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可哀
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かわい
ふりがな文庫
“
可哀
(
かわい
)” の例文
魚屋が
咳
(
せ
)
いている。
可哀
(
かわい
)
そうだなあと思う。ついでに、私の咳がやはりこんな風に聞こえるのだろうかと、私の分として聴いて見る。
交尾
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「
可哀
(
かわい
)
さうに。あれで店にゐると、がらり変つた娘になつて、からいぢけ切つてるのでございますよ。やつぱり本親のない子ですね」
蔦の門
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
何より自分という者が
可哀
(
かわい
)
そうになって来て、冬の夜の寒い電車の中にじっと腰を掛けていてさえ、ひとりでに悲しい涙が流れ出た。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「
可哀
(
かわい
)
そうなのはあの役者たちよ」ときん夫人は炉端から云った、「あの
夜更
(
よふ
)
けの雨の中を、どんな気持で逃げていったかしらねえ」
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「いずれにしても君がしっかりしていさえすればいいわけなんだが、しかしそういう人の取扱いじゃ園田君も
可哀
(
かわい
)
そうじゃないか。」
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
可哀
(
かわい
)
そうな
子家鴨
(
こあひる
)
がどれだけびっくりしたか!
彼
(
かれ
)
が
羽
(
はね
)
の
下
(
した
)
に
頭
(
あたま
)
を
隠
(
かく
)
そうとした
時
(
とき
)
、一
匹
(
ぴき
)
の
大
(
おお
)
きな、
怖
(
おそ
)
ろしい
犬
(
いぬ
)
がすぐ
傍
(
そば
)
を
通
(
とお
)
りました。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
可哀
(
かわい
)
そうに! (
猫撫声
(
ねこなでごえ
)
で、彼女は、彼の髪の毛の中に手を通し、それをひっぱる)——涙をいっぱい
溜
(
た
)
めてるよ、この子は……。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
立ち上がると、そのまま振り向きもしないで、立ち去った彼のあとに、グッタリと横たわっているのは、
可哀
(
かわい
)
そうな犬の
死骸
(
しがい
)
だ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
可哀
(
かわい
)
そうに、なんだってわたし、うちの坊やに恥をかかしたのかしら? 心配だわ。(大声で)コースチャ! せがれや! コースチャ!
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
私は我慢をするけれどね、お浜が
可哀
(
かわい
)
そうだから、号外屋でも何んでもいい、
他
(
ほか
)
の商売にしておくれって、三ちゃん、お前に頼むんだよ。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
可哀
(
かわい
)
そうで可哀そうでいても立ってもいられへんようになって、……そらお梅どん、ハタから見たら
阿呆
(
あほ
)
らしやろけど、そんなもんやし。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
可哀
(
かわい
)
そうに!
普通
(
なみ
)
の者なら、何ぼ何でも
其様
(
そん
)
なにされちゃ、手を
下
(
おろ
)
せた
訳合
(
わけあい
)
のもんじゃございません、——ね、
今日
(
こんにち
)
人情としましても。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ともかく、あの
可哀
(
かわい
)
そうなお嬢さんを
騙
(
だま
)
した薄情な大学生は、どうせ
碌
(
ろく
)
な死に方はしまいという、村の評判だというのでしたが
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
兄さんは、
可哀
(
かわい
)
そうなひとだ。根からの悪人ではない。悪い仲間にひきずられているのだ。私はもう一度、兄さんを信じたい。
花火
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
つけたまえね、しかしこのくらいやっつけたら二度と悪いことはしまいから
堪忍
(
かんにん
)
してやれ、
可哀
(
かわい
)
そうに、おいチビ、改心しろよ
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
あれでは石の材料が
可哀
(
かわい
)
そう……一つ石を彫って、もっと物らしい物をこしらえて見たい……というような
物数寄
(
ものずき
)
な気が起るのでありました。
幕末維新懐古談:78 谷中時代の弟子のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
あとで家のものに聞くと、その組長の親分が、しみじみと、それじゃ旦那も
可哀
(
かわい
)
そうだといったそうである。その親分はね。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
「あたしたちに、もう、自分の子供が出来るあてがないとしたら、いっそのこと、
可哀
(
かわい
)
そうな
孤児
(
こじ
)
かなんかを
養子
(
ようし
)
にもらったらどうでしょう。」
やんちゃオートバイ
(新字新仮名)
/
木内高音
(著)
栗色の髪の毛がマドンナのような
可哀
(
かわい
)
らしい顔を囲んでいる若後家である。その時の場所はどんな所であったか。イソダンの小さい客間である。
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
「わたしはあなたを愛していた。今でもあなたを愛している。どうか
自
(
みずか
)
ら
欺
(
あざむ
)
いていたわたしを
可哀
(
かわい
)
そうに思って下さい。」
或恋愛小説
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は店先に腰かけて黙って見ていたが小さな女の子までも同じ
憂
(
う
)
き目に逢ってワアッと泣いて行くのを
可哀
(
かわい
)
そうに思った。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
その時医者の話さ。この頃のインフルエンザは
性
(
たち
)
が悪い、じきに肺炎になるから用心をせんといかんと云ったが——実に夢のようさ。
可哀
(
かわい
)
そうでね
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「まあ。」奥さんは目を
睜
(
みは
)
った。四十代が半分過ぎているのに、まだぱっちりした、
可哀
(
かわい
)
らしい目をしている女である。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
子も有るんでさあね。
可哀
(
かわい
)
そうだから置いて
遣
(
や
)
ろうと言うんですよ。妙に世間では取る……私だって今年六十七です……この年になって、あんな女を
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それをも聞き漏さない。そんな時
心
(
しん
)
から笑う。それで定連に
可哀
(
かわい
)
がられている。こう云う社会では「話を受ける」人物もいなくてはならないのである。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
それは官吏の娘で、
可哀
(
かわい
)
そうな、優しい、しおらしいすなおなやつだったがね。とうとうおれに許したのだ。闇の中で、何もかも許してしまったんだ。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
妹の
情
(
じょう
)
にほだされて、せっかくかたった仲間や同志をむざむざ裏切ることもならず、乗りかかった船突っ切ったものの
可哀
(
かわい
)
そうなことをしてしもうた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
もちろん、蛇は何んにもしません、蛇もこいしげに父親の掌の上で、その
可哀
(
かわい
)
らしい頭を持ち上げ、父親の顔をしげしげ眺め込んでいたりしていました。
不思議な国の話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「ほら、あれを見たか。あれが、叩きつける“椅子”じゃ。あれでは硬い壁に叩きつけられて、
生身
(
なまみ
)
の人間は一たまりもあるまい。
可哀
(
かわい
)
そうに死んだか」
大使館の始末機関:――金博士シリーズ・7――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
短篇集
(
たんぺんしゅう
)
を四冊出しています。尤も「
可哀
(
かわい
)
い神様の事」という方は、切れていて続いているような話です。あどけない、無邪気な、そして
情
(
じょう
)
の深い作です。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
ミネから返事があるまでは、閑子には従前どおり気どられぬふりをしているからと、はっきり書いてある。ああ閑子よ、お前はそんな女なのか、
可哀
(
かわい
)
そうに。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
その千恵の表情にまたチラッと眼を走らせた保姆さんは、何を勘ちがへしたものか「
可哀
(
かわい
)
さうに!」とまるで千恵をあはれみでもするやうな調子でつぶやくと
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
その蝶々をなぜ殺したの? 毛虫を殺すのは蝶々を殺すのと同じことでしょ?……
御覧
(
ごらん
)
!
可哀
(
かわい
)
そうに……今は毛むぐじゃらで、あんまり
可愛
(
かわい
)
らしくないけど
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
「わるかったね。よくそこらを荒す犬が来たから、机の上の物を手当り次第に投げたら、運わるく赤インキだった。新しい著物だと喜んでいたのに
可哀
(
かわい
)
そうに。」
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
「
蛹踊
(
さなぎおどり
)
とはそいつはあんまり
可哀
(
かわい
)
そうです。すっかり
悄気
(
しょげ
)
て
化石
(
かせき
)
してしまったようじゃありませんか。」
チュウリップの幻術
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
さすがに
可哀
(
かわい
)
そうに思ってそれを彼らの方へ廻してやると、満面に
諂
(
へつら
)
い笑いを浮べて引ったくるようにして取り合い、そういう時には何ほど
嬉
(
うれ
)
しいのであろうか
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
可哀
(
かわい
)
そうですが、先にあのおやじの娘をアゲておいて、そいつを責め道具に仲間を裏切りさせたわけ。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
(あまり
可哀
(
かわい
)
そうじゃありませんか、私は
厭
(
いや
)
です、あの方は、私に免じて助けてやってください)
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
焦々
(
いらいら
)
している耳に、内田さんの声が、「熊本さん、この頃、とても、しょげているのよ。
可哀
(
かわい
)
そうよ」「ぼんちのことで」と誰か女のひとが、
訊
(
き
)
き返している様でした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「お
蔭
(
かげ
)
で傷は浅いです。
可哀
(
かわい
)
そうに、あれは大層親思いですから、あんな
飛沫
(
とばしり
)
を喰うのです。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
可哀
(
かわい
)
そうな椰子蟹はとうとう
瓶
(
びん
)
に入れられて、
或
(
ある
)
学校の標本室に今でも残っております。
椰子蟹
(新字新仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
人を
可哀
(
かわい
)
いとも思わなければ、憎いとも思わないでいるのね。
鼠
(
ねずみ
)
の穴の前に
張番
(
はりばん
)
をしている
鸛
(
こうづる
)
のように動かずにいるのね。お前さんには自分の獲ものを引きずり出すことも出来ない。
一人舞台
(新字新仮名)
/
アウグスト・ストリンドベリ
(著)
勝代は細い眉の間に
皺
(
しわ
)
を寄せて、「辰さんはあないな風なのに、誰もかもうてやらにゃ
可哀
(
かわい
)
そうじゃがな。勝は貧乏してもどこで暮らしとっても、辰さんの力になってあげにゃならん」
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
可哀
(
かわい
)
そうなエチエンヌも、やっぱり自分の
脚
(
あし
)
相応
(
そうおう
)
に
歩
(
ある
)
いているのです。
調子
(
ちょうし
)
が
揃
(
そろ
)
う
筈
(
はず
)
がありません。エチエンヌは
走
(
はし
)
ります。
息
(
いき
)
を
切
(
き
)
らします。声を出します。それでも
遅
(
おく
)
れてしまいます。
母の話
(新字新仮名)
/
アナトール・フランス
(著)
……おぬいさんが
可哀
(
かわい
)
そうだ……俺は何んといってもおぬいさんが可哀そうだ。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
或日
(
あるひ
)
、コロボックンクルはいろいろな
御馳走
(
ごちそう
)
を用意して、それを成るべく困っている、
可哀
(
かわい
)
そうな人に分けてやろうと思いまして、例の蕗の葉の下から、隠れ蓑で体を包んで出て来ました。
蕗の下の神様
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
なぜ、皆様方は梨の実が欲しいなどと無理な事を
仰
(
おっ
)
しゃったのです。
可哀
(
かわい
)
そうに、わたくしのたった一人の孫は、こんな
酷
(
むご
)
たらしい姿になってしまいました。ああ、可哀そうに。可哀そうに。
梨の実
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
可哀
(
かわい
)
さの余りにか
将
(
は
)
た
憎
(
にく
)
さにか、困らせなば帰国するならん、東京にて役人などになって
貰
(
もら
)
わんとて、学問はさせしに
非
(
あら
)
ずと、
実
(
げ
)
に親の身としては、忍びざるほどの恥辱苦悶を子に
嘗
(
な
)
めさせ
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
果ては人と人とが物を受け取ったり、物を
遣
(
や
)
ったりしているのに、己はそれを
余所
(
よそ
)
に見て、
唖
(
おし
)
や
聾
(
つんぼ
)
のような心でいたのだ。己はついぞ
可哀
(
かわい
)
らしい唇から誠の
生命
(
せいめい
)
の酒を
呑
(
の
)
ませて
貰
(
もら
)
った事はない。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
だが、そうなると母親はすっかり気が弱くなって、ここ半月ぐらいの間、毎日一男のことばかり言い暮した。はじめは相手にしなかった主人の平吉も、さすがに病人の心持が
可哀
(
かわい
)
そうになった。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
可
常用漢字
小5
部首:⼝
5画
哀
常用漢字
中学
部首:⼝
9画
“可哀”で始まる語句
可哀想
可哀相
可哀気
可哀氣