山脈さんみゃく)” の例文
けものきばをならべるように、とお国境こっきょうほうからひかったたか山脈さんみゃくが、だんだんとひくくなって、しまいにながいすそをうみなかへ、ぼっしていました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
東の灰色はいいろ山脈さんみゃくの上を、つめたい風がふっと通って、大きなにじが、明るいゆめはしのようにやさしく空にあらわれました。
めくらぶどうと虹 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
余の書窓しょそうから西にながむる甲斐かい山脈さんみゃくして緑色近村きんそんの松のこずえに、何時の程からか紅白染分そめわけの旗がひるがえった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なお、はるかにあなたののはてには、一まつかすみのように白い河原かわらがみえる。あとは、西をあおいでも、北を見ても、うっすらした山脈さんみゃくのうねりが黙思もくししているのみだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんどのたびでは、リンデレード山脈さんみゃくれはてた山肌やまはだや、オーヴェスホルム荘園しょうえんや、クリスチャンスタッドの教会のとうや、ベッカ森の王家おうけ領地りょうちや、オップマンナ湖とヴェー湖のあいだのせまいみさき
そのなかの一まいは、のこぎりのはをたてたような、山脈さんみゃく姿すがたであって、もっともたかいいただきには、ゆきしろくのこっていました。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
山脈さんみゃくの雪はまっ白にえ、の前の野原はいろや茶のしまになってあちこちこされたはたけとびいろの四角しかくなきれをあてたように見えたりしました。
おきなぐさ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
少年しょうねんは、うみをながめていました。青黒あおぐろ水平線すいへいせんは、うねりうねっていました。それはちょうど、一れんとお山脈さんみゃくるようにおもわれたのです。
北の少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
山脈さんみゃくの雪も光の中で機嫌きげんよく空へわらっています。湧きます、湧きます。ふう、チュウリップの光のさけ。どうです。チュウリップの光の酒。ほめて下さい。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
たか山脈さんみゃくいただきは、あかるく雲切くもぎれがして、れてしまいました。一無事ぶじぎて、翌朝あくるあさになると、そらはいつものごとくあおれていました。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
五日の月が、西の山脈さんみゃくの上の黒い横雲よこぐもから、もう一ぺん顔を出して、山にしずむ前のほんのしばらくを、にぶなまりのような光で、そこらをいっぱいにしました。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
まさに、はくれようとしていました。そして、はるか西北せいほくの、だいだいいろそらに、むらさきいろをしたひとつづきの山脈さんみゃくが、あたまをならべていました。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
山脈さんみゃくわか白熊しろくま貴族きぞく屍体したいのようにしずかに白くよこたわり、遠くの遠くを、ひるまの風のなごりがヒュウとって通りました。それでもじつにしずかです。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
よっぽど西にその太陽たいようかたむいて、いま入ったばかりの雲の間から沢山たくさんの白い光のぼうげそれはむこうの山脈さんみゃくのあちこちにちてさびしい群青ぐんじょうわらいをします。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
また一ぽうは、はるかに、青黒あおぐろ山脈さんみゃくが、よくれたつきあかるいそらしたに、えんえんとつらなっていました。
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どうです、よくえませんか。あのくものようなのが、山脈さんみゃくで、ぼつ、ぼつが、噴火口ふんかこうのあとです。つき世界せかいには、みずがないから、生物せいぶつもいない。んだ世界せかいですよ。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
太陽たいようはいまはすっかり午睡ごすいのあとの光のもやをはらいましたので山脈さんみゃくも青くかがやき、さっきまで雲にまぎれてわからなかった雪の死火山しかざんもはっきり土耳古玉トルコだまのそらにきあがりました。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いしうえこしをおろして、前方ぜんぽうていると、ちょうど、があちらの山脈さんみゃくあいだはいりかかっています。金色こんじきにまぶしくふちどられたくもの一だんが、そのまえはしっていました。
手風琴 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はなつめたいきりにぬれて、しずくのしたたうつくしい、なやましげな姿すがたみずかることもなく、また、黄昏たそがれがた、たか山脈さんみゃくのかなたのうすあかるい雲切くもぎれのしたそらあこがれるかなしいおもいもなくなって
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
よるとなく、ひるとなく、ふか谷底たにそこからわきこるきりころがるように、たか山脈さんみゃく谷間たにまからはなれて、ふもとの高原こうげんを、あるときは、ゆるゆると、あるときは、あしで、なめつくしてゆくのでした。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)