半月はんつき)” の例文
「もう、半月はんつきもたちゃ、すいかだってめずらしくはない。いまならってもれるだろう。」と、主人しゅじんは、つけくわえていいました。
初夏の不思議 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから半月はんつきばかりたったのちです。僕はどんより曇っているせいか、何をする気もなかったものですから、池のある庭へおりてきました。
手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
半月はんつきほどのあひだには、ほとんはなしたかずだけが、もどつてて、みなもみぢぶくろをはいたむすめのやうで可憐かれんだつた、とのことであつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
日露戦争の際、私は東京日々とうきょうにちにち新聞社から通信員として戦地へ派遣された。三十七年の九月、遼陽りょうようより北一はん大紙房だいしぼうといふ村に宿とまつて、滞留約半月はんつき
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
うちつて彼是かれこれまぎれてゐるうちに、はや半月はんつきつたが、地方ちはうにゐる時分じぶんあんなににしてゐた家邸いへやしきことは、ついまだ叔父をぢさずにゐた。あるとき御米およね
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ちょうど半月はんつきばかりたった時、その日も甚兵衛はたずねあぐんで、ぼんやり家にかえりかけますと、ある河岸かし木影こかげに、白髯しろひげうらなしゃつくええて、にこにこわらっていました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
りつきしまヽきてはなれず、姉樣ねえさまなにごとをはらたちて鎌倉かまくらなぞへおいでなさるぞ、れも一つき半月はんつきならばけれど、お歸邸かへり何時いつともれずと衆人みなひたり、どのやうおつしやるともそれはうそにて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「だって、もう、半月はんつきもたてば、その半分はんぶんだってしないよ。だれが、そんなたかでこのすいかをうもんか。」と、おんなはいいました。
初夏の不思議 (新字新仮名) / 小川未明(著)
半之丞の豪奢をきわめたのは精々せいぜい一月ひとつき半月はんつきだったでしょう。何しろ背広は着て歩いていても、くつの出来上って来た時にはもうそのだいも払えなかったそうです。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こういう問答を二、三度繰り返しているうちに、いつのまにか半月はんつきばかりたった。三四郎の耳は漸々ぜんぜん借りものでないようになってきた。すると今度は与次郎のほうから、三四郎に向かって
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
半月はんつき一月ひとつき三月みつき、ものの半年はんとし住馴すみなれたのはほとんどあるまい……ところけるでもなく、唯吉たゞきち二階にかいから見知越みしりごしな、時々とき/″\いへあるじも、たれ何時いつのだか目紛めまぎらしいほど、ごつちやにつて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かさねて十日とうか半月はんつきさては廿日はつかにつらき卯月うづきすぎたり五月雨さみだれごろのしめりがちのき忍艸しのぶたぐひのきてはかねどいけのあやめのながきおもひにかきらされてそでにもみづかさのさりやすらん此處こゝ別莊べつそう人氣ひとげくなくりの八重やへ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それから、半月はんつきばかりたってから、良吉りょうきちは、ふたたびようたしのために、ガードのしたとおりかかりました。そのとき、かれは、なんで落書らくがきのことをおもさずにいましょう。
隣村の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
半月はんつきばかりたったのち祇園精舎ぎおんしょうじゃに参った給孤独長者きゅうこどくちょうじゃは竹や芭蕉ばしょうの中のみちを尼提が一人歩いて来るのに出会った。彼の姿は仏弟子ぶつでしになっても、余り除糞人じょふんにんだった時と変っていない。
尼提 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
御米およねこのくるしい半月はんつきあまりを、まくらうへじつ見詰みつめながらごした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
半月はんつきもたった、あらしのぎたあさのことでした。うみなみは、いつかの二兄弟きょうだいのはとがつかれはてて、砂原すなはらりているのをました。まちから、無事ぶじかえったものとおもわれます。
兄弟のやまばと (新字新仮名) / 小川未明(著)