夜道よみち)” の例文
わたし此處こゝから四十あまへだたつた、おなじ雪深ゆきぶかくにうまれたので、うした夜道よみちを、十ちやうや十五ちやう歩行あるくのはなんでもないとおもつたのであります。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
コロ、コロ、とくるまは、かぜく、くらい、かわいた夜道よみちをきしってゆきます。きょうは、そのくるまおとが、おじいさんのくるまおとに、よくていました。
少女がこなかったら (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なぜわしに隠していた。幼い女ひとりが夜道よみちして何かのあやまちがあったらどうするぞ。わしも今夜から一緒にゆく」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
誠と思ふ田舍堅氣ゐなかかたぎお安はたゞ莞爾々々にこ/\と打悦びお前樣には色々と御世話に相成娘もさぞや悦んでがな居ませう又今晩は夜道よみち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ヂュリ おゝ、パリスどのと祝言しうげんをせうほどなら、あのたふうへからんでい、山賊やまだち跳梁はびこ夜道よみちけ、へびくさむらひそめいともはッしゃれ。
これがおせんのおびでなかったら、まさかおまえさんは、この夜道よみちを、わざわざここまでかえしにゃなさるまい。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それから十日ほどたって、二人はその女の家を出て、士族屋敷しぞくやしきのさびしい暗い夜道よみちを通った。その日は女はいなかった。女は浦和に師範しはん学校の入学試験を受けに行っていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
夜道よみちだ。主従しゅじゅうというかたッ苦しさもいつの間にかれて、一同、気やすな心もちだった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
祖母はなにか気に入らぬことでもあるか、平生へいぜいの手まめ口まめににず、夜道よみちを遠く帰るべきびとにいっこうとんちゃくせぬのである。やとい女もさしずがなければ手出しのしようもない。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それも道理だうりゆき夜道よみちしてとはひかねてこゝろならねどまた暫時しばらく二度目にどめれしちやかをうすらぐころになりてもおともなければいまぬものかるものかてにもならずてにして何時いつといふ際限さいげんもなしちがひになるともそれは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さあ、身代みがはりは出来できたぞ! 一目ひとめをんなされ、即座そくざ法衣ころもいはつて、一寸いつすんうごけまい、とやみ夜道よみちれたみちぢや、すた/\と小家こやかへつてのけた……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三日月みかづきに、谷中やなか夜道よみちくらかった。そのくらがりをただひとく、蟋蟀こおろぎみつぶすほど、やけなあゆみをつづけてく、若旦那わかだんな徳太郎とくたろうあたまなかは、おせんの姿すがたで一ぱいであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
このゆきでは、夜道よみちもできないだろう。そして、いつおおかみや、くまにあわないともかぎらない。せめて、ここにあるさけでもみんなしてんで、うたかそうじゃないか。
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うつせし中穀物の代金百兩受取歸らんとなすをあるじ庄右衞門之をとゞ最早もはや夕暮ゆふぐれなれば今宵こよひは御とまり有て明朝早く歸らるべし殊に大金をもつての夜道よみちなれば無用心ぶようじんなり必ず/\御とまりあれとすゝむるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぶつ込み左仲のそばと來りて旅人は何れへ行るゝや日の中は能きなぐさみをなし夜を掛ての一人旅樣子あり氣な御人なり我等は夜道よみちが大いに勝手かつてなれば御同道申べし其火を爰へ貸給へと竹火繩たけびなは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いつもなら、藤吉とうきちともれてさえ、夜道よみちあるくくには、かなら提灯ちょうちんたせるのであったが、いまはその提灯ちょうちんももどかしく、羽織はおり片袖かたそでとおしたまま、はやくも姿すがた枝折戸しおりどそとえていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)