きらめ)” の例文
その鋭利えいりなる三尖衝角さんせんしやうかくそらきらめ電光いなづまごと賊船ぞくせん右舷うげん霹靂萬雷へきれきばんらいひゞきあり、極惡無道ごくあくむだう海蛇丸かいだまるつひ水煙すいゑんげて海底かいていぼつつた。
まことにかゝる都——これが名について神々の間にかのごとき爭ひありき、また凡ての知識の光この處よりきらめきいづ——の君ならば 九七—九九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
泥海ぬかるみに落つる星の影は、影ながらかわらよりもあざやかに、見るものの胸にきらめく。閃く影におど善男子ぜんなんし善女子ぜんにょしは家をむなしゅうしてイルミネーションに集まる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「お房か、ありや天眞爛熳てんしんらんまんだ。心は確に處女だ!………體だツて………」とまた頭にきらめく。と、激しく頭を振つて、「何だつて此様なことを考へる。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
貫一は彼をて女をぬすみてはしる者ならずや、とまづすいしつつ、ほ如何にやなど、飽かず疑へる間より、たちまち一片の反映はきらめきて、おぼろにも彼の胸のくらきを照せり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ここに一際夜の雲のこまやかに緑の色を重ねたのは、隅田へ潮がさすのであろう、水の影か、星がきらめく。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うみうえおだやかで、やがてひかりたかのぼるとなみは、いっそううつくしくきらめいて、前日ぜんじつまでのものすごさはどこへかえてしまい、帆船ほぶねや、小船こぶねや、汽船きせんうみうえかんで
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
然しジツと物の色に滲入しみいる光では無く、軽く物の表にうはついて動く光である。向うから高下駄を穿いて、雨傘をさした職工らしい男が来る。番傘がキラ/\と目にきらめいた。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
狭い掘割の両側には種々しゆじゆな樹が繁つて、それが月の光をして、美しいきらめきを水に投げた。はしんとして居た。ところ/″\にかゝつてゐる船のとまの中からは灯が見えた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
気味悪い眼球のようにきらめいているが、背後の鴨居には、祝詞のりとを書きつらねた覚え紙が、隙間なく貼り付けられていて、なかには莫大な、信徒の寄進高を記したものなどもあった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
れて光る夜の町々の灯——白い灯——紅い灯——電線の上から落ちる青い電光のきらめき——そういうものが窓の玻璃ガラスに映ったり消えたりした。寂しい雨の中を通る電車の音は余計に私を疲れさせた。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
きらめく林の黄色きいろい日
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
すすきの穂を丸く曲げて、左右から重なる金のきらめく中に織り出した半月はんげつの数は分からず。幅広に腰をおおう藤尾の帯を一尺隔てて宗近むねちか君と甲野こうのさんが立っている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
くちなはきらめきぬ、蜥蜴とかげも見えぬ、其他の湿虫しつちうぐんをなして、縦横じうわう交馳かうちし奔走せるさま一眼ひとめ見るだに胸悪きに、手足をばくされ衣服をがれ若き婦人をんな肥肉ふとりじし酒塩さかしほに味付けられて
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もし木立こだちは、そのけむりが、自分じぶんたちのしかばねけむりであったとったら、どんなにおどろいたことでしょう。やがて、夕日ゆうひしずんでくらくなると、燈火あかりがちらちらときらめきはじめました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
きらめくはいなづまか、とゞろくはいかづちか。 砲火ほうくわ閃々せん/\砲聲ほうせい殷々いん/\
普門品ふもんぼん、大悲の誓願ちかいを祈念して、下枝は気息奄々えんえんと、無何有むかうの里に入りつつも、刀尋段々壊とうじんだんだんねと唱うる時、得三は白刃を取直し、電光胸前むなさききらめき来りぬ。この景この時、室外に声あり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山も、空も氷をとおすごとく澄みきって、松の葉、枯木のきらめくばかり、晃々きらきらがさしつつ、それで、ちらちらと白いものが飛んで、奥山に、熊が人立じんりつして、針をくような雪であった。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
老爺ぢゞいにも小刀こがたなうごく、とならんで二挺にちやうひかり晃々きら/\きらめきはじめた……たなそこえだは、小刀こがたなかゞやくまゝに、あたかひれふるふとゆる、香川雪枝かがはゆきえも、さすがに青年わかものであつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小雨こさめの色、孤家ひとつやうちも、媼の姿も、さては炉の中の火さへ淡く、すべ枯野かれのに描かれた、幻の如きあいだに、ポネヒル連発銃の銃身のみ、青くきらめくまで磨ける鏡かと壁をて、弾込たまごめしたのがづツしり手応てごたえ
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)