-
トップ
>
-
眞晝
>
-
まひる
が、
中根は
營庭に
輝く
眞晝の
太陽を
眩しさうに、
相變らず
平べつたい、
愚鈍な
顏を
軍曹の
方に
差し
向けながらにやにや
笑ひを
續けてゐた。
蒲団をば
刎ねて、
勢好く飛起きた。
寢衣を
着更へて、雨戸を
啓けると、
眞晝の日光がパツと射込むで、
眼映しくツて眼が啓けぬ。
雨か
不知、
時しも
秋のはじめなり、
洋燈に
油をさす
折に
覗いた
夕暮の
空の
模樣では、
今夜は
眞晝の
樣な
月夜でなければならないがと
思ふ
内も
猶其音は
絶えず
聞える。
併し平次は、人混みの中へ十手を
閃めかして、
眞晝の盛り場を騷がせるやうな事はしません。
光明道の
此原の
眞晝を
孤り過ぎゆかば
月ならぬ
眞晝の
緋葉を
潛つて、
仰げば
同じ
姿に、
遠く
高き
峰の
緋葉は
蒼空を
舞つて
海に
散る……
此の
時の
旅に、
色彩を
刻んで
忘れないのは、
武庫川を
過ぎた
生瀬の
停車場近く、
向う
上りの
徑に、じり/\と
蕊に
香を
立てて
咲揃つた
眞晝の
芍藥と、
横雲を
眞黒に、
嶺が
颯と
暗かつた
「
御免。」と
衝と
膝を
進めて、
畫の
面にひたと
向うて、
熟と
見るや、
眞晝の
柳に
風も
無く、
寂として
眠れる
如き、
丹塗の
門の
傍なる、
其の
柳の
下の
潛り
門、
絹地を
拔けて、するりと
開くと
藤の
花の
紫は、
眞晝の
色香朧にして、
白日、
夢に
見ゆる
麗人の
面影あり。
憧憬れつゝも
仰ぐものに、
其の
君の
通ふらむ、
高樓を
渡す
廻廊は、
燃立つ
躑躅の
空に
架りて、
宛然虹の
醉へるが
如し。
月は
皎々として
眞晝かと
疑ふばかり、
原は
一面蒼海で
凪ぎたる
景色。
月は
皎々として
眞晝かと
疑ふばかり、
原は
一面蒼海が
凪ぎたる
景色。
眞晝のやうな
月夜に
立つて、コト/\
麥を
搗いたとさ。