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やっ
ふりがな文庫
“
漸
(
やっ
)” の例文
お鈴と二人で
漸
(
やっ
)
と
宥
(
なだ
)
めて、房吉から引離して、
蚊帳
(
かや
)
のなかへ納められた隠居が
鎮
(
しずま
)
ってからも、お島はじっとしてもいられなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
と利かない手を
漸
(
やっ
)
と突いてガックリ起上り、兄三藏の膝の上へ手を載せて兄の顔を見る眼に
溜
(
たま
)
る涙の雨はら/\と膝に
翻
(
こぼ
)
れるのを
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ガルールは二皿の料理を瞬く
隙
(
ひま
)
に平らげ、更になみなみと注いだ酒を飲み乾したが、それで
漸
(
やっ
)
と人心地がついたように、ほっと一息した。
ラ・ベル・フィユ号の奇妙な航海
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
毎年の元旦に玄関で
平突張
(
へいつくば
)
らせられた
忌々
(
いまいま
)
しさの
腹慰
(
はらい
)
せが
漸
(
やっ
)
とこさと出来て、
溜飲
(
りゅういん
)
が
下
(
さが
)
ったようなイイ気持がしたと
嬉
(
うれ
)
しがった。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
剰
(
あまつさ
)
え、最初は自分の名では出版さえ出来ずに、坪内さんの名を借りて、
漸
(
やっ
)
と本屋を納得させるような有様であったから、是れ取りも直さず
予が半生の懺悔
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
▼ もっと見る
些
(
ちっ
)
とでも涼しい心持に成りたくッて、其処等の木の葉の青いのを
熟
(
じっ
)
と視ていて、その目で海を見ると、
漸
(
やっ
)
と何うやら水らしい色に成ります。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
拠
(
よんどころ
)
なく、私も引受けて、歯医者に逢わせる御約束をしましたら、
漸
(
やっ
)
と、その時、火のように熱い御手が私から離れたようにこころづきました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そのうちに
漸
(
やっ
)
とはっきりと古い城かなんぞの中に自分だけで取り残されているような寂しさがひしひしと感ぜられて来た。
楡の家
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
と磯は腹の
空
(
す
)
いた訳と二円
外
(
ほか
)
前借が出来なかった
理由
(
わけ
)
を一遍に話して
了
(
しま
)
った。そして話し
了
(
おわ
)
ったころ
漸
(
やっ
)
と
箸
(
はし
)
を置いた。
竹の木戸
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
その女は昔し芸者をしていた頃人を殺した罪で、二十年
余
(
あまり
)
も
牢屋
(
ろうや
)
の中で暗い月日を送った
後
(
あと
)
、
漸
(
やっ
)
と世の中へ顔を出す事が出来るようになったのである。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
漸
(
やっ
)
と私を許してから三四分間経って此度は俯伏しになって、
静
(
そっ
)
と
他
(
ひと
)
の枕の上に、顔を以て来て載せて、半ば夢中のようになって、苦しい
呼吸
(
いき
)
をしていた。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
所がその家に
所謂
(
いわゆる
)
浮浪の徒が
暴込
(
あばれこ
)
んで、東条は裏口から逃出して
漸
(
やっ
)
と
助
(
たすか
)
ったと云うような
訳
(
わ
)
けで、いよ/\洋学者の身が
甚
(
はなは
)
だ
危
(
あやう
)
くなって来て油断がならぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
自分も死にかけている、和泉の人はもう
呼吸
(
いき
)
がなくなっているだろうと思ったが、生きられるものなら生きて見ようと
漸
(
やっ
)
とほのぼのとした希望が生じ出した。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
杉村は最初ナイフでその縄を
断
(
き
)
ろうとしたが、何を思ったのかそれを止めて、丹念に結び目を調べながら、十分間もかかって
漸
(
やっ
)
と解いた。中からは血だらけの男が現われた。
青い風呂敷包
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
私
(
わたくし
)
はますます
全身
(
ぜんしん
)
に
寒気
(
さむけ
)
を
感
(
かん
)
じ、
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
では
逃
(
に
)
げて
帰
(
かえ
)
りたい
位
(
くらい
)
に
思
(
おも
)
いましたが、それでもお
爺
(
じい
)
さんが一
向
(
こう
)
平気
(
へいき
)
でズンズン
足
(
あし
)
を
運
(
はこ
)
びますので、
漸
(
やっ
)
との
思
(
おも
)
いでついて
参
(
まい
)
りますと
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
一週間ほど考えさせてくれとのことで、
漸
(
やっ
)
と
一昨日
(
おととい
)
内諾の意を父に伝えた、善兵衛は大に歓んだ、初め新田の方に差支があれば何程かの持参金附で養子に
行
(
やっ
)
てもよいと先方からの
申條
(
もうしじょう
)
に大変乗気で
誘拐者
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
ひた走りに銀座の大通りまで走って、
漸
(
やっ
)
と息をついた事があった。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
山三郎ははて船が流れ着いたなと、
漸
(
やっ
)
と起上ってよく/\見ますと、松の根方の草のはえて居る砂原へ船は打上げられました。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
飯をすますと直ぐ、お島が通りの方にあるミシンの会社で一台註文して来た機械が、
明朝
(
あした
)
届いたとき、二人は
漸
(
やっ
)
と仕事に就くことができた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
やがて公園の門をぬけて、明るい
雑鬧
(
ざっとう
)
の中へ出ると、
漸
(
やっ
)
と倦怠をふり落したように思えたが、孤独の感じだけはどうすることも出来なかった。
孤独
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
今すこしで野たれ死するところであったのを、
漸
(
やっ
)
と目が覚めて心を
入替
(
いれけ
)
えてからは、へえ別の人のようになったと世間からも褒められている。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
が、
取留
(
とりと
)
めた格別な
咄
(
はなし
)
もそれほどの用事もないのにどうしてこう
頻繁
(
ひんぱん
)
に来るのか実は解らなかったが、一と月ばかり経ってから
漸
(
やっ
)
と用事が解った。
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
漸
(
やっ
)
と
茶店
(
ちゃや
)
に
辿着
(
たどりつ
)
くと、其の駕籠は
軒下
(
のきした
)
に建つて居たが、沢の腰を掛けた時、白い
毛布
(
けっと
)
に包まつた病人らしい
漢
(
おとこ
)
を乗せたが、ゆらりと
上
(
あが
)
つて、すた/\行く……
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
二階の女の姿が消えると間もなく、下の雨戸を開ける音がゴトゴトして、
建付
(
たてつけ
)
の
曲
(
ゆが
)
んだ戸が
漸
(
やっ
)
と開いた。
二少女
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
初は
甚
(
ひど
)
く
吃驚
(
びっくり
)
したが、
能
(
よ
)
く研究して見ると、なに、父の
鼾
(
いびき
)
なので、
漸
(
やっ
)
と安心して、其儘再び眠ろうとしたが、
壮
(
さかん
)
なゴウゴウスウスウが耳に附いて中々
眠付
(
ねつか
)
れない。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
こんな具合にして
漸
(
やっ
)
と東京に
落付
(
おちつ
)
いた健三は、物質的に見た自分の、
如何
(
いか
)
にも貧弱なのに気が付いた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お宮にそう言われて、
漸
(
やっ
)
と我れに返って、「うむ。何でもないさ!」と言って置いて、早速降りて行って、女中を小蔭に呼んで訳を話すと、女中は忽ち厭あな顔をして
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
大正末期までそれが続き、花枝夫人は佐藤に収入が
漸
(
やっ
)
とはいって来た頃、縁があったらわかい嫁さんでもお貰いなさいと、やさしい性分の女らしく、そう遺言して亡くなられた。
〈我が愛する詩人の伝記〉(補遺)
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
八月の半ば頃になって
溜
(
た
)
まっていた用事が片づいたので、
漸
(
やっ
)
との事でO村へ行けるようになった私と入れちがいにお前が前もって何も知らせずに東京へ帰って来てしまったことを知ったときは
楡の家
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
と腰障子を開けると
漸
(
やっ
)
と畳は五畳ばかり敷いてあって、
一間
(
いっけん
)
の
戸棚
(
とだな
)
があって、壁と
竈
(
へッつい
)
は余り
漆喰
(
じっくい
)
で繕って、商売手だけに綺麗に磨いてあります。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
恋人の
傍
(
そば
)
へ行って約束を果して来たと思うと、またがっかりして急に寒さと疲れを覚えて来た。歩くのが
漸
(
やっ
)
とであった。
碧眼
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
大杉がいよいよ帰朝するからと送金を打電した時に野枝が調達に奔走して七処借をして
漸
(
やっ
)
とこさと工面したという咄は大杉の帰朝前に聞いている。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
女達が
膳椀
(
ぜんわん
)
などの取出された台所へ出て行く時分に、
漸
(
やっ
)
と青柳の細君や髪結につれられて、お島は盃の席へ直された。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
さて、その事を話し出すと、それ、案の定、
天井睨
(
てんじょうにら
)
みの
上睡
(
うわねむ
)
りで、ト先ず
空惚
(
そらとぼ
)
けて、
漸
(
やっ
)
と気が付いた
顔色
(
がんしょく
)
で
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
父上
(
おとう
)
さんをお
伴
(
つ
)
れ申してのお願いで御座います。母上さん、
何卒
(
どうか
)
……お返しを願います、それでないと私が……」と
漸
(
やっ
)
との思で言いだした。母は直ぐ血相変て
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
まあ俺も出て来て見て、これで
漸
(
やっ
)
と安心した。おあきを兄さまに渡すまでは、俺の役目が済まないで。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
形容詞じゃなく、
真実
(
ほんと
)
に何か吐出しそうになった。だから急いで顔を
背
(
そむ
)
けて、足早に通り抜け、
漸
(
やっ
)
と小間物屋の開店だけは免れたが、このくらいにも神経的になっていた。
予が半生の懺悔
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
私のペンは早くからそこへ
辿
(
たど
)
りつきたがっているのを、
漸
(
やっ
)
との事で抑えつけているくらいです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして
漸
(
やっ
)
と顔を
擡
(
もた
)
げると、ひどく感動して声の出ない
掠
(
かす
)
れた声音で言った。
三階の家
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
そのうちに雨が
漸
(
やっ
)
との事で上って、はじめて秋らしい日が続き出した。何日も何日も濃い霧につつまれていた山々や遠くの雑木林が突然、私達の目の前にもう半ば黄ばみかけた姿を見せ出した。
楡の家
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
漸
(
やっ
)
とこさと乗込んでから顔を出すと、跡から追駈けて来た二葉亭は
柵
(
さく
)
の外に立って、例の
錆
(
さび
)
のある太い声で、「
芭蕉
(
ばしょう
)
さまのお連れで危ない処だった」
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
モッフは、その一人に
舵機
(
かじ
)
を渡しながら、
蔽
(
おっ
)
かぶせるようにくりかえしたので、
漸
(
やっ
)
と納得したらしかった。
ラ・ベル・フィユ号の奇妙な航海
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
ヤレまた落語の
前座
(
ぜんざ
)
が言いそうなことを、とヒヤリとして、
漸
(
やっ
)
と
瞳
(
ひとみ
)
を
定
(
さだ
)
めて見ると、
美女
(
たおやめ
)
は
刎飛
(
はねと
)
んだ
杖
(
ステッキ
)
を拾って、しなやかに両手でついて、
悠々
(
ゆうゆう
)
と立っている。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
又づきが𢌞って
漸
(
やっ
)
と江戸へ出て来て、通りかゝった山口屋の前で、
手前
(
てめえ
)
が提灯を
点
(
つ
)
けて出かける時に、主人が金を持っているから気を
注
(
つ
)
けて
往
(
い
)
けと云ったから
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「オヤ
何所
(
どこ
)
かお悪う御座いますか」と細川は
搾
(
しぼ
)
り
出
(
いだ
)
すような声で
漸
(
やっ
)
と言った。富岡老人一言も発しない、一間は
寂
(
せき
)
としている、細川は
呼吸
(
いき
)
も
塞
(
つま
)
るべく感じた。
暫
(
しばら
)
くすると
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
私がマゴマゴしていますと、お前は葉書を買う
金銭
(
おあし
)
も無いのかッて、母は泣いて
了
(
しま
)
いました……でも、その時百円出してくれました……それで、まあ
漸
(
やっ
)
と息を
吐
(
つ
)
いたんですよ
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
健三は
漸
(
やっ
)
と気が付いたように、細君の
膝
(
ひざ
)
の上に置かれた大きな模様のある
切地
(
きれじ
)
を眺めた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
標札を見れば
此家
(
ここ
)
に違いないから、
潜
(
くぐ
)
りを開けて中に入ると、直ぐもう其処が格子戸作りの上り口で、三度四度案内を乞うて
漸
(
やっ
)
と出て来たのを見れば、顔や手足の
腫起
(
むく
)
んだような若い女で
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
が
漸
(
やっ
)
と自分の番が来たかと思ったときには誰ももう居りませんでした。
「美しかれ、悲しかれ」:窪川稲子さんに
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
今朝になって
漸
(
やっ
)
と「赤い風船」の面白さを思い当てた。
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
漸
常用漢字
中学
部首:⽔
14画
“漸”を含む語句
漸々
漸次
漸〻
佳人意漸疎
東漸
漸進
漸時
漸減
西漸
無漸
浸漸
漸進論
漸源
漸移
漸綻
漸蔵主
漸近線
漸進的
漸次強音
漸遅
...