トップ
>
諷刺
>
ふうし
ふりがな文庫
“
諷刺
(
ふうし
)” の例文
十余年前、『親馬鹿の記』を書いたときの私には、まだ心のゆとりがあり、
自嘲的
(
じちょうてき
)
な言葉にも、人生を
諷刺
(
ふうし
)
するだけの
稚気
(
ちき
)
があった。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
木部がその言葉に骨を刺すような
諷刺
(
ふうし
)
を見いだしかねているのを見ると、葉子は白くそろった美しい歯を見せて声を出して笑った。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
野卑
(
やひ
)
な凡下の投げることばのうちには、もっと露骨な、もっと深刻な、顔の紅くなるような
淫
(
みだ
)
らな
諷刺
(
ふうし
)
をすら、平気で投げる者がある。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
A いよ/\
馬鹿
(
ばか
)
だなア
此奴
(
こいつ
)
は。
凡
(
およ
)
そ、
洒落
(
しやれ
)
、
皮肉
(
ひにく
)
、
諷刺
(
ふうし
)
の
類
(
るゐ
)
を
説明
(
せつめい
)
して
何
(
なん
)
になる。
刺身
(
さしみ
)
にワサビを
附
(
つ
)
けて
煮
(
に
)
て
食
(
く
)
ふ
樣
(
やう
)
なもんぢやないか。
ハガキ運動
(旧字旧仮名)
/
堺利彦
(著)
譬
(
たと
)
へば
和蘭
(
オランダ
)
のレンブラント仏蘭西のコロオ
西班牙
(
スペイン
)
のゴヤとまた仏国の
諷刺
(
ふうし
)
画家ドオミエーとを一時に混同したるが如き大家なりとなせり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
私は反語とか
諷刺
(
ふうし
)
とかの片鱗をもって論述を味わいつける、大家にも普通なレトリックさえけっして用いなかったのである。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
ことにその快活、その機智、その鋭い
諷刺
(
ふうし
)
、無邪、
諧謔
(
かいぎゃく
)
、豊潤な想像、それらのたぐいまれな種々相にはさすがに異常な特殊の光が満ちている。
まざあ・ぐうす
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
今昔物語の作者の批判はつまり農民の側からの批判であり
諷刺
(
ふうし
)
であろうが、農民自身が自分の姿にこれだけの風刺と愛嬌を添え得ていないのが残念だ。
土の中からの話
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
以上
(
いじやう
)
は
餘
(
あま
)
りに
正直
(
しやうぢき
)
過
(
す
)
ぎた
白状
(
はくじやう
)
かも
知
(
し
)
れぬ。けれども、
正直
(
しやうぢき
)
過
(
す
)
ぎた
自白
(
じはく
)
の
間
(
うち
)
には、
多少
(
たせう
)
の
諷刺
(
ふうし
)
も
籠
(
こも
)
つて
居
(
ゐ
)
るつもりだ。
探検実記 地中の秘密:01 蛮勇の力
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
一方には当時
諷刺
(
ふうし
)
と
諧謔
(
かいぎゃく
)
とで聞こえた
仮名垣魯文
(
かながきろぶん
)
のような作者があって、すこぶるトボケた調子で、この世相をたくみな戯文に描き出して見せていた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
これは現代の若き女性気質の
描写
(
びょうしゃ
)
であり、
諷刺
(
ふうし
)
であり、
概観
(
がいかん
)
であり、逆説である。長所もあれば短所もある。読む人その心して
取捨
(
しゅしゃ
)
よろしきに従い
給
(
たま
)
え。
現代若き女性気質集
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
健三の心はこうした
諷刺
(
ふうし
)
を笑って受けるほど
落付
(
おちつ
)
いていなかった。周囲の事情は雅量に乏しい彼を
益
(
ますます
)
窮屈にした。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
社交界の人々も多少、この
諷刺
(
ふうし
)
の
悪戯
(
いたずら
)
にこっそり関係していた。なんらの取り締まりも行なわれていなかった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
当時の詩人・文人の間に行われた勉強の一つで、辞書を読み、その美しい語を覚える、そう言う行き方の、泣菫さんにあり過ぎることを
諷刺
(
ふうし
)
したものである。
詩語としての日本語
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
あたかもそれは事実を書くことが一番確実な
諷刺
(
ふうし
)
となるがごとき日本のロマンチシズムと一致している。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
一——自由な
明晰
(
めいせき
)
な
真摯
(
しんし
)
な眼、ヴォルテールや
百科全書派
(
アンシクロペジスト
)
らが、当時の社会の
滑稽
(
こっけい
)
と罪悪とを
素朴
(
そぼく
)
な視力によって
諷刺
(
ふうし
)
させんがために、パリーにやって来さした
ジャン・クリストフ:13 後記
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
、
ロマン・ロラン
(著)
その通り……いったい、今のやつらはそれよりも、もっと皮肉が下等で、
諷刺
(
ふうし
)
が
糠味噌
(
ぬかみそ
)
ほども利かない。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
高僧の
諷刺
(
ふうし
)
かの執法僧官は人が居らぬから金を取らぬかというと、何とかかとか口実を
拵
(
こしら
)
えて、あるいは僧侶よりあるいは居残りの人民より沢山な金を取立てる。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
自分はこの映画を見ているうちに、何だか自分のことを
諷刺
(
ふうし
)
されるような気のするところがあった。
雑記帳より(Ⅱ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
日本浪曼派は苦労知らずと蹴って落ちつき、はなはだしきは読売新聞の壁評論氏の如く、一篇の物語(私の「猿ヶ島」)を一行の
諷刺
(
ふうし
)
、格言に圧縮せむと努めるなど
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
一度だつて彼の口から出るよくない
隱喩
(
いんゆ
)
や
諷刺
(
ふうし
)
に
吃驚
(
びつく
)
りしたりまごついたりしたことはなかつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
正面から時代と闘うことは
勿論
(
もちろん
)
、大きな声では批評もできず、
諷刺
(
ふうし
)
も
僅
(
わず
)
かに
匿名
(
とくめい
)
の
落首
(
らくしゅ
)
をもって我慢する人々、大抵は中途で挫折して、酒や
放埒
(
ほうらつ
)
に身をはふらかす人々が
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一つの進んだ文化が、民衆の手に托された時の産物である。私たちはそこに時代の智慧を思い、民衆の余裕を感じる。この事なくしてかかる
洒落
(
しゃれ
)
や
諷刺
(
ふうし
)
の美があり得ようや。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
人はその白壁を見る度にその横暴を
悪
(
にく
)
むのであるが、壁は一向御存じなしに誹られながらも霞んでおるというのである。この
諷刺
(
ふうし
)
も一茶の句に散見するところの一特色である。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
純一がこれまで蓄えて持っている思想の中心を動かされたのは拊石が
諷刺
(
ふうし
)
的な語調から、
忽然
(
こつぜん
)
真面目になって、イブセンの個人主義に両面があるということを語り出した処であった。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
何か
諷刺
(
ふうし
)
的の意味でもあるように取って一層評判されたということでありました。
幕末維新懐古談:74 初めて家持ちとなったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
彼自身が、人悪く
諷刺
(
ふうし
)
されて居るやうに感じられた。彼は気のない声で言つた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
ここに三画伯の
扮装
(
いでたち
)
を記したのを
視
(
み
)
て、
衒奇
(
げんき
)
、表異、いささかたりとも
軽佻
(
けいちょう
)
、
諷刺
(
ふうし
)
の意を
寓
(
ぐう
)
したりとせらるる読者は、あの、紫の
顱巻
(
はちまき
)
で、一つ印籠何とかの助六の
気障
(
きざ
)
さ加減は論外として
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
たとひデカダンスの詩人だつたとしても、僕は決してかう云ふ町裏を
徘徊
(
はいくわい
)
する気にはならなかつたであらう。けれども明治時代の
諷刺
(
ふうし
)
詩人
(
しじん
)
、
斎藤緑雨
(
さいとうりよくう
)
は十二階に悪趣味そのものを見
出
(
いだ
)
してゐた。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
奈落
(
ならく
)
に対して共感をこばみ、道ならぬものをだんがいしてきた、「みじめな男」の著者、おのれの知を
克服
(
こくふく
)
して、あらゆる
諷刺
(
ふうし
)
以上に生長しながら、大衆の信頼にともなう義務になれきっている
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
と川柳子も
諷刺
(
ふうし
)
しておりますが、いたずらに私どもは、自力だ、他力だ、などという「宗論」の
諍
(
あらそ
)
いに、貴重な時間を浪費せずして、どこまでも自分に縁のある教えによって、その教えのままに
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
誰がいったか、いつどんな時代に出来た
諷刺
(
ふうし
)
だか判明しない。
河豚食わぬ非常識
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
町で売っている刷り物の“当世分らない物づくし”などを見ても、ある年齢層以下では、その分らない物づくしの
諷刺
(
ふうし
)
がすでに分らなかった。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いつまで
小姑
(
こじゅうと
)
の地位を利用して人を
苛虐
(
いじ
)
めるんだという
諷刺
(
ふうし
)
とも解釈された。最後に佐野さんのような人の所へ嫁に行けと云われたのがもっとも神経に
障
(
さわ
)
った。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
諷刺
(
ふうし
)
滑稽
(
こっけい
)
の
黄表紙
(
きびょうし
)
はその本領たる
機智
(
きち
)
の妙を捨てて
漸
(
ようや
)
く
敵討
(
かたきうち
)
小説に移らんとし、
蒟蒻本
(
こんにゃくぼん
)
の軽妙なる写実的小品は漸く順序立ちたる人情本に変ぜんとするの時なり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかし普通の意味とは異なってるらしかった。文体の
些細
(
ささい
)
な事柄にその言葉をあてはめていた。とは言え、彼らのうちにも、偉大な思想家や偉大な
諷刺
(
ふうし
)
家がいた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
事実、英国人ぐらい文筆上で女性に対し
諷刺
(
ふうし
)
や皮肉を
弄
(
ろう
)
し、反感を示している国民は少い。
女性崇拝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そうして夜になると淋しいと言ったりするような歴史小説は、それが
滑稽
(
こっけい
)
小説、あるいは
諷刺
(
ふうし
)
小説のつもりだったら、また違った面白味もあるのだが、当の作者は異様に気張って
鉄面皮
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そのヨハンの
謎
(
なぞ
)
めく豪快な笑い声と、舌を落した間のぬけた感じの獅子との対象が、何となく梶には痛快な人間
諷刺
(
ふうし
)
の絵を見ている思いで、幾度も振り向き獅子の傍から去りがたかった。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
そうしてその詠ずる所のものは、主として哲理めいたもの、時事
諷刺
(
ふうし
)
に類したもの、理想を
諷
(
うた
)
うもの、感情を述べるもの、の類でありまして、それらの思想は
剥
(
む
)
き出しに諷詠されていました。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
噴掛
(
ふきか
)
けし霧の下なるこの演説、巨勢は何事とも
弁
(
わきま
)
へねど、時の絵画をいやしめたる、
諷刺
(
ふうし
)
ならむとのみは
推測
(
おしはか
)
りて、その
面
(
おもて
)
を打仰ぐに、女神バワリアに似たりとおもひし威厳少しもくづれず
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
と
諷刺
(
ふうし
)
に満ちた詩を作つてゐる。
澄江堂雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
諷刺
(
ふうし
)
したものです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
しているが、毛利と松平の二家は、冷遇じゃという噂がある。さてこそ、その
諷刺
(
ふうし
)
であろう。ははははは、やりおるの
べんがら炬燵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
野人の分を忘れ
己
(
おの
)
れを省ずして
妄
(
みだり
)
に尊王愛国の説をなすもの多きを見て枕山はこれを
諷刺
(
ふうし
)
したのである。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
兄はこんな愚痴とも
厭味
(
いやみ
)
とも、また
諷刺
(
ふうし
)
とも事実とも、片のつかない感慨を、
蔭
(
かげ
)
ながらかつて自分に
洩
(
も
)
らした事があった。自分は性質から云うと兄よりもむしろ父に似ていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
名ざさない場合には、だれにも一見して明らかであるような
諷刺
(
ふうし
)
を用いた。宮廷管絃楽長アロイス・フォン・ヴェルネルの無気力さが述べられていることは、だれにでもわかった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
皮肉や
諷刺
(
ふうし
)
じゃないわけだ。そんないやらしい隠れた意味など、
寸毫
(
すんごう
)
もないわけだ。
多頭蛇哲学
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それがまたなまじな
小言
(
こごと
)
などよりどれほどか深く
対者
(
あいて
)
の弱点を突くのです。また氏の家庭が氏の親しい
知己
(
ちき
)
か友人の来訪に
遇
(
あ
)
う時です、氏が氏の漫画一流の
諷刺
(
ふうし
)
滑稽
(
こっけい
)
を続出
風発
(
ふうはつ
)
させるのは。
岡本一平論:――親の前で祈祷
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
もし彼が何らかの意味で、現実という愚劣
極
(
きわ
)
まればこそ最も重要な
沃土
(
よくど
)
の意義をこの世に感じているものなら、今突如として
湧
(
わ
)
き上ったこの胸を刺す
諷刺
(
ふうし
)
の前で必ず苦杯を
舐
(
な
)
めているにちがいない。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
“諷刺”の意味
《名詞》
諷刺(ふうし)
人物や社会の欠点を直接批判せずに嘲笑的に表現すること。
(出典:Wiktionary)
“諷刺(風刺)”の解説
風刺(ふうし、fr: satire, en: satire)とは、社会や人物の欠点や罪悪を遠回しに批判すること。諷刺とも表記する。
(出典:Wikipedia)
諷
漢検1級
部首:⾔
16画
刺
常用漢字
中学
部首:⼑
8画
“諷刺”で始まる語句
諷刺詩
諷刺画
諷刺的
諷刺家
諷刺滑稽画
諷刺的滑稽