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憐
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あわ
ふりがな文庫
“
憐
(
あわ
)” の例文
憐
(
あわ
)
れなことには、わたしはその後にもいろいろのことを見ているにもかかわらず、いまだに彼女を悪魔だと信じることができません。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
(おそらくはのたれ
死
(
じに
)
という終りを告げるのだろう。)その
憐
(
あわ
)
れな
最期
(
さいご
)
を今から予想して、この洋杖が傘入の中に立っているとする。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
兵部を
憐
(
あわ
)
れむような、むしろ、いたましいとでもいうふうに、ゆっくりと首を振り、それから疲れた人のように、深い太息をついた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
この点においては反感を買おうとも、
憐
(
あわ
)
れみを受けようとも、そこは僕がまだ至らないのだとして沈黙しているよりいたしかたがない。
片信
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
王子
(
おうじ
)
はこういう
憐
(
あわ
)
れな
有様
(
ありさま
)
で、
数年
(
すうねん
)
の
間
(
あいだ
)
、
当
(
あて
)
もなく
彷徨
(
さまよ
)
い
歩
(
ある
)
いた
後
(
のち
)
、とうとうラプンツェルが
棄
(
す
)
てられた
沙漠
(
さばく
)
までやって
来
(
き
)
ました。
ラプンツェル
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
▼ もっと見る
薫は
憐
(
あわ
)
れみも感じ、心の
惹
(
ひ
)
かれそうになることがあっても、何事も無常の人世なのであるからと冷静に考えては見ぬふりを続けた。
源氏物語:49 総角
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
しかし昔はそれがあったものと見えて、「紫の一もとゆえに武蔵野の、草はみながら
憐
(
あわ
)
れとぞ見る」という有名な歌が
遺
(
のこ
)
っている。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
憐
(
あわ
)
れむべし過度の
馳騖
(
ちぶ
)
に疲れ果てたる馬は、力なげに
俛
(
た
)
れたる首を
聯
(
なら
)
べて、
策
(
う
)
てども走れども、足は重りて地を離れかねたりき。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
記者は彼を指して不幸なる男よというのみ、その他を言うに忍びず、彼もまた自己を
憐
(
あわ
)
れみて、ややもすれば
曰
(
いわ
)
く、ああ不幸なる男よと。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「なにゆえに眼を開くのか? なにゆえに眼を覚ますのか? 地下に横たわってる
憐
(
あわ
)
れな友のように、このままじっとしていたい……。」
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
孤児
(
みなしご
)
は、
頑固
(
かたくな
)
なものと、沢庵は
憐
(
あわ
)
れにもなったが、その頑固な心の井戸はつねに冷たい
空虚
(
うつろ
)
をいだき、そして何かに
渇
(
かわ
)
いている。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
浜田は口をもぐもぐやらせて、何か云いそうにしましたけれど、矢張黙って、私の前に
憐
(
あわ
)
れみを
乞
(
こ
)
うかの
如
(
ごと
)
く、
項
(
うなじ
)
を垂れてしまいました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
夫人の整った美しい顔に
憐
(
あわ
)
れみを
乞
(
こ
)
うような
縋
(
すが
)
りつき
度
(
た
)
いような功利的な表情が浮んで、夫人の顔にはじめて生気を帯ばした。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
憐
(
あわ
)
れな清吉にとっては教師も遂に正義の味方ではなかった。——多数の方には動かすべからざる力があっても真理は弱者に存ずる場合がある。
蝋人形
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
イエス・キリストの乗り物であった驢馬にまたがることは、
憐
(
あわ
)
れな一牧師にとってははなはだ
不遜
(
ふそん
)
なことである、と諸君は思われるでしょう。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「お前は
憐
(
あわ
)
れな父親の手から、この女の子を盗んで来た。もし命が惜しかったら、
明日
(
あす
)
とも言わず今夜の内に、早速この女の子を返すが
好
(
よ
)
い」
アグニの神
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
全く自分の見て来たものも知らずにまだ前と同じ
良人
(
おっと
)
だと自分を思っている妻の芳江が、このとき何となく梶には
憐
(
あわ
)
れに見えてならなかった。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
余程旅慣れた姿の汚ない姿で、三十三番の
内美濃
(
うちみの
)
の
谷組
(
たにぐみ
)
の御詠歌を唄ってまいりましたが、巡礼の御詠歌を唄うは
憐
(
あわ
)
れなものでございまする。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お前は
渦巻
(
うずま
)
きつつ落ちて行く者どもを恐れと
憐
(
あわ
)
れみとをもって
眺
(
なが
)
めながら、自分も思い切って飛込もうか、どうしようかと
躊躇
(
ちゅうちょ
)
しているのだな。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
この
憐
(
あわ
)
れむべき学生、この
空
(
から
)
威張りの坊や、脚の曲った髯の男が、エルザのベッドの前にひざまずき、手を合わせて許しを
乞
(
こ
)
うている情景だった。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
あなたの考えていらっしゃるようなことはとても実行できる見込みはありません。あなたは私を
憐
(
あわ
)
れみ愛してください。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
必ず同情相
憐
(
あわ
)
れむの心をば生ぜずして、かえってこれを忌み嫌うの念を起こし、これを
悪
(
にく
)
んでその実に過ぐること多し。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ほの暗い谷
(3)
を歩みながら、私は世の人々の同情を——むしろ
憐
(
あわ
)
れみをと言いたいのであるが——切望している。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
何よりももっとも悪いのは、こういう金銭上の悩みや一家のなかの確執が、この
憐
(
あわ
)
れな男自身に及ぼした結果である。
ジョン・ブル
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
だが、それ以上突込んで聞くのも私には
業腹
(
ごうはら
)
だったし、私は自分の無能を
憐
(
あわ
)
れみ、自己嫌悪を感じて黙ってしまった。
火縄銃
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ただ願わくは上人のわが愚かしきを
憐
(
あわ
)
れみて我に命令たまわんことをと、九尺二枚の
唐襖
(
からかみ
)
に
金鳳銀凰
(
きんほうぎんおう
)
翔
(
かけ
)
り舞うその
箔
(
はく
)
模様の美しきも眼に止めずして
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
みやこに去られた方も、あなたさまのなかに秘められてあるという、愚鈍なわたくしの考えをお
憐
(
あわ
)
れみくださいませ。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
あなた様が
憐
(
あわ
)
れみて五十銭を恵み給いし小供は、悪性の
疱瘡
(
ほうそう
)
にかかり、一週間前に世を去りぬ、
今日
(
こんにち
)
はその
一七日
(
ひとなのか
)
なれば線香なりと
手向
(
たむ
)
けやらんと
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
弁信が
悄々
(
しおしお
)
として、それにつづいて来たけれど、伊太夫は、それを叱ることも、
憐
(
あわ
)
れむことも、なすいとまがなく
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
といって、また追憶を新たにする風であったが、私はそれよりも自分の目前の境遇の方がはるかに
憐
(
あわ
)
れであった。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
私はいかに小さくともあれだけ貧乏して来たからにはどんなに自分が
憐
(
あわ
)
れな貧乏人の子であったかを知っている。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
ただ寄り集って手を握り、
互
(
たがい
)
に人の悲しみを感じながら、
憐
(
あわ
)
れに沈黙する
外
(
ほか
)
はないのである。見よ。秋深き自然の
下
(
もと
)
に、見も知らぬ隣人が生活している。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
これはと思ったら、思い切った金をかけて、物惜しみなさらねえ……御自分も苦労なすった方でやすから、
憐
(
あわ
)
れみが深くて、実にようでけたお方でやす。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
兄は珊瑚のことを聞いて
憐
(
あわ
)
れに思って、
家
(
うち
)
へ連れて来て他へ嫁にやろうとした。珊瑚はどうしてもきかずに、姨の傍で女の手仕事をして
生計
(
くらし
)
をたてていた。
珊瑚
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
鎌倉幕府の記録である吾妻鏡天福元年五月二十七日の条には、聴くも
憐
(
あわ
)
れな補陀洛渡海の事件が載せてある。
本朝変態葬礼史
(新字新仮名)
/
中山太郎
(著)
先生は
徒
(
いたず
)
らに気合をかけても誰れ一人としてその気に打たれるものなき時まことにまた悲しくも
憐
(
あわ
)
れである。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
「我らが主君
御嶽冠者
(
みたけかじゃ
)
は仁義に厚き大将ゆえ、貴殿の妻女をよく
憐
(
あわ
)
れみ、陣の後方に侍女を付けて大切に住まわせており申す。
賓客
(
まれびと
)
あつかいにしてござるよ」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「
思惟
(
しい
)
の思惟」に依って
橄欖山
(
オリーブやま
)
を夢見る哲学者を
憐
(
あわ
)
れみ、ヂオヂゲネスの樽をおしている詩人を
軽蔑
(
けいべつ
)
し
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
小雨の中に肩をすぼめて
艙口
(
ハッチ
)
を降りて行く伊那少年の
背後
(
うしろ
)
姿は、世にもイジラシイ
憐
(
あわ
)
れなものであった。
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
憐
(
あわ
)
れであるから金を恵むというも、一円や二円の額ならその申し開きも受け取れるが、数千の金を出すにいま述ぶるがごとき申し訳けは取り上げがたいと
告
(
つ
)
げた。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
阿賀妻はだしぬけに一言そう云って、煙草盆の小さな
埋火
(
うずみび
)
をきせるの先で掻きだした。その
憐
(
あわ
)
れな火玉を、最後の握り飯にかじりついている甚助におしてやった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
彼はただキョロキョロして家の裏を駈け回り、己が影を
逐
(
お
)
いてまた立ち回り、「主はいずこに帰ってある」と、
憐
(
あわ
)
れのものよ彼はまだ夫の不幸に気づかであるなり
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
この憎むべき矢に
射貫
(
いぬ
)
かれた美しい暖い紅の胸を、この刺客の手に
仆
(
たお
)
れた
憐
(
あわ
)
れな柔かい小鳥の
骸
(
むくろ
)
を。
少年・春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
そうした彼らを見ていると彼らがどんなに日光を
恰
(
たの
)
しんでいるかが
憐
(
あわ
)
れなほど理解される。とにかく彼らが
嬉戯
(
きぎ
)
するような表情をするのは日なたのなかばかりである。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
大汗になって弁解する源吉を、平次は浅ましくも
憐
(
あわ
)
れに見て、それっきり引揚げてしまったのです。
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
稀
(
たま
)
には
憐
(
あわ
)
れな私の事を思い出して下さい。どうぞ、生甲斐のある人生をお送りになりますように。
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
書いたものもまた色も香も
艶
(
つや
)
も生気もない
萎
(
しお
)
れた花の
憐
(
あわ
)
れさを思わせるようなものばかりだった。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そうしてことに私のように、詩を作るということとそれに関聯した
憐
(
あわ
)
れなプライドのほかには、何の技能ももっていない者においていっそう強く
享
(
う
)
けねばならぬものであった。
弓町より
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
そのかたわらに見るから
憐
(
あわ
)
れをもよおすような、病みやつれた六十ばかりの
老爺
(
おやじ
)
、下草にべったりと両手をつき、
水洟
(
みずばな
)
をすすりながら、なにかクドクドとくり言をのべている。
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
いよいよ大原君がお代さんと婚礼したら大原君の身を
憐
(
あわ
)
れに思いあくまでも和女がお代さんを良夫人に仕立てて
進
(
あ
)
げて大原君の幸福を増さしめるように心掛けなければならん。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
憐
漢検準1級
部首:⼼
16画
“憐”を含む語句
可憐
憐憫
憐愍
哀憐
相憐
愛憐
御憐愍
御憐憫
御憐
憐々
紅顔可憐
眼見若為憐
可憐也
生類憐
生類御憐愍
未憐
最憐
憫憐
憐然
可憐児
...