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灯
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とも
ふりがな文庫
“
灯
(
とも
)” の例文
旧字:
燈
父は家人の騒ぐのを制して、
袴
(
はかま
)
を
穿
(
は
)
きそれから羽織を
著
(
き
)
た。それから
弓張
(
ゆみはり
)
を
灯
(
とも
)
し、仏壇のまへに据わつて電報をひらいたさうである。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
平次はお
越
(
ゑつ
)
の後姿が廊下に消えると、踏臺を戸棚の前に持つて行き、
硫黄附木
(
いわうつけぎ
)
を一枚
灯
(
とも
)
して、念入りに戸棚の上を調べ始めました。
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
その幹深く枝々を
透
(
すか
)
して、ぼーッと
煤
(
すす
)
色に
浸
(
にじ
)
んだ燈は、影のように障子を映して、其処に
行燈
(
あんどう
)
の
灯
(
とも
)
れたのが遠くから認められた。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
聟どのの家から大事に消えぬように持って来た
脂燭
(
ししょく
)
の
灯
(
ともし
)
を、すぐ婚家の
婢
(
ひ
)
が、その家の脂燭に移し
灯
(
とも
)
して、奥へかけこんでゆく。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
五年ほど前の夏には避暑客でごったかえしていた片貝の銀座も、いまは
電燈
(
でんとう
)
一つ
灯
(
とも
)
っていない。まっくらである。犬の
遠吠
(
とおぼえ
)
も、へんに
凄
(
すご
)
い。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
目を天地自然の
森羅万象
(
しんらばんしょう
)
に映してその心の沈潜するのを待って、そうしてあるかないかの一点の火がその心の底に
灯
(
とも
)
り始めて
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
これに反してお庭の隅の
常春藤
(
きづた
)
に蔽われたバンガロー風の小舎には
燈火
(
ともしび
)
がアカアカと
灯
(
とも
)
って、しきりに人影が動いている。
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
乱軍の中に気を失った
李陵
(
りりょう
)
が
獣脂
(
じゅうし
)
を
灯
(
とも
)
し
獣糞
(
じゅうふん
)
を
焚
(
た
)
いた
単于
(
ぜんう
)
の
帳房
(
ちょうぼう
)
の中で目を覚ましたとき、
咄嗟
(
とっさ
)
に彼は心を決めた。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
秋の日の暮れかかる
灯
(
ひ
)
ともし
頃
(
ごろ
)
、奈良の古都の街はずれに、
骨董
(
こっとう
)
など売る道具市が立ち、店々の暗い軒には、はや宵の
燈火
(
あかり
)
が淡く
灯
(
とも
)
っているのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
スウィッチを入れると数十の電燈が一度に
灯
(
とも
)
ると同じように、この植物のどこかに不思議なスウィッチがあって
烏瓜の花と蛾
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
竹やが、やっとこさ蝋燭を
灯
(
とも
)
して、念のため、廊下の隅っこにあった引込線のスイッチを照らして見ますと、どうしてでしょう、その蓋が開いています。
偽悪病患者
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
で、その部屋で
灯
(
とも
)
されている、燈火の光が塗り骨障子の、障子の紙を赤黄色く染め、中庭の一部を明るめていた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そういう家の前を離れると、すぐ傍が黒い蔵であったり、木口のよい板塀であったりして、
天水桶
(
てんすいおけ
)
や、金網をかけた
常夜燈
(
じょうやとう
)
が
灯
(
とも
)
っていたように覚えている。
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
本郷通りの並木の影に街灯が
灯
(
とも
)
った。相変らず白痴のような表情した帝大の学生や、
小癪
(
こしゃく
)
な
面
(
つら
)
構えをした洋装の小娘が、私に逆らうようにして通り過ぎる。
風宴
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
芯だけになった時いったん消してその後時間を隔てて
灯
(
とも
)
したとすると、あいにく今度は鉄芯が冷却している。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
廊下に
灯
(
とも
)
す
金行灯
(
かなあんどん
)
=
二尺
(
にしゃく
)
四方もある
鉄網
(
てつあみ
)
作りの行灯を何十台も作り、その
外
(
ほか
)
提灯
(
ちょうちん
)
、
手燭
(
てしょく
)
、ボンボリ、
蝋燭
(
ろうそく
)
等に至るまで一切
取揃
(
とりそろ
)
えて船に
積込
(
つみこ
)
んだその趣向は
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
どう考えても
途
(
みち
)
がない。私はまた家に帰った。日はとっぷりと暮れて、家の中にはランプが
灯
(
とも
)
っていた。茶の間ではみんなが声高に話しながら食事をしていた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
小さい見すぼらしい灰褐色のみで造られたような家——に、なお灰色の釣らんぷが卵黄のようにぼやけて
灯
(
とも
)
れ、その影が歪んだ窓さきから白い砂の上に落ちていた。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
其の狹い區域にも霧の色が
濃
(
こまやか
)
に見える……由三は死滅の境にでも踏込むだやうな感がして、ブラ下げてゐた肖像畫を隅ツこの方に
抛
(
ほふ
)
り出した。そして洋燈を
灯
(
とも
)
した。
昔の女
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「ソフィイは子供部屋にアデェルと眠つてゐはしない?」と私が蝋燭を
灯
(
とも
)
してゐると彼が
訊
(
たづ
)
ねた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
室の真中からたった一つの電燈が、落葉が
蜘蛛
(
くも
)
の網にでもひっかかったようにボンヤリ下って、
灯
(
とも
)
っていた。リノリュームが
膏薬
(
こうやく
)
のように床板の上へ所々へ
貼
(
は
)
りついていた。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
……柵の傍に立つてゐる細い電柱の上の外燈と、もう一本の列車のための信号燈がポカリと
灯
(
とも
)
る。光は少し斜めに丘の上までを照す。……照し出された香代は既に泣いてゐない。
地熱
(新字旧仮名)
/
三好十郎
(著)
しかし、あたりが暗くなるにつれて群集は刻一刻と増して来て、街燈がすっかり
灯
(
とも
)
るころには、二つの込合った途切れることのない人間の潮流が、戸の外をしきりに流れていた。
群集の人
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
樺には新らしい柔らかな葉がいっぱいについていゝかをりがそこら中いっぱい、空にはもう天の川がしらしらと渡り星はいちめんふるへたりゆれたり
灯
(
とも
)
ったり消えたりしてゐました。
土神と狐
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
自分の咳ばらひだけで人の気はひもない島の崖ぶちにラムプを
灯
(
とも
)
したりしてゐるのであつたが、さて、たつたひとりで、杖でも曳いてあちらこちらを歩いて見ようかといふ段になると
痩身記
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
更けて自分は袖の両方の角を
摘
(
つま
)
んで、腕を斜に挙げて
灯
(
とも
)
し火の前に釣るす。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
母屋
(
おもや
)
からは一段と、河原の中に突出ている離座敷には、人の
気勢
(
けはい
)
もなかった。ただほんのりと
灯
(
とも
)
っている、
絹行燈
(
きぬあんどん
)
の光の裡に、美しい調度などが、春の夜に
適
(
ふさわ
)
しい
艶
(
なま
)
めいた静けさを保っていた。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
自転車の前の、ランプが
灯
(
とも
)
つた。——おとなしさうな男である。
(七銭でバットを買つて)
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
あかあかとこの夜
灯
(
とも
)
さな亡き人もひたにさむきはおそれたまひき
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
枯木の枝に ああそれは
灯
(
とも
)
つてゐる 一つの歌 一つの
生命
(
いのち
)
閒花集
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
「なに。と、
灯
(
とも
)
しを消せばよいではないか」
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
灯
(
とも
)
っている灯は、いらっしゃるしるし
雨の玉川心中:01 太宰治との愛と死のノート
(新字新仮名)
/
山崎富栄
(著)
過ぎた日の思ひ出には火を
灯
(
とも
)
し
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
まだ仄暗いので、次の間にも禅尼のそばにも、結び燈台が
灯
(
とも
)
っていた。けれど朝の冷やかな大気は室に満ちていて、灯の色は白々していた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この騷ぎが一と片附きすると、ありつたけの
蝋燭
(
らふそく
)
を
灯
(
とも
)
して、舞臺の上へ固くなつた人達が期せずして平次に問ひかけました。
銭形平次捕物控:016 人魚の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と
矢声
(
やごえ
)
を懸けて、
潮
(
しお
)
を射て
駈
(
か
)
けるがごとく、水の声が聞きなさるる。と見ると、竜宮の
松火
(
たいまつ
)
を
灯
(
とも
)
したように、彼の
身体
(
からだ
)
がどんよりと光を放った。
海の使者
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は
呆然
(
ぼうぜん
)
と窓外の飛んで飛び去る風景を迎送している。指で窓ガラスに、人の横顔を落書して、やがて拭き消す。日が暮れて、車室の暗い豆電燈が、ぼっと
灯
(
とも
)
る。
鴎
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
灯
(
とも
)
し火がつけば下の方だけの大戸が下りて、出入口は、引き戸へ
潜
(
くぐ
)
り口のついたのが一枚おりている。
旧聞日本橋:24 鬼眼鏡と鉄屑ぶとり(続旧聞日本橋・その三)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
何もかも
緋色
(
ひいろ
)
ずくめにした部屋の中に大きな
蝋燭
(
ろうそく
)
をたった一本
灯
(
とも
)
して、そのまわりを、
身体
(
からだ
)
中にお化粧して、その上から
香油
(
においあぶら
)
をベトベトに塗った
素
(
す
)
っ
裸体
(
ぱだか
)
の男と女とが
支那米の袋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
高いドーム型の
茅屋根
(
かややね
)
をもち、床に小石を敷いた・四方の壁の明けっぱなしの建物だ。マターファの家も
流石
(
さすが
)
に立派だ。家の中は既に暗く、
椰子殻
(
やしがら
)
の灯が中央に
灯
(
とも
)
っていた。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
ジーッとすだく虫の声、萩の
下辺
(
したべ
)
から聞こえて来る。河東節は聞こえない。三味線の音も音を絶えた。中庭に
灯
(
とも
)
る石燈籠、明滅をする
燈
(
ひ
)
の光、蛾がパサパサとぶつかるらしい。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
最初私は彼女に氣が附かなかつた。またロチスター氏も同樣だつた。
洋燈
(
ランプ
)
が
灯
(
とも
)
された。時計は十二時を打たうとしてゐた。「早く濡れたものをお脱ぎなさい。」と彼は云つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
帰路は夕日を背負って走るので
武蔵野
(
むさしの
)
特有の雑木林の
聚落
(
しゅうらく
)
がその可能な最も美しい色彩で描き出されていた。到る処に
穂芒
(
ほすすき
)
が銀燭のごとく
灯
(
とも
)
ってこの天然の画廊を
点綴
(
てんてい
)
していた。
異質触媒作用
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
樺には新らしい
柔
(
やわ
)
らかな葉がいっぱいについていいかおりがそこら中いっぱい、空にはもう
天
(
あま
)
の
川
(
がわ
)
がしらしらと渡り星はいちめんふるえたりゆれたり
灯
(
とも
)
ったり消えたりしていました。
土神ときつね
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「有りがたう。このランプが僕の部屋に
灯
(
とも
)
つたら何んなにか嬉しいことだらう。」
歌へる日まで
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
かれがそういう界隈の家家の二階や下座敷の
灯
(
とも
)
れているのを眺めて居れば、かれ自身も何かしらそれらのものから、むずがゆい
聯想
(
れんそう
)
と、れいの時時おこる肉声のなまめかしい声音によって
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
(京四条河原夕涼みの体。これも夜分の景と変り、ちらりと火が
灯
(
とも
)
ります。首尾よう参りますれば、お名残惜しうはござりまするが、そういう様へのお暇乞い。何んよい細工で御座りましょうが。)
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
雪に来る河原鶸かと耳とめて碁石うちゐついまだ
灯
(
とも
)
さず
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
光なく昼
灯
(
とも
)
りたる春ともし
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
河豚汁
(
ふぐじる
)
の宿赤々と
灯
(
とも
)
しけり
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
灯
常用漢字
小4
部首:⽕
6画
“灯”を含む語句
提灯
灯火
灯明
鬼灯
小提灯
灯影
高張提灯
大提灯
弓張提灯
遠灯
紅提灯
鬼灯提灯
岐阜提灯
電灯
御灯
酸漿提灯
挑灯
灯花
行灯
瓦斯灯
...