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齷齪
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あくせく
ふりがな文庫
“
齷齪
(
あくせく
)” の例文
この話は、けだし僧正が衆弟子の出家たる本分を忘れて、貨財の末に
齷齪
(
あくせく
)
たるを
憫
(
あわれ
)
んで、いささか頂門の一針を加えられたものであろう。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
米国の大統領リンカンがまだ田舎弁護士で
齷齪
(
あくせく
)
してゐた頃、ある時訴訟用で小さな田舎町に旅立をしなければならぬ事になつた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
長いこと沈鬱な心境を辿り、懊悩と
煩悶
(
はんもん
)
との月日を送って来た捨吉には、
齷齪
(
あくせく
)
とした自分を嘲り笑いたいような心が起って来た。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ファラデーに「俗人の
浅墓
(
あさはか
)
な生活や日日の事に
齷齪
(
あくせく
)
するのとは全くの別天地で、こんな所で研究をしておられたら、どんなに幸福でしょう」
ファラデーの伝:電気学の泰斗
(新字新仮名)
/
愛知敬一
(著)
空嘯
(
そらうそぶ
)
ける侯爵「
金儲
(
かねまうけ
)
のことなら、
我輩
(
わがはい
)
の所では、山木、チト方角が違ふ様ぢヤ——新年早々から
齷齪
(
あくせく
)
として、
金儲
(
かねまうけ
)
も骨の折れたものぢやの」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
▼ もっと見る
だが
其許
(
そこもと
)
のような人間を、そう
齷齪
(
あくせく
)
と、功利に疲らせて、御自身勿体ないと思わぬかな。——山中人の人生にも、なかなか深い意義もある。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
家庭の事にのみ
齷齪
(
あくせく
)
として、その長所を発揮する機会なからしむるが如きは、一面国家の人物経済の上から見てもまた惜しむべきことである。
夫婦共稼ぎと女子の学問
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
そして
齷齪
(
あくせく
)
と生活してる人々の悪口を言いながら、自分の
懶惰
(
らんだ
)
を慰めていた。その多少重々しい皮肉な冗談は、人を笑わせずにはおかなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ものの五町とも
距
(
へだ
)
たらぬのだが、
齷齪
(
あくせく
)
と
糧
(
かて
)
を爭ふ十萬の市民の、我を忘れた血聲の喧囂さへ、浪の響に消されてか、敢て此處までは傳はつて來ぬ。
漂泊
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
私はその頃心の中に色々な問題をあり余る
程
(
ほど
)
持っていた。そして始終
齷齪
(
あくせく
)
しながら何一つ自分を「満足」に近づけるような仕事をしていなかった。
小さき者へ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
かく考えると
齷齪
(
あくせく
)
として、あるものを無しと言い、無いものを有ると見ても、とうてい永続せぬものである。早晩その真相は
暴露
(
ばくろ
)
されるものである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
齷齪
(
あくせく
)
とこせつく必要なく
鷹揚自若
(
おうようじじゃく
)
と衆人環視の
裡
(
うち
)
に立って世に処する事の出来るのは全く祖先が骨を折って置いてくれた結果といわなければならない。
『東洋美術図譜』
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
事業本位で
齷齪
(
あくせく
)
と
膏汗
(
あぶらあせ
)
を流して生き、且つ死ぬる事が、与へられた束の間の生のうちに次から次と美しき幻を追ひ
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
お前はよかろうが
私
(
わたし
)
ゃ詰らないよ、本当にお前の為に寝ないで
齷齪
(
あくせく
)
と稼いでいる女房の前も構わず、女なんぞを
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
あの風流の人が営々として花作の爺さんのやうに
齷齪
(
あくせく
)
したらうとも思はれないから、自然づくり、お手数かけずのヒョロケ菊かモジャモジャ菊かバサケ菊で
菊 食物としての
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
自分等の母の為した如く終日台所に
齷齪
(
あくせく
)
として居る事は自分等に取つて苦痛であるけれども、
或
(
ある
)
程度に
之
(
これ
)
に時間を費すのは読書に費すのと等しく快楽である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
中等下等の婦女子に至っては、いずれも小商人根性があって
些細
(
ささい
)
な事に
齷齪
(
あくせく
)
する心がその品格までに現われて、何となくこせこせしたような様子が見えて居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
下品な鳶だと人が軽蔑していたのは、形ばかり鷹のように堂々としていながら、腐ったきたない食物をも念掛けて、
齷齪
(
あくせく
)
としてこれを拾ってあるくためであった。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
あるいはまた成功して虚栄の念に
齷齪
(
あくせく
)
するよりも、
溝川
(
どぶがわ
)
を流れる
芥
(
あくた
)
のような、
無知放埒
(
むちほうらつ
)
な生活を送っている方が、かえってその人には幸福であるのかも知れない。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お
上
(
かみ
)
女中、お
下
(
しも
)
女中、三十人からの女中が一日、
齷齪
(
あくせく
)
とすわる暇もなく、ざわざわしていた家である。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
如何
(
どう
)
すれば旨い物を
喰
(
く
)
い
好
(
い
)
い着物を着られるだろうかと云うような事にばかり心を引かれて、
齷齪
(
あくせく
)
勉強すると云うことでは決して真の勉強は出来ないだろうと思う。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
雖然
(
けれども
)
學士の篤學なことは、單に此の小ツぽけな醫學校内ばかりで無く、廣く醫學社會に知れ渡ツた事柄で、學士に少しのやま氣と
名聞
(
みやうもん
)
に
齷齪
(
あくせく
)
するといふ風があツたならば
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
軍服を
著
(
き
)
て、役所の帰りに女に
逢
(
あ
)
いには行かれません。それに
較
(
くら
)
べると主人は気楽ですから、千住では
頼
(
たよ
)
りにして、
頻
(
しき
)
りに
縋
(
すが
)
られます。父は性質として
齷齪
(
あくせく
)
なさいません。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
「斯うやって
齷齪
(
あくせく
)
している中に白髪が生えて、あたら一生を終るのだろう。可哀そうな連中だ」
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
他の用いを望んで
齷齪
(
あくせく
)
、白馬青雲を期することは本当の「道」を尋ねるものの道途を
却
(
かえ
)
って妨げる=だが、この考はまだ何となく彼の頭のなかに
据
(
すわ
)
りが悪いところもあった。
荘子
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
今度も「文藝日本」の依頼を、今日中に果たさうとして、朝から
齷齪
(
あくせく
)
してゐるのだが、材料に迷ふばかりで、題目とペンネームとだけを書いては棄て/\して時を過してゐた。
素材
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
むしろ早く思い棄てて
更
(
さら
)
に良縁を求むるこそ
良
(
よ
)
けれ、世間
自
(
おの
)
ずから有為の男子に乏しからざるを、彼一人のために
齷齪
(
あくせく
)
する事の
愚
(
おろ
)
かしさよと、思いも寄らぬ勧告の腹立たしく
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
建築、道路、料理、娯楽、——いずれも日本は上海に
若
(
し
)
かない。上海は西洋も同然である。日本なぞに
齷齪
(
あくせく
)
しているより、一日も早く上海に来給え。——そう客を促しさえした。
上海游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
眼前の小利害にのみ
齷齪
(
あくせく
)
せず、真に殖産工業の発達を計り、世界の進歩に後れぬようにしようと志す人は、もう少し基礎的科学の研究を重んじ、またこれを応用しようという場合には
物理学の応用について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そうです、一度もお目にかかりませんでした。あなたはそれ以来ずっとテルソン商社の被後見人ですのに、わたしはそれ以来ずっとテルソン商社の
他
(
ほか
)
の事務にばかり
齷齪
(
あくせく
)
していたのです。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
私自身にとっても、この女のために……まさしくこの女のためのみに
齷齪
(
あくせく
)
思っている間に、五年という歳月は
昨日今日
(
きのうきょう
)
と流れるごとく過ぎてしまって、彼女は今年もう二十七になるのである。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
近頃出来の頭の小さい軽薄な地蔵に比すれば、頭が余程大きく、
曲眉豊頬
(
きょくびほうきょう
)
ゆったりとした柔和の相好、少しも近代生活の
齷齪
(
あくせく
)
したさまがなく、大分ふるいものと見えて日苔が真白について居る。
地蔵尊
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
始終何物かに
策
(
むち
)
うたれ駆られてゐるやうに学問といふことに
齷齪
(
あくせく
)
してゐる。これは自分に或る働きが出来るやうに、自分を
為上
(
しあ
)
げるのだと思つてゐる。其目的は幾分か達せられるかも知れない。
妄想
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
近頃出来の頭の小さい軽薄な地蔵に比すれば、頭が余程大きく、
曲眉
(
きょくび
)
豊頬
(
ほうきょう
)
ゆったりとした
柔和
(
にゅうわ
)
の
相好
(
そうごう
)
、少しも近代生活の
齷齪
(
あくせく
)
したさまがなく、大分ふるいものと見えて
日苔
(
ひごけ
)
が真白について居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ト僕ガ言つてはヤツパリ
広目屋臭
(
ひろめやくさ
)
い、
追
(
おい
)
て
悪言
(
あくげん
)
を
呈
(
てい
)
するこれは
前駆
(
ぜんく
)
さ、
齷齪
(
あくせく
)
するばかりが
平民
(
へいみん
)
の能でもないから、今一段の
風流
(
ふうりう
)
気
(
き
)
を
加味
(
かみ
)
したまへ
但
(
たゞ
)
し
風流
(
ふうりう
)
とは
墨斗
(
やたて
)
、
短冊
(
たんざく
)
瓢箪
(
へうたん
)
の
謂
(
いひ
)
にあらず(十五日)
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
私は家を興そうとして、物質ばかりに
齷齪
(
あくせく
)
した。そうしてそのため二人の人をさえ殺した。一人は大金を持っていたからだ。一人は私の犯罪を知って、恐喝をしに来たからだ。自責のために私は死ぬ。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
余り
齷齪
(
あくせく
)
と勉強して上手になり過ぎ給ふな。(六月二十九日)
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
そんなに
齷齪
(
あくせく
)
働かなくっても好いではないか。
青蛙神
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ほんに
一日
(
いちにち
)
齷齪
(
あくせく
)
と
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
ものの五町とも距たらぬのだが、
齷齪
(
あくせく
)
と糧を争ふ十万の市民の、我を忘れた血声の
喧囂
(
さけび
)
さへ、浪の響に消されてか、敢て此処までは伝はツて来ぬ。
漂泊
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
何処
(
どこ
)
へ行くのだ。何故お前の眼はそんなに光るのだ。何故お前はそんなに物を捜してばかりいるのだ。何故お前はそんなに
齷齪
(
あくせく
)
として歩いているのだ。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
過去はこれ程馬鹿気て、愉快で、変てこに
滑稽
(
こっけい
)
に通過されたのだと教えて
呉
(
く
)
れるのです。我々は落付いた眼に笑を
湛
(
たた
)
えて又
齷齪
(
あくせく
)
と先へ進む事が出来ます。
岡本一平著並画『探訪画趣』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただ徳川内府のお覚えのみを気がねして
齷齪
(
あくせく
)
と、夜半まで駈ける小心な大名どもの肚の底が
見
(
み
)
え
透
(
す
)
いて
愍
(
あわ
)
れが深い……。あはははは、思うても暑いことだな
大谷刑部
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そんなことでは
縦令
(
たとい
)
お前がどれ程
齷齪
(
あくせく
)
して進んで行こうとも、急流を
遡
(
さかのぼ
)
ろうとする
下手
(
へた
)
な泳手のように、無益に
藻掻
(
もが
)
いてしかも一歩も進んではいないのだ。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それから中年後になって活動を開始したという人は、そのときはじめて何らかの信念を握った人で、それまでは自分の力だけで、自分の工夫だけで
齷齪
(
あくせく
)
していたのであります。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それは論理的というよりもいっそう詩的であり、自然にたいして寛容であり、愛するか愛しないかが主眼であって、説明したり理解したりすることにそれほど
齷齪
(
あくせく
)
しなかった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
子供のために、
枉
(
ま
)
げて来り給えなどいと
切
(
せ
)
めて勧めけるに、
良人
(
りょうじん
)
と
児
(
じ
)
との愛に引かれて、
覚束
(
おぼつか
)
なくも、
舅姑
(
きゅうこ
)
の
機嫌
(
きげん
)
を取り、裁縫やら子供の世話やらに
齷齪
(
あくせく
)
することとなりたるぞ
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
実に
酷
(
ひど
)
い有様です。それからまた
小利
(
しょうり
)
に
齷齪
(
あくせく
)
する心がごく鋭い。こうすれば将来どういう事が起るとかあるいは一村一国にこういう関係が起ろうなどということは夢にも思わない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
欲をかわくな
齷齪
(
あくせく
)
するなと常々妾に
諭
(
さと
)
された自分の言葉に対しても恥かしゅうはおもわれぬか、どうぞ
柔順
(
すなお
)
に親方様の御異見について下さりませ、天に
聳
(
そび
)
ゆる
生雲塔
(
しょううんとう
)
は誰々二人で作ったと
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
半日に一枚の
浴衣
(
ゆかた
)
を縫いあげるのはさして苦でもなかったらしいが、創作の気分の
漲
(
みなぎ
)
ってくるおりでも、米の代、
小遣
(
こづか
)
い銭のために
齷齪
(
あくせく
)
と針をはこばなくてはならなかったことを想像すると
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
“齷齪”の意味
《形容動詞》
齷齪(あくせく、古:あくさく、あくそく)
小さなことにこだわること。また、休む間無く仕事などをすること。
(出典:Wiktionary)
齷
漢検1級
部首:⿒
24画
齪
漢検1級
部首:⿒
22画
“齷”で始まる語句
齷促
齷齬
齷齰