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恰好
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かっこう
ふりがな文庫
“
恰好
(
かっこう
)” の例文
妾は案内された部屋に、レジオン・ド・ヌウルの勲一等の赤い略章をつけた肥大した肉体の
恰好
(
かっこう
)
の好い一人の老人を見出すのでした。
バルザックの寝巻姿
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
運動術としては男性が一番
旨
(
うま
)
いんだそうですが、私はあの女性が好きだ、好い
恰好
(
かっこう
)
をしているじゃありませんか。それに色彩が好い。
虚子君へ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ましてやこれは、場所がらといひ弁士の
恰好
(
かっこう
)
といひ、てつきり近頃はやりの新興宗教の宣伝にきまつてゐる。
尚更
(
なおさら
)
のこと興味がない。
ハビアン説法
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
両手を胸の前にブラリとさげ、未練と臆病と、卑劣と、人間のあらゆる弱点をさらけだしたみじめな
恰好
(
かっこう
)
で、そろそろと渡ってきた。
白雪姫
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
頭布
(
サッファ
)
が解かれると左から右分けにした房々と
恰好
(
かっこう
)
のいい頭髪があらわれて、少年は解いた頭布を私に示してからまた巻きに掛かった。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
▼ もっと見る
この蟹は
螯脚
(
こうきゃく
)
がむやみと大きく、それが小さい
甲羅
(
こうら
)
から二本ぬっと出ている姿は、まるで
団子
(
だんご
)
に
丸太
(
まるた
)
をつきさしたような
恰好
(
かっこう
)
である。
南画を描く話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
と云いながら、歩いて見たり、立ち止って見たり、砂の上へぐっと伸ばして見たりして、自分でもその
恰好
(
かっこう
)
を
嬉
(
うれ
)
しそうに眺めました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そんな
恰好
(
かっこう
)
をしているところを見られて一人で
羞
(
はずか
)
しがっている私を、しかし何とも思わないように、只なつかしそうに見上げながら
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
お迎いに飛び出した時と、おんなじ
恰好
(
かっこう
)
だ。あれからずっとこのまんまとすると、二人とも、おっそろしく根気のいいもんでげすなア
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
見
(
み
)
ればそこら
中
(
じゅう
)
が、きれいな
草地
(
くさち
)
で、そして
恰好
(
かっこう
)
の
良
(
よ
)
いさまざまの
樹草
(
じゅそう
)
……
松
(
まつ
)
、
梅
(
うめ
)
、
竹
(
たけ
)
、その
他
(
た
)
があちこちに
点綴
(
てんせつ
)
して
居
(
い
)
るのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
厭
(
いや
)
がる妻を紀昌は
叱
(
しか
)
りつけて、無理に機を織り続けさせた。来る日も来る日も
彼
(
かれ
)
はこの
可笑
(
おか
)
しな
恰好
(
かっこう
)
で、瞬きせざる修練を重ねる。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
西村は
鷹揚
(
おうよう
)
にうなずいて、封筒の中味を読み始めた。北川はそのうしろから、さも主人の身の上を気づかう
恰好
(
かっこう
)
で、手紙を
覗
(
のぞ
)
いている。
五階の窓:01 合作の一(発端)
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
御主人は、ジャンパーなど召して、何やらいさましい
恰好
(
かっこう
)
で玄関に出て来られたが、いままで縁の下に
蓆
(
むしろ
)
を敷いて居られたのだそうで
十二月八日
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
見るとその男は両手を高く
挙
(
あ
)
げて、こっちを向いておもしろい
恰好
(
かっこう
)
をしている。ふと、気がついて、頭に手をやると、
留針
(
ピン
)
がない。
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
柳吉はいささか
吃
(
ども
)
りで、物をいうとき上を向いてちょっと口をもぐもぐさせる、その
恰好
(
かっこう
)
がかねがね蝶子には
思慮
(
しりょ
)
あり気に見えていた。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
彼は慣れぬ腰つきのふらふらする
恰好
(
かっこう
)
を細君に笑われながら、肩の痛い担ぎ竿で下の往来側から樋の水を
酌
(
く
)
んでは、風呂を立てた。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
「よしてくれ。人間でもない、へんな
恰好
(
かっこう
)
をした鉄の
化物
(
ばけもの
)
のくせに、人間さまのやったことにけちをつけるなんて、なまいきだぞ」
超人間X号
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私は、何のことはない、ちょうど、
毛剃九右衛門
(
けぞりくえもん
)
の前に引き出された
小町屋宗七
(
こまちやそうしち
)
といったような
恰好
(
かっこう
)
で、その婆さんの前に手を突いて
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
敷居際へ、——炉端のようなおなじ
恰好
(
かっこう
)
に、ごろんと順に寝かして、三度ばかり、上から
掌
(
てのひら
)
で
俯向
(
うつむ
)
けに
撫
(
な
)
でたと思うと、もう楽なもの。
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
屍体はちょうど
跼
(
かが
)
んだような
恰好
(
かっこう
)
になり、傷口も床の滴血の上へ垂直に降りて、流血の状態に不自然な現象は現われなかったのだ。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
喧嘩
(
けんか
)
をするたびに、葉子が部屋を飛び出して行くことになっていたが、今庸三は自分で追ん出た形で、何か
恰好
(
かっこう
)
のつかない感じだった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
のそりとそこから出て来たのは、黒覆面、黒衣ながら、からだの
恰好
(
かっこう
)
で、一目に、平馬とわかる男——左右に二人の部下をつれている。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
ガラッ八の八五郎は、懐ろ手を襟から抜いて、虫歯が痛い——て
恰好
(
かっこう
)
に頬を押えながら、裏木戸を
膝
(
ひざ
)
で開けてノッソリと入って来ました。
銭形平次捕物控:111 火遁の術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
甲斐
(
かい
)
の国を遍歴している時、
某日
(
あるひ
)
唯
(
と
)
ある岩山の間で日が暮れた。そこで怪量は
恰好
(
かっこう
)
な場所を見つけて、
笈
(
おい
)
をおろして横になった。
轆轤首
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
水道道路のガード近くの
叢
(
くさむら
)
に、白い小犬の
死骸
(
しがい
)
がころがっていた。春さきの
陽
(
ひ
)
を受けて安らかにのびのびと
睡
(
ねむ
)
っているような
恰好
(
かっこう
)
だった。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
お互いの玄関まで、歩いて三分とかからない、まったく同じ
恰好
(
かっこう
)
の、まったく同じ大きさの家に、この二人はそれぞれ居住していました。
Sの背中
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
そこで不承不承のイヤイヤながらの事の
序
(
ついで
)
だといった
恰好
(
かっこう
)
で、その本の包装を引抜いて、気永く内容を読んでいるふりをしているんです。
悪魔祈祷書
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
どてらに、三尺帯か何か締めて、ふくらんだ
無頼者
(
ならずもの
)
みたいな
恰好
(
かっこう
)
をしているので、手先が、奉行所の白洲へ、しょッ曳いてゆくと、必ず
田崎草雲とその子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
周囲には厳重な
柵
(
さく
)
がめぐらされ、私はその間から、ちょうどお仕置を見物する昔の人のような
恰好
(
かっこう
)
で
眺
(
なが
)
めなければならなかった。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
お
出額
(
でこ
)
の
捲髪
(
カール
)
を光線の中に振り上げ振り上げ、
智慧
(
ちえ
)
のない
恰好
(
かっこう
)
で夢中に拍手しているのを、かの女は第一にはっきり見て取った。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
とにかく、こうして
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
をさして、ゆらりと江戸の浅草の駒形堂の前の土を踏んだ白雲の
恰好
(
かっこう
)
は、かなりの
見物
(
みもの
)
でありました。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
黄昏
(
ゆうがた
)
に、私は水汲をして手桶を提げながら門のところまで参りますと、四十
恰好
(
かっこう
)
の女が
格子前
(
こうしさき
)
に立っておりました。姿を視れば巡礼です。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
猫を飼う趣味にもいろいろあって、必ずしも同一標準に立つわけではないけれども、尾の長い方が見た
恰好
(
かっこう
)
もいいし、可愛らしくもある。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
蚤
(
はや
)
く
大聾
(
だいろう
)
となったので四、五十年前に聞いた事のみよく話す。由って俚言土俗に関して他所風の
雑
(
まじ
)
らぬ古伝を受くるに最も
恰好
(
かっこう
)
の人物だ。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
しかし、磯が険難で寄波が高く荒立っている上に、この動物の
恰好
(
かっこう
)
を見ては、私がその上陸所が厭になるのには十二分であった。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
のちにわかつたが、
死
(
し
)
の
原因
(
げんいん
)
は
青酸加里
(
せいさんかり
)
による
毒殺
(
どくさつ
)
だつた。
死体
(
したい
)
の
両手
(
りょうて
)
がつきのばされて、
鉢
(
はち
)
のふちに
掴
(
つか
)
みかかろうという
恰好
(
かっこう
)
をしている。
金魚は死んでいた
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
僕は時々幻のように僕の母とも姉ともつかない四十
恰好
(
かっこう
)
の女人が一人、どこかから僕の一生を見守っているように感じている。
点鬼簿
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あの死体の
恰好
(
かっこう
)
をよく研究してみりゃ、それだけでも被害者が五階から突き落とされたんじゃないってことは分かるんだがなあ
五階の窓:02 合作の二
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
この蛙は
緑色
(
みどりいろ
)
です。まるで青い木の葉のような
恰好
(
かっこう
)
をしています。そうして、そういう
恰好
(
かっこう
)
をしているので、なんだか
素晴
(
すば
)
らしくみえます。
母の話
(新字新仮名)
/
アナトール・フランス
(著)
もう一人の小さい方は、だぶだぶの合羽を着ているので、顔はよく見えなかったが、体の
恰好
(
かっこう
)
で、どうやら子供のようだった。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
言いながら、相手に見せる自分の身分証明書でも、さも取り出そうとするような
恰好
(
かっこう
)
で、のろのろとカバンをあけにかかると
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
するとこんどは、長く伸び出た鼻が、「鬼瓦」の鼻先までやってきて、ゆらゆらふらふらとおかしな
恰好
(
かっこう
)
で踊りだしました。
天狗笑
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
壁の方を向いて、だれの顔も見えない
恰好
(
かっこう
)
であったが、反応に耳をすましている様子は、毛布をかけてやっていた元子には痛いほどわかった。
日めくり
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
と一人の阿闍梨は言い、番人の翁を呼ぼうとすると
山響
(
やまびこ
)
の答えるのも無気味であった。翁は変な
恰好
(
かっこう
)
をし、顔をつき出すふうにして出て来た。
源氏物語:55 手習
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そして奴がまっすぐに町の中へ跳びこむと、その切株のような妙な
恰好
(
かっこう
)
をした舞踏靴だけでも少なからず怪しいと思われた。
鐘塔の悪魔
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
方角や歩数等から考えると、私が、汚れた
孔雀
(
くじゃく
)
のような
恰好
(
かっこう
)
で散歩していた、
先刻
(
さっき
)
の海岸通りの裏
辺
(
あた
)
りに当るように思えた。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
久松
(
ひさまつ
)
伯から貰った剣を杖づいて志士らしい
恰好
(
かっこう
)
をして写した写真が当時の居士を最もよく物語っているものではあるまいか。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
それが見たこともないような
恰好
(
かっこう
)
のものや、形や色で食慾をそそるようなものが多く、見るだけでも大したものであります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
しわりしわりと
瞬
(
またた
)
いている阿賀妻は、そんな
呆
(
とぼ
)
けたような
恰好
(
かっこう
)
で、その実自分にとっては周到な先の先まで思いめぐらし考案にふけっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
また、彼女はこの間一人の伯爵夫人と一人の華族様とを見たが、その貴公子は「ちょうどピータア位の
身丈
(
せい
)
恰好
(
かっこう
)
であった」
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
恰
漢検準1級
部首:⼼
9画
好
常用漢字
小4
部首:⼥
6画
“恰好”で始まる語句
恰好事