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干乾
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ひから
ふりがな文庫
“
干乾
(
ひから
)” の例文
彼女は赤ん坊のくなくなになった頸筋や、黄ばんで
干乾
(
ひから
)
びた皮膚を見ると、もはや自分の力ではこの子を育ててゆけないと思った。
小さきもの
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
井戸の
傍
(
わき
)
を通ると、釣瓶も釣瓶
繩
(
たば
)
も流しに手繰り上げてあツて、其がガラ/\と
干乾
(
ひから
)
びて、其處らに石
灰
(
ばい
)
が薄汚なくこびり付いてゐた。
昔の女
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
最も
干乾
(
ひから
)
びた心をもち、あらゆる詩趣や深い慰悦の情などに最も乏しくはあったが、クリストフの音楽から肉感的な魅惑を受けた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
これはうれしい。
肌
(
はだ
)
の細かな赤土が
泥濘
(
ぬか
)
りもせず
干乾
(
ひから
)
びもせず、ねっとりとして日の色を含んだ
景色
(
けしき
)
ほどありがたいものはない。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
乞食より
汚穢
(
きたな
)
い
婆々
(
ばばあ
)
です、さうして
塩茄子
(
しおなすび
)
のように
干乾
(
ひから
)
びておりますよ。おお、胸の悪い、私が今参りました時は死骸の懐中を
検
(
しら
)
べておりました。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
烏瓜の実の朱い色が凍み亘りその色が黒ずんでゆく、しまひに吊柿のやうな色になり
干乾
(
ひから
)
びて種が鳴るやうになる。
冬の庭
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
どこを歩いても昔の香が無い。三島が
色褪
(
いろあ
)
せたのではなくして、私の胸が老い
干乾
(
ひから
)
びてしまったせいかもしれない。
老ハイデルベルヒ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
露や土にまみれ、にじみ出た血しおは
漆
(
うるし
)
みたいに
干乾
(
ひから
)
びている。——あまつさえ、十数日を経ているので、異臭をもってきたことは、いうまでもない。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこからは落寞たる歓楽の絃歌が聞こえ、
干乾
(
ひから
)
びた寂しい笑ひ声が賑やかに洩れて来る。——それは普通
和蘭屋敷
(
オランダやしき
)
と呼ばれてゐる「出島の蘭館」である。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
干乾
(
ひから
)
びてコチコチになった、子熊ほどもある大猫の死骸だったのです。しかもそればかりではありません。
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
鶴見がなつかしがるのは、これがその正体である。明治八年三月十五日出生隼男と明記した包の中から
干乾
(
ひから
)
びて黒褐色を呈したものがあらわれる。
臍
(
へそ
)
の
緒
(
お
)
である。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
猊下
(
げいか
)
様、わたくしは自分の茶番がうまくいかないなと思うと、その瞬間は、両方の頬が下の
歯齦
(
はぐき
)
に
干乾
(
ひから
)
びついて、身うちがひきつってくるようなんでございますよ。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
私もなあ、この通り年は寄るし、弱くはなるし、
譬
(
たと
)
えて見るなら丁度
干乾
(
ひから
)
びた
烏瓜
(
からすうり
)
だ——その烏瓜が細い
生命
(
いのち
)
の
蔓
(
つる
)
をたよりにしてからに、お前という枝に懸っている。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その薄黒い、落ち窪んだ両眼は、老人のように白々と弱り込んで、唇が紙のように
干乾
(
ひから
)
びていた。
白菊
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
七月の中旬、午後からの曇り空が、降るともなく晴れるともなく、そのまま薄らいで
干乾
(
ひから
)
びてゆき、軽い風がぱったりと止んで、いやに蒸し暑い晩の、九時頃のことだった。
電車停留場
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
日が、トップリ暮れてしまった頃から、
嵐
(
あらし
)
は
益
(
ますます
)
吹き
募
(
つの
)
った。海は
頻
(
しき
)
りに
轟々
(
ごうごう
)
と
吼
(
ほ
)
え狂った。波は岸を超え、常には
干乾
(
ひから
)
びた砂地を走って、別荘の
土堤
(
どて
)
の根元まで押し寄せた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
というのは、何だかこう
干乾
(
ひから
)
びてしまったといった感じがするほど痩せ細っていて、ちょっと年格好の見当がつき兼ねたからであるが、よく見ると上品な細面の相当綺麗な顔立なのだ。
消えた霊媒女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
「別段学校へ入りたいということはありません」と、
干乾
(
ひから
)
びた
切口上
(
きりこうじょう
)
で答えた。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
二つの眼を四つに映し、顔の代りに煎餅みたいなものを見せてくれる鏡、それから最後に、聖像の後ろへ束にして差しこんである
香
(
にお
)
い草と
撫子
(
なでしこ
)
だが、こいつはすっかり
干乾
(
ひから
)
びているので
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
おれたちの
唇
(
くちびる
)
は
歓呼
(
くわんこ
)
の
声
(
こゑ
)
を
叫
(
さけ
)
ぶにはあまりに
干乾
(
ひから
)
びてゐる
生ける銃架:――満洲駐屯軍兵卒に――
(新字旧仮名)
/
槙村浩
(著)
あはれ、また、わが立つ
野辺
(
のべ
)
の草は皆色も
干乾
(
ひから
)
び
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「おっしゃるとおりかもしれませんわ。そしてまた、あまり苦しんでもいけませんわね。度が過ぎると、魂が
干乾
(
ひから
)
びてしまいますのね。」
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
年歯
(
とし
)
より早く老けた。年歯より早く
干乾
(
ひから
)
びた。そうして
色沢
(
いろつや
)
の悪い顔をしながら、死ににでも行く人のように働いた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただ、なんぼ
北京軍
(
ほっけいぐん
)
の総帥でも、この
干乾
(
ひから
)
びたご時勢に、年々十万貫もの財宝を、女房の
実家
(
さと
)
へ
貢
(
みつ
)
いでるってえなあ、たいした大泥棒でございますぜ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その眼には極度の衰弱と、極度の興奮とが、熱病患者のソレの如く血走り輝やいております。その唇には普通人に見る事の出来ない
緋色
(
ひいろ
)
が、病的に
干乾
(
ひから
)
び付いております。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
この問には、三吉は
酷
(
ひど
)
く
狼狽
(
ろうばい
)
したという様子をして、
咽喉
(
のど
)
へ
干乾
(
ひから
)
び付いたような声を出して
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
嬰児
(
あかんぼ
)
の
掌
(
てのひら
)
の形して、ふちのめくれた穴が開いた——その穴から、件の板敷を、向うの
反古張
(
ほごばり
)
の古壁へ
突当
(
つきあた
)
って、ぎりりと曲って、直角に
菎蒻色
(
こんにゃくいろ
)
の
干乾
(
ひから
)
びた階子壇……
十
(
とお
)
ばかり
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
干乾
(
ひから
)
びてはいたけれど、それでもこの顔はやはり美しかった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「風が吹けば浪が騷ぎ、汐が滿ちれば潟が隱れる。漁船は年々殖えて魚類は年々減りつゝあり。川から泥が流れ出て海は次第に淺くなる。幾百年の後にはこの小さい海は
干乾
(
ひから
)
びて、魚の
棲家
(
すみか
)
には草が生えるであらう。……」
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
背が高く、強壮で、その顔は、
顳顬
(
こめかみ
)
や額のほうは狭くて
痩
(
や
)
せ、下の方は広く長く、
頤
(
あご
)
の下が
脹
(
は
)
れていて、ちょうど
干乾
(
ひから
)
びた
梨
(
なし
)
のようだった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
槍の柄にも、具足にも、
干乾
(
ひから
)
びた血は、
漆
(
うるし
)
みたいに黒く光っている。——そして、どの顔もどの顔も、汗と
埃
(
ほこり
)
にまみれ、ただぎらぎらした眼のみが続いて行った。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうしてこの感情が遠からず単に
一片
(
いっぺん
)
の記憶と変化してしまいそうなのを
切
(
せつ
)
に恐れている。——好意の
干乾
(
ひから
)
びた社会に存在する自分をはなはだぎごちなく感ずるからである。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
嬰兒
(
あかんぼ
)
の
掌
(
てのひら
)
の
形
(
かたち
)
して、ふちのめくれた
穴
(
あな
)
が
開
(
あ
)
いた——
其
(
そ
)
の
穴
(
あな
)
から、
件
(
くだん
)
の
板敷
(
いたじき
)
を、
向
(
むか
)
うの
反古張
(
ほごばり
)
の
古壁
(
ふるかべ
)
へ
突當
(
つきあた
)
つて、ぎりゝと
曲
(
まが
)
つて、
直角
(
ちよくかく
)
に
菎蒻色
(
こんにやくいろ
)
の
干乾
(
ひから
)
びた
階子壇
(
はしごだん
)
……
十
(
とを
)
ばかり
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
怒った
振
(
ふり
)
も
気取
(
けど
)
られたくないと、物を言おうとすれば声は
干乾
(
ひから
)
びついたようになる、
痰
(
たん
)
も
咽喉
(
のど
)
へ引懸る。
故
(
わざ
)
と
咳
(
せき
)
払して、
可笑
(
おかし
)
くも無いことに
作笑
(
つくりわらい
)
して、猫を冠っておりました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ところがその悪酔いが次第に醒めかかって、呼吸が楽になって来るに連れて福太郎は、自分の眼の球の奥底に在る脳髄の中心が、カラカラに
干乾
(
ひから
)
びて行くような痛みを感じ初めた。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「風が吹けば浪が騒ぎ、潮が満ちれば潟が隠れる。漁船は年々殖えて魚類は年々減りつつあり。川から泥が流れでて海はしだいに浅くなる。幾百年の後にはこの小さな海は
干乾
(
ひから
)
びて、魚の
棲家
(
すみか
)
には草が生えるであろう。……」
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
そして今まで
干乾
(
ひから
)
びていたその植物は、ジェリコの
薔薇
(
ばら
)
は、突然花を開き、生長し、強烈な芳香を空中に充満させる。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
たれの呼吸も
奄々
(
えんえん
)
と見えぬはなかった。からだじゅうに
干乾
(
ひから
)
びた黒い血や生々と濡れ光ッている鮮血は負ッていたが、どこが痛いと知る感覚はなく、ただもうせつない。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうとは知りながら余は好意の
干乾
(
ひから
)
びた社会に存在する自分を
切
(
せつ
)
にぎごちなく感じた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
軒前
(
のきさき
)
に、不精たらしい
釣荵
(
つりしのぶ
)
がまだ
掛
(
かか
)
って、露も玉も
干乾
(
ひから
)
びて、蛙の干物のようなのが、化けて歌でも詠みはしないか、赤い短冊がついていて、しばしば雨風を
喰
(
くら
)
ったと見え、
摺切
(
すりき
)
れ加減に
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
子供の時分に私はよく
鼻液
(
はな
)
が出ました。それを兩方の袖口で拭きましたから何時でも私の着物には鼻液が
干乾
(
ひから
)
び着いて光つて居りました。そればかりでなく、着物の胸のあたりをも汚したものです。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
おのれの
干乾
(
ひから
)
びた身体とおのれのうちにある暗夜とを、ただいたずらにうちながめながら、地上に孤独のまま埋もれてる無益なる存在者こそ、
実
(
げ
)
にも不幸である。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
埃
(
ほこり
)
を立て、わらわら、ここへ群れてくる人々の眼には、一滴の水でもいい、何ものでもいい、心のやすみばを——心の息づきを——
干乾
(
ひから
)
びきった魂の
糧
(
かて
)
となるものならばと
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうして不思議にもそれが普通のありふれた作物のように、くだくだしくならないのです。いくら微細な心的現象の解剖でも、又は外観からくる人間の精密な描写でも、決して
干乾
(
ひから
)
びていません。
木下杢太郎『唐草表紙』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
李
(
すもも
)
でも色づかぬ
中
(
うち
)
は、実際
苺
(
いちご
)
と聞けば、
小蕪
(
こかぶ
)
のように
干乾
(
ひから
)
びた青い葉を束ねて売る、黄色な実だ、と思っている、こうした雪国では、
蒼空
(
あおぞら
)
の下に、白い日で暖く蒸す茱萸の実の、枝も
撓々
(
たわわ
)
な処など
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まさしくこのアンナはだれをも愛していないのだった。
祗虔主義
(
ピエティスム
)
のために
干乾
(
ひから
)
びてしまってるのだった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
騎馬と騎馬の上で、笑い合う声までが、
干乾
(
ひから
)
びて、
埃
(
ほこり
)
に
咽
(
む
)
せそうになる。
大谷刑部
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
余は好意の
干乾
(
ひから
)
びた社会に存在する自分をはなはだぎごちなく感じた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
けれども身をかがめて採掘しながら生を送って、そこからようやく出て来ると、身体は
干乾
(
ひから
)
び、背骨と
膝
(
ひざ
)
とは
硬
(
こわ
)
ばり、手足はゆがみ、夜の鳥のような眼になって視力が曇ってるのだった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
血の
干乾
(
ひから
)
びた
雛妓
(
おしゃく
)
の小指が、はいっていた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
干
常用漢字
小6
部首:⼲
3画
乾
常用漢字
中学
部首:⼄
11画
“干”で始まる語句
干
干戈
干潟
干物
干支
干瓢
干渉
干魚
干上
干鰯