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さげす
ふりがな文庫
“
蔑
(
さげす
)” の例文
今あることどもを
廃
(
すた
)
れしめんがために、この世の卑しきことどもと、
蔑
(
さげす
)
まれしことどもと、あるなきことどもとを選みたまえり……。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
かなりひと目を
惹
(
ひ
)
く顔だちで、むしろ美男といってもいいくらいであるが、眼つきや
唇
(
くち
)
もとになんとなく人を
蔑
(
さげす
)
むような色がある。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
が、もし強いて考えれば、己はあの女を
蔑
(
さげす
)
めば蔑むほど、憎く思えば思うほど、益々何かあの女に
凌辱
(
りょうじょく
)
を加えたくてたまらなくなった。
袈裟と盛遠
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
歳太郎は子供のときから
明笛
(
みんてき
)
や流行唄などを
上手
(
うま
)
くうたったが、こんな処へ墜ちてきた自分をいつもかれの前では
蔑
(
さげす
)
んでいたのである。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
と、申すは何も、その方を、
蔑
(
さげす
)
んだり、その方の剣技を認めぬと言うわけではない。わしはわしの流儀で、人間を縛るのが
厭
(
いや
)
だからだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
▼ もっと見る
と、久しく
渇
(
かつ
)
えていた軽輩武士が、世上の動揺で、にわかに何事かで
獲
(
え
)
た金で、あらっぽい消費をする様を、
蔑
(
さげす
)
まずにいられなかった。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わたくしどもは
蔑
(
さげす
)
みを受けるだけでは、まだ足らないんで御座いますか。この上、まだ、憐みを受けなければならないんで御座いますか。
動員挿話(二幕)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
前車
(
ぜんしゃ
)
の
覆轍
(
ふくてつ
)
以てそれぞれ身の用心ともなしたまはばこの一篇の『矢筈草』
豈
(
あに
)
徒
(
いたずら
)
に男女の
痴情
(
ちじょう
)
を種とする売文とのみ
蔑
(
さげす
)
むを得んや。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
不遇時代に己を虐げた者には極刑を、己を
蔑
(
さげす
)
んだ者には相当な懲しめを、己に同情を示さなかった者には冷遇を与えねばならぬ。
盈虚
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
『S夫人。あなたは嘸ぞ私を見下げ果てた女だとお
蔑
(
さげす
)
みになっていらっしゃるでしょうね、でもそうするより仕方がなかったんですのよ』
機密の魅惑
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
私
(
わたくし
)
の病気は実は
是々
(
これ/\
)
といいましたが、其の事は
乳母
(
おんば
)
にも云われないくらいな訳ですが、
其処
(
そこ
)
が親馬鹿の
譬
(
たとえ
)
の通り、お
蔑
(
さげす
)
み下さるな
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
有名な玄竜が現われたので人々はお互い突つき合ったり、ぷっと吹き出したり、わざと
蔑
(
さげす
)
むようにそっぽを向いたりしていた。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
その解けない謎を解くのが、探偵の役目ではないか! といわんばかりの様子で、
蔑
(
さげす
)
むような薄笑いが、未亡人の唇に
泛
(
うか
)
んだ。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
明
(
あか
)
りがつくと連れの男にひそひそ
戯
(
たわむ
)
れて居る様子は、傍に居る私を普通の女と
蔑
(
さげす
)
んで、別段心にかけて居ないようでもあった。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そして
情夫
(
をとこ
)
こしらへて、
嬰児
(
やゝこ
)
生まはつたんや——といふやうな
蔑
(
さげす
)
みの意味を言外に匂はしながら、その人が続けるのだつた。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
師匠から人間的な
価値
(
ねうち
)
のないお方と、承り、憎しみも、
蔑
(
さげす
)
みもいたしているお方ではございますものの、ただ、うっとりと
京鹿子娘道成寺
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
池月の與三郎と自分から名乘つたほどの厄介な男ですから、八五郎のやうな女とは縁の遠い正直者から嫌はれ
蔑
(
さげす
)
まれたのも無理のないことです。
銭形平次捕物控:159 お此お糸
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
茜
(
あかね
)
さす
額
(
ひたひ
)
の
薔薇
(
ばら
)
の花、
蔑
(
さげす
)
まれた
女
(
をんな
)
の
憤怒
(
いきどほり
)
、
茜
(
あかね
)
さす
額
(
ひたひ
)
の
薔薇
(
ばら
)
の花、おまへの
驕慢
(
けうまん
)
の
祕密
(
ひみつ
)
をお話し、
僞善
(
ぎぜん
)
の花よ、
無言
(
むごん
)
の花よ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
タウトによれば日本に於ける最も俗悪な都市だという新潟市に僕は生れ、彼の
蔑
(
さげす
)
み嫌うところの上野から銀座への街、ネオン・サインを僕は愛す。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
もう借金とりも来なければ、大勢の子供の面倒を見なくてもよいし、年寄りになれば、老いぼれと
蔑
(
さげす
)
まれなくてもいい。
火葬国風景
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「いつか私、小さい男の子から施しを受けたことだってあるのよ。」セエラは自分を
蔑
(
さげす
)
むように笑って、衿の中から細いリボンを引き出しました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
彼自身をどんなにか彼は
蔑
(
さげす
)
むべきであつたか、それを抑止して滅ぼして了はうと、どんなにか彼は望むべきであつたか
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
なんでわたしに言いわけなんぞができましょう? 私はわるい
卑
(
いや
)
しい女ですもの。自分を
蔑
(
さげす
)
みこそすれ、言いわけしようなんて考えても見ませんわ。
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
一度夫が何か彼女に話しかけたようだったが、それは彼女にちらりと
蔑
(
さげす
)
むような頬笑みを浮べさせただけだった。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
あんなことを口走って、あの方は、何て
下素
(
げす
)
な女であろうと、さぞ
蔑
(
さげす
)
んでいられることであろう。こうも思った。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
あちこちの窓からは無数の眼が、あるいは嘲けり、あるいは憐れみ、あるいは怒り、あるいは
蔑
(
さげす
)
み、格子越しに覗いていたが、ひそひそ互いに囁き合う。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
『それは恥ずかしいことじゃないかね、それは卑怯なことではないかね!』おそらく諸君は
蔑
(
さげす
)
むように頭を振りながら、わたしにむかってこういうだろう。
地下生活者の手記
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
『然うかい。三尺さんかい!』とお柳は
蔑
(
さげす
)
む色を見せたが、流石に客の前を憚つて、『ホホホヽ。』と笑つた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そうして、そんな事の出来ない人間を
蔑
(
さげす
)
み笑った。つまらない人間、淋しいみすぼらしい人間として冷笑した。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
縁起を祝う結婚の初めに、尼姿で同車して来たのさえ不都合であるのに、涙目まで見せるではないかと
蔑
(
さげす
)
んだ。
源氏物語:52 東屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
ただ違うのはですね、僕にはそれだからといって、春を
罵
(
ののし
)
ったり
蔑
(
さげす
)
んだりする勇気は出せないのです。というのは、実をいえば、僕は春に対して恥じている。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
こういう信仰を土俗的とか迷信とかいって
一途
(
いちず
)
に
蔑
(
さげす
)
むくせがあるが、そんな安価な見方で農村の暮しを
判
(
さば
)
いていいだろうか。そのことの方が私には問題である。
陸中雑記
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
「死んだ方に悪い! 貴女はまだ死者を
蔑
(
さげす
)
もうとなさるのですか。死者を
誣
(
し
)
いようとなさるのですか。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
さよう、こうした私の書き振りは、その人々を見た時の私の眼に
蔑
(
さげす
)
みと反感が浮んでいたかのように、読者に伝えるかもしれないが、事実はまさに反対なのである。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
晴着
(
はれぎ
)
の
場所
(
ばしよ
)
へは
向
(
む
)
かない。これは
彼
(
かれ
)
を
蔑
(
さげす
)
み、
彼
(
かれ
)
はこれを
憤
(
いきどほ
)
る。こんなことが、一
體
(
たい
)
あつてよいものか
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
「どうしたい。身体でも悪いのかと思つたに、さうでもねえのか。」と、彼は
蔑
(
さげす
)
むやうに云つた。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
万事現状維持の旧幕時代ならばいざ知らず、今日では水呑百姓と賤しめられ、下司下郎と
蔑
(
さげす
)
まれたものの子孫でも、運と努力とでは大臣にも大将にもなれる世の中です。
融和促進
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
でその女は、いやに人を
蔑
(
さげす
)
んだやうに見る癖によつて反感を買つたばかりでなく、すべてに於いて弾ねかへすやうな軽い
憎
(
にく
)
みを妻に感じさせた。けれども縹緻はよかつた。
散歩
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
画の
画伯方
(
せんせいがた
)
の名を呼んで、
片端
(
かたっぱし
)
から、
奴
(
やつ
)
がと苦り、あれめ、と
蔑
(
さげす
)
み、小僧、と
呵々
(
からから
)
と笑います。
雪霊記事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
水と砂から生れた娘として、真弓は陸の土と埃とを
蔑
(
さげす
)
んだ。自尊心のつよい少女として、真弓はあらゆる近代的生活様式に依つて
彫
(
きざ
)
まれ彩られた仮面の青年たちを冷視した。
水と砂
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
浅はかではないか?
上
(
かみ
)
より軽んぜられ、
下
(
しも
)
より
蔑
(
さげす
)
まれても、黙々として内に秘め、ただ一期の大事に当って、はじめて、これを発するこそ、大丈夫の覚悟と申すものじゃ。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
その時、僕は何だか
蔑
(
さげす
)
むやうな気持で二人を見つめてやつた。男は痩せて鋭い顔をしてゐる。山のぼりの仕度をして、
背嚢
(
ルツクサツク
)
を負つてゐる。女は稍
太
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
で、醜い顔をしてゐる。
接吻
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
「そうですか? しかしこの人には何とも言えぬ力強さがありますよ。私はこんな詩を見たことがない」と、私はむしろ、この作者を認めない鄭を
蔑
(
さげす
)
むような気持ちで言った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
彼は、鼎造にしばらく帰京の
猶予
(
ゆうよ
)
を
乞
(
こ
)
うて、論文を
纏
(
まと
)
めれば纏められないこともなかったが、そんな小さくまとまった成功が今の自分の気持ちに、何の関係があるかと
蔑
(
さげす
)
まれた。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
キリストにつく者は、世にありて乏しき者、悲しむ者、
蔑
(
さげす
)
まれる者である。我自身がそういう者である。そのことは、汝ら今まで我に付き随って、よく見てきたところでないか。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
「そんなに東京に居たいか。あんな
土地
(
ところ
)
にね。」今ひとりの重役は東京ツ子全体に
烏金
(
からすがね
)
でも貸してゐるやうに
蔑
(
さげす
)
みきつて言つた。そして次ぎに立つた五分刈頭の方へ眼を向けた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
とマリイは
頭
(
かぶり
)
を振りながら云つて、
蔑
(
さげす
)
むやうな目附と身振をした。おれは重ねて問はなかつたが、金を添へて永久に
呉
(
く
)
れて
仕舞
(
しま
)
つたのだと云ふことがマリイの様子で想像された。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
しかもお前はそんな
蔑
(
さげす
)
むべきことをするのに、
尤
(
もっと
)
もらしい理由をこしらえ上げている。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼女は、あの歪めた顔を、いつの間にかとりすまして、ツン、と
蔑
(
さげす
)
むようにいった。
蝱の囁き:――肺病の唄――
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
ですから、私は東洋思想に溶けこんでいるせいか、有色人
蔑視
(
べっし
)
をやる白人種を憎みます。ナチスの浄血、アングロサクソンの威——かえって彼らは、じぶんらにある創成の血を
蔑
(
さげす
)
んでいる
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
蔑
常用漢字
中学
部首:⾋
14画
“蔑”を含む語句
蔑視
軽蔑
侮蔑
輕蔑
蔑如
冷蔑
嘲蔑
御蔑
侮蔑的
蔑称
大軽蔑
蔑意
蔑侮
御軽蔑
衆人蔑視
見蔑
賤蔑
軽蔑感
軽蔑者
卑蔑