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氷柱
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つらら
ふりがな文庫
“
氷柱
(
つらら
)” の例文
踉
(
よろ
)
けながら、後ろへやった刀が、かつんと、鉢金に弾んだと思うと、鍔から三、四寸の所から、折れて、
氷柱
(
つらら
)
のように、すッ飛んだ。
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
北向の屋根の軒先から垂下る
氷柱
(
つらら
)
は二尺、三尺に及ぶ。身を包んで
屋外
(
そと
)
を歩いていると
気息
(
いき
)
がかかって
外套
(
がいとう
)
の
襟
(
えり
)
の白くなるのを見る。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
すると小さい飛沫になって落ちる水は寒い空気に触れ、皆
氷柱
(
つらら
)
の形になって天井および中段の横木から垂れ遂には地上に達する。
話の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
もちろん
檣
(
マスト
)
には、どこの国の船だかを語る旗もあがっていず、太い帆げたも、たるんだ
帆綱
(
ほづな
)
もまるで綿でつつんだように
氷柱
(
つらら
)
がついている。
大空魔艦
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
見たこともない
氷柱
(
つらら
)
の
簾
(
すだれ
)
が
檐
(
のき
)
に下がっており、銀の
大蛇
(
おろち
)
のように朝の光線に輝いているのが、想像もしなかった偉観であった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
冷たい時期の間は、
鈍
(
おぞ
)
く寒い大気の中に、ありとあらゆるものは、端という端、尖という尖から、
氷柱
(
つらら
)
を涙のように垂らして黙り込んでいた。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
睨み合って凄い四ツの眼! 顔と顔との中央にあたって、交叉をなした二本の
氷柱
(
つらら
)
! 抜き身だ! 輝く! ブーッと殺気!
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
燃え下がった
蝋燭
(
ろうそく
)
の長く延びた
心
(
しん
)
が、上の
端
(
はし
)
は白くなり、その下は
朱色
(
しゅいろ
)
になって、
氷柱
(
つらら
)
のように垂れた蝋が下にはうずたかく
盛
(
も
)
り上がっている。
佐橋甚五郎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
崖の土が崩れて大きなうつろになつてゐる所には、七八寸の
氷柱
(
つらら
)
がいくつも下つてゐた。それでも山からの水はその崖を傳つてちよろちよろ流れてゐた。
続生活の探求
(旧字旧仮名)
/
島木健作
(著)
途中目についたのは、雪の深いことと地に達する
氷柱
(
つらら
)
のあつた事、凍れるビールを
暖炉
(
ストーブ
)
に解かし、鶏を割いての楽しき晩餐は、全く自分の心を温かにした。
雪中行:小樽より釧路まで
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
多くの小さな
氷柱
(
つらら
)
や、雪の小片が、倒れている彼の上に吹きつけて、黒い水兵着の上にきらきらと光っていた。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
振売の時、チリンチリンと鳴らすが、似ているからって、
風鐸
(
ふうりん
)
蕎麦と云うんだそうです。聞いても寒いわね。風鐸どころですか、荷の軒から
氷柱
(
つらら
)
が下って。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
法水は扉の横手にある水道栓に眼を止めたが、それからは、昨夜のうちに誰か水を出したと見えて、蛇口から
蚯蚓
(
みみず
)
のような
氷柱
(
つらら
)
が三、四本垂れ下っている。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
お秋さんが柴をくべますと、火は勢よく燃えあがつて、洞の上からさがつてゐる
氷柱
(
つらら
)
が赤くかゞやきました。
雪に埋れた話
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
それからしばらくたつとベルナアルさんは、髪や衣の裾に
氷柱
(
つらら
)
をつけて私の部屋へやって来るようになった。
葡萄蔓の束
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
やみに浮かぶ離室に
氷柱
(
つらら
)
の白花一時に咲ききそって、抜き連れた北国剣士のむれ、なだれをうって縁をとびおり、短剣の来た庭隅へ喚声をあげて殺到していた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
彼らは鷹の目、人の目の多い夏場よりも、むしろ立ち勝った元気で、吹雪も
氷柱
(
つらら
)
もものかわ、わが天地とばかり振る舞っているのは、
余所
(
よそ
)
の見る眼も小気味よい。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
大きな
柏
(
かしは
)
の木は枝も
埋
(
うづ
)
まるくらゐ立派な透きとほった
氷柱
(
つらら
)
を下げて重さうに
身体
(
からだ
)
を曲げて
居
(
を
)
りました。
雪渡り
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
またその頭には、ここかしこにぴかぴか光る
氷柱
(
つらら
)
の下がっている柊の花冠の外に、何一つ冠ってはいなかった。その暗褐色の捲毛は長くかつゆるやかに垂れていた。
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
氷柱
(
つらら
)
の結ぶ
崖下
(
がけした
)
の穴や、それから吹溜りに
蠢動
(
しゅんどう
)
する熊の背などが、心を
唆
(
そそ
)
るように眼にうかぶ……熊がどの穴からどの道を通るか、鹿はどっちからどの林へ追込むか
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
口から垂れている水液は、そのまま氷って、
氷柱
(
つらら
)
になって地べたにつながっていた。
外套
(
がいとう
)
の
袖
(
そで
)
や
裾
(
すそ
)
はもとより、頭髪も地べたに接している部分はかたく氷りついていた。
誰が何故彼を殺したか
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「アッ、見たまえ、鍾乳石だ。あの天井から白い
氷柱
(
つらら
)
みたいなものが、たくさんさがっている。」
妖怪博士
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
拉
(
らっ
)
し去られた、——私は堪らぬ義憤に駆られて、夢中で後を追いはじめたが忽ち両脚は
氷柱
(
つらら
)
の感で
竦
(
すく
)
みあがり、
空
(
むな
)
しくこの残酷なる処刑の有様を見逃さねばならなかった。
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
珍しく軒から、雪融けの水が、シズクになって、
氷柱
(
つらら
)
を伝って、ぽたぽたと落ちていた。
雪
(新字新仮名)
/
楠田匡介
(著)
折悪
(
おりあ
)
しく、そこへ
油単
(
ゆたん
)
の包みが破れて、その紙片が長く
氷柱
(
つらら
)
のようにブラ下がっていたのを、火の手が、
藤蔓
(
ふじづる
)
にとりついた猿のように捉えると、火は鼠花火の如く面白く走って
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
窓の下の方には雪が積んで細い
氷柱
(
つらら
)
が垂下がつてゐる。私は失望して踵をかへした。
カフエ・ミネルワ
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
足許を
瞰下
(
みおろ
)
すと、火口壁の周辺からは、蝋燭の融けてまた凝ったような
氷柱
(
つらら
)
が、組紐の如く、何本となく、尖端を鋭くして、舌のように垂れている、火口底は割合に、雪が多くない。
雪中富士登山記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
早や早やも土は
凝
(
こご
)
りて、岩角の犬羊歯が下、枯れ枯れの雑木の根ごと、そくそくと
氷柱
(
つらら
)
さがれり。ほきほきと
氷柱
(
つらら
)
掻き折り、かりかりと噛みもて行けば、あな
冷
(
つめ
)
た、つめたかりけり。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
如月
(
きさらぎ
)
は名ばかりで霜柱は心まで氷らせるように土をもちあげ、
軒端
(
のきば
)
に釣った
栗山桶
(
くりやまおけ
)
からは冷たそうな
氷柱
(
つらら
)
がさがっている。
崖
(
がけ
)
の
篠笹
(
しのざさ
)
にからむ草の赤い実をあさりながら
小禽
(
ことり
)
は
囀
(
さえず
)
っている。
豊竹呂昇
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
それでも睡魔の襲げきは
止
(
や
)
まなかった。すッと身体の支柱が取られて、いけない、いけないと口の中で喚いて横になっているのであった。穴の天井は、いつの間にか
氷柱
(
つらら
)
の林になっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
軒の下には、一尺あまりの
氷柱
(
つらら
)
がずらりと寒い色にぶら下り、またその下には、めしの中へ入れて食べるための大根の葉、もろこしの穂などが繩にしばられ、幾重にも釣り下げられてあった。
飢餓地帯を歩く:――東北農村惨状報告書――
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
と大きな声がきこえましたので、ビックリしてその方を見ますと、白い
鬚
(
ひげ
)
を生やして、白い着物を着て、白い帽子を冠って、長いすきとおった
氷柱
(
つらら
)
のような杖を持ったお爺さんが立っておりました。
先生の眼玉に
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
香倶土三鳥
(著)
雪解の水や滝の流れが凍って棒状になっても、それは
氷柱
(
つらら
)
であって、雪にはならない。凡てわれわれが普通に知っている氷は液状の水が凍ったものであるが、この種の氷は雪にはならないのである。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
拗
(
ねじ
)
けくねった木がその間に根を張り枝を拡げて、
逆茂木
(
さかもぎ
)
にも似ているが、それがなければ
到底
(
とて
)
も登れぬ場所がある。岩壁や木の根には諸所に
氷柱
(
つらら
)
が下っていた。雨の名残りの
雫
(
しずく
)
が凍ったものであろう。
皇海山紀行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
水車に
氷柱
(
つらら
)
のさがることも稀になつた。やがて鶯も鳴くであらう。
泉
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
軒から棒のような
氷柱
(
つらら
)
が下っていないと
嘘
(
うそ
)
のようでしてねエ。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
われにつらき悲しき君が影としも
氷柱
(
つらら
)
いだけば身の凍るらし
短歌
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
氷柱
(
つらら
)
をつけて歩いているのは馬ばかりではなかった。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
氷柱
(
つらら
)
を踏んで私たちが工場へ急ぐ時
明日はメーデー
(新字新仮名)
/
槙村浩
(著)
外
(
と
)
に立ちて
氷柱
(
つらら
)
の我が家
佗
(
わび
)
しと見
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
真紅のおれたちの血の
氷柱
(
つらら
)
凍土を噛む
(新字新仮名)
/
今野大力
(著)
軒の
氷柱
(
つらら
)
が伸びては太り
サガレンの浮浪者
(新字新仮名)
/
広海大治
(著)
承久
(
じょうきゅう
)
ノ乱で、この佐渡へ流され給うた
順徳
(
じゅんとく
)
上皇の
黒木
(
くろき
)
ノ
御所
(
ごしょ
)
やら、日蓮上人が
氷柱
(
つらら
)
の内に幽居した塚原ノ三
昧堂
(
まいどう
)
などへも、
詣
(
まい
)
ってみた。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
午後三時半には、比野町は全く一尺先も見えぬ漆黒の雲の中に包まれ、
氷柱
(
つらら
)
のように太い雨脚がドドドッと一時に落ちてきた。
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
雲ともつかぬ水蒸気の群は細線の群合のごとく寒い空に懸った。剣のように北側の軒から垂下る長い光った
氷柱
(
つらら
)
を眺めて、
漸
(
やっと
)
の思で夫婦は復た年を越した。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
怒号する声が一斉に湧き起こり、納屋が
鳴釜
(
なりかま
)
のように反響した。無数の
氷柱
(
つらら
)
が散乱するように見えたのは、乾児たちが脇差しを引っこ抜いたからであった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ぱッたり閉めて
引込
(
ひっこ
)
ました、何条
堪
(
たま
)
るべき、雫はその額から、耳から、
頤
(
あぎと
)
の辺から、まるで
氷柱
(
つらら
)
を植えたよう。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
凍った地面がバリバリ砕けて、下の雪水が容赦なくはねかかった。やがて、幾百と云う
氷柱
(
つらら
)
で
薄荷糖
(
はっかとう
)
のように飾り立った堂の全景が、
朧気
(
おぼろげ
)
に闇の中へ現われた。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
眼の前にぐいと五大力の
苫
(
とま
)
を
葺
(
ふ
)
いた
舳
(
へさき
)
が見え、厚く積った雪の両端から馬の首のように
氷柱
(
つらら
)
を下げている。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
大きな
柏
(
かしわ
)
の木は
枝
(
えだ
)
も
埋
(
うず
)
まるくらい立派な
透
(
す
)
きとおった
氷柱
(
つらら
)
を下げて重そうに
身体
(
からだ
)
を曲げて
居
(
お
)
りました。
雪渡り
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
“氷柱”の意味
《名詞》
つらら。
夏に涼をとるための氷の柱。
(出典:Wiktionary)
“氷柱”の解説
氷柱(つらら)は、建物の軒下や岩場などから棒状に伸びた氷。軒下などに水滴が垂れてできる氷の柱をさしている。
(出典:Wikipedia)
氷
常用漢字
小3
部首:⽔
5画
柱
常用漢字
小3
部首:⽊
9画
“氷”で始まる語句
氷
氷嚢
氷雨
氷室
氷川
氷山
氷罅
氷島
氷見
氷斧