)” の例文
乳牛はすこしがたがた四を動かしたが、飼い葉をえて一しんいはじめる。花前は、いささか戒心かいしん態度たいどをとってしぼりはじめた。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ふっくら豊頬ほうきょうな面だちであるが、やはり父義朝に似て、長面ながおもてのほうであった。一体に源家の人々は、四たくましく、とがり骨で顔が長い。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
偉大なゲーテといえども、いかに努力しても甲斐かいがない。魂の四萎縮いしゅくしている、主要な機能は富に滅ぼされてなくなっている。
くわいのボロくづのやうに欄干にうづくまつて、最早息があらうとも覺えず、生命の最後の痙攣けいれんが、僅かにその四に殘るだけです。
だが、フハンはいっそうはげしく戸をひっかき、はてはまりのように四をぶっつけて、ほえたてた。とごう然たる一発の銃声がひびいた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
つまはおみつつて、今歳ことし二十になる。なにかとふものゝ、綺緻きりやうまづ不足ふそくのないはうで、からだ発育はついく申分まをしぶんなく、どうや四釣合つりあひほとん理想りさうちかい。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
葉子はほとんどその死の姿を見るように思った。頭の中がシーンと冷え通ってえきった寒さがぞくぞくと四を震わした。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
うたがうて立戻たちもどり、わし所行しょぎゃううかゝひなどいたさうなら、てん照覽せうらんあれ、おのれが四たい寸々すん/″\切裂きりさき、くことをらぬこのはかこやすべくらさうぞよ。
ゆるめてつち領伏ひれふし、身動きもせでしばらく横たわりたりしが、ようようまくらを返して、がっくりとかしられ、やがて草の根を力におぼつかなくも立ちがりて
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とほれと脇腹わきばら愚刺ぐさと計りに差貫さしつらぬけば何ぞたまらん庄兵衞はあつと叫も口の中押へ附られ聲出ず苦き儘にもがきけるをお光は上へまたがりて思ひの儘にゑぐりければ七てんたうふるは虚空こくう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
特に強い印象は、重錘揚じゅうすいあげ選手みたいに畸形きけい的な発達をした上体と、不気味なくらい大きな顔と四ひらで、肩の廻りには団々たる肉塊が、駱駝らくだ背瘤せこぶのように幾つも盛り上っていた。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
早く、早く、まるで私は熱に浮かされたやうに行つた。内部から四に擴がつた頼りなさが私を襲つて、私は倒れて了つた。暫くの間濡れた芝草しばくさの上に顏をつけたまゝ、私は地上に横はつてゐた。
我がは甘くたるみて
滅亡の喜び (新字旧仮名) / 生田春月(著)
をもがいた。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
こらえんとしても彼の四は、髪の根のしまるような忿怒ふんぬのために、身ぶるいを刻んで手の痛くなるまで鉄格子の下に握りしめている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
砂漠さばく中の狂風だった。その風はどこから来たのか。その狂妄はなんであったか。彼の四と頭脳とをねじ曲げるそれらの欲望は、いかなる深淵しんえんから出て来たのか。
もうなんの反抗もなく、まなじりを吊りあげたまま、お綱は次郎の腕にグウとって、だんだんにその力も四から抜けていった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
選挙人の意を迎えるためには祖国の四を断つかもしれなかった。彼らに欠けてるのは知力ではなかった。彼らはなすべきことをよく知っていた。しかしそれを少しもなさなかった。
右のこわきに、咲耶子さくやこのからだを引っかかえていた。不意ふいに、当身あてみをうけたのであろう、彼女かのじょは力のない四をグッタリとのばしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その狂風は、あるいは吹きつのって吠えたて、あるいは強大な意力にくじかれて突然やんだ。その巨大な魂は、彼のうちにはいり込み、彼の四や魂を伸長させて、非常な大きさになした。
のびのびと横たわっている大きな四には、登子の裲襠うちかけが掛けてある。——ふと、鼾声いびきがやんだのは、少しは酔いがさめかけているのかもしれない。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
強壮な四をもってる彼の身体は、いわおのごとく水の上に浮き出している。その左の肩には、か弱い重い小児がのっている。聖クリストフは引き抜いてきた松の木に身をささえる。その木はたわむ。
ひぇッっ、と天井の辺ではん金蓮の四すそが蝶の舞いを描いた。武松の両手に高々と差し上げられていたからである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殺戮さつりくの天使の猛然たる飛翔ひしょうは、三度の稲妻に翼を縛られて、ぴたりと止まる。周囲ではまだすべてがおののいている。酔える眼はくらんでいる。心臓は鼓動し、呼吸は止まり、四痲痺まひしている……。
人をのろわばあな二つ、あの猛禽もうきんくさりをきった三人は、立ちどころに、自分がはなしたわしつめにつかまれて、四かれてしまったのにそういない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
クリストフは時として、幼年の無意識的な残忍さをもって、不幸な昆虫の四をもぎ取ることさえあった、しかもそれが苦しがることは少しも考えずに——そのおかしなもがきを見る楽しみのために。
なんともいえぬおそろしさだが、またなんともいえぬ壮快そうかいな気分と、必死ひっしの力が五にもやいばにもみなぎってくる——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白きは浪裏白跳の張順の四か。黒きはさすが弱りぬいた李逵りきのもがきか。瑤々ようようたる波騒なみざいのかすかに立つところ、見ゆるが如くまた見えぬようでもある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うしろから、一刀斎に云われるまで、典膳の四は、土から生えたようになっていた。しかし、あえなき兄弟子のすがたを見ると、止めまでは刺し得なかった。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
骨ばった老人の四、誰? と疑ってみるまでもなくお綱はつづけざまに名を呼んで、腕の中へ抱きあげた。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その片手には、柱の隠し穴から取り出したさんらんたるものをつかんでいる。アッ、お前は悲鳴をあげて四を突っ張る、同時に母は息をひきとりそうになった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すべて家康の四となり、家康と通じる者のみゃくを断って、その後、爼上そじょうに料理すべき大魚たいぎょながら——彼は網を南へ打ち、北へ打ち、おもむろに重点のものを
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、岩盤は四を伸ばして宙へ持ち上げられていた。燕青が担ぎ上げたのだ。信じられぬような怪力である。ダ、ダ、ダッと燕青の足が床を鳴らして走った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なお、黒髪に埋めてやまぬ羞恥しゅうちと硬い四とをもてあまして、閨のうちへ抱え入れた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にみなぎっている満々たる闘志は、夜もすがら彼を悪鬼のように歩かせた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひょうの四のごとく、伸縮の自由な孫兵衛の腕ぶしには、一種の粘力ねんりょくがあってなかなかあなどり難い。ことには弦之丞がすでに散々な疲労をおぼえているに反して、その気息には新しい力がある。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)