小頭こがしら)” の例文
工業学校を出てからおよそ三年の間、この炭坑で正直一途に小頭こがしらの仕事を勤めて来たお蔭で、今では地の底の暗黒にスッカリ慣れ切って
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
両隊の兵卒一同は小頭こがしら池上弥三吉やさきち、大石甚吉を以て、両隊長に勤事控の見舞を言わせた。両隊長は長尾に申し出た趣意を配下にさとした。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
各職の下には、下請したうけがあり、小頭こがしらがあり、現場頭があって統率されていたが、要するに、それらの組々の名は、責任範囲の名称だった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
娘師むすめし邯鄲師かんたんし、源氏追い、四ツ師、置き引き、九官引き、攫浚付かっさらいつけたり天蓋てんがい引き、暗殺あんさつ組の女小頭こがしら、いろいろの商売を持っております」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あれは、玉井金五郎というて、このごろ、聯合組の小頭こがしらになった人です。私の店で、いつも、道具を買うてくれるんで、よう知っとる。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
しかのみならず百姓が中間ちゅうげんり、中間が小頭こがしらとなり、小頭の子が小役人と為れば、すなわち下等士族中にはずかしからぬ地位をむべし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これは仙台様へ人足を入れている堺屋小三郎の小頭こがしらで宇之吉という、しじゅう国許と江戸表とを往復している鳶の者だった。
徒士目付かちめつけ三人、書役かきやく一人ひとり、歩兵斥候三人、おのおの一人ずつの小者を連れて集まって来ている。足軽あしがる小頭こがしら肝煎きもいりの率いる十九人の組もいる。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
清八は取り敢ず御鷹匠小頭こがしらより、人を把るよしを言上ごんじょうしけるに、そは面白からん、明日みょうにち南の馬場ばばおもむき、茶坊主大場重玄おおばじゅうげんを把らせて見よと御沙汰ごさたあり。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「こっちにいるぜ、あにい」と栄二の問いかけに答える金太の声が聞えた、「久七小頭こがしらと与平さんもいっしょだ」
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
吉「今、わしどもが喰った弁当は宿屋から呉れましたか、それとも小頭こがしらか、いやさ相宿あいやどの者がくれたのですか」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それに此の工場は土着の者が多数で彼のやうな者が生涯辛抱するには工場の空気があまりに窮屈に作られてゐる事、小頭こがしらを初め厭な人間で満ち/\てゐる事
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
「どうも、小頭こがしらなんて、何十人という部下の先頭に立たねばなんなくて、どうも気忙きぜわしくて……」
或る部落の五つの話 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
度胸どきょうがいいので準幹部級の小頭こがしらとなって居た勇もまた、その例に漏れなかった。中には正業にくことの出来た聡明な者もあったが、大部分は路頭に迷う境涯に抛り出された。
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
折助の上には役割やくわり小頭こがしら部屋頭へやがしらというようなものがあって、それは折助の出入りをつかさどり、兼ねてその博奕ばくちのテラと折助の頭をねるが、これらは多少、親分肌の気合を持っている。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
見られしか暫時しばらくひかへよと申さるゝ時常盤橋ときはばし御門番松平近江守殿あふみのかみどの番頭ばんがしら夏目なつめ五郎右衞門より差出したる者兩人足輕小頭こがしら一人足輕あしがる六七人附そひ罷出しに其者共の風俗ふうぞく何れも棧留さんとめ綿入の上へ青梅のあはせ羽織を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
帝釈天たいしゃくてん綽名あだなのある谷口という小頭こがしらだ。
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
小頭こがしらの常サンは存八を覚えていて
女剣士 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
小頭こがしらが頭をふって怒りだした。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小頭こがしら雁六がんろくが、ピューッと口笛くちぶえを一つくと、上から、下から伊部熊蔵いのべくまぞうをはじめすべての者のかげが、ワラワラとそこへけあつまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時の福島方の立ち合いは、白洲しらす新五左衛門と原佐平太とで、騎馬組一列、小頭こがしら足軽一統、持ち運びの中間小者ちゅうげんこものなど数十人で関所を引き払った。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「同じ村の者で、安吉、大作、市太というですが、おらとはみんな幼な友達で、大作は小頭こがしらをしているですから」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
聯合組に、何人か、小頭こがしらちゅうのが居る。まあ、下請けみたいなもんじゃな。自分で、仲仕を抱えて、伝馬船、その他、道具一切を持って、現場の仕事をやるんです。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
加番は各物頭ものがしら五人、徒目付かちめつけ六人、平士ひらざむらひ九人、かち六人、小頭こがしら七人、足軽あしがる二百二十四人をひきゐて入城する。其内に小筒こづゝ六十ちやう弓二十はりがある。又棒突足軽ぼうつきあしがるが三十五人ゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
小頭こがしらは、佃久太夫つくだきうだいふ、山岸三十郎の二人で、佃組の船には白幟しろのぼり、山岸組の船には赤幟が立つてゐる。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「三宅島罪人小頭こがしら浪人浪島文治郎儀、流罪人扱い方宜しくかつ又当人島則を厳重に相守り候段、神妙の至りに付、思召を以て流罪赦免致すもの也」という赦免状をしたゝめまして
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
去年の冬の初めに饂飩屋から暇を取るとそのまま、貯金の通帳と一緒に、福太郎の自炊している小頭こがしら用の納屋に転がり込んで、無理からの押掛おしかけ女房になってしまったのであった。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
禿頭の老小頭こがしらが、見物人達の前へ来て何か得意らしい調子で話をしていた。
或る部落の五つの話 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
たまはり又忠八は足輕あしがる小頭こがしらとなりて兩家共代々だい/\岡山に繁昌はんじやうせしとぞまことに君君たる時はしん臣たりと云古語こゞの如く岡山侯賢君けんくんまします故に喜内不幸ふかうにしてぼくの爲にうたるゝと雖も其いもとまた勇婦ゆうふ有て仇をうち家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこへバタバタと飛び込んで来たのは、とびの鳥市という小頭こがしらである。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小頭こがしらの勇よ」
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
というと鉄砲組てっぽうぐみの中から五、六人、足軽あしがる十四、五人、山掘夫やまほり四、五人——小頭こがしら雁六がんろくも一しょについて、まだ朝露あさつゆのふかい谷底たにそこりていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
与平は二人の小頭こがしらとともに、義一とりゅうの傷をしらべながら、誰かさんてつ先生を呼んでくれ、と云った。先生は夜はいないよ、と二、三人が答えた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
聯合組は、大庭春吉、田中光徳、牧野藤三郎とうざぶろう、などの重役に、岡野松四郎、三崎清次郎、渡辺国明、金五郎、等の小頭こがしら連中、甲板デッキ番の新谷勝太郎、会計の松丸龍蔵、その他。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
同心支配は三人あるが、これは自分が出ることにし、小頭こがしらの与力二人には平与力ひらよりき蒲生熊次郎がまふくまじらう、本多為助ためすけを当て、同心三十人は自分と同役岡との組から十五人づゝすことにした。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そこへ周章あわただしくやって来たのは例の小頭こがしら鳥市である。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小頭こがしらどんがエライ事でしたなあ」
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
助け大功たいこう有し段神妙しんべうなり依て今より十人扶持ふち下され足輕あしがる小頭こがしら申付るなりと家老中より三人へ執達しつたつに及びければお花友次郎は云に及ばず忠八まで君恩くんおんかたじけなきに感涙かんるゐ止め敢ず何れも重々ぢう/\有難ありがたき段御うけ申上て引退しりぞき夫より友次郎は改めて松田の養子となり養家やうか名跡めいせき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ジッと見おろしていた伊部熊蔵いのべくまぞうが、こうさけんで待ちうけていると、そこへ小頭こがしら雁六がんろく、どうしたのかさおになって、いきをあえぎながらのぼってきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小頭こがしらでいちばん年長の伝七が世話役となり、外使いの者が鳥や魚を買って来た。それに寄場の勝手からねだった野菜と米とで、手早く二十五人分の膳を作った。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
討手うって手配てくばりが定められた。表門は側者頭そばものがしら竹内数馬長政たけのうちかずまながまさが指揮役をして、それに小頭こがしら添島九兵衛そえじまくへえ、同じく野村庄兵衛しょうべえがしたがっている。数馬は千百五十石で鉄砲組三十ちょうかしらである。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「何んの何んの手前如きはほんの小頭こがしらの一人でござる」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
使いに選ばれた小頭こがしらたちは、快馬をそろえて村口を離れるとすぐ、顔見合せてクスと笑いあったものである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一度は富田弥六という三十人組の小頭こがしらのことで、——家のほうは狭くて古いのが気にいらず、係りの役所へ捻込ねじこんだが、いま空家が無いのでしばらく辛抱して貰いたいということで我慢をした。
評釈勘忍記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
石曳きの小頭こがしらが、石のうえに上がって呶鳴った。監督の侍が、むちを持って陽除ひよけ小屋から出て来る。にわかに汗のにおいが大地にうごき、馬蠅うまばえまでわんわん立つ。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足軽三十人持の小頭こがしらといっては、まだその足軽よりすこししなくらいの生活でしかない。清洲きよす侍小路さむらいこうじの裏に、若い夫婦は、初めてささやかな家と鍋釜を持った。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小頭こがしらがいて、職工長室の指令をうけ取って来ると、「今日は、何号ドックの入渠船のペンキ塗り」とか「ひるから誰と誰はランチに乗って沖の外国船へ入渠用意に行け」
ところが、まだふもとへも出ないうちに、陳達の小頭こがしらや手下どもが、さんざんなていで逃げ走ってきた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
捕縄とりなわをとって三十年、目明めあか小頭こがしらの下役から、同心どうしん与力よりきと出世して、歴代の江戸町奉行をたすけ、その非凡な大眼識と巨腕は、近代稀れな鬼才と称された名探偵——塙隼人はなわはやとであった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と五、六人が起ちかけると、下の道から賊の小頭こがしらと数名が登ってきて
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)