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ちしお
ふりがな文庫
“
血汐
(
ちしお
)” の例文
人々のすがたはみな、
紅葉
(
もみじ
)
を
浴
(
あ
)
びたように、点々の
血汐
(
ちしお
)
を
染
(
そ
)
めていた。勇壮といわんか
凄美
(
せいび
)
といわんか、あらわすべきことばもない。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
(興奮しつつ、びりびりと傘を破く。ために、
疵
(
きず
)
つき、指さき腕など
血汐
(
ちしお
)
浸
(
にじ
)
む——取直す)——畜生——畜生——畜生——畜生——
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
嘘
(
うそ
)
にも縁談のことは若い人の
血汐
(
ちしお
)
を
躍
(
おど
)
らせねばならぬものであります。けれどもお銀様にあっては必ずしもそうでありません。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私は次の瞬間に思わずアッ! と声を挙げて二足三足
後退
(
あとずさり
)
したのである。死体だ! 畳は
滴
(
したゝ
)
る
血汐
(
ちしお
)
でドス黒くなっている。
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
仮繃帯
(
かりほうたい
)
の下から生々しい
血汐
(
ちしお
)
が
潤
(
にじ
)
み出して私はいうべからざる苦痛を覚えたが、駅長の出してくれた
筧
(
かけい
)
の水をグッと飲み干すとやや元気づいて来た。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
▼ もっと見る
殺されて
冷
(
つめた
)
い
血汐
(
ちしお
)
のなかに
横
(
よこた
)
わったことは事実であった。けれども慈悲深い死の翼あるその矢のために、駒鳥は正直な鳥の、常に行くべき
処
(
ところ
)
へ行った。
少年・春
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
一種の遠いかすかなるとどろき、
仔細
(
しさい
)
に聞けばなるほど砲声だ。例の厭な音が頭上を飛ぶのだ。歩兵隊がその間を縫って進撃するのだ。
血汐
(
ちしお
)
が流れるのだ。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
血が一筋吹き上り、五寸あまりも宙に躍ったのはその痙攣と同時であったが、しかしそれも一
刹那
(
せつな
)
で、乙女の振り撒いた茶褐色の粉が、流れる
血汐
(
ちしお
)
を
凝
(
こご
)
らせた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そなたの熱いわかわかしい
血汐
(
ちしお
)
と肉の中に、強引に閉じこめてしまった……私は、そなたが恋しい。
菊
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
虎の
鼻面
(
はなづら
)
がすぐ眼の前に迫っても、声も立てなければ、身動きさえもしなかった。その
白蝋
(
はくろう
)
のように美しい肌の上に、一条の
血汐
(
ちしお
)
が、赤い
蛇
(
へび
)
となってからみついていた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
畳をはがして縁の下の土を大刀で深く掘り、死体は勿論証拠となるべき一切を
埋
(
うず
)
めて了い、ひきちぎった
襦袢
(
じゅばん
)
の
袖
(
そで
)
に泉水の水を浸して畳の
血汐
(
ちしお
)
を洗い去り、入口の錠を厳重に下して
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
彼の名前に、終に紅い
血汐
(
ちしお
)
が塗られた。これ神人共に許す能わざる所である‥‥
探偵小説アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
凋
(
しお
)
れて行く時の色合のような、黙って、息を止めているような、匂いはないけれど、もしこれを求めたら、
腥
(
なまぐさ
)
い匂い、それも生々しい
血汐
(
ちしお
)
の流れている時分の臭いでなく、微かに、ずっと前に
夜の喜び
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
光一は手からしたたる
血汐
(
ちしお
)
をハンケチでふいていた。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
君は人の血、おれは葡萄の
血汐
(
ちしお
)
を吸う
ルバイヤート
(新字新仮名)
/
オマル・ハイヤーム
(著)
豆粒程の
大
(
おおき
)
さの生々しい
血汐
(
ちしお
)
である。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
血汐
(
ちしお
)
である、
血煙
(
ちけむり
)
である。夕闇なのと、深い霧で、よくは分らないが、
温
(
ぬる
)
い血液のかたまりが、ぱッと、側の者へ
刎
(
は
)
ねかかった。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お美しい、お優しい、あの御顔を見ましては、恋の
血汐
(
ちしお
)
は葉に染めても、秋のあの字も、明さんの名に
憚
(
はばか
)
って声には出ませぬ。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その人は、手に白刃をさげたままで、左の手で半身にあびた
血汐
(
ちしお
)
を拭いながら、よろよろと荒原の中を歩いている。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
(二)奇異の
血汐
(
ちしお
)
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
と
片手
(
かたて
)
さぐりに河原の水音をたどっていった竹童、岩と岩との間から首をのばして、ザアッと流れる水の
瀬
(
せ
)
で
血汐
(
ちしお
)
をあらい、顔をひやし
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
胸の
血汐
(
ちしお
)
の通うのが、波打って、風に
戦
(
そよ
)
いで見ゆるばかり、
撓
(
たわ
)
まぬ
膚
(
はだえ
)
の未開紅、この意気なれば二十六でも、
紅
(
くれない
)
の色は
褪
(
あ
)
せぬ。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
主人は先へ立って飛んで離れの中二階へ来て見ると、
屏風
(
びょうぶ
)
もなにも立て廻してはなく、八畳の間いっぱいに
血汐
(
ちしお
)
。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
周馬にちょっと口を
辷
(
すべ
)
らしたとおり、孫兵衛にはあの
秘冊
(
ひさつ
)
に
血汐
(
ちしお
)
の細字で
綴
(
つづ
)
られている隠密組の隠語が読めないのであった。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と言うのは、夢中ながら、男を斬った心持が、
骨髄
(
こつずい
)
に徹して忘れられん。……思い出すと、何とも言えず、肉が動く、
血汐
(
ちしお
)
が
湧
(
わ
)
く、筋が離れる。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その真珠色の面が刀の光とうつり合って、どこかに隠れていた
血汐
(
ちしお
)
が、音もなく上って来るようで、気のせいか女の
鬢
(
びん
)
の毛が、風もないのに動いて見えます。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あるじが落着いて
静
(
しずか
)
にいうのを、お民は激しく聞くのであろう、潔白なるその
顔
(
かんばせ
)
に、
湧上
(
わきのぼ
)
るごとき
血汐
(
ちしお
)
の色。
女客
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
天下は
暗澹
(
あんたん
)
——いずれ、光明の
冠
(
かんむり
)
をいただく
天下人
(
てんかびと
)
はあろうが、その
道程
(
どうてい
)
は
刀林地獄
(
とうりんじごく
)
、
血汐
(
ちしお
)
の
修羅
(
しゅら
)
じゃ。この
秀吉
(
ひでよし
)
のまえにも多難な
嶮山
(
けんざん
)
が
累々
(
るいるい
)
とそびえている
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
神尾は人をかきのけて中へ入って見ると、夜具の上に
俯伏
(
うつぶ
)
しに倒れているのは机竜之助であります。そうして
蒲団
(
ふとん
)
の敷布の上には
夥
(
おびただ
)
しい
血汐
(
ちしお
)
のあとがありました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
人目も
振
(
ふり
)
も、しどろになって
背
(
せな
)
に
縋
(
すが
)
った。多一の片手の
掌
(
てのひら
)
も、我が唇を
圧
(
おさえ
)
余って、
血汐
(
ちしお
)
は指を
溢
(
あふ
)
れ落ちた。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と叫んで、
槍創
(
やりきず
)
から吹き出す
血汐
(
ちしお
)
を押え、うつぶしになったが、もうその時、息が絶えてしまっていた。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
少しあわてて呼び起こしましたが、返辞がないので、境のふすまを細目に開けてみますと、その部屋は、
閾際
(
しきいぎわ
)
から枕元へかけて、ぶちまけたように一面の
血汐
(
ちしお
)
です。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
踏躙
(
ふみにじ
)
る
気勢
(
けはい
)
がすると、袖の
縺
(
もつれ
)
、
衣紋
(
えもん
)
の乱れ、波に
揺
(
ゆら
)
るゝかと震ふにつれて、
霰
(
あられ
)
の如く火花に
肖
(
に
)
て、から/\と飛ぶは、
可傷
(
いたむべし
)
、
引敷
(
ひっし
)
かれ
居
(
い
)
る
棘
(
とげ
)
を落ちて、
血汐
(
ちしお
)
のしぶく荊の実。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ちょうど岩の上に立って水を
潜
(
くぐ
)
る魚を
覘
(
ねら
)
うような姿勢を取ると、足を払いに来た竹の竿、それを身を跳らして避けると、いま上りかけた人足の
面
(
つら
)
の真中から
血汐
(
ちしお
)
が溢れ出して
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
見ると、満顔
血汐
(
ちしお
)
の
紅
(
くれない
)
に染まっています。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
このわくわくと狂うような胸の
血汐
(
ちしお
)
を押鎮めようとするに過ぎないらしいのであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
眼もくれたり。したしたとながれにじむをあなやと両の
拳
(
こぶし
)
もてしかとおさへたれど、
留
(
とど
)
まらで、たふたふと音するばかりぞ
淋漓
(
りんり
)
としてながれつたへる、
血汐
(
ちしお
)
のくれなゐ
衣
(
きぬ
)
をそめつ。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と見れば雪の寒紅梅、
血汐
(
ちしお
)
は胸よりつと流れて、さと
白衣
(
びゃくえ
)
を染むるとともに、夫人の顔はもとのごとく、いと
蒼白
(
あおじろ
)
くなりけるが、はたせるかな自若として、足の指をも動かさざりき。
外科室
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
駒井甚三郎は、向うへ歩んで行きながら
提灯
(
ちょうちん
)
の光で地面を照して、気をつけて見ると
血汐
(
ちしお
)
のあとが、ぽたりぽたりと筋を引いているのであります。斬合いは、たしかに柳橋の上で起っている。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
青き光
眼
(
まなこ
)
を射たるほどこそあれ、いかなるはずみにか
血汐
(
ちしお
)
さとほとばしりぬ。
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
されば
高楼
(
たかどの
)
より狙い撃たれ、外よりは悪僕二人が打揃いて
入
(
い
)
り来しは、さすがの泰助も今迄に余り経験無き危急の場合、一度は
狼狽
(
ろうばい
)
したりしが、かねて携うる絵具にて、手早く
血汐
(
ちしお
)
を装いて
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
予等
(
われら
)
が詩、年を経るに従いていよいよ貴からんことこの酒のごとくならん、と誓ったそうだわね、と
硝子杯
(
コップ
)
を火に
翳
(
かざ
)
してその
血汐
(
ちしお
)
のごとき
紅
(
くれない
)
を眉に宿して、大した学者でしょう、などと夫人
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
果
(
はて
)
は衣服を脱棄てて、
媚
(
なま
)
めかしき乳も唇より流るる
血汐
(
ちしお
)
に
塗
(
ま
)
みらしつつ
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、それでないと、湯気のけはいも、
血汐
(
ちしお
)
が噴くようで、
凄
(
すさま
)
じい。
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
白糸は生まれてよりいまだかばかりおびただしき
血汐
(
ちしお
)
を見ざりき。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
玉の緒を
揺
(
ゆ
)
る琴の糸の肩に
懸
(
かか
)
って響くよう、
互
(
たがい
)
の口へ出ぬ声は、
膚
(
はだ
)
に波立つ
血汐
(
ちしお
)
となって、聞こえぬ耳に
調
(
しらべ
)
を通わす、
幽
(
かすか
)
に触る手と手の指は、五ツと五ツと打合って、水晶の玉の擦れる音、
戦
(
わなな
)
く
裳
(
もすそ
)
と
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いかなるはずみにか
血汐
(
ちしお
)
さとほとばしりぬ。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
血
常用漢字
小3
部首:⾎
6画
汐
漢検準1級
部首:⽔
6画
“血”で始まる語句
血
血眼
血腥
血統
血痕
血潮
血飛沫
血相
血糊
血塗