眩暈めまひ)” の例文
三方にめぐらした手摺は丁度大人おとなの腰の下まで屆くほど。眩暈めまひがした位では、これを乘り越して下へ落ちさうな樣子はありません。
これより後の事は知らず。我は氣を喪ひき。人あまた集ひて、鬱陶うつたうしくなりたるに、我空想の燃え上りたるや、この眩暈めまひのもとなりけむ。
『そんなことめ!』と女王樣ぢよわうさまさけんで、『眩暈めまひがする』それから薔薇ばら振向ふりむいて、『なにをお前方まへがた此處こゝでしてたのか?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
荷車が毀され、鉄金具が鳴り、地面へ投げられる板がばたんばたんと轟ろいて、眩暈めまひを起した頭には方角も何も分らなくなつてしまふのだ。
それでも、病を押して、陸地測量部で開かれる聯合国々境劃定委員準備会議に出席したにはしたが、タクシイの中で眩暈めまひがしてしやうがない。
風邪一束 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
圭介は近頃興奮するとくらくらと眩暈めまひがし、頭の中がじーんと鳴るので、なるべく物事に臨んで冷静に構へる必要があつた。
六白金星 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
若し眩暈めまひがなさいますやうなら、そこの草にしつかりつかまつて伸び上がつて御覧なさいまし。それで宜しうございます。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
すると、はげしい眩暈めまひが、つづいて、二三度起つた。頭痛はさつきから、しつきりなしにしてゐる。劉は、心のうちで愈、蛮僧を怨めしく思つた。
酒虫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
だが同時に眩暈めまひを感じたと見えて、又もや手で額をおほひながら近寄る和作を待ち切れず、もたれかゝるやうに倒れて来た。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
「いえ、なに、私は脳が不良わるいものですから、あんまり物をみつめてをると、どうかすると眩暈めまひがして涙の出ることがあるので」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
秋篠寺を出て、南へとぼとぼと西大寺村へ下つて來ると、午過ぎの太陽が、容赦もなく照りつけるので、急にくらくらと眩暈めまひがしさうになつて來た。
旋風 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
其時代助は其絶壁のよこにある白い空間のあなたに、ひろそらや、遥かのたにを想像して、おそろしさから眩暈めまひを、あたまなかに再げんせずには居られなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
謔語じやうだんの積りで言つて見て、私は眩暈めまひを紛さうとしたが、何となく底の知れない方へ引入れられるやうな氣がした。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
私はしかしながら話を聞くだけでも眩暈めまひのしさうなひかる達の祖父のかたがなすつたと云ふ子女の厳しい教育に比べて
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
まばゆい許りの戸外そとの明るさに慣れた眼には、人一人居ない此室ここの暗さは土窟つちあなにでも入つた様で、暫しは何物なにも見えず、グラ/\と眩暈めまひがしさうになつたので
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
或は此一切の事件は僕が健康を損じてゐる所から生じたのかも知れない。僕は頃日頻に眩暈めまひがする。夜眠ることが出来ない。精神が阻喪して、故なく恐怖に襲はれる。
水が耳を覆つて何の音も聞えない。空は青く、だがあまり碧く澄み渡つてゐるので、彼は眩暈めまひを感じた。彼は、慌てて犬泳ぎで陸へ這ひあがり、要心深く砂地に腹を温めた。
スプリングコート (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
うらわかはゝともなはれし幼兒をさなごの、ひとるに、われもとてかざりしに、わらはよわくて、ばかりのふねにも眩暈めまひするに、荒波あらなみうみとしならばとにかくも、いけみづさんこと
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「幸運に見棄てられた者は、友にも常に忘らる。」とくわんぬきはづして外へ出ながら、私は呟いた。私は障碍物につまづいた。私は、まだ眩暈めまひがし、眼はかすんで、身體も力が拔けてゐた。
利章は歩行が出來ぬから、いづれ全快した上で出仕すると答へた。忠之はすぐに黒田、岡田の二人を再度の使に遣つて、從ひ途中で眩暈めまひが起つても、乘物で城門まで來て貰ひたい。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
謂はば、錯亂への凝視であり、韋駄天に於ける計量であり、激憤絶叫への物差ものさしであり、眩暈めまひの定着である。かれは、沈默に於ける言葉、色彩をさへ、百發百中、美事に指定しようとする。
「人間キリスト記」その他 (旧字旧仮名) / 太宰治(著)
圭一郎は蒲團からひ出たが、足がふら/\して眩暈めまひを感じ昏倒しさうだつた。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
そのも、あさはや彼女かのぢよあがらうとしたが、自分じぶんにどうむちうつてても、全身ぜんしんのひだるさにはてなかつた。あがるとはげしい眩暈めまひがした。周圍しうゐがシーンとして物音ものおとがきこえなくなつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
すると眩暈めまひが僕の額を暗くし、混亂させ、それから漸く消えて行く。
不器用な天使 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
けふ一日ひとひ雲のうごきのありありて石原いしはらのうへに眩暈めまひをおぼゆ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
かすかな眩暈めまひからふと目がさめて
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
黄の眩暈めまひ、ざんげの星
聖三稜玻璃:02 聖三稜玻璃 (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「間違つておちたんぢやないのかな。踏外すとか、眩暈めまひがしてヨロリとなるとか、——夢中になり過ぎてそんなこともありさうぢやないか」
そこで、首を動かして、汗の進路を変へやうとすると、その途端に、はげしく眩暈めまひがしさうな気がしたので、残念ながら、この計画も亦、見合せる事にした。
酒虫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ぶたッてつたのよ』とあいちやんはこたへて、わたしはおまへ何時いつまでもうしてないで、きふくなつてれゝばいとおもつてるのよ、眞個ほんとう眩暈めまひがするわ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
行く人もまれな雪の道——つく/″\私はその眺めが自分の心の内部なかの景色だと思つた。時々眠くなるやうな眩暈めまひがして来て、何処どこかそこへ倒れかゝりさうに成つた。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
瞬間、ふらふらと眩暈めまひがした。親しいものの敵意をこれほどまでに感じたことはなかつた。
荒天吉日 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
ぐら/\と眩暈めまひがしさうになつたので、吉野は思はず知らず洋杖に力を入れて身を支へた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
この小さい岩端から下の方を見下ろしますと、わたくしは眩暈めまひがしさうになるのでございます。はたから御覧になつては、それほど神経を悪くしてゐるやうには見えますまいが。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
瀬田はきた。眩暈めまひおこりさうなのを、出来るだけ意志を緊張してこらへた。そして前にいさんの出て行つた口から、同じやうに駈け出した。行灯あんどうもとあさんは、又あきれてそれを見送つた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
患部を見ると、あまりの慘状にくらくら眩暈めまひを感じます。
知らない人 (旧字旧仮名) / 太宰治(著)
「……君はたゞの眩暈めまひぢやなかつたんだらう」
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
軽き眩暈めまひに身はたじろぐ。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「胸が燒きつくやうで、喉がかわいて——、眩暈めまひがして、頭が割れさうで——そんな心持がしませんか」
さて登り詰めたかと思ふと、急に船が滑るやうな沈んで行くやうな運動を為始しはじめました。丁度夢で高い山から落ちる時のやうに、わたくしは眩暈めまひが致して胸が悪くなつて来ました。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
急に烈しい眩暈めまひおそはれて、丑松は其処へたふれかゝりさうに成つた。其時、誰か背後うしろから追迫つて来て、自分をつかまへようとして、突然だしぬけに『やい、調里坊てうりツぱう』とでも言ふかのやうに思はれた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「あら、逃げやしませんよ。なんだか少し眩暈めまひがしたから……」
落葉日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
あまい眩暈めまひを投げに来た。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「ところで、お内儀さんは平常ふだん眩暈めまひなどのすることはなかつたでせうか」
わたしの心を眩暈めまひさせ
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
眩暈めまひがして、胸が惡くて、無闇に腹が立つて——」
我は狂ほしき眩暈めまひの中に
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
クラクラと眩暈めまひがするほど奇怪な部屋だつたのです。
淡い眩暈めまひのするままに
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「だつて、あれを見せられちや私は眩暈めまひがして——」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)