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鐙
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あぶみ
ふりがな文庫
“
鐙
(
あぶみ
)” の例文
と、鞍の上でのけ
反
(
ぞ
)
ったが、
鐙
(
あぶみ
)
に
確
(
しか
)
と踏みこたえて、片手でわが眼に立っている矢を引き抜いたので、
鏃
(
やじり
)
と共に眼球も出てしまった。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三十年近く馬に乗らないと云ふ良人の姿勢が初め三四町の間は危な相に見えたが、間もなく
鐙
(
あぶみ
)
と腰との調子が決まつたらしい。
満蒙遊記:附 満蒙の歌
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
下駄の歯が
鐙
(
あぶみ
)
に
挟
(
はさ
)
まる。先生は大変困つてゐると、正門前の喜多床と云ふ髪結床の職人が大勢
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て、面白がつて笑つてゐたさうである。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
腕を折ったり、頭を割ったりした友人の思出や、
鐙
(
あぶみ
)
に足がひっからまった儘引きずられて死んだ人達の話が、恐怖の念を伴って私を悩した。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
ダンスさんが私に跳び下りて戸を敲いてくれと言ったので、ドッガーのくれた
鐙
(
あぶみ
)
にぶら下って私は降りた。ほとんどすぐに女中が戸を開いた。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
▼ もっと見る
ところがそのとき、彼が見たのは、悪魔が
鐙
(
あぶみ
)
をふんまえて立ちあがり、まさにその頭を自分にむかって投げつけようとしているところだった。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
鐙
(
あぶみ
)
が足に
絡
(
から
)
まつたか、それとも手綱に腰を
繋
(
しば
)
られたか、暫くは浮び上がる樣子もなく、そのまゝ引き潮に流されて、川下の方へ流れて行きます。
銭形平次捕物控:216 邪恋の償ひ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
半三郎はすばやく来て轡を取り
鐙
(
あぶみ
)
を押えた。彼はまっ蒼なひきつったような顔で、汗みずくになり、激しく喘いでいた。
菊千代抄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
また
発疹
(
はっしん
)
や病的な赤い
斑点
(
はんてん
)
なども見えていた。二、三人の者は、車の横木に
繩
(
なわ
)
を結わえてそれを
鐙
(
あぶみ
)
みたいに下にたらし、その上に足を休めていた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
倉光次郎は鞭を振い、
鐙
(
あぶみ
)
を蹴って一気に川に乗り入れて瀬尾に追いつくや、そのまま、むずと組みついた。二人は組み合ったまま川にどうと落ちた。
現代語訳 平家物語:08 第八巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
ペルシア、ギリシア、ローマ人も馬を重用し、ギリシア人殊に善く騎り馬上の競技を好みしが、
勒
(
くつわ
)
と
韁
(
たづな
)
ありて
鐙
(
あぶみ
)
なく、裸馬や布皮
被
(
き
)
せた馬に乗った。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そうして四人が交る代る嬢の肩を飛び越したり、嬢の左右の
鐙
(
あぶみ
)
伝いに馬の腹をまわったりして乗馬を交換して行った。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
低い
椽
(
えん
)
に腰を掛けたような具合にごく
鐙
(
あぶみ
)
の紐を短くして足を折って乗って居る。男でも女でも皆乗り方は同じです。私共も始めは大変に困りました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
と
負惜
(
まけをし
)
みを
言
(
い
)
つたものゝ、
家来
(
けらい
)
どもと
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあ
)
はせて、
舌
(
した
)
を
巻
(
ま
)
いたも
道理
(
だうり
)
。
鐙
(
あぶみ
)
の
真中
(
まんなか
)
が
其
(
そ
)
のシツペイのために
凹
(
くぼ
)
んで
居
(
ゐ
)
た——と
言
(
い
)
ふのが
講釈
(
かうしやく
)
の
分
(
ぶん
)
である。
怪力
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
第一に
鞍
(
くら
)
といい、
鐙
(
あぶみ
)
といい、
手綱
(
たづな
)
といい、いっさいの馬具が相違しているのであるから、いかなる素人でも西洋馬と知らずに牽き去るはずがないと、彼は思った。
半七捕物帳:58 菊人形の昔
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
気合をこめると八重襷——大坪流での小柴隠れ、体を斜めに片足の
鐙
(
あぶみ
)
、浮かせたままで駈け通る。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
男は
鐙
(
あぶみ
)
をとって、わたしをまず馬の上にのせてくれましたが、彼は鞍の上に手をかけたかと思うと
忽
(
たちま
)
ちほかの馬に乗り移って、膝で馬の両腹を押して
手綱
(
たづな
)
をゆるめました。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
金八が或時
大阪
(
おおさか
)
へ
下
(
くだ
)
った。その途中
深草
(
ふかくさ
)
を通ると、道に一軒の古道具屋があった。そこは商買の事で、ちょっと一
ト
眼見渡すと、
時代蒔絵
(
じだいまきえ
)
の結構な
鐙
(
あぶみ
)
がチラリと眼についた。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
首の
鐙
(
あぶみ
)
ずりのところも、肉などはまるっきりなくなって、
鞦
(
しりがい
)
がだらしなく後肢のほうへずりさがり、
馬勒
(
はみ
)
の重さにも耐えないというように、いつも、がっくりと首をたれている。
キャラコさん:10 馬と老人
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それを
夫
(
おつと
)
の君は心
憂
(
う
)
く思つて、出雲から大和の國にお上りになろうとして、お支度遊ばされました時に、片手は馬の鞍に懸け、片足はその
鐙
(
あぶみ
)
に蹈み入れて、お
歌
(
うた
)
い遊ばされた歌は
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
晦日
(
かいじつ
)
。越河ノ駅ニ抵ル。コレヨリ以北ハ仙台藩ノ旧封域ニ係ル。今ハ白石県ノ管内ニ入ル。一
峻坂
(
しゅんはん
)
ヲ
踰
(
こ
)
ユルヤ巌石縦横ニ路ヲ
遮
(
さえぎ
)
ル。騎シテ過レバ石ハ
鐙
(
あぶみ
)
ト相磨ス。俗因テ
磨鐙
(
あぶみすり
)
坂トイフ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
正勝は手綱を緩めて、花房の走るに
委
(
まか
)
せた。花房は疾風のように飛んだ。正勝はまったく手綱を緩めて、若いしなやかな脚の走るに委せながら、反動も取らずに
鐙
(
あぶみ
)
の上に突っ立っていた。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
そこから黒く
逞
(
たくま
)
しい馬に乗って馬丁に馬の口を取らせ、自分は陣笠をかぶって、筒袖の
羅紗
(
らしゃ
)
の羽織に
緞子
(
どんす
)
の馬乗袴をつけ、
朱
(
あか
)
い
総
(
ふさ
)
のついた
勝軍藤
(
しまやなぎ
)
の鞭をたずさえ、
磨
(
と
)
ぎ澄ました
鐙
(
あぶみ
)
を踏んで
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その髪を両耳
掻
(
か
)
き上げて、
隆
(
たか
)
い鼻、不思議そうに私を見守っている、透き
徹
(
とお
)
るような
碧
(
あお
)
い
眸
(
ひとみ
)
……真っ白なブラウスに、乳色の乗馬
洋袴
(
ズボン
)
を着けて、
艶々
(
つやつや
)
した
恰好
(
かっこう
)
のいい長靴を、
鐙
(
あぶみ
)
に乗せています。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
今までマルコ伝のお話をしまして、案外すらすら来ましたが、十三章になってから馬に乗った人が、馬が棒立ちになって動かない、
鐙
(
あぶみ
)
を踏んでも
鞭
(
むち
)
をくれても、棒立ちになったというような気がする。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
ドウナルドは
手巾
(
ハンカチ
)
で
鐙
(
あぶみ
)
を造り、虎の頭の上で跳ね躍りました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
白
(
しろ
)
がね
鐙
(
あぶみ
)
、わか
駒
(
ごま
)
の騎士も
南
(
みなみ
)
へ
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
鐙
(
あぶみ
)
のない馬 汗をかく裸馬
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
武蔵
鐙
(
あぶみ
)
に、白手綱
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
鐵地
(
かなぢ
)
の
鐙
(
あぶみ
)
は
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
いうより早く、ひとりの仲間が、彼の足を
抄
(
すく
)
いあげた。
鐙
(
あぶみ
)
に足の届いていない伊織の体は、苦もなく、馬の向う側へ転げ落ちた。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この時女は、裏の
楢
(
なら
)
の木に
繋
(
つな
)
いである、白い馬を引き出した。
鬣
(
たてがみ
)
を三度
撫
(
な
)
でて高い背にひらりと飛び乗った。
鞍
(
くら
)
もない
鐙
(
あぶみ
)
もない
裸馬
(
はだかうま
)
であった。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
イカバッドはそのような馬には
誂
(
あつら
)
えむきの男だった。
鐙
(
あぶみ
)
が短かったので、
両膝
(
りょうひざ
)
が
鞍
(
くら
)
の前輪にとどくほど高くあがった。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
二十四本背に差したるは
切斑
(
きりふ
)
の矢、
重籐
(
しげとう
)
の弓を小脇にかいこんで、乗る馬は連銭
葦毛
(
あしげ
)
、
鐙
(
あぶみ
)
をふんばって声を
轟
(
とどろ
)
かせた。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
鐙
(
あぶみ
)
をなげて馬の口取をしたたかに蹴る、吉信はおのれの馬よりとんで下りると、家康の馬の
轡
(
くつわ
)
をしかと取った。
死処
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
で馬の
鞍
(
くら
)
なども西洋風のとは違い日本の古代の風によく似て居る。なかなかチベット婦人は馬によく乗るです。乗るにも決して
鐙
(
あぶみ
)
の紐を長くして乗らない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
ト
傍
(
かたはら
)
に
控
(
ひか
)
へた
備中
(
びつちう
)
の
家来
(
けらい
)
、サソクに
南蛮鉄
(
なんばんてつ
)
の
鐙
(
あぶみ
)
を
取
(
と
)
つて、
中
(
なか
)
を
遮
(
さへぎ
)
つて
出
(
だ
)
した
途端
(
とたん
)
に、ピシリと
張
(
は
)
つた。
怪力
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
チャンチャンチャンチャンと互いに触れ合う
甲冑
(
かっちゅう
)
物具
鐙
(
あぶみ
)
の音がその間も次第に近寄って来た。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そこは商買の事で、一寸一
ト
眼見渡すと、時代蒔絵の結構な
鐙
(
あぶみ
)
がチラリと眼についた。
骨董
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
其男は
鐙
(
あぶみ
)
を執つて、わしの馬に乗るのを扶けて呉れた。それから彼は唯、手を鞍の前輪へかけた許りで、ひらりともう一頭の馬にとび乗ると、膝で馬の横腹を締めて手綱を緩めた。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
私は只馬の蹄をよけて匐い出し、片足を
鐙
(
あぶみ
)
から外したこと丈を覚えている。私は馬の右側へ落ち、左の鐙を鞍越しに引きずったのである。目をあけると、佐々木もまた地面にいる。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
「それが
鐙
(
あぶみ
)
踏ん張り精いっぱいというところだ。一体このあいだの五両はどうした」
半七捕物帳:11 朝顔屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼らは司教の宮殿内において
巡邏
(
じゅんら
)
をなし秩序を維持し、司教の微笑を
窺
(
うかが
)
う。司教の気にいることは、副助祭になるについて既に
鐙
(
あぶみ
)
に足をかけることである。人は巧みに自分の途を開くことを要する。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
またしばしば騎手が足を
鐙
(
あぶみ
)
の力皮に
絡
(
から
)
まれながら落馬した時、馬自分動けば主を害すと知りてたちまち立ち止まるを目撃し、また日射病で落馬した騎手の傍に立ちて、その馬が守りいた例を聞いた。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
鐙
(
あぶみ
)
を片っぽ、川へ落した、そのまま片鐙で帰ったことがある。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
われこそ一番にと、流れを前に、河原へむらがり立った各部隊の騎馬武者たちは、ひとしく
鐙
(
あぶみ
)
からのび上がって、彼の高く振る手を横にながめた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
下駄の歯が
鐙
(
あぶみ
)
にはさまる。先生はたいへん困っていると、正門前の
喜多床
(
きたどこ
)
という
髪結床
(
かみゆいどこ
)
の職人がおおぜい出てきて、おもしろがって笑っていたそうである。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こう息子にいうと、彼は敵陣の並び立つ楯のきわまで馬を進め、
鐙
(
あぶみ
)
ふんばり立ちあがると、大音声をあげた。
現代語訳 平家物語:09 第九巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
さて
此
(
こ
)
の
趣
(
おもむき
)
で
見
(
み
)
ると、
最初
(
さいしよ
)
から
按摩
(
あんま
)
の
様子
(
やうす
)
に、
迚
(
とて
)
も
南蛮鉄
(
なんばんてつ
)
の
鐙
(
あぶみ
)
の
面
(
つら
)
を
指
(
ゆび
)
で
張窪
(
はりくぼ
)
ますほどの
力
(
ちから
)
がない。
怪力
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「しまった!」と叫んだが酒場の浜路、
鐙
(
あぶみ
)
を蹴ると大駈けに、敵の只中へ飛び込んだ。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“鐙”の解説
鐙(あぶみ、en: stirrup)は、馬具の一種。乗馬で用いる。
で鞍から左右1対を吊り下げ、騎乗時(馬に登るとき、および、乗っているとき)に足を乗せる(これを「鐙を履く」と言う)。ただし完全に足を深く通すのではなく、爪先を乗せるようにして使う。
(出典:Wikipedia)
鐙
漢検準1級
部首:⾦
20画
“鐙”を含む語句
鐙摺
土人称破鐙坂
破鐙坂東有一堂
鐙小屋
武蔵鐙
片鐙
諸鐙
鬼鹿毛無佐志鐙
両鐙
鞍鐙之辯
鞍鐙
鐙革
鐙立
鐙櫃
鐙形
鐙師
鐙屋
鐙子
鐙太夫
磨鐙
...