風雅ふうが)” の例文
雪をはらふは落花らくくわをはらふにつゐして風雅ふうがの一ツとし、和漢わかん吟咏ぎんえいあまた見えたれども、かゝる大雪をはらふは風雅ふうがすがたにあらず。
河部かわべの渡しで死んだとき、彼は胸に大海の茶入れをけていたという。あの豪骨ごうこつでも、やさしい風雅ふうがの一面があったとみえる。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
竹はだんだん彼にうるさい思いをさせ、よわよわしい末流の風雅ふうがにつき落されそうで、危なくてひやひやしてならなかった。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
渡る。橋の少し上にドン/\がある。低いけれどやっぱり滝だから、一寸風雅ふうがを添えている。僕はあすこを通ると、ついその小説を思い出すんだ
田園情調あり (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかしこと生花いけばな茶道さどうによって教育され、和歌や昔物語によって、物のあわれの風雅ふうがを知ってた彼の妻は、良人と共に、その楽しみを別ち味わうことができた。
引連ひきつれいではしたれどさわがしき所は素より好まねば王子わうじあたりへ立越てかへで若葉わかば若緑わかみどりながめんにも又上野より日暮ひぐらし里などへ掛る時はかれ醉人の多くして風雅ふうがを妨げ面白おもしろからねば音羽通を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこへきたない支那人が二三人、奇麗きれい鳥籠とりかごげてやって来た。支那人てやつ風雅ふうがなものだよ。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かくのごときは人工の美にして天然てんねんの美にあらず、谷深き山路に春を訪ね花を探りて歩く時流れをへだつるかすみおくに思いも寄らず啼き出でたる藪鶯の声の風雅ふうがなるにかずと
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
只〻數多き公卿くげ殿上人てんじやうびとの中にて、知盛とももり教經のりつねの二人こそ天晴あつぱれ未來事みらいことある時の大將軍と覺ゆれども、これとても螺鈿らでん細太刀ほそだち風雅ふうがを誇る六波羅上下の武士を如何にするを得べき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
梅の花ぢやよ、——巣鴨すがものさる御屋敷の庭に、大層見事な梅の古木がある。この二三日は丁度盛りで、時にはうぐひすも來るさうぢや。場所が場所だから、ぞく風雅ふうがも一向寄り付かない。
十一日午前七時青森に着き、田中ぼうう。この行風雅ふうがのためにもあらざれば吟哦ぎんがに首をひねる事もなく、追手をけてぐるにもあらざれば駛急しきゅうと足をひきずるのくるしみもなし。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
みずくきのあとも細々ほそぼそと、ながしたようにきつらねた木目もくめいた看板かんばんに、片枝折かたしおりたけちた屋根やねから柴垣しばがきへかけて、葡萄ぶどうつる放題ほうだい姿すがたを、三じゃくばかりのながれにうつした風雅ふうがなひとかま
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
牧之ぼくし老人は越後ゑちご聞人ぶんじんなり。かつて貞介朴実ていかいぼくじつもつてきこえ、しば/\県監けんかん褒賞はうしやうはいして氏の国称こくしようゆるさる。生計せいけい余暇よか風雅ふうがを以四方にまじはる。余が亡兄ぼうけい醒斎せいさい京伝の別号をう鴻書こうしよともなりしゆゑ、またこれぐ。
風雅ふうがの森のそこなひぞ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
かなり隔てている波越八弥の眼にも、その家の風雅ふうがな小門にかけてある看板の文字が、ありありとこう読めた。看板の木が新しいからである。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるに文政のころ此地の 邦君はうくん風雅ふうがをこのみ玉ひしゆゑ、かの二枚持主もちぬしより奉りければ、吉兵ヱヘ常信つねのぶの三幅対に白銀五枚、かの寺へもあつき賜ありて
持物等もちものとうに至る迄風雅ふうがでもなく意氣いきでも無くどうやら金の有さうな浪人らうにんとおゆうは大いに重四郎に惚込ほれこみしが翌日は上の宮へ參詣さんけいなし額堂がくだうにて重四郎はお勇とたゞ兩人差向さしむかひの折柄をりからお勇は煙草たばこ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかるに文政のころ此地の 邦君はうくん風雅ふうがをこのみ玉ひしゆゑ、かの二枚持主もちぬしより奉りければ、吉兵ヱヘ常信つねのぶの三幅対に白銀五枚、かの寺へもあつき賜ありて
玉造たまつくりの一角。——ここも変らない新開地的な色彩の中に、難波津なにわつのむかしのまま、こんもりと青葉の樹立こだちに抱えられた一宇いちうどう風雅ふうがな人の住居すまいあとがある。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
双坡楼そつはろうあふぎをいだしてふ、妓ももちたる扇をいだす。京水画をなし、余即興そくきやうしよす。これを見て岩居がんきよをはじめおの/\かべだいし、さら風雅ふうがきやうをもなしけり。
風雅ふうがの友が秦代しんだい名硯めいけんを手に入れたので、詩会を催すというから、こよいは一人で行ってくる」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
双坡楼そつはろうあふぎをいだしてふ、妓ももちたる扇をいだす。京水画をなし、余即興そくきやうしよす。これを見て岩居がんきよをはじめおの/\かべだいし、さら風雅ふうがきやうをもなしけり。
陣中、茶事さじふけり、風雅ふうがにうつつ抜かす事、言語道断。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こゝろ帰家かへりたきにありて風雅ふうがをうしなひ、古跡こせきをもむなしくよぎり、たゞ平々なみ/\たる旅人りよじんとなりて、きゝおよびたる文雅ぶんがの人をも剌問たづねざりしは今に遺憾ゐかんなり。嗟乎あゝとしけんせしをいかんせん。
風雅ふうがを談じている姿を、まぶたにえがいた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)