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声色
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こわいろ
ふりがな文庫
“
声色
(
こわいろ
)” の例文
旧字:
聲色
教授に逢って二三世間話をし、その間に貴様が教授の
声色
(
こわいろ
)
や癖を研究する。それから突然二人で教授を縛り上げて
猿轡
(
さるぐつわ
)
をかませる。
稀有の犯罪
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
それくらいのことなら四人の口合いでも出来ることだし、ひょっとすると、そのうちの誰かが里春の
声色
(
こわいろ
)
を使ったのかも知れない。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
当時西語にいわゆるシニックで奇癖が多く、
朝夕
(
ちょうせき
)
好んで俳優の
身振
(
みぶり
)
声色
(
こわいろ
)
を使う枳園の同窓に、今一人
塩田楊庵
(
しおだようあん
)
という奇人があった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
京弥が造り
声色
(
こわいろ
)
をしながら、したたるばかりのしなをみせつつ
艶
(
えん
)
に答えたのをきくと、供侍が提灯をさしつけてきき尋ねました。
旗本退屈男:02 第二話 続旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
と、早速奥へ
披露
(
ひろう
)
します。歌舞伎座の狂言なども、出し物の変る度びに二三度立ち見に出かけ、直きに
芝翫
(
しかん
)
や
八百蔵
(
やおぞう
)
の
声色
(
こわいろ
)
を覚えて来ます。
幇間
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
一寸法師の玉六だよ、あの一寸法師は物真似
声色
(
こわいろ
)
の名人だ。衝立の蔭にもう一つの道化の
裃
(
かみしも
)
をチラ付かせて、玉吉の声色で歌っていたんだ。
銭形平次捕物控:118 吹矢の紅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
江戸演劇を愛せんと欲せばすべからく三味線を
弄
(
もてあそ
)
ぶの閑暇と折々は
声色
(
こわいろ
)
でも使ふ、馬鹿々々しき
道楽気
(
どうらくぎ
)
なくんばあらざるべし。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
茶屋、船宿に
灯
(
ひ
)
が入る。夜の大川は無数の
虹
(
にじ
)
に染められて波新しく
戦
(
そよ
)
ぎだした。——
鼓
(
つづみ
)
や、三味線や、
声色
(
こわいろ
)
流しや、秋の夜はこれからが長い。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
軍談、落語、音曲、
操
(
あやつ
)
り人形、
声色
(
こわいろ
)
、物真似、
浄瑠璃
(
じょうるり
)
、八人芸、浮かれ節、影絵など、大もの揃いで、賑やかな席である。
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
青木のこんな
声色
(
こわいろ
)
は、もう幾度でもききあきている。今更こんな手に乗るものかと思った。が、青木はまた言葉を継いだ。
青木の出京
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ちょうど梧竹翁は副島伯の書の贋物のように、また副島伯が名優であるといたしましたら、梧竹翁はその
声色
(
こわいろ
)
づかいのようなものでありまして
習書要訣:――美の認識について――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
と
声色
(
こわいろ
)
にしちや語呂の悪い、
啖呵
(
たんか
)
を切り出した所は豪勢だがの、
面
(
つら
)
を見りや寒いと見えて、
水
(
みづ
)
つ
洟
(
ぱな
)
が鼻の下に光つてゐる。
鼠小僧次郎吉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
パーヴァはもはや子どもではなく、
口髭
(
くちひげ
)
を生やした一人前の若者だったが、それが見得を切って片手をさし上げ、悲劇の
声色
(
こわいろ
)
でこう言った。——
イオーヌィチ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「新派劇の舞台から飛び出して来たんじゃないかと思いましたよ。妙な娘さんでございますね」と、刑事はおかみさんの
声色
(
こわいろ
)
を混ぜて報告した。
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
得意さきでおだてられるまゝ稼業そっちのけに
声色
(
こわいろ
)
をつかって聞かせたりしていたうちはまだよかった、それが
嵩
(
こう
)
じて「役者になりたい」になり
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
「道理で
妾
(
わたくし
)
はいって参りますと、若い娘さんが
独
(
ひと
)
り
言
(
ごと
)
をいい、ままごと遊びしていなさいましたので、つい妾も面白くなり、男の
声色
(
こわいろ
)
など使いまして……」
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私の父は、彼が湯から出て、また
炉傍
(
ろばた
)
に座って身体を揺り始めた時、やさしいいたわるような
声色
(
こわいろ
)
で訊いた。
再度生老人
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
そいつが冗談半分に庄五郎の
声色
(
こわいろ
)
を使って、鋳掛屋の門をたたくと、女房は寝入っていて小僧が返事をした。
半七捕物帳:45 三つの声
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
快速艇がくると、潜水服姿の太刀川は、リーロフの
声色
(
こわいろ
)
をつかって、こういった。ケレンコが、のりこむと
太平洋魔城
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と言って折助は急に、ふざけた
声色
(
こわいろ
)
を使って、頭巾で隠してあるお銀様の顔をワザと
覗
(
のぞ
)
き込むようにして
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「よせ! たとえ幽霊にもせよ、父の
声色
(
こわいろ
)
を、やたらに
真似
(
まね
)
るのは
止
(
よ
)
し
給
(
たま
)
え。死者の事は、厳粛にそっとして置いてやってくれ。少し冗談が過ぎたようだね。」
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
新内
(
しんない
)
流し、それから宗十郎の
声色
(
こわいろ
)
をよくつかうので評判の飴屋などがいたが、そのほかにこの紙芝居なども子供相手とは云っても、やはり芸人には違いなかろう。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
下は
乞食
(
こじき
)
から、一番上は将軍様までいろんな階級の人のラブシーンを、新派や歌舞伎のいろんな俳優の
声色
(
こわいろ
)
を使ってやったりするの。それは上手で面白かってよ。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そこで日本向きの
声色
(
こわいろ
)
や音曲を吹き込むことになったが、なにしろ無経験の素人技師ばかり、まず猿若町にいた裏木戸の達という声色屋を呼んで皮切りをやらせる。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
二葉亭の若辰の
身振
(
みぶり
)
声色
(
こわいろ
)
と矢崎嵯峨の屋の談志の物真似テケレッツのパアは寄宿舎の評判であった。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
お菊さんは男の
声色
(
こわいろ
)
を使いながら、右の指を口の
縁
(
へり
)
へ持って往って煙草を喫むようなまねをした。
萌黄色の茎
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
今では、わが友古川緑波の出現以来、「声帯模写」と名を変えてしまったが、昔はもっぱら
声色
(
こわいろ
)
。
艶色落語講談鑑賞
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
太鼓持ち (女の
声色
(
こわいろ
)
を使う)私がすけてあげましょうわいな。(かえでの前の杯を取って飲む)
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
とちょっと済ましてやる
声色
(
こわいろ
)
は「ヨウヨウ梅ちゃんそっくり」という若者たちの囃す中で聞かされて私も時たま人のいない庭の中などでは小声ながらも同じ文句を繰り返した。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
上がると直ぐ茶の間で、瀬戸物の火鉢を中に、小せんと向ひ合つて坐つてゐるのは、近頃
声色
(
こわいろ
)
で売り出した小山三。見ると私はさう云つて、柿紅君と一緒に奥の座敷の方へ通つた。
或る日の小せん
(新字旧仮名)
/
吉井勇
(著)
そのふるえた、どこか臆病げな
声色
(
こわいろ
)
は、外に立っている黙った尼さんのような木立にも聞えるように、窓の
内外
(
うちそと
)
には、厭らしい沈黙の他にこの様子を見守っているものがなかった。
夜の喜び
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その上にも景気をつけて
新内
(
しんない
)
をやらせたり、
声色
(
こわいろ
)
つかいを呼込んでいるのもあった。
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
渋って
開
(
あ
)
きかぬる雨戸にひとしお源太は癇癪の火の手を
亢
(
たかぶ
)
らせつつ、力まかせにがちがち引き
退
(
の
)
け、十兵衛
家
(
うち
)
にか、と云いさまにつとはいれば、
声色
(
こわいろ
)
知ったるお
浪
(
なみ
)
早くもそれと悟って
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
と
覚束
(
おぼつか
)
なげに巡査の
声色
(
こわいろ
)
を
佳
(
い
)
い声で使いながら、打合せの帯の乳の下の膨らんだ中から、一面の懐中鏡を取出して、顔を見て、ほつれ毛を
掻上
(
かきあ
)
げた。その
櫛
(
くし
)
を取直して、鉛筆に
擬
(
なぞら
)
えて
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さア
使
(
つかひ
)
の
仕様
(
しやう
)
を
僕
(
ぼく
)
が
教
(
をし
)
へて
上
(
あげ
)
るからマア
君
(
きみ
)
椅子
(
いす
)
に
腰
(
こし
)
を
掛
(
か
)
け
給
(
たま
)
へ、
君
(
きみ
)
が
僕
(
ぼく
)
だよ、
僕
(
ぼく
)
が
君
(
きみ
)
になつて、
使
(
つかひ
)
に
来
(
き
)
た
小僧
(
こぞう
)
さんの
声色
(
こわいろ
)
を使ふから
大人
(
おとな
)
しく
其処
(
そこ
)
で待つてお
出
(
い
)
で、
僕
(
ぼく
)
のつもりでお
出
(
い
)
でよ。
西洋の丁稚
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
次にはうろ覚えの
浄瑠璃
(
じやうるり
)
を節廻しおもしろう
声色
(
こわいろ
)
で語つて室長の
機嫌
(
きげん
)
をとつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
どうも芝居の
真似
(
まね
)
などをしたり変な
声色
(
こわいろ
)
を使ったりして
厭気
(
いやけ
)
のさすものです。
中味と形式
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
かれは杵屋もどきの
声色
(
こわいろ
)
で、なにやら一席うなつたのち、かう言ふのである。
希臘十字
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
とBは、万物流転説を遵奉するアテナイの大言家の
声色
(
こわいろ
)
を
唸
(
うな
)
りながら未練も残さずに出て行った。不安も悲劇も自信も僕にとっては
馬耳東風
(
ばじとうふう
)
だ。あまりBの様子ぶった態度が
滑稽
(
こっけい
)
だったから
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
大勢の家族ですから、部屋数はあっても、食事の時などなかなかの騒ぎです。下宿していた次兄も大抵来ていられて、夜など家人を集めて
声色
(
こわいろ
)
をおつかいになります。
団十郎
(
だんじゅうろう
)
がお得意でした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
助六
(
すけろく
)
に作り雷門前地内にて往来に
蓆
(
むしろ
)
を敷きほんの手すさびに「これは雷門の定見世
花川戸
(
はなかわど
)
の助六飛んだりはねたり」と団十郎の
声色
(
こわいろ
)
を真似て売りをりし由にて、傘の飛ぶのが面白く評判となり
江戸の玩具
(新字旧仮名)
/
淡島寒月
(著)
おきまりの会費で存分愉しむ肚の不粋な客を相手に、息のつく間もないほど
弾
(
ひ
)
かされ歌わされ、
浪花節
(
なにわぶし
)
の三味から
声色
(
こわいろ
)
の合の手まで勤めてくたくたになっているところを、
安来節
(
やすぎぶし
)
を
踊
(
おど
)
らされた。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
おどけた顔つきをし、頓狂な
声色
(
こわいろ
)
で、自分で、口上を述べる。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
「お宅の御主人は
声色
(
こわいろ
)
がお上手でいらっしゃいますわね」
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
全く
声色
(
こわいろ
)
の生活はやり切れない。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
甚句
(
じんく
)
を歌うものがある。詩を吟ずるものがある。
覗機関
(
のぞきからくり
)
の口上を真似る。
声色
(
こわいろ
)
を遣う。そのうちに、鍋も瓶も次第に
虚
(
から
)
になりそうになった。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
内容にそぐわない身振り
声色
(
こわいろ
)
や、無意味に
氾濫
(
はんらん
)
する感情や、——そういったものは、ブラームスにとって全く我慢のならないものであったのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
始めはちよいと居睡りが見つかつて、叱られたかと思つたが、見ると先生は、マクベスの本をふり廻しながら、得意になつて、門番の
声色
(
こわいろ
)
を使つてゐる。
あの頃の自分の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
抽斎の子は
飛蝶
(
ひちょう
)
と名乗り
寄席
(
よせ
)
の高座に上って身振
声色
(
こわいろ
)
をつかい、また大川に舟を浮べて影絵芝居を演じた。
梅雨晴
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
仲人栗野博士から、唖女に対する伝六郎の口上を、身振り手真似、
声色
(
こわいろ
)
入りで聞かされた花嫁の初枝は、たしなみも忘れて、声を立てながら笑い入った。そうして
笑う唖女
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“声色”の意味
《名詞1》
発声と顔色。
態度。様子。
音曲と女色。
《名詞2》
(仏教)視覚や聴覚など感覚に訴えるものの総称。
(出典:Wiktionary)
声
常用漢字
小2
部首:⼠
7画
色
常用漢字
小2
部首:⾊
6画
“声色”で始まる語句
声色屋
声色使
声色遣
声色狗馬
声色遣師