奈何どう)” の例文
かの哀れなる亡國の民に愛國心を起さしめ、獨立軍を擧げさせる、イヤ其前に日本は奈何どうかしてシャムを手に入れて置く必要がある。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
おそかなおのれより三歳みつわか山田やまだすで竪琴草子たてごとざうしなる一篇いつぺんつゞつて、とうからあたへつ者であつたのは奈何どうです、さうふ物を書いたから
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
『まあ、勝野君、左様さう運動にばかり夢中にならないで、すこし話したまへ。』と校長は忸々敷なれ/\しく、『時に、奈何どうでした、今日の演説は?』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さうおもへば益〻ます/\居堪ゐたまらず、つてすみからすみへとあるいてる。『さうしてから奈何どうする、あゝ到底たうてい居堪ゐたゝまらぬ、這麼風こんなふうで一しやう!』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
苦しい、苦しい、奈何どうかしてくれ、真赤な地獄絵の映画フイルムがキラキラキラキラ俺の後脳に烙きつく。ふさぎの虫がしくしく募る。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
し骨になってから正気に返ったら奈何どうする積りなんだろう。真正ほんとうに危い所だった。油断も隙もなりゃしない。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
全體これから奈何どうすればいゝのか? 又奈何なることだらうか? 圭一郎は幾度も/\寢返りを打つた。——
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
そんな訳で、復た奈何どうかいふ機会をりがあるまで、特にその為に書かれた先輩の序文を二つまで附けて、日記はそのまゝ彼女の妹の手許に蔵つて置くことに成つた。”
一葉の日記 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
併し頭の禿げた連中は仕方が無いとして若い者は奈何どうかと云ふと、矢張やつぱり駄目だ。血気盛んな奴が懐中手ふところでをして濡手で粟の工風くふうばかりする老人連の真似をしたがる。
青年実業家 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
柿本人麿の歌であるが、巻一の近江旧都回顧の時と同時の作か奈何どうか不明である。「夕浪千鳥」は、夕べの浪の上に立ちさわぐ千鳥、湖上の低い空に群れ啼いている千鳥で、古代造語法の一つである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
もうはやう行かうよ。わしも奈何どうやら気味わるうなつて来た。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
なんかんがへたからとて奈何どうなるものか。
自分では奈何どうしてもく氣になれない、此心をよく諒察くみとつて、好く其間に斡旋してくれるのは、信吾の外にないと信じてゐるのだ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
アンドレイ、エヒミチはひてこゝろ落着おちつけて、なんの、つきも、監獄かんごくれが奈何どうなのだ、壯健さうけんもの勳章くんしやうけてゐるではないか。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
五人の子供ですら食はせるのは容易ぢやない、しまた是上に出来でもしたら、我輩の家なぞでは最早もう奈何どうしていゝか解らん。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
赤い帶で腰の上へ留めた足首のところがすり切れた一雙のズボンの衣匣かくしに兩手を突つ込んだやうな異樣な扮裝でひよつこり玄關先に立たれたら、圭一郎は奈何どうしよう。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
山田やまだます/\親密しんみつになるにけて、遠方ゑんぱうから通ふのは不都合ふつがふであるから、ぼくうち寄宿きしゆくしては奈何どうです、と山田やまだつてくれるから、ねがうても無きさいわひと、すぐきふをつて、郷関きやうくわんを出た
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
きさまも懸賞小説なんぞとけち所為まねをするない。三文小説家になつて奈何どうする気ぢや。」
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
そこで、俺も泡まみれの手でコツコツと合図をして「奈何どうしたの。」と腰をかがめる。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
常丸 それが奈何どうして外へ出るのぢやらうな。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
「ああ太郎、お前はまあ奈何どうおしなのだねえ」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
真箇ほんと。ホラ、今朝島田さんから戴いた綺麗な絵葉書ね、姉ちやんがあれを取上げて奈何どうしても返さないから、代りに此を貰つたの。』
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あ、エウゲニイ、フエオドロヰチの有仰おつしやるには、本院ほんゐん藥局やくきよく狹隘せまいので、これ別室べつしつの一つに移轉うつしては奈何どうかとふのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あゝ、もう沢山たくさんだ、是上出来たら奈何どうしよう、一人子供がふえれば其丈それだけ貧苦を増すのだと思つても、出来るものは君どうも仕方が無いぢやないか。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
お兄さまを苦しめるやうな便りを差し上げては不可いけないとあんなにまで仰云おつしやいましたけれ共、お兄さまのお心を痛めるとは十分存じながらも奈何どうしても書かずにはすまされません。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
ところ或日あるひ石橋いしばしが来て、たゞかうしてるのもつまらんから、練習のために雑誌をこしらへては奈何どうかとふのです、いづれも下地したぢすきなりで同意どういをした、ついては会員組織くわいゝんそしきにして同志どうしの文章をつのらうと議決ぎけつして
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
道ならぬ恋は一度は破滅する、美しい幻影も遂には破れる……さうだもう幻滅だと又左の眼が切なさうに差し覗く……初めそれほどにもなかつたおまへ奈何どうして又あんなに急に夢中になつて了つたのだ
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そして、前夜、短い手紙でも書く様に、何気なくスラスラと解職願を書きながらも、学校をめて奈何どうするといふ決心はなかつたのだ。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いよ/\函館へ向けて小諸をつ。斯の旅の危険であるか奈何どうかは、東京まで行つて見た模様でなければ解らない。かく、小諸を発つことにする。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ひゞの入つた斑點に汚れた黄色い壁に向つて、これからの生涯を過去の所爲と罪報とに項低うなだれ乍ら、足に胼胝たこの出來るまで坐り通したら奈何どうだと魔の聲にでも決斷のほぞを囁かれるやうな思ひを
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
奈何どうすりやいつてんだらうねえ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
『このとほりは僕等がアカシヤ街と呼ぶのだ。彼処あそこに大きい煉瓦造りが見える。あれは五号館といふのだ。……奈何どうだ、気に入らないかね?』
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
私は遠い旅から帰って、久しぶりで自分のところへ訪ねて来て呉れたものの顔を見た時、それが「冬」だとは奈何どうしても信じられないくらいに思った。
三人の訪問者 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
眞箇ほんと。ホラ、今朝島田さんから戴いた綺麗な繪葉書ね、姉ちやんが、あれを取上げて奈何どうしても返さないから、代りに此を貰つたの。』
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『どうだ、是は貴樣に丁度好からう』と小父さんは店先で擇びまして、私の頭に合ふか奈何どうかと冠せて見ました。
『このとほりは僕等がアカシヤがいと呼ぶのだ。彼處に大きい煉瓦造りが見える。あれは五番館といふのだ。………奈何どうだ、氣に入らないかね?』
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
斯の仕事を持つて山を下りるとしたところで、これから先一年といふものは奈何どうしよう、奈何してそのあひだ妻子を養つて行かう。た一つ心配にぶつかつた。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『何ア莫迦だつて? 家のごとかまねえで、毎日飲んでつて許りゐたら、高田の家ア奈何どうなるだべサ。そして万一捕縛おせえられでもしたら……』
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
斯の亂暴な行ひは直に小さな姪のいたづらと知れましたが、そのために自分の忿怒いかり奈何どうすることも出來ませんでした。私はその帳面を引裂いて了ひました。
それは私には奈何どうも出来ない事ですけれど、私の方では前々から決めてゐた事でもあり、且つ、何が何でも一旦出したのは、取るのは厭ですよ。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「ほんとに串談じやうだんぢや無いよ。斯ういふことが有るが奈何どうだい——心を起さうと思へば、先づ身を起せツて。それだ。」と言つて叔父さんは熱心に姉妹きやうだいの顔を眺めて
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『ハ。奈何どうせ私も然う思つてだのでごあんすアハンテ、お戻しすあんす。』と、顔を曇らして言つて、頬をへこませてヂウ/\する煙管を強く吸つた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あの人も志賀へ遊びに行きたいと言ふから、誘ふことにしたら、この雪に出掛けるか、途中の激寒を奈何どうすると家の人に笑はれたと言つて、見合せるといふ話に来た。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
……うぢやないか、山内さん。俺はあの時、奈何どうしてもバイロンを死なしたくなかつた。彼にして死なずんばだな。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
是から君が東京迄も行こうというのに、そんな方法やりかたで旅が出来るものか。だからさ、それを僕が君に忠告してやる。何かて、働いて、それから頼むという気を起したらば奈何どうかね。
朝飯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『莫迦な!』と言つたが、女に自分の心を探られてゐるといふ不快が信吾のなうを掠めた。『それより奈何どうです、その吉野の方へ行つてみませんか?』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
Ice of Life——栄ちやん、奈何どうだい、叔父さんの洒落しやれは解るかい。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
奈何どうしたのか、鍛冶屋の音響ひびきも今夜はいつになく早く止んだ。高く流るる天の河の下に、村は死骸の様に黙してゐる。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「それはさうと、御祝言ごしうげんの時の着物は奈何どうするか。」と叔父さんが言出した。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
奈何どう爲よう。奈何爲よう。」と、終ひには少しぢれつたくなつて來て、愈々以て決心が附かなくなつた。と、言つて、たうといふ氣は微塵もないのだ。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)