強い今日の男女ふたりの光景を思浮べつつ、じきすこやかな眠に陥ちて了った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
男女ふたりぬすみ笑いをした。ジャンは注意していたので早くもそれを見て取った。そして彼は何か物をいいそうにしたが、そのまま黙って首をうな垂れて自分の持場の方へ歩いて行った。
麦畑 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
僕は千葉へ出張して、家では『黒手組』騒動が持上っているのも知らないで、只管ひたすら甘い恋に酔っている男女ふたりを、一晩かかって口説くどいたものだよ。あんまり感心した役目じゃなかったがね。
黒手組 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
側には節子が針仕事する手を休めて、同じように箪笥にりかかり、同じように白足袋しろたびはいた足を延ばし、丁度並んだ男女ふたりの順礼のように二人して通り越して来た小さな歴史を思い出し顔であった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
男女ふたりはじっと顔を見合せた。そして男が云った。
湖水と彼等 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「あれ。……いやらしい」と、婆は仰山ぎょうさんに、男女ふたりを見くらべて、「まさかと思っていたら、なんてことなさるんですよ。人のうちでさ!」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
直ぐ書生さんにお命じなされ、兎も角もと門外の男もまた男女ふたり引立ひったてようといたす若いものも共にお呼込みに相成りました。
で元気よく三脚を片付け旅宿やどへ帰えろうとかけますと、其時まで観ていた男女ふたりの者から呼び止められたのでございます。
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わしかしこまつててるとひざをついたツきりうしてもかほげて其処そこ男女ふたりることが出来できぬ、なにむねがキヤキヤして、はら/\と落涙らくるゐした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お花を連出すときも、男女ふたりの遊び場所は矢張やはり同じお茶屋であったが、お島はお花と一緒に、浅草へ遊びにやって貰ったりした。お島はお花とくるまで上野の方から浅草へ出て往った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お豊の実家で娘の姿が見えぬとて、親たちもお豊の婿むこになるべき人も血眼ちまなこになって、八方へ飛ばした人が、関と坂下へ来た時分には、男女ふたりの姿は土山つちやまにも石部いしべにも見えませんでした。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
真白できれいだった卓子テーブル掛は薄よごれて、半ば片づけられた食卓には、盛花もりばながしおれ、皺くちゃなナフキンが床にちらばっていた。今、最後の男女ふたりづれの客が出て行くところであった。
孤独 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
今だ! と直覚したので、男女ふたりがそれへ目がけて疾風のように駆け出した時は、すでにその逃げ口にも、危機のワナが懸っていました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私はかしこまって聞き果てると、膝に手をついたッきりどうしても顔を上げてそこな男女ふたりを見ることが出来ぬ、何か胸がキヤキヤして、はらはらと落涙らくるいした。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
粋な、静かな、金雀子街の、その穏かな月光の道を、体を寄せ合った男女ふたりの者が、今、ひそやかに通って行く。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
仕様がねえから男女ふたりで身い投げておっんでしまおうとか、林の中へ入って首でもくゝるべえというような、途方もねえかんげえを起して、とんでもねえ間違まちげえが出来るかも知んねえ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お豊は真三郎と一夜を語り明かし、どう相談がまとまったものか、その翌朝は二挺の駕籠を並べて、亀山へは帰らずに、ちょうど竜之助が大津へ着いた頃、男女ふたりは鈴鹿峠のうえを越えたものでありました。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
失明した男女ふたり体内みうちも今はそのような闇であった。
暗中の接吻 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
一本のやぶれ傘の中で、男女ふたりは、笑い顔をながめ合って歩いた。雷光いなびかりが、絶えず、白い雨を見せて、睫毛まつげのさきにひらめいていた。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渋江典膳とお浦とが背後手うしろでくくられ、高くはりに釣り下げられてい、その下に立った五郎蔵一家の用心棒の、望月角右衛門が、木刀で、男女ふたりを撲っているではないか。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
極端きよくたんにたとへれば、天鵞絨びろうど寢臺しんだいたてにして、男女ふたりところを、廣告びら持歩行もちあるいたと大差たいさはない。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まだ、清麿がそこにいた頃、ちらと、男女ふたりにうわさが立つとすぐ、苦労人の清音は、穏やかに、彼女を家元へ帰してしまったものである。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるにこの時、人の足音が、忽然として聞こえて来たので、男女ふたりの問答ははたと絶えた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
第一だいいち色氣いろけがあつてはゞからず、親不孝おやふかうかへりみざるともがらは、男女ふたり相乘あひのりをしたものである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「船の出る潮時しおどきまでは後一とき(今の二時間)ほどしかない。その間にとくと見定めておきたいが、どこじゃ、その男女ふたりが隠れた部屋は?」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男女ふたりが前後して総曲輪そうがわへ出て、この町の角を横切って、往来ゆききの早い人中にまじって見えなくなると、小児こどもがまた四五人一団になってあらわれたが、ばらばらとけて来て、左右に分れて
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ森々たる山気を通してどうどうと流れる木曽川の水が岩にかれてむせぶばかり。他には何んの物音もない。その陰々たる山懐中ふところで追いつ追われつ男女ふたりの者が、懸命に争っているのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
走り出して七、八間、あッと筒抜けの声が夕暗を流れたかと思うと、男女ふたりの姿は、地に張られていた一本の繩に諸足もろあしすくわれて
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あしがくれの大手おほてを、をんなけて、微吹そよふ朝風あさかぜにもらるゝ風情ふぜいで、をとこふらつくとゝもにふらついてりてた。……しこれでこゑがないと、男女ふたり陽炎かげらふあらはす、最初さいしよ姿すがたであらうもれぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、男女ふたりへ声をかけた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
甘いすすり泣きに一ときしいんとなったかと思うと、あまりにも早いうちに、ろうのどこかで衆僧の呼ぶ声がここの男女ふたりを驚かせた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ枯野かれのの霧の黄昏たそがれに、つゆの命の男女ふたりなり
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
会田屋へ入った男女ふたりの客が、裏口からでも立った時には早速知らせてくれと、念入りに手を廻して、さて、やっと、旅装を解いたのである。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、どこまでも、このまま男女ふたりを会わせぬ方が万全の策と心得たものでしょう、旨をふくませてふたたび伝吉を町の方へ見張にやりました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と三、四人、血煙の立った所へ、砂を蹴ってとんでくると、すばやく、周馬は位置をかわして、かえって、それを追ってきた男女ふたりの虚無僧に
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お蔦と手をる際に立ち会って、その後また、男女ふたりがああなったから、俺に怒る筋はあるが、八十三郎へは何でだろう?」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、亀次郎が、あの夜ついに、導引の梅賀の家を借りて、灯もない一間へ、若い男女ふたりを置き放しにして帰ってしまった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どっちからいい出したともなく、宵にふと、ここを出た男女ふたりは、祭の賑わいをわざとけて、大川の岸をあるいていた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わしにも、落度があった。国助の心ばえも、今夜はよう分ったゆえ、男女ふたりの望みにまかせましょう。——そして萱乃」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「じょ、じょうだんだろ、武大ぶださんよ。おめえが首をくくれば、よろこぶのは男女ふたりじゃないか。そんなことお止しよ。おらが力になってやるからさ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、追えば追うほど、いよいよ先の男女ふたりが、後もみずに逃げだす様子なので、初めの怪しみは、的確に、それと思いこむようになってしまった。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御法ごほうによって男女ふたりとも、生きながらのさらし者となり、ふぐったむくいとはいえ、浮名うきなというには、あまりにもひどい人の目や指にとり巻かれている。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『これ楠平。若党の分際ぶんざいで、いらざる事に出洒張でしゃばるな。もう御城下を出奔したからには、男女ふたりの恋は命がけ、ここは二人が、恋に勝つか死ぬかの峠だ』
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここへ泊った素姓の知れない男女ふたりは、翌朝、部屋の者が眼をさました時分には、もうどこかへ立ち去っていて、誰も知らないくらいであったという話。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここへ逃げこんだ男女ふたりがてッきりそれと思われるし、善七の方にしてみれば、そう疑ってくる三人組の侍が、ますます道中稼ぎの浪人者とみてとれる。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)