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真紅
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まっか
ふりがな文庫
“
真紅
(
まっか
)” の例文
旧字:
眞紅
「オムレツかね!」と今まで黙って半分眠りかけていた、
真紅
(
まっか
)
な顔をしている松木、坐中で一番年の若そうな紳士が
真面目
(
まじめ
)
で言った。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そして、母親に挨拶をすますと直ぐ、
真紅
(
まっか
)
にほてつた頬をなでながらさも愉快でたまらないやうな声で笑ひながら母親に話かけた。
内気な娘とお転婆娘
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
少年はこう言って急に
口籠
(
くちご
)
もりながらじっと私の顔を見た。その黒い
瞳
(
め
)
は熱誠にまばたき、その白い頬は見る見る
真紅
(
まっか
)
に染まって来た。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
だがそれでも足りないと見え、塗り込めになっている書棚があり、昆虫を刺繍した
真紅
(
まっか
)
の
垂
(
た
)
れ
布
(
ぬの
)
が、ダラリと襞をなしてかかっている。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と雪江さんが不審そうに
面
(
かお
)
を視る。私は
愈
(
いよいよ
)
狼狽して、又
真紅
(
まっか
)
になって、何だか訳の分らぬ事を口の
中
(
うち
)
で言って、
周章
(
あわ
)
てて頬張ると
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
▼ もっと見る
真紅
(
まっか
)
なアネモネが、
花屋
(
はなや
)
の
店
(
みせ
)
に
並
(
なら
)
べられてありました。
同
(
おな
)
じ
土
(
つち
)
から
生
(
う
)
まれ
出
(
で
)
た、この
花
(
はな
)
は、いわば
兄弟
(
きょうだい
)
ともいうようなものでありました。
花と人の話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
畑の
次手
(
ついで
)
に、目の覚めるような
真紅
(
まっか
)
な
蓼
(
たで
)
の花と、かやつり
草
(
そう
)
と、豆粒ほどな青い
桔梗
(
ききょう
)
とを摘んで帰って、
硝子杯
(
コップ
)
を借りて
卓子台
(
ちゃぶだい
)
に活けた。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
無目的な、軽い気持でぶらぶらしているので、偶然その家の裏に
真紅
(
まっか
)
な椿の咲いているのを発見した、というだけのことである。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
部屋の四周には、窓や入口のドアさえ残さないで、天井から床まで、
真紅
(
まっか
)
な重々しい
垂絹
(
たれぎぬ
)
が豊かな
襞
(
ひだ
)
を作って懸けられていた。
赤い部屋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
雨に濡れた敷石の上に、緑色のドレスを着た女が頭蓋骨を粉砕されて無惨な死を
遂
(
と
)
げていた。
真紅
(
まっか
)
な血が顔から頸筋をベットリ染めている。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
けれども、まっしぐらに走ること数町にして、彼は踏みとどまり、やはり
真紅
(
まっか
)
に焼けた海のあなたの空に向って、歌をうたう声が聞えます。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
都の大空は炎々と燃え上る炎の為に夜は火の海の如く
真紅
(
まっか
)
で、どれだけ強い火がどれだけ多くの家々を燃やさんとしているかを物語っていた。
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
五日目の晩は、床の上へ雛のように並んで坐って、肩と肩とをもたれ合せ乍ら、二人は
真紅
(
まっか
)
の紐で綾取りをして居たのです。
新奇談クラブ:03 第三夜 お化け若衆
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
白い
茎
(
くき
)
の中に一すじ赤く血を吸い上げているのが見える。その血を受けて、毒々しい
真紅
(
まっか
)
な花が今や咲きかけているのだ!
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その上、床の上に二尺四方ほどを、
真紅
(
まっか
)
に
彩
(
いろど
)
っているところをみると、出血は極めて瞬間的に多量だったものと見える。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
年をとった屠手の
頭
(
かしら
)
は
彼方此方
(
あちこち
)
と屠場の中を廻って指図しながら歩いていた。その手も、握っている出刃も、牛と豚の血に
真紅
(
まっか
)
く染まって見えた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
右
(
みぎ
)
の
事情
(
じじょう
)
が
指導役
(
しどうやく
)
のお
爺
(
じい
)
さんから
伝
(
つた
)
えられた
時
(
とき
)
に
私
(
わたくし
)
はびっくりして
了
(
しま
)
いました。
私
(
わたくし
)
は
真紅
(
まっか
)
になって
御辞退
(
ごじたい
)
しました。——
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
夕方
真紅
(
まっか
)
な
提灯
(
ちょうちん
)
の様な月が上った。雨になるかと思うたら、水の様な月夜になった。此の頃は
宵毎
(
よいごと
)
に月が好い。夜もすがら蛙が鳴く。
剖葦
(
よしきり
)
が鳴く。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「浜の弟も、酒で鼻が
真紅
(
まっか
)
になってら。こんらの酒じゃ、もう
利
(
き
)
かねえというこんだ。金にしてよっぽど飲むらあ。」
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
創作家のランジェは、黙って、大きな
卓机
(
デスク
)
から一束の手紙を取りだした。その
文束
(
ふみたば
)
は
真紅
(
まっか
)
なリボンで
結
(
ゆわ
)
えてあった。
ふみたば
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
この風車はこの辺一帯の低地の目標ともなっているものでした。ずっとずっと昔、この風車は
翼
(
はね
)
も何もかもすっかり
真紅
(
まっか
)
に塗られたこともありました。
フランダースの犬
(新字新仮名)
/
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー
(著)
あら鳶頭幼少せい時分の事をいっちゃア厭だよなんて、
真紅
(
まっか
)
におなりでしたが、何とも申そうようはござえませぬ
闇夜の梅
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
美しい女性は起ち上って、夫に握手を求め、魂をとろかすような微笑を浮べながら
真紅
(
まっか
)
な唇を彼の耳にあてて
恐怖の幻兵団員
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
ちょうど五年ばかり前、この子の母親の
脣
(
くちびる
)
がこんなに
真紅
(
まっか
)
だったが、これはその
縮少
(
しゅくしょう
)
だと思えばいいだろう。
幸福な家庭
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
吸い付いたが最後、容易に離れまいとするのを無理に引きちぎって投げ捨てると、三角に裂けた
疵口
(
きずぐち
)
から
真紅
(
まっか
)
な血が止め度もなしにぽとぽとと流れて出ます。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
真紅
(
まっか
)
な火光を、すさまじく引き歪んだ顔に受けて、いわば赤鬼の形相——声に出して、嘲りつぶやいている。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
……二分……三分……と、今まで
真紅
(
まっか
)
の光芒を放っていたネオン・サインの附近に大きな火柱が立った。
空飛ぶ悪魔:――機上から投下された手記――
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
アリョーシャは
真紅
(
まっか
)
な顔になった。それから急に
蒼
(
あお
)
ざめて行った。顔じゅうが恐怖のために
歪
(
ゆが
)
んでいた。
小波瀾
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
真紅
(
まっか
)
になった面をあげて、キラリと光った眼に一生懸命の力を現わして老主人の顔を一寸見たが、
忽
(
たちま
)
ちにして
崩
(
くず
)
折
(
お
)
れ伏した。髪は
領元
(
えりもと
)
からなだれて、末は乱れた。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それは
真正
(
ほんとう
)
のロシア更紗で、一面の
真紅
(
まっか
)
な地に白の水玉が染め抜かれてあった。なかにはこまかな刺繍を施した布面に高まりを見せた高価なハンカチなどがあった。
性に眼覚める頃
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
細身の
繻子
(
しゅす
)
のズボンに
真紅
(
まっか
)
な靴下、固い立襟に水兵服、喉まで締め上げた万国博覧会時代の両前の上着。そうかと思うと、何を考えたか
扇子
(
せんす
)
なんてのを持ったのもいる。
ノンシャラン道中記:07 アルプスの潜水夫 ――モンブラン登山の巻
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
同じように硝子窓をいれた二階の窓は暗くてよくは分らないが、硝子越しに
真紅
(
まっか
)
の
窓掛
(
カーテン
)
が見える。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
で、最後に残る問題は、T先生が患者の腹から胎児を御取り出しになったことも、T先生の口の中が
真紅
(
まっか
)
であったことも、果して私の錯覚であったかどうかということです。
手術
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
年賀状は、
真紅
(
まっか
)
な朝日と、金いろの雲と、
真青
(
まっさお
)
な松とを、俗っぽく刷り出した絵葉書であったが、次郎は、何よりもそれを大切にして、いつも
雑嚢
(
ざつのう
)
の中にしまいこんでいた。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
彼らが歌津子の母親の乳房を見て甘い
微
(
かすか
)
な戦慄を覚えたこともある。歌津子が彼らの父の大きな手で
真紅
(
まっか
)
な帽子を
被
(
かぶ
)
せられて、誇らしさとよろこびに夢中になったこともある。
青草
(新字新仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
海から昇った
真紅
(
まっか
)
な
朝陽
(
あさひ
)
が長者の家の
棟棟
(
むねむね
)
を照らしておりました。
背後手
(
うしろで
)
に縛られた壮い男は、見張の男に
引摺
(
ひきず
)
られて
母屋
(
おもや
)
の
庭前
(
にわさき
)
へはいって来て、土の上に腰をおろしました。
宇賀長者物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ジュフラアジ氏がセエラに話しかけた時、その少女はちょっと怯えた眼をしました。が、セエラがいきなりフランス語で答えると、少女は
吃驚
(
びっくり
)
して飛び上り、
真紅
(
まっか
)
になりました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
彼女の頬は
真紅
(
まっか
)
になった。しかも彼女はジョヴァンニの顔をじっと眺めて、彼が不安らしい疑惑の眼をもって見ているのに対して、さながら女王のような
傲慢
(
ごうまん
)
をもって見返した。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
まず、鍬をもった安蔵が、
真紅
(
まっか
)
な植物の根元を目がけて、勢いよくパッと一掘り入れる。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
電車のきく北野の終点まで行って、そこから俥で
洛西
(
らくせい
)
の郊外の方に出ると、そこらの別荘づくりの庭に立っている
楓葉
(
ふうよう
)
が美しい秋の日を浴びて
真紅
(
まっか
)
に燃えているのなどが目についた。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
本多鋼鉄が
真紅
(
まっか
)
に焼けただれて、「じゅッじゅッ」とすさまじい音を立てはじめた。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
たしか右の
眉尻
(
まゆじり
)
の上に
真紅
(
まっか
)
な血ぼくろのようなものがあって、それを傷つけると血が止めどもなく流れ出た。そんな思い出が、どういうものか、私にはまたなくなつかしいものである。
亮の追憶
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
封筒の寸法は
縦
(
たて
)
四寸、横二寸三分、
鴇
(
とき
)
色地に桜ン坊とハート型の模様がある。桜ン坊はすべてで五
顆
(
か
)
、黒い茎に
真紅
(
まっか
)
な実が附いているもの。ハート型は十箇で、二箇ずつ重なっている。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
可愛い
真紅
(
まっか
)
のリボンをかけた、小さな美しい細工の木箱にはいった香水だった。
香水紳士
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
真紅
(
まっか
)
なレースで編んだクッションが、いつのまにか置かれているのである。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
お母さんの顔が
真蒼
(
まっさお
)
で、手がぶるぶる震えて、八っちゃんの顔が
真紅
(
まっか
)
で、ちっとも八っちゃんの顔みたいでないのを見たら、一人ぼっちになってしまったようで、我慢のしようもなく涙が出た。
碁石を呑んだ八っちゃん
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
笑いが止まるとあなたは直ぐ、
真紅
(
まっか
)
な顔になって、部屋に帰ってしまいましたが、そのときぼくがあなたを
撲
(
なぐ
)
りつけたい腹立たしさで、
一隅
(
いちぐう
)
から笑いもせずに
睨
(
にら
)
みつけていたのを御存知ですか。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
やがてベニが、鼻を
真紅
(
まっか
)
にして帰って来る。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
彼女
(
かのじょ
)
は、あのたんぼにできる
真紅
(
まっか
)
なほおずきよりは、どんなに、この、
海
(
うみ
)
にある
珍
(
めずら
)
しいほおずきを、ほしいと
思
(
おも
)
ったかしれませんでした。
海ほおずき
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
と二人はもう雑木林の崖に添って、上りを
山路
(
やまみち
)
に
懸
(
かか
)
っています。白い中を、ふつふつと、
真紅
(
まっか
)
な鳥のたつように、向うへ
行
(
ゆ
)
く。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“真紅”の意味
《名詞》
真 紅(しんく)
濃い紅色。
(出典:Wiktionary)
真
常用漢字
小3
部首:⽬
10画
紅
常用漢字
小6
部首:⽷
9画
“真紅”で始まる語句
真紅島田
真紅金繍