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麻痺
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まひ
ふりがな文庫
“
麻痺
(
まひ
)” の例文
私は
身動
(
みうご
)
きもせず、私の聖師の手の下に立ちつくしてゐた。私の拒絶は忘られ——恐怖は征服され——私の爭ひは
麻痺
(
まひ
)
してしまつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
予は即座に自殺を決心したれども、予が性来の
怯懦
(
けふだ
)
と、留学中
帰依
(
きえ
)
したる
基督教
(
キリストけう
)
の信仰とは、不幸にして予が手を
麻痺
(
まひ
)
せしめしを
如何
(
いかん
)
。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして属名の Narcissus は
麻痺
(
まひ
)
の意で、それはその草に含まれているナルキッシネという毒成分に
基
(
もと
)
づいたものであろう。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
八が頭の中は
混沌
(
こんとん
)
としてゐる。飲みたい酒の飲まれない苦痛が、最も強い感情であつて、それが悟性と意志とを
殆
(
ほとん
)
ど全く
麻痺
(
まひ
)
させてゐる。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
一部の神経が
麻痺
(
まひ
)
して腰が立たなくなったり、何病とも知れない病人同様の状態になって
蒲団
(
ふとん
)
を頭からかぶって寝込んでしまったりする。
鎖骨
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
この悪に
麻痺
(
まひ
)
した狂人が短刀を持っている——それは中田に取って、恐るべき事実であった。中田は思わず飛び立って遁げだそうとした。
自殺
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
重吉は人の
噂
(
うわさ
)
、世間の出来事、日常見聞する事にその例を取って、努めて良心を
麻痺
(
まひ
)
させ
廉耻
(
れんち
)
の心を押えるような方法を考えた。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
自分のうちに二つの流れを流しつつ、それが相剋する本質であるということについて感覚が
麻痺
(
まひ
)
しているようなもののありように対して。
獄中への手紙:07 一九四〇年(昭和十五年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ツマリ頭ノ中ノ、人物ヤ物ノ名称ヲ伝達スル神経ガ
麻痺
(
まひ
)
シタノミデ、知覚ヤ伝達ヲツカサドル組織全部ガ麻痺シテシマッタワケデハナイ。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
冬の夜の美しい女スリの肌のぬくみや友禅の夜具の
檻
(
おり
)
に、いかにあの頃の、血を荒しもだえたことか。良心と
麻痺
(
まひ
)
との境に悩んだことか。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
というか、それとも何もかも、あまりに赤くて、全体的な赤さが、僕の赤に対する感覚を
麻痺
(
まひ
)
させてしまったという方がいいかも知れない。
人体解剖を看るの記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
○ジャズの
麻痺
(
まひ
)
、映画の麻痺、それで大概の興味は平凡なものに思える。
始終
(
しじゅう
)
習慣的に考えているのは「何か
面白
(
おもしろ
)
いものは無いか知らん。」
現代若き女性気質集
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その他、数人の同行者が一時におかされたるの例あり。結局は空腹に乗じて、人体内に一種強力の
麻痺
(
まひ
)
を与うる空気のためなるべし、
云云
(
うんぬん
)
。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
自分がどんな
奴隷
(
どれい
)
だか知らずに、働けば楽になると思って働く。労働者たちは、皆この感受性を
麻痺
(
まひ
)
させられてしまったのだ。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
心は連絡を——原因と結果との関連を——確立しようと努め、それができないので、一種の一時的な
麻痺
(
まひ
)
状態に陥るんだね。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
反覆による
麻痺
(
まひ
)
だろうけれど、見ていると根本的に彼らの道義感を疑いたくなる。私は、無意識のうちに牛の肩を持っている自分を発見した。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
ただほんの一瞬間、本能的な恐怖のために判断が
麻痺
(
まひ
)
する。次の瞬間には命を賭する気持ちになれるにしても、最初は思わず
我
(
われ
)
を忘れて逃げる。
地異印象記
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
道徳上の厳格主義が人の身振りを
麻痺
(
まひ
)
させ声をふさぐことが多ければ多いほど、謝肉祭の数日間、ますます身振りは大胆になり声は解放された。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
文明は人の神経を
髪剃
(
かみそり
)
に
削
(
けず
)
って、人の精神を
擂木
(
すりこぎ
)
と鈍くする。刺激に
麻痺
(
まひ
)
して、しかも刺激に
渇
(
かわ
)
くものは
数
(
すう
)
を尽くして新らしき博覧会に集まる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
肉躰
(
にくたい
)
も精神もすっかり
麻痺
(
まひ
)
して、自分がいまなにをしているかも、どうしてそんな
処
(
ところ
)
に立っているかもわからなかった。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
だが、それは
甚
(
はなは
)
だしく不気味であったにも拘らず、同時に怪しくも彼女の道念を
麻痺
(
まひ
)
させる力を持っているかと見えた。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼女の心臓は激しく鼓動して、今にも
麻痺
(
まひ
)
しそうな気がした。もうたまらなくなってきた。彼は死人のように青ざめた顔を、女の方へふり向けた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
その夜は別に苦しみという事はないけれどもやはり足も手も
麻痺
(
まひ
)
してしまって感覚のない事は
以前
(
もと
)
の通りであります。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
常々心臓が
悪
(
わ
)
るくて近年は家から一歩も出ない主人である。この寒さに
麻痺
(
まひ
)
でもおこしてたおれているのではなかろうか——常にはこの不安があった。
雪
(新字新仮名)
/
楠田匡介
(著)
彼は際限なき暗黒のうちにおける
死屍
(
しかばね
)
の
盲
(
めし
)
いたる冒険を考える。底なき寒さは彼を
麻痺
(
まひ
)
する。彼の両手は
痙攣
(
けいれん
)
し、握りしめられ、そして虚無をつかむ。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
おもてむきは、心臓
麻痺
(
まひ
)
という事になっているけれども、たしかに自殺だ。うちで使っていた色の黒い料理人と通じて、
外聞
(
がいぶん
)
が悪くなって自殺したのだ。
春の枯葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私の背後で、病人のすこし
嗄
(
しゃが
)
れた声がした。それが不意に私をそんな一種の
麻痺
(
まひ
)
したような状態から
覚醒
(
かくせい
)
させた。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼等の四肢は
麻痺
(
まひ
)
してきだした。意識が遠くなりかけた。破れ小屋でもいい、それを見つけて一夜を明かしたい!
渦巻ける烏の群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
もつと疲れ切つて、何も彼も
麻痺
(
まひ
)
してしまひたかつた。ゆき子は、少しづつ心細くなつて来てゐる。夜の雨は、光つて、汚れた硝子窓に降り込めてゐる。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
穏かに眠れる妻の顔、それを幾度か
窺
(
うかが
)
って自己の良心のいかに
麻痺
(
まひ
)
せるかを自ら責めた。そしてあくる朝贈った手紙は、
厳乎
(
げんこ
)
たる師としての態度であった。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
その頃ショパンはリストに対して「群衆が私を
威嚇
(
いかく
)
する。その息で窒息させられそうだ。私は不思議な光景に
麻痺
(
まひ
)
させられ、見知らぬ顔の海が私を
聾
(
つんぼ
)
にする」
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
揺つてみても正体がないので、それから大騒ぎになつたのですが、継子さんはもうそれぎり
蘇生
(
いきかえ
)
らないのです。お
医師
(
いしゃ
)
の診断によると、心臓
麻痺
(
まひ
)
ださうで……。
停車場の少女:――「近代異妖編」
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
げに
夜深
(
よふか
)
くして猛虎の声に山月の高き島田の気合に、さしも新徴組の荒武者が五体ピリピリと
麻痺
(
まひ
)
します。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
したがって、そこひの人のごとく、たとい眼球はあっても、視神経が
麻痺
(
まひ
)
しておれば、色は見えませぬ。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
あの深夜に独り床上に坐して苦痛を苦痛と感ずる時こそ
麻痺
(
まひ
)
して自ら知らざる状態にあるよりはより多く生くる時であると考えたような自分の身のどんづまりの方へ。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
星田が捕まった事さえも当然の事と思えるくらい
麻痺
(
まひ
)
してしまった頭の片隅で、ただ無意味に「サイアク、オククウ」という言葉を考えながらヨロヨロとよろめき退いた。
殺人迷路:07 (連作探偵小説第七回)
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
いくら
艶
(
なまめ
)
かしく縋りつかれたからとてそんな恐怖のタダ中で、味な気なぞが起るものか! そんなバカをしたら、恐怖とアレが入り交じって、心臓が
麻痺
(
まひ
)
してしまうであろう。
雷嫌いの話
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
不作法
(
ぶさはふ
)
な
言辭
(
げんじ
)
に
麻痺
(
まひ
)
して
居
(
ゐ
)
る
彼等
(
かれら
)
はどうしたら
相互
(
さうご
)
に
感動
(
かんどう
)
を
與
(
あた
)
へ
得
(
う
)
るかと
苦心
(
くしん
)
しつゝあつたかと
思
(
おも
)
ふ
樣
(
やう
)
な
卑猥
(
ひわい
)
な一
句
(
く
)
が
唐突
(
だしぬけ
)
に
或
(
ある
)
一
人
(
にん
)
の
口
(
くち
)
から
出
(
で
)
ると
他
(
た
)
の一
人
(
にん
)
が
又
(
また
)
それに
應
(
おう
)
じた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
神経の
麻痺
(
まひ
)
したその腕は、なんの
痛痒
(
つうよう
)
も感じないと見え、引っ込まそうとはしなかった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
また決して閏土のような苦しみと
麻痺
(
まひ
)
との生活をするようになることをも願わない。
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
十七日の月が出てきて、加茂川の河原を通るころ、前駆の者の持つ
松明
(
たいまつ
)
の淡い明りに
鳥辺野
(
とりべの
)
のほうが見えるというこんな不気味な
景色
(
けしき
)
にも源氏の恐怖心はもう
麻痺
(
まひ
)
してしまっていた。
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
これを
嘲
(
あざけ
)
るのはその心霊の
麻痺
(
まひ
)
を白状するのである。僕の願は
寧
(
むし
)
ろ、どうにかしてこの問を心から発したいのであります。ところがなかなかこの問は口から出ても心からは出ません。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
女は恐ろしさに
麻痺
(
まひ
)
したようになっている。その
咽
(
のど
)
からは自分にもほとんど聞えない位な、
咳嗄
(
しわが
)
れた叫び声が出た。
顳顬
(
こめかみ
)
と
頬
(
ほお
)
とをしっかり抑えられていて、頭を動かす事が出来ない。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
やがて愛らしい花嫁となる
処女
(
むすめ
)
が、
祝言
(
しゅうげん
)
の前晩に
頓死
(
とんし
)
するのもある、母親の長い嘆きとなるのも知らずに。
麻痺
(
まひ
)
した
心
(
しん
)
の臓のところに、縫いかけた晴れ着をしっかり抱き締めたりしてな。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
天賦的に
引込思案
(
ひっこみじあん
)
な者ではなく、男子専権の社会に圧迫されて、自主的に行動する意気を
麻痺
(
まひ
)
し、もしくはわざと遠慮気兼をして、万事に控目な依頼主義を取っているに過ぎないのですから
新婦人協会の請願運動
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
麻痺
(
まひ
)
の状態からわれに返って、わたしは準備をした。そして機を待った。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
彼
(
か
)
の非道横着にして、人を
虐
(
しいた
)
げ世を逆して、
自
(
みず
)
から
慚死
(
ざんし
)
する
能
(
あた
)
わざる者の如きは、これ良心の
麻痺
(
まひ
)
病に
罹
(
かか
)
りたるなり、彼らが大胆は強盗殺人者の大胆なり、未だ剛勇を以て許すべからざるなり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
昨日も彼はリュックを肩にして、ある知りあいの農家のところまで
茫々
(
ぼうぼう
)
とした野らを歩いていた。茫々とした草原に細い白い路が走っていて、真昼の
静謐
(
せいひつ
)
はあたりの空気を
麻痺
(
まひ
)
させているようだった。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
菓子は餓えた味覚を
麻痺
(
まひ
)
させながら舌の上で解けていった。
動物園の一夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「肺臓
麻痺
(
まひ
)
を伴う
脳溢血
(
のういっけつ
)
」之が医師の診断であった。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
“麻痺”の解説
麻痺(まひ、痲痹とも)とは、一般的には、四肢などが完全に機能を喪失していることや、感覚が鈍って、もしくは完全に失われた状態を指す。比喩的に使われることも多く、「金銭感覚が麻痺する」「交通麻痺(=極度の交通渋滞や災害等により、道路機能が失われること)」などの用例がある。
(出典:Wikipedia)
麻
常用漢字
中学
部首:⿇
11画
痺
漢検1級
部首:⽧
13画
“麻痺”で始まる語句
麻痺薬
麻痺剤
麻痺状態
麻痺力
麻痺状
麻痺藥
麻痺症状
麻痺的症状