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獣
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けだもの
ふりがな文庫
“
獣
(
けだもの
)” の例文
旧字:
獸
儀右衛門はそこでハッとなり、鋭い苦痛を思って、
慄
(
ふる
)
え
戦
(
おのの
)
いた。彼は夜具に触れる
衣擦
(
きぬず
)
れにも、
獣
(
けだもの
)
めいた熱っぽさを覚えるのだった。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
自然界では、鳥、
獣
(
けだもの
)
、虫けらの果てにいたるまで、毎日、無量の殺し合いをしているが、かつて刑罰を受けたということを聞かない。
うすゆき抄
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
いたずらものの野鼠は真二つになって落ち、ぬたくる蛇は
寸断
(
ずたずた
)
になって
蠢
(
うごめ
)
くほどで、虫、
獣
(
けだもの
)
も、今は恐れて、床、天井を損わない。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それとも、この穴蔵には、何かの
獣
(
けだもの
)
が飼ってあって、そいつが、飢えた牙をむいて、ソロソロと餌物に近づいて来るのではあるまいか。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「見苦しいのは、あなたという人間の行いではありませんか。あんな
牝
(
めす
)
の
獣
(
けだもの
)
のような
白粉
(
おしろい
)
の女たちを、五人も六人も飼いちらして」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
「それはお前達の
棲
(
す
)
む世の中の、人も
獣
(
けだもの
)
も木も草も、鳥も虫もみんなそこから生れて、またかならずそこへ帰って行く国なのだ」
トシオの見たもの
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
が、あんな
獣
(
けだもの
)
のような
卑
(
いや
)
しい男を、
懲
(
こら
)
すために、お前の一身を犠牲にしては、黄金を
土塊
(
つちくれ
)
と交換するほど、
馬鹿
(
ばか
)
々々しいことじゃないか。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
森の中で死ねば、体は
獣
(
けだもの
)
に食はれてしまふ。跡には日に曝されて、骨が残るばかりです。無論みじめな世渡と云はなくてはなりますまいよ。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
「
真実
(
ほんと
)
に、宗蔵の奴は困り者だよ。人間だからああして生きていられるんだ。これがもし
獣
(
けだもの
)
で御覧、あんな奴は
疾
(
とっく
)
に食われて
了
(
しま
)
ってるんだ」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そうして立派に死ぬんだと思った。最後に半時もこんな
獣
(
けだもの
)
を相手にしていられるものかと思った。そこで、自分は初さんに向って、簡単に
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ところが、その毛唐のタヌキ野郎に
非道
(
ひど
)
い目に合わされたお話なんで……
獣
(
けだもの
)
だけに悪智恵にかけちゃ日本人は
敵
(
かな
)
いませんや。
人間腸詰
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「どういう訳かわしは知らぬが、夜の
暗
(
やみ
)
が襲うてくるごとに、満知姫様にはごようすが変わり、
獣
(
けだもの
)
のようになられるそうだ」
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私共
(
わたしども
)
両人を世に出したいばかりで、
非業
(
ひごう
)
な死をさせたのも、
私
(
わたくし
)
が
酷
(
ひど
)
く頼んだから心得違いをしたのだろう、あなた何うして人と
獣
(
けだもの
)
と見違えました
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「恐竜は、ばかな
獣
(
けだもの
)
なのです。ちっともこわくありませんよ。ネリはおとうさんといっしょに行くんだから、大丈夫です」
恐竜島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
曲馬と動物園を一緒にしたようなもので、
種々
(
いろいろ
)
珍しい
獣
(
けだもの
)
が来るんだ。
乃公
(
おれ
)
も
余程
(
よっぽど
)
学問が出来るようになったと見えて曲馬の広告が半分ぐらい読める。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
それが、
陥穽
(
おとしあな
)
だ。罠だ、或は逃避所だ。人は
獣
(
けだもの
)
を真似て、
四匍
(
よつば
)
いで競争する……公然と。なぜなら、それが人情だから。そしてそれが商売となっている。
操守
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
獣
(
けだもの
)
の足跡が一めんについているので、そんな上なら大丈夫かとおもって、足を踏みこむと、その下が
藪
(
やぶ
)
になっていたりして、飛んだ目に逢ったりしました。
雪の上の足跡
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
薄黒いデコボコの連山は、さながら勇躍せる鉄の
獣
(
けだもの
)
の背にも似て、あとへあとへと
行
(
ゆ
)
くようにも見えた。それでもわたしは
船脚
(
ふなあし
)
がのろくさくさえ思われた。
村芝居
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
その間
獣
(
けだもの
)
は自由行動を取つてゐたと云ふのだね。これは只の想像で、僕にだつてきつとさうだとは思はれないから、人に同じ想像を強ひることは出来ない。
病院横町の殺人犯
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
この上妹まで、
獣
(
けだもの
)
の
餌食
(
えじき
)
にしたくないばかり、——今晩が過ぎたら、何とかなるだろうと思う
浅墓
(
あさはか
)
な考えから、突くともなしに、後ろから突いてしまいました
銭形平次捕物控:069 金の鯉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
遂々
(
とうとう
)
猪が飛出しました。猪は
全
(
まった
)
く
勇
(
いさま
)
しい
獣
(
けだもの
)
でした。猪はほんとうにやっていって火をつけてしまいました。
赤い蝋燭
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
海
(
うみ
)
の
中
(
なか
)
にすんでいる
獣
(
けだもの
)
の
牙
(
きば
)
や、
金色
(
きんいろ
)
をした
鳥
(
とり
)
の
卵
(
たまご
)
や、
香水
(
こうすい
)
の
取
(
と
)
れる
草
(
くさ
)
や、
夜
(
よる
)
になるといい
声
(
こえ
)
を
出
(
だ
)
して、
唄
(
うた
)
をうたう
貝
(
かい
)
などがあるということを
聞
(
き
)
いていましたから
一本の銀の針
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その牛馬一
匹
(
ぴき
)
々々の
玩具
(
おもちゃ
)
のような小ささ、でもさすがに、
獣
(
けだもの
)
の生々しい毛皮の色が、今も眼にあります。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
何を飼う事にしたかと云えば、それ、あの妙な
獣
(
けだもの
)
で——動物園に沢山いる——何と云いましたかね、——ええとよく芝居をやる——ね、諸君も知っているでしょう。
毛利先生
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あたしがお前さんのお父ッあんの
胤
(
たね
)
でないとは、誰も保証できないじゃないか。
獣
(
けだもの
)
になるのは、いやさ
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
実朝
(
さねとも
)
の「
四方
(
よも
)
の
獣
(
けだもの
)
すらだにも」はやや理窟めきて聞ゆる「も」にて「老い行く
鷹
(
たか
)
の羽ばたきもせず」「あら鷹も君が
御鳥屋
(
みとや
)
に」の二つはややこれに似たる者に有之候。
あきまろに答ふ
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
この
獣
(
けだもの
)
のような男のハドソンは、ますます出しゃばるようになって来て、とうとうしまいには、ある日のこと僕の目の前で僕の父親に傲慢な乱暴なことを云ったんだ。
グロリア・スコット号
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
その美しい王女殿下を、どうです、
MR
(
ミスタ
)
・タチバナ、
暴戻
(
ぼうれい
)
な英国の官吏は臆面もなく恥ずかしめようとしたのです。
獣
(
けだもの
)
とも何とも評しようのない無礼極まる奴らです。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ここへ中央の勢力が入った以上、もう、あんな
貧民窟
(
ひんみんくつ
)
の
獣
(
けだもの
)
見
(
み
)
たいな生活は何人にも許されないんだ
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
と、いう叫びと共に、
憑
(
つ
)
かれた
獣
(
けだもの
)
のように、走り出した。真中の一人が、よろめいた。先頭のが、槍を片手でさし上げて、何か叫びながら、少し走ると、倒れてしまった。
近藤勇と科学
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
獣
(
けだもの
)
のような双手がまたエルマにかかった。それはクラネクの手であった。エルマはまた叫んだ。
警察署長
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
また、この戯曲の中で集団としての反革命的な労働者たちが、終始一貫、気のそろった
獣
(
けだもの
)
たちで、社会情勢の推移によって当然起る矛盾や動揺、分裂をちっとも示していない。
ソヴェト文壇の現状
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「
獣
(
けだもの
)
め、口先
計
(
ばかり
)
達者で、
腕力
(
ちから
)
も無けりゃ智慧もねエ、
様
(
ざま
)
ア見やがれ、オイ、閻魔ッ、今
頬桁
(
ほおげた
)
叩きやがった餓鬼共ア、グズグズ言わさず——見せしめの為だ——早速片付ちまいねエ」
監獄部屋
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
ただ一かけの鳥も
居
(
い
)
ず、どこにもやさしい
獣
(
けだもの
)
のかすかなけはいさえなかったのです。
インドラの網
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「そうだども、
不憫
(
ふびん
)
でねいか、
獣
(
けだもの
)
にでも見つかったら、食われてしまうでねいか?」
三人の百姓
(新字新仮名)
/
秋田雨雀
(著)
木
(
き
)
の葉にしても、草の葉にしても、
獣
(
けだもの
)
にしても、鳥にしても、
魚
(
うを
)
にしても、また昆虫にしても同じ事で、もしか
寸分
(
すんぶん
)
ちがはないといふ、これらの二つの物を見つける事が出来たなら
茶話:07 大正十四(一九二五)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
だがお前は
獣
(
けだもの
)
だ、悪い奴だ。旦那は生きている、お前は
斃
(
くたば
)
った獣だ。……神様は人間を創りなすった——生きるためによ。喜びもあり、淋しいこともあり、悲しいこともあるようによ。
追放されて
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
能
(
よ
)
く/\見ると、石の下から小い黒い
獣
(
けだもの
)
の足が二寸ばかり外へ出てゐました。
熊と猪
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
急に
獣
(
けだもの
)
のように
荒
(
あば
)
れ出して、わたしの体をおっかぶせてしまいましたから、わたしは声を立てることも、息をすることもできません、けれども、この悪い獣のような奴が誰だかということは
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
此奴が仕末におへねえ
娘
(
あま
)
つ
子
(
こ
)
で、
稚
(
ちひさ
)
い頃から、親も兄弟もなく、野原で育つた、丸で
獣
(
けだもの
)
といくらも変らねえと云ふ話で、何でも重右衛門(嫌疑者の名)が
飯綱原
(
いひつなはら
)
で始めて
春情
(
いゝこと
)
を教へたとか
言
(
いふ
)
んで
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
あたしこれでもなかなか親孝行な方だったんだけど、ここへ来ちゃ、もう
獣
(
けだもの
)
よ。それであたし悲しいには悲しかったけど、売られちゃって来てみたら、それが木村っていう日本人の競馬狂人なの。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
烈しい悲しみに打ち
拉
(
ひし
)
がれ、時には気が狂ってしまったのではあるまいかと思いながら、闇のなかに絶えず我が子の名を呼びつづけ、夜あるきをする
獣
(
けだもの
)
を怯えさせながら夜が明けるまで馳け𢌞った。
親ごころ
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
ああ、今こそあなたといふ人がよく分りました! あなたは
獣
(
けだもの
)
です。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:03 怖ろしき復讐
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
セイレノスを載せた、耳の長い
獣
(
けだもの
)
が締まりのない大声で叫びます。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
それからまた、博物館にはいろんな
獣
(
けだもの
)
の剥製もあります。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
おほきなる白き
獣
(
けだもの
)
ちひさなる
獣
(
けだもの
)
を食ふところを彫りぬ
つゆじも
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
それはね、男の人は、皆
獣
(
けだもの
)
だからなのよ。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
「堪忍して下さいな、貴方をばけものだと思った私は、
浅間
(
あさま
)
しい
獣
(
けだもの
)
です、畜生です、犬です、犬に
噛
(
か
)
まれたとお思いになって。」
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その妖虫が、犬かなんぞの
獣
(
けだもの
)
の様に、ハッハッと呼吸しているのだという、変てこな考えに、彼はワナワナと震え出す程の恐怖を感じた。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
よし、貴女が俺を人間として扱って下さらないなら、俺は
獣
(
けだもの
)
として、貴女に向って行くのじゃ。俺は獣のように、貴女に迫って行くのじゃ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
獣
常用漢字
中学
部首:⽝
16画
“獣”を含む語句
禽獣
鳥獣
膃肭獣
野獣
獣類
獣皮
獣肉
獣肉屋
獣物
怪獣
一角獣
人面獣心
雷獣
麝香獣
海獣
獣狩
半獣神
猛獣狩
獣心
若悪獣囲繞
...