立留たちどま)” の例文
ドカリ——洗面所せんめんじよかたなる、どあつた、茶色ちやいろかほが、ひよいと立留たちどまつてぐいと見込みこむと、ちや外套ぐわいたうう、かたはすつたとおもふと
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
エヘヽヽおもてとほ女子達をなごたちみな立留たちどまくらゐのもんで、ういふ珠揃たまぞろひのお方々かた/″\世辞せじあきなひしてらつしやるところかひましたのは手前共てまいども仕合しあはせ
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それでも縁側えんがわへ出る時は、必ず籠の前へ立留たちどまって文鳥の様子を見た。たいていは狭い籠をにもしないで、二本の留り木を満足そうに往復していた。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二人ふたりだまる。厨房くりやからダリユシカがにぶかぬかほて、片手かたて頬杖ほゝづゑて、はなしかうと戸口とぐち立留たちどまつてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
数寄屋橋すきやばしのたもとへ来かかると、朝日新聞社を始め、おちこちの高い屋根の上から広告の軽気球があがっているので、立留たちどまる気もなく立留って空を見上げた時
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
およそ三百段も降りた時いよいよ闇穴道あんけつだうの入口に差掛さしかゝつて、其処そこには鬼ならぬ一人の巡査がカンテラを持つて立つて居る。人人はそのカンテラの前に立留たちどまつて蝋燭の火をけた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
妻が黙ったまま立留たちどまったので、彼れはそれが松川農場の事務所である事を知った。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そして街から街へ、先に云つたやうな裏通りを歩いたり、駄菓子屋だぐわしやの前で立留たちどまつたり、乾物屋かんぶつや乾蝦ほしえび棒鱈ぼうだら湯葉ゆばを眺めたり、たうとう私は二條の方へ寺町てらまちさがり其處の果物屋くだものやで足を留めた。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
○上野の動物園にいつて見ると(今は知らぬが)前には虎のおりの前などに来ると、もの珍し気に江戸児えどっこのちやきちやきなどが立留たちどまつて見て、鼻をつまみながら、くせえくせえなどと悪口をいつて居る。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
二人ふたりだまる。厨房くりやからダリュシカがにぶかぬかおて、片手かたて頬杖ほおづえをして、はなしこうと戸口とぐち立留たちどまっている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
彼はがつた。惘然もうぜんとして又あるき出した。少して、再び平岡の小路へ這入つた。夢の様に軒燈の前で立留たちどまつた。守宮やもりはまだ一つ所にうつつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
多助のお話も大分だいぶ長らく続き追々しまいの方に相成りました。さて多助は道普請みちぶしんの金を持って四谷の押原横町へ出かける途中で、呼掛けられましたゆえ立留たちどまって
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
薄暗い河岸通かしどおりから人通の少い裏通へ曲ると、薬屋のまどに並べてあるものが目についたまま立留たちどまって見ていた時、重吉は身近に立寄る女があるのに心づいて振返って見ると
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
昼間歩いた向河岸むかうがしに当るへんは見物するのにい場所と見えて、人が多い。今夜は橋の上を通る人に立留たちどまることを許されない。また遊覧船を除いた外の船は皆岸に繋がれて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
あたかもその立留たちどまりし折から、別なる跫音あしおと、また坂をのぼりてさきのものと落合いたり。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あたかもその立留たちどまりし折から、別なる跫音あしおと、また坂をのぼりてさきのものと落合おちあひたり。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
れでゐて足音あしおとしづかで、ある樣子やうす注意深ちゆういぶか忍足しのびあしのやうである。せま廊下らうかひと出遇であふと、みちけて立留たちどまり、『失敬しつけい』と、さもふとこゑひさうだが、ほそいテノルで挨拶あいさつする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
立止って店飾みせかざりの人形を見ていると、酔ッ払った学生がわざと突当りそうにしたんで、わたしは少しわきへ寄る。そのうちに男のほう二歩三歩ふたあしみあし先になって、夜店の前に立留たちどまったから、わたしも立留ったのよ。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこをあちこち、のぞいたり、たり、立留たちどまったり、考えたり、庭前にわさき、垣根、格子の中。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それでいて足音あしおとしずかで、ある様子ようす注意深ちゅういぶか忍足しのびあしのようである。せま廊下ろうかひと出遇であうと、まずみちけて立留たちどまり、『失敬しっけい』と、さもふとこえいそうだが、ほそいテノルでそう挨拶あいさつする。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
とほりがかりのものは多勢おほぜいあつた。女中ぢよちうも、あひだはなれたが、みな一齊いつせい立留たちどまつて、あふいだ——とふのである。わたしいて、夫人ふじんが、わかいうつくしいひとだけに、なんとなくすごかつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、なぞへに蘆の上から、下のその小流こながれを見て、一同に立留たちどまつた。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此処ここにまた立留たちどまって、少時しばらく猶予ためらっていたのである。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仮色使の退場する時、早瀬お蔦と立留たちどまる。
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
謙三郎は立留たちどまりぬ。
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)