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泥土
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でいど
ふりがな文庫
“
泥土
(
でいど
)” の例文
潮
(
しほ
)
の引く時
泥土
(
でいど
)
は目のとゞく限り引続いて、岸近くには古下駄に炭俵、さては皿小鉢や椀のかけらに船虫のうようよと
這寄
(
はひよ
)
るばかり。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
五月十五日の
蕭々
(
しょうしょう
)
と降りけぶる
五月雨
(
さみだれ
)
のなかで、彰義隊の第一
赤隊
(
あかたい
)
の一兵士である露八の土肥庄次郎は、雨と血と
泥土
(
でいど
)
にまみれながら
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
更
(
さら
)
に
氣
(
き
)
を
取直
(
とりなを
)
して、
暗黒々
(
あんこく/\
)
の
岩窟内
(
がんくつない
)
を
照
(
てら
)
し
見
(
み
)
ると、
奧壁
(
おくかべ
)
近
(
ちか
)
くに
當
(
あた
)
つて
有
(
あ
)
る、
有
(
あ
)
る、
人
(
ひと
)
の
骨
(
ほね
)
らしい
物
(
もの
)
が
泥土
(
でいど
)
に
埋
(
う
)
まりながら
横
(
よこた
)
はつて
見
(
み
)
える。
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
葉子は自分の乗った船はいつでも
相客
(
あいきゃく
)
もろともに転覆して沈んで底知れぬ
泥土
(
でいど
)
の中に深々ともぐり込んで行く事を知った。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ジャン・ヴァルジャンは水の中にはいってゆくのを感じ、また足の下にはもう
舗石
(
しきいし
)
がなくて
泥土
(
でいど
)
ばかりなのを感じた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
泥土
(
でいど
)
によごれた玉を認めることができたら、世界の、あるいはわが国の学問ももう少しどうにかなるかもしれない。
時事雑感
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
資本主
(
しほんぬし
)
と
機械
(
きかい
)
と
勞働
(
らうどう
)
とに
壓迫
(
あつぱく
)
されながらも、
社會
(
しやくわい
)
の
泥土
(
でいど
)
と
暗黒
(
あんこく
)
との
底
(
そこ
)
の底に、
僅
(
わづか
)
に其の
儚
(
はかな
)
い
生存
(
せいぞん
)
を
保
(
たも
)
ツてゐるといふ
表象
(
シンボル
)
でゞもあるやうな
此
(
こ
)
の
唄
(
うた
)
には
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
鶏卵をその
泥土
(
でいど
)
からわく湯気に置くと二、三分で半熟になり殻が
真黒
(
まっくろ
)
になる。その真黒な鶏卵を一つ食べて見た。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ジャックは、この付近の売春婦から悪性の梅毒でも感染し、それが彼の人生を
泥土
(
でいど
)
に突き入れたのであろう。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
他を陥れなければ止まない
猜疑心
(
きいぎしん
)
、
泥土
(
でいど
)
に
蹂躙
(
じうりん
)
せられた慈悲、深く
染着
(
せんちやく
)
しつつもその染着をわるいと思はない心、さういふ光景は一々かれの眼に映つて見えた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
能登守自身が葬られてしまったのみならず、遠くはその祖先の名も、近くはその親類の名も、これによって
泥土
(
でいど
)
に
汚
(
けが
)
されたと同じような結果になってしまいました。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
どうしてこんな珠玉を
泥土
(
でいど
)
に置くような残酷なことを自分はしたかと私の心はまた暗くなってきた。
源氏物語:18 松風
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そしてあらゆる夢と希望を矢ひ、優越感を
泥土
(
でいど
)
に委し、はじめて
生身
(
なまみ
)
になつた自分を意識した。……
母たち
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
激怒、
淫逸
(
いんいつ
)
、殺害の渇望、肉の抱擁の
噛
(
か
)
み合い、最後にも一度かきたてられた池の
泥土
(
でいど
)
だった……。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
途上、
神明町
(
しんめいちやう
)
の
狭斜
(
けふしや
)
を過ぐれば、人家の倒壊せるもの数軒を数ふ。また
月見橋
(
つきみばし
)
のほとりに立ち、
遙
(
はる
)
かに東京の天を望めば、天、
泥土
(
でいど
)
の色を帯び、
焔煙
(
えんえん
)
の四方に
飛騰
(
ひとう
)
する見る。
大正十二年九月一日の大震に際して
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それが
Brand
(
ブラント
)
に於いて発揮せられている。イブセンは何の為めに習慣の朽ちたる
索
(
つな
)
を引きちぎって棄てるか。ここに自由を得て、身を
泥土
(
でいど
)
に
委
(
ゆだ
)
ねようとするのではない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
生れて以来、幸福らしい幸福にも恵まれず、
営々
(
えいえい
)
として一所懸命何かを積み重ねて来たのだが、それも何もかも
泥土
(
でいど
)
にうずめてしまう。しかしそれでいいじゃないか。それで悪いのか。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
そのとき、忽然として、
泥土
(
でいど
)
の渦の中に、なにかピカリと光るものが見えた。なんだろうと、一生懸命みつめていると、その泥土の渦の中から浮び上って来たのは一つの丸い
硝子
(
ガラス
)
器だった。
火葬国風景
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
四坪の
凹地
(
おうち
)
に浅い
湧泉
(
ゆうせん
)
を
湛
(
たた
)
え、その底から青みがかった灰色の火山岩の分解物からなる
泥土
(
でいど
)
を一分間に数回ずつ噴出し、そこここに
所謂
(
いわゆる
)
泥火山を円錐形に作り上げ、それが流れて裾野となる
有様
(
ありさま
)
は
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
あはれ半夜の狂風に
空
(
むな
)
しく
泥土
(
でいど
)
に
委
(
ゐ
)
すらんか
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
さうして
芥燒場
(
ごみやきば
)
の
泥土
(
でいど
)
にぬりこめられた
定本青猫:01 定本青猫
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
潮
(
しお
)
の引く時
泥土
(
でいど
)
は目のとどく限り引続いて、岸近くには古下駄に
炭俵
(
すみだわら
)
、さては皿小鉢や椀のかけらに
船虫
(
ふなむし
)
のうようよと
這寄
(
はいよ
)
るばかり。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
おや? と、往来の者が寄ッて見ると、すでに
泥土
(
でいど
)
は
紅
(
くれない
)
と変り、公卿は、鋭利な刃で脾腹を刺され、もう死んでいた——というのである。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜路
(
よみち
)
をひた走りに走って鶴見地獄に出た。この鶴見地獄というのも昨年の春から爆発したものだそうである。
泥土
(
でいど
)
を
交
(
まじ
)
えない
清透
(
せいとう
)
な熱湯を噴出している。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
溶
(
と
)
けた粘土があり、流れる泉があり、堅い岩があり、専門の科学で俗に
芥子
(
からし
)
と言われる柔らかい深い
泥土
(
でいど
)
がある。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その臭い
汚泥
(
おでい
)
の中にさえ、沼沢の上に踊る鬼火のように輝く不思議な
燐光
(
りんこう
)
が、霊妙な眼つき、
燦然
(
さんぜん
)
たる知力、水底の
泥土
(
でいど
)
から発散する微細な電気が、見て取られるのであった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
つぶれれば圧死する確率のきわめて大きいような
泥土
(
でいど
)
の家に安住していたわけである。
災難雑考
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
扨
(
さ
)
て
其
(
そ
)
の
土偶
(
どぐう
)
※
何
(
なに
)
しろ
泥土
(
でいど
)
を
落
(
おと
)
して
見
(
み
)
るべしと、
車夫
(
しやふ
)
をして、それを
洗
(
あら
)
ひに
遣
(
や
)
つて
見
(
み
)
ると、
豈
(
あ
)
に
圖
(
はか
)
らんや、それは
獸骨
(
じうこつ
)
の一
部
(
ぶ
)
、
大腿骨
(
だいたいこつ
)
の
關節部
(
くわんせつぶ
)
が
黒焦
(
くろこげ
)
に
燒
(
や
)
けて
居
(
ゐ
)
るのであつたので
探検実記 地中の秘密:20 大森貝塚の発掘
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
「実際はどんなことだったのでしょう、おかわいらしいお顔をしていらっしゃるあの方を、奥様はあんなに大事にしておいでになっても、もう
泥土
(
でいど
)
に落ちた花ではありませんか、気の毒な」
源氏物語:52 東屋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
打明けた話を聞かされていると、駒井は
不愍
(
ふびん
)
の思いに堪えられなくなりました。なるほど、これをこのまま突き出してしまえば、残れるところのすべてのものを、
泥土
(
でいど
)
に
委
(
まか
)
してしまうのだ。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
泥土
(
でいど
)
の砂を掘れば掘るほど
蝶を夢む
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
堀割は丁度真昼の
引汐
(
ひきしお
)
で
真黒
(
まっくろ
)
な汚ない
泥土
(
でいど
)
の底を見せている上に、四月の暖い日光に照付けられて、
溝泥
(
どぶどろ
)
の臭気を
盛
(
さかん
)
に発散している。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
底の
泥土
(
でいど
)
は、ひとりの重さにはたえ得るくらい濃密だったが、明らかにふたりを支えることはできなかった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
洪水
(
こうずい
)
の波は、その
泥土
(
でいど
)
でわれわれの土地を肥やしたあとに、自分からくずれ去るだろう。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
老鶯
(
おいうぐいす
)
が啼きぬいている。花は落ちて
泥土
(
でいど
)
に白い。鎌倉の春も更けたかと想わせる——
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その周り十五丈
斗
(
ばかり
)
。湯気赤くして
泥土
(
でいど
)
有
(
あり
)
と
即
(
すなわ
)
ち海地獄の事なるべし。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
泥土
(
でいど
)
の
混亂
(
こんらん
)
も
無
(
な
)
く、
貝
(
かひ
)
の
色
(
いろ
)
も
雪
(
ゆき
)
の
如
(
ごと
)
く
白
(
しろ
)
く、
合貝
(
あひかひ
)
も
出
(
で
)
て、
灰層
(
くわいそう
)
も
有
(
あ
)
り、
然
(
さ
)
うしてなか/\
深
(
ふか
)
い。『
有望々々
(
いうぼう/\
)
』と
呼
(
よば
)
はりながら、
水谷氏
(
みづたにし
)
と
僕
(
ぼく
)
とは
穴
(
あな
)
を
並
(
なら
)
べて
掘
(
ほ
)
り
進
(
すゝ
)
んだが、
未
(
ま
)
だ
珍品
(
ちんぴん
)
らしい
物
(
もの
)
の
香
(
にほひ
)
もせぬ。
探検実記 地中の秘密:20 大森貝塚の発掘
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
泥土
(
でいど
)
の砂を掘れば掘るほど
青猫
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
堀割
(
ほりわり
)
は
丁度
(
ちやうど
)
真昼
(
まひる
)
の
引汐
(
ひきしほ
)
で
真黒
(
まつくろ
)
な
汚
(
きた
)
ない
泥土
(
でいど
)
の
底
(
そこ
)
を見せてゐる上に、四月の
暖
(
あたゝか
)
い日光に
照付
(
てりつ
)
けられて、
溝泥
(
どぶどろ
)
の
臭気
(
しうき
)
を
盛
(
さかん
)
に発散して
居
(
ゐ
)
る。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
泥土
(
でいど
)
の砂を掘れば掘るほど
定本青猫:01 定本青猫
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
黒き
泥土
(
でいど
)
と色さめし花と共に
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
泥
常用漢字
中学
部首:⽔
8画
土
常用漢字
小1
部首:⼟
3画
“泥土”で始まる語句
泥土層
泥土塗