“齷齪:あくせく” の例文
“齷齪:あくせく”を含む作品の著者(上位)作品数
夏目漱石7
島崎藤村4
ロマン・ロラン4
永井荷風3
石川啄木3
“齷齪:あくせく”を含む作品のジャンル比率
歴史 > 地理・地誌・紀行 > アジア50.0%
哲学 > 倫理学・道徳 > 人生訓・教訓12.5%
歴史 > 伝記 > 日本8.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
齷齪あくせくとした生涯しょうがい塵埃ほこり深いちまたに送っているうちに、最早もう相川は四十近くなった。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かみ女中、おしも女中、三十人からの女中が一日、齷齪あくせくとすわる暇もなく、ざわざわしていた家である。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
米国の大統領リンカンがまだ田舎弁護士で齷齪あくせくしてゐた頃、ある時訴訟用で小さな田舎町に旅立をしなければならぬ事になつた。
かく考えると齷齪あくせくとして、あるものを無しと言い、無いものを有ると見ても、とうてい永続せぬものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ただ徳川内府のお覚えのみを気がねして齷齪あくせくと、夜半まで駈ける小心な大名どもの肚の底がいてあわれが深い……。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この話は、けだし僧正が衆弟子の出家たる本分を忘れて、貨財の末に齷齪あくせくたるをあわれんで、いささか頂門の一針を加えられたものであろう。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
「久しぶり憂悶ゆうもんを忘れました。愚かな日常の齷齪あくせくが、われながらわらえて来ます」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
舅姑きゅうこ機嫌きげんを取り、裁縫やら子供の世話やらに齷齪あくせくすることとなりたるぞ
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
そして始終齷齪あくせくしながら何一つ自分を「満足」に近づけるような仕事をしていなかった。
小さき者へ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
しがこうして齷齪あくせくとこの年になるまで苦労しているのもおかしなことだが……」
親子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ものの五町とも距たらぬのだが、齷齪あくせくと糧を争ふ十万の市民の、我を忘れた血声の喧囂さけびさへ、浪の響に消されてか、敢て此処までは伝はツて来ぬ。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
私は全く凡下ぼんげな執着に駆られて齷齪あくせくする衆生しゅじょうの一人に過ぎない。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そして齷齪あくせくと生活してる人々の悪口を言いながら、自分の懶惰らんだを慰めていた。
ものの五町ともへだたらぬのだが、齷齪あくせくかてを爭ふ十萬の市民の、我を忘れた血聲の喧囂さへ、浪の響に消されてか、敢て此處までは傳はつて來ぬ。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
始終何物かにむちうたれ駆られてゐるやうに学問といふことに齷齪あくせくしてゐる。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
極めて低級な慾望で、朝から晩まで齷齪あくせくしているような島田をさえ憐れに眺めた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
独創的たらんと齷齪あくせくするのは凡庸ぼんようなるがゆえである、と彼には思えた。
下品な鳶だと人が軽蔑していたのは、形ばかり鷹のように堂々としていながら、腐ったきたない食物をも念掛けて、齷齪あくせくとしてこれを拾ってあるくためであった。
また今にして早くそを知らむとする程小成の満足に齷齪あくせくたるものに非ざる也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
眼前の利にのみ齷齪あくせくして世界に二つとない自国の宝の値踏ねぶみをするいとまさえないとは、あまりに小国人しょうこくじんの面目を活躍させ過ぎた話である。
中等下等の婦女子に至っては、いずれも小商人根性があって些細ささいな事に齷齪あくせくする心がその品格までに現われて、何となくこせこせしたような様子が見えて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
自分等の母の為した如く終日台所に齷齪あくせくとして居る事は自分等に取つて苦痛であるけれども、ある程度にこれに時間を費すのは読書に費すのと等しく快楽である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
齷齪あくせく勉強すると云うことでは決して真の勉強は出来ないだろうと思う。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
我々は落付いた眼に笑をたたえて又齷齪あくせくと先へ進む事が出来ます。
李中行 もう帰るのか。そんなに齷齪あくせく働かなくっても好いではないか。
青蛙神 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それは論理的というよりもいっそう詩的であり、自然にたいして寛容であり、愛するか愛しないかが主眼であって、説明したり理解したりすることにそれほど齷齪あくせくしなかった。
それから中年後になって活動を開始したという人は、そのときはじめて何らかの信念を握った人で、それまでは自分の力だけで、自分の工夫だけで齷齪あくせくしていたのであります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
今度も「文藝日本」の依頼を、今日中に果たさうとして、朝から齷齪あくせくしてゐるのだが、材料に迷ふばかりで、題目とペンネームとだけを書いては棄て/\して時を過してゐた。
素材 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
齷齪あくせくとこせつく必要なく鷹揚自若おうようじじゃくと衆人環視のうちに立って世に処する事の出来るのは全く祖先が骨を折って置いてくれた結果といわなければならない。
『東洋美術図譜』 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
明治の四十年を長いと云うものは明治のなかに齷齪あくせくしているものの云う事である。後世から見ればずっと縮まってしまう。ずっと遠くから見ると一弾指いちだんしかんに過ぎん。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
西洋へ往きて勉強せずとも見物して来れば沢山なり。その上に御馳走を食ふて肥えて戻ればそれに上こす土産はなかるべし。余り齷齪あくせくと勉強して上手になり過ぎ給ふな。(六月二十九日)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
他の用いを望んで齷齪あくせく、白馬青雲を期することは本当の「道」を尋ねるものの道途をかえって妨げる=だが、この考はまだ何となく彼の頭のなかにすわりが悪いところもあった。
荘子 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
日本なぞに齷齪あくせくしているより、一日も早く上海に来給え。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
年の暮に、事を好むとしか思われない世間の人が、故意わざと短い日を前へ押し出したがって齷齪あくせくする様子を見ると、宗助はなおの事この茫漠ぼうばくたる恐怖の念におそわれた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そんなことでは縦令たといお前がどれ程齷齪あくせくして進んで行こうとも、急流をさかのぼろうとする下手へたな泳手のように、無益に藻掻もがいてしかも一歩も進んではいないのだ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それからまた小利しょうり齷齪あくせくする心がごく鋭い。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
空嘯そらうそぶける侯爵「金儲かねまうけのことなら、我輩わがはいの所では、山木、チト方角が違ふ様ぢヤ——新年早々から齷齪あくせくとして、金儲かねまうけも骨の折れたものぢやの」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
何故お前はそんなに齷齪あくせくとして歩いているのだ。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
むしろ早く思い棄ててさらに良縁を求むるこそけれ、世間おのずから有為の男子に乏しからざるを、彼一人のために齷齪あくせくする事のおろかしさよと、思いも寄らぬ勧告の腹立たしく
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
と言って見て、情婦のふところへと急ぎつつあるような、意気揚々とした車上の人を見送った。榊も正太も無言の侮辱を感じた。榊は齷齪あくせくと働いて得た報酬を一夕の歓楽になげうとうと思った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すなわちただ敵をろう、前に進もうという考えで齷齪あくせくするあいだは、勝つことも進むこともおぼつかない、しかるに一歩一寸退しりぞく余裕があれば、その突嗟とっさに敵のすきがわかる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
私自身にとっても、この女のために……まさしくこの女のためのみに齷齪あくせく思っている間に、五年という歳月は昨日今日きのうきょうと流れるごとく過ぎてしまって、彼女は今年もう二十七になるのである。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
父は性質として齷齪あくせくなさいません。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
ほんに一日いちにち齷齪あくせく
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
近頃出来の頭の小さい軽薄な地蔵に比すれば、頭が余程大きく、曲眉豊頬きょくびほうきょうゆったりとした柔和の相好、少しも近代生活の齷齪あくせくしたさまがなく、大分ふるいものと見えて日苔が真白について居る。
地蔵尊 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
何かないかな、永らく人間社会の観察をおこたったから、今日は久し振りで彼等が酔興に齷齪あくせくする様子を拝見しようかと考えて見たが、生憎あいにく主人はこの点に関してすこぶる猫に近い性分しょうぶんである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この命なにを齷齪あくせく
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
欲をかわくな齷齪あくせくするなと常々妾にさとされた自分の言葉に対しても恥かしゅうはおもわれぬか、どうぞ柔順すなおに親方様の御異見について下さりませ、天にそびゆる生雲塔しょううんとうは誰々二人で作ったと
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
雖然けれども學士の篤學なことは、單に此の小ツぽけな醫學校内ばかりで無く、廣く醫學社會に知れ渡ツた事柄で、學士に少しのやま氣と名聞みやうもん齷齪あくせくするといふ風があツたならば、彼はとうに博士になツてゐたのだ。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
久「成程多助さん、そこへ考えが附かなかったから、斯うやって齷齪あくせく辛いのもいとわないで稼ぐのは、今に立派な旦那になろうと思うからだが、くなるのも悪くなるのもみんな其の人の徳不徳で、明樽買は明樽買かねえ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
近頃出来の頭の小さい軽薄な地蔵に比すれば、頭が余程大きく、曲眉きょくび豊頬ほうきょうゆったりとした柔和にゅうわ相好そうごう、少しも近代生活の齷齪あくせくしたさまがなく、大分ふるいものと見えて日苔ひごけが真白について居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
半日に一枚の浴衣ゆかたを縫いあげるのはさして苦でもなかったらしいが、創作の気分のみなぎってくるおりでも、米の代、小遣こづかい銭のために齷齪あくせくと針をはこばなくてはならなかったことを想像すると、わびしさに胸が一ぱいになる。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
みね「お前はよかろうがわたしゃ詰らないよ、本当にお前の為に寝ないで齷齪あくせくと稼いでいる女房の前も構わず、女なんぞを引きずり込まれては、私のような者でもあんまりだ、あれはういう訳だと明かして云ってお呉れてもいゝじゃないか」
事業本位で齷齪あくせく膏汗あぶらあせを流して生き、且つ死ぬる事が、与へられた束の間の生のうちに次から次と美しき幻を追ひ、充実してそれに酔ひながら死ぬる享楽本位の生活よりも果してどれ丈け人生本来の意義に叶つた事か、それが第一疑問である。
幾年か後に、クロッス夫人がファラデーの実験室に来た時に、学界の空気に感心したと見えて、ファラデーに「俗人の浅墓あさはかな生活や日日の事に齷齪あくせくするのとは全くの別天地で、こんな所で研究をしておられたら、どんなに幸福でしょう」と言った。
夜番よばんのために正宗まさむねの名刀と南蛮鉄なんばんてつ具足ぐそくとを買うべく余儀なくせられたる家族は、沢庵たくあん尻尾しっぽかじって日夜齷齪あくせくするにもかかわらず、夜番の方ではしきりに刀と具足の不足を訴えている。
夜烏子は山の手の町に居住している人たちが、意義なき体面にわずらわされ、虚名のために齷齪あくせくしているのに比して、裏長屋に棲息している貧民の生活が遥に廉潔れんけつで、また自由である事をよろこび、病余失意の一生をここに隠してしまったのである。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
眼前の小利害にのみ齷齪あくせくせず、真に殖産工業の発達を計り、世界の進歩に後れぬようにしようと志す人は、もう少し基礎的科学の研究を重んじ、またこれを応用しようという場合には、少し気を永くしてあまりに急な成効を期待しないようにしなければならぬと思われる。
物理学の応用について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そうです、一度もお目にかかりませんでした。あなたはそれ以来ずっとテルソン商社の被後見人ですのに、わたしはそれ以来ずっとテルソン商社のほかの事務にばかり齷齪あくせくしていたのです。感情なんて! わたしにはそんなものを持つ時まもなく、機会もありません。
「まあ考えてみたまえ、」と彼は言った、「馴染なじみのない土地で、愛する者たちから遠く離れて、そのまま死ぬかもしれないのだ! どんな厭なことでもそれよりはましだ。それにまた、これから幾年生きるかしれないが、それほど齷齪あくせくするにも及ぶまいじゃないか……。」
天氣てんきでも好くつて見ろ、蟹め、あわきながら、世界せかいひろくして走り廻つてゐるからな。俺は何うだ、繪具とテレビンとに氣を腐らして、年中ねんぢゆう齷齪あくせくしてゐる………それも立派な作品でも出來ればだが、ま、覺束おぼつかない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あの風流の人が営々として花作の爺さんのやうに齷齪あくせくしたらうとも思はれないから、自然づくり、お手数かけずのヒョロケ菊かモジャモジャ菊かバサケ菊で、それのおのづからに破れまがきかなんかにりかゝり咲きに星光日精の美をあらはしたのを賞美したことだらうと想はれて
菊 食物としての (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「いや、そうか。無理もないこと。——だが其許そこもとのような人間を、そう齷齪あくせくと、功利に疲らせて、御自身勿体ないと思わぬかな。——山中人の人生にも、なかなか深い意義もある。どうでござる、洲股すのまたなど捨てて、其許そこもとも、この山へ一庵をむすんで引き移って参られぬか」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弟よ、私は自殺をする。私は家を興そうとして、物質ばかりに齷齪あくせくした。そうしてそのため二人の人をさえ殺した。一人は大金を持っていたからだ。一人は私の犯罪を知って、恐喝をしに来たからだ。自責のために私は死ぬ。私が縊死をした松の木の下を、試みに掘って見るがよい。二つの骸骨が出るであろう。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ト僕ガ言つてはヤツパリ広目屋臭ひろめやくさい、おい悪言あくげんていするこれは前駆ぜんくさ、齷齪あくせくするばかりが平民へいみんの能でもないから、今一段の風流ふうりう加味かみしたまへたゞ風流ふうりうとは墨斗やたて短冊たんざく瓢箪へうたんいひにあらず(十五日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
塚山はその性情と、またその哲学観とから、人生に対して極端な絶望を感じているので、おたみが正しい職業について、あるいは貧苦に陥り、あるいはまた成功して虚栄の念に齷齪あくせくするよりも、溝川どぶがわを流れるあくたのような、無知放埒むちほうらつな生活を送っている方が、かえってその人には幸福であるのかも知れない。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)