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家並
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やなみ
ふりがな文庫
“
家並
(
やなみ
)” の例文
旧字:
家竝
徳之助とお富は、死ぬはずの身を忘れて、町の
家並
(
やなみ
)
に傾く桜月の薄明りの中に、江戸第一番の御用聞と言われた平次の顔を見直しました。
銭形平次捕物控:075 巾着切りの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
足がもつれるほど走りつづけて、ようやく岬の
家並
(
やなみ
)
を見たときには、松江のひざはがくがくふるえ、
肩
(
かた
)
と口とでいきをしていた。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
よしのがは、
下市
(
しもいち
)
ゆくと橋こえず、かなたはるかに
上市
(
かみいち
)
の、川ぞひ
家並
(
やなみ
)
絵とかすむ、車峠の大坂や、車にちりぬ、山ざくら花。
晶子詩篇全集拾遺
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
家並
(
やなみ
)
も小さく
疎
(
まばら
)
になって、どこの門ももう戸が閉っている。ドーと遠くから響いてくる音、始めは気にも留めなかったが、やがて海の音と分った。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
軒
(
のき
)
の
數
(
かず
)
、また
窓
(
まど
)
の
數
(
かず
)
、
店
(
みせ
)
の
數
(
かず
)
、
道
(
みち
)
も
段々
(
だん/\
)
に
上
(
のぼ
)
るやうで、
家並
(
やなみ
)
は、がつくりと
却
(
かへ
)
つて
低
(
ひく
)
い。
軒
(
のき
)
は
俯向
(
うつむ
)
き、
屋根
(
やね
)
は
仰向
(
あふむ
)
く。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
宿になる家を
頭
(
とう
)
と呼び、
家並
(
やなみ
)
かまたは帳面で順がきめてある。一年の始めか終りの一度だけは、やや大きな会をする。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そういう古びた、小さい
家並
(
やなみ
)
が一斉に門松を立てている。
一陽来復
(
いちようらいふく
)
の気は
自
(
おのずか
)
らそこに溢れているが、この句の中心をなすものは全く古びた格子である。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
屋根の上から下を見ると、
家並
(
やなみ
)
はそこで尽きて足許は二の廓の堀の水。屋根から垣へ足をかけた米友の姿は、これもどこかの闇へ消えてしまいました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
往来繁
(
ゆききしげ
)
き町を湯屋の角より
入
(
い
)
れば、道幅その二分の一ばかりなる横町の物売る店も
雑
(
まじ
)
りながら閑静に、
家並
(
やなみ
)
整へる中程に
店蔵
(
みせぐら
)
の
質店
(
しちや
)
と軒ラムプの並びて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
秋の半ば過の朝霧が
家並
(
やなみ
)
の茅葺屋根の上半分を一様に消して了ふ程重く濃く降りた朝であつた。S——村では、霧の中で鶏が鳴き、赤児が泣き、馬が
嘶
(
いなな
)
いた。
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
時には寒い
碧
(
あを
)
い色をした小さな沼の
畔
(
ほとり
)
の路に見えた。時には
川添
(
かはぞひ
)
の松原のさびしい中に見えた。かと思ふと、ある小さな町の夕日を受けた
家並
(
やなみ
)
の角に見えた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
菊川の
家並
(
やなみ
)
外れから右に入って
小夜
(
さよ
)
の中山を見ず。真直に一里半ばかり北へ上ると、俗に云う
無間山
(
むげんざん
)
こと
倶利
(
くり
)
ヶ
岳
(
だけ
)
の中腹に、
無間山
(
むげんざん
)
、
井遷寺
(
せいせんじ
)
という
梵刹
(
おてら
)
がある。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
また半里行きて
家並
(
やなみ
)
があり、また家並に離れ、また家並に出て、人や動物に接し、また草木ばかりになる
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
向うの
家並
(
やなみ
)
の
後
(
うしろ
)
からは、遠く青い麥の畠が續いてもや/\と陽炎ふ中に、菜の花が黄色く煙つてゐる。四月といへば晝も
夜
(
よる
)
も、女を考へ入るのに似合つてゐた。
赤い鳥
(旧字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
陰気ではあるが
家並
(
やなみ
)
の悪くない抜け道にあったが、家はまったく
閉
(
し
)
め切って、窓に貸間の札もみえない。
世界怪談名作集:02 貸家
(新字新仮名)
/
エドワード・ジョージ・アール・ブルワー・リットン
(著)
ところどころ草の生えた
空地
(
あきち
)
があるのと、
家並
(
やなみ
)
が低いのとで、どの道も
見分
(
みわけ
)
のつかぬほど同じように見え、行先はどこへ続くのやら、何となく物淋しい気がする。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
二人は肩を並べるために、忙しく行き違ふ人を
避
(
よ
)
けながら、片側の
家並
(
やなみ
)
みを銀座の方へと歩き出した。
散歩
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
表通りは吉原の日本
堤
(
づつみ
)
につづく一と筋道で、
町屋
(
まちや
)
も相当に整っているが、裏通りは
家並
(
やなみ
)
もまばらになって、袖摺稲荷のあるあたりは二、三の旗本屋敷を除くのほか
半七捕物帳:47 金の蝋燭
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
此
(
この
)
汽車は甲武線の電車の様に、街の中を行きながら
家並
(
やなみ
)
よりは一段低く道を造つた所を走るのである。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
壁つづきに出来た
家並
(
やなみ
)
の中に住んでいますと、壁のすぐ向うの物音に、つい気をとられるものです。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
わが
求名
(
ぐみょう
)
の村は、森のかっこうや
家並
(
やなみ
)
のようすに多少変わったところもあるように思われるが、子供の時から深く深く刻まれた
記憶
(
きおく
)
のだいたいは、目に近くなるにつれて
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
ところが、やがて三十分も尾行が続いた頃、愛之助はふと車外の
家並
(
やなみ
)
に注意を向け、アア見覚えがあるなと気づくと、ある恐ろしい考えが、ギョッと胸につき上げて来た。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
下る身はならはしの者なるかな
角摩川
(
かくまがは
)
といふを渡りて
望月
(
もちづき
)
の
宿
(
しゆく
)
に
入
(
い
)
るよき
家並
(
やなみ
)
にていづれも金持らし
此
(
こゝ
)
は望月の駒と歌にも詠まるゝ牧の有し所にて
宿
(
しゆく
)
の名も今は
本牧
(
ほんまき
)
と記しあり。
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
そこは壊れた敷石の所々に、水溜りの出来ている
見窄
(
みすぼ
)
らしい
家並
(
やなみ
)
のつゞいた町であった。玄関の
円柱
(
はしら
)
に塗った
漆喰
(
しっくい
)
が醜く
剥
(
はが
)
れている家や、壁に大きな
亀裂
(
ひび
)
のいっている家もあった。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
汽船はその島を左手に残して、速力をゆるめながら、その島にちなんだ名の、せまい港をぬけて進み、
潟
(
かた
)
のところへくると、ごたごたとみすぼらしい
家並
(
やなみ
)
に面して、完全に停止した。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
月が天心にかかっているのは、夜が既に遅く
更
(
ふ
)
けたのである。
人気
(
ひとけ
)
のない深夜の町を、ひとり足音高く通って行く。町の両側には、
家並
(
やなみ
)
の低い貧しい家が、暗く戸を
閉
(
とざ
)
して眠っている。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
何でも花曇りの
午
(
ひる
)
すぎで、川すぢ一帯、どこを見ても、煮え切らない、退屈な景色だつた。水も生ぬるさうに光つてゐれば、向う
河岸
(
がし
)
の
家並
(
やなみ
)
も、うつらうつら夢を見てゐるやうに思はれる。
世之助の話
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
山を
繞
(
めぐ
)
って秋の田が一面に色づいて居る。街道は断続
榲桲
(
まるめろ
)
の
黄
(
き
)
な村、林檎の紅い畑を過ぎて行く。二時間ばかりにして、岩木川の長橋を渡り、田舎町には
家並
(
やなみ
)
の
揃
(
そろ
)
うて豊らしい板柳村に入った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
軌道の向う側は高い崖、崖の上には
家並
(
やなみ
)
がある。家並の向うは往来なのである。
塵埃
(
ほこり
)
と人間と色彩と、事務所と印刷所と弁護士の家と、そうして肉屋と憲兵隊本部……などの立っている往来である。
奥さんの家出
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
同時に、ピカリ、と凄まじい稲光り、灰色に沈んだ町の
家並
(
やなみ
)
が、カッと明るくなると、乾ききった
雷鳴
(
かみなり
)
が、ガラガラガラッと頭の上を渡ります。
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
音に聞く都の島原を、名にゆかしき
朱雀野
(
すざくの
)
のほとりに訪ねてみても、大抵の人は
茫然自失
(
ぼうぜんじしつ
)
する。
家並
(
やなみ
)
は古くて、粗末で、そうして道筋は狭くて汚ない。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
……と見て通ると、すぐもう広い原で、屋敷町の屋敷を離れた、
家並
(
やなみ
)
になる。まだ、ほんの新開地で。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私が幼い頃の元園町は
家並
(
やなみ
)
がまだ整わず、到る
処
(
ところ
)
に草原があって、蛇が出る、狐が出る、兎が出る。
思い出草
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そこでも土産物やたべものの店がならんでいた。
軒
(
のき
)
の低い
家並
(
やなみ
)
に、
大提灯
(
おおぢょうちん
)
が一つずつぶらさがっていて、どれにもみな、うどん、すし、さけ、さかななどと、太い字でかいてあった。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
しかし今も
微
(
かす
)
かに記憶から呼び起されて来たやうに、山には、川には、またこの温泉場には、町のところどころに颺つてゐる白い湯気には、石段の両側に並んでゐる
混雑
(
こんざつ
)
した
家並
(
やなみ
)
には
父親
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
それ以来自分が気をつけて見ると、京都
界隈
(
かいわい
)
にはどこへ行つても竹藪がある。どんな
賑
(
にぎやか
)
な
町中
(
まちなか
)
でも、こればかりは決して油断が出来ない。一つ
家並
(
やなみ
)
を
外
(
はづ
)
れたと思ふと、すぐ竹藪が出現する。
京都日記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
月が
家並
(
やなみ
)
の後ろの高い
樫
(
かし
)
の梢まで昇ると、向う片側の家根が
白
(
し
)
ろんできた。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
両側の
家並
(
やなみ
)
は低く道は勝手次第に
迂
(
うね
)
っていて、ペンキ塗の看板や模造西洋造りの
硝子戸
(
ガラスど
)
なぞは一軒も見当らぬ処から、折々氷屋の旗なぞの
閃
(
ひらめ
)
く
外
(
ほか
)
には横町の眺望に色彩というものは一ツもなく
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
大芸術家の夫人が窓越しに弟子の話すのを許すと云ふさばけた
所作
(
しよさ
)
をさう思ふのであつた。
此処
(
ここ
)
からはずつと
向
(
むか
)
うが見渡される。起伏した丘にあるムウドンの
家並
(
やなみ
)
や形の
好
(
い
)
い
陸橋
(
をかばし
)
なども見える。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
両側の
家並
(
やなみ
)
がスーッスーッと背後へ飛んで行った。
幾度
(
いくたび
)
となく往来の人に突きあたって
顛覆
(
てんぷく
)
し相になった。それを
危
(
あやう
)
く避けては走った。今何という町を走っているのか無論そんなことは知らなかった。
夢遊病者の死
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
過ぎ曲折して平地に
出
(
いづ
)
れば即ち
長久保
(
ながくぼ
)
なり
宿
(
しゆく
)
の
家並
(
やなみ
)
よく車多し石荒坂にて下駄黨も草鞋派も閉口したれば
此
(
こゝ
)
より車に乘る此邊平地とは云へ三方山にて圍ひ一方は和田峠に向ツて進むなれば岩大石ゴロタ石或ひは上り或は下る坂とまでならねど
凸凹
(
でこぼこ
)
多く乘る者は難儀なれど
挽夫
(
ひくもの
)
は躍るもガタツクも物とは
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
同時に、ピカリ、と凄まじい稻光り、灰色に沈んだ町の
家並
(
やなみ
)
が、クワツと明るくなると、乾ききつた
雷鳴
(
かみなり
)
が、ガラガラガラツと頭の上を渡ります。
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
先刻
(
さっき
)
中引けが過ぎる頃、伸上って
蔀
(
しとみ
)
を下ろしたり、仲の町の
前後
(
あとさき
)
を見て戸を閉めたり、揃って、
家並
(
やなみ
)
は残らず音も無いこの
夜更
(
よふけ
)
の空を、
地
(
じ
)
に引く腰張の暗い板となった。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
こんな話をしながら辻のところへ来ると、
家並
(
やなみ
)
の角に一つの辻ビラがありました。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
下町の方から景気よく車を駆つて溜池の広い通を来る紳士があると仮定なさい、道幅が二十間もある坦々たる道、右は溜池、左は
家並
(
やなみ
)
、そして桜と柳が左右に並んで植込んである中を車は飛ぶのです。
夜の赤坂
(新字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
深川
(
ふかがは
)
や低き
家並
(
やなみ
)
のさつき空
自選 荷風百句
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
家
常用漢字
小2
部首:⼧
10画
並
常用漢字
小6
部首:⼀
8画
“家”で始まる語句
家
家内
家中
家来
家鴨
家主
家人
家族
家庭
家作