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框
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かまち
ふりがな文庫
“
框
(
かまち
)” の例文
かれは息を切って、逃げて、逃げて、柴井町の自分の店さきまで駈けて来て、店の
框
(
かまち
)
へ腰をおろしながら横さまに
俯伏
(
うつぶ
)
してしまった。
影を踏まれた女
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
僧は上り
框
(
かまち
)
に腰かけて、何の恥らう様子も無く、悪びれた態度もなく、大声をあげて食前の誦文を唱え、それから悠々と
箸
(
はし
)
を
執
(
と
)
った。
とと屋禅譚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
血潮に汚された畳を
剥
(
は
)
がして、
薄縁
(
うすべり
)
を敷いた四畳半の上がり
框
(
かまち
)
に腰を下ろして、そう言いながらも平次は、腰の煙草入を抜きました。
銭形平次捕物控:018 富籤政談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
框
(
かまち
)
がすぐに
縁
(
えん
)
で、
取附
(
とッつ
)
きがその位牌堂。これには
天井
(
てんじょう
)
から大きな白の
戸帳
(
とばり
)
が
垂
(
た
)
れている。その色だけ
仄
(
ほのか
)
に明くって、
板敷
(
いたじき
)
は暗かった。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それで彼はそのままそこに残って、その杖の一端を握りしめ、ジャン・ヴァルジャンから目を離さずに
扉
(
とびら
)
の
框
(
かまち
)
を背にして立っていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
智惠子が此家の前まで來ると、洗晒しの筒袖を着た小造りの女が、十許りの女の兒を上り
框
(
かまち
)
に腰掛けさせて髮を結つてやつて居た。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「あんたはん、何でここの
家
(
うち
)
へ入っておいでやした。ここは私の
家
(
うち
)
とちがいます」と、いいながら
上
(
あが
)
り
框
(
かまち
)
をあがって、娘に向って
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
返辞をしないので佐兵衛は帳場から立って来て、
欅
(
けやき
)
の角材が、
漆
(
うるし
)
で塗ったように黒くなっている店先の
框
(
かまち
)
まで出て来て、呶鳴りつけた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お捕り方みたいなことをいって、ぐいと肩をつかもうとした瞬間、ピョイと上がり
框
(
かまち
)
へとびあがったチョビ安、お藤の後ろへまわって
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
内地では
根太
(
ねだ
)
や
框
(
かまち
)
の上に板を張りつめるのが普通であるが、此処では根太や框の間に一尺から一尺五寸幅ぐらいの板を切って張りつめる。
全羅紀行
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
が、瀬川はもう何も言わなかった。窓わきの壁からヴァイオリンをとって、低い窓の
框
(
かまち
)
に腰掛けて、さも
呑気
(
のんき
)
そうに弾き始めた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
それから古ぼけた
帷子
(
かたびら
)
姿を半身ぼんやりと浮かばせるとツト片足が
框
(
かまち
)
を跨ぎ続いて後の半身がヨロヨロと土間へはいって来た。
日置流系図
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ガラリと潜り戸をあけて平気な
面
(
かお
)
で入って来て、
上
(
あが
)
り
框
(
かまち
)
に腰をかけて、こちらを見ながら、にやにやと笑っているのをお雪ちゃんが見届け
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
梯子段の途中に引っかかっている女将の巨体を飛び越すようにして
上
(
あが
)
り
框
(
かまち
)
から半靴を突かけると表の往来……
千代町
(
ちよまち
)
の電車通りに飛出した。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
早く行て船室へ場を取りませねばと立上がれば
婢僕
(
ひぼく
)
親戚
上
(
あが
)
り
框
(
かまち
)
に
集
(
つど
)
いて荷物を車夫に渡す。忘れ物はないか。御座りませぬ。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
すると、三十近くの
痩繊
(
やせぎす
)
の、目の鋭い無愛相な
上
(
かみ
)
さんが
框
(
かまち
)
ぎわへ立ってきて、まず私の姿をジロジロ眺めたものだ。そうして懐手をしたまま
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
大きな炉のそばの
框
(
かまち
)
に腰をかけ、洋刀をつけたまま五郎八茶碗で、濁酒の接待にあずかり、黒い髭へ白の醪の糟をたらして、陶然としていたが
濁酒を恋う
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
そこも雨は
漏
(
も
)
り、
畳
(
たたみ
)
は
腐
(
くさ
)
り、
天井
(
てんじょう
)
には
穴
(
あな
)
があき、そこら中がかびくさかった。勘太郎は土間の
上
(
あ
)
がり
框
(
かまち
)
のところにある
囲炉裏
(
いろり
)
の所へ行ってみた。
鬼退治
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
紅殻
(
べにがら
)
塗りの
框
(
かまち
)
を見せた二重の上で
定規
(
じょうぎ
)
を枕に
炬燵
(
こたつ
)
に足を入れながら、おさんの
口説
(
くど
)
きをじっと聞き入っている間の治兵衛。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
窓
框
(
かまち
)
へ俯伏したまま、頭を振り、身もだえし、まるで玄四郎がそこにいるかのように、かすれた声で嗚咽しながら呼びかけ、訴えるのであった。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
居室南側裏窓の硝子戸
框
(
かまち
)
(高さ床上より約一丈)に麻縄約一尺(作業用紙袋材料を括りたるものを
予
(
かね
)
て貯え、居室内に包蔵しいたるものゝ如し)
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
島々
(
しま/\
)
と云ふ町の宿屋へ着いたのは、午過ぎ——もう夕方に近い頃であつた。宿屋の
上
(
あが
)
り
框
(
かまち
)
には、三十
恰好
(
がつこう
)
の浴衣の男が、青竹の笛を鳴らしてゐた。
槍ヶ岳紀行
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
三人は草鞋ばきの儘土間に這入って、座敷の上り
框
(
かまち
)
に出して呉れた布団を敷いて腰掛けながら、米を出して炊いて貰う。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
追われ追われて、彼女は再び往来をめがけて外に突進しようとして、F楼の上がり
框
(
かまち
)
から地面へ飛び降りた。それがもうみどりの最後の努力だった。
ある遊郭での出来事:公娼存廃論者への参考資料としての実例
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
いずれも椿岳の大作に数うべきものの一つであるが、就中大浪は柱の外、
框
(
かまち
)
の外までも奔浪畳波が
滔
(
あふ
)
れて椿岳流の放胆な筆力が十分に現われておる。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
信州あたりにある三つ割式の
家作
(
やづく
)
りで、家の真中を表から裏まで土間がつきぬけ、土間からすぐ
框
(
かまち
)
座敷になって、そこに大きな囲爐裏が切ってあった。
西林図
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
庸三は床の
黒柿
(
くろがき
)
の
框
(
かまち
)
を
枕
(
まくら
)
にしてしばらく頭を休めていたが、するうち葉子と瑠美子との次ぎの間の話し声を夢幻に聞きながらうとうと眠ってしまった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
家の下に、淫売宿をかねた飲み屋のあったのを幸い、そこの
框
(
かまち
)
に腰かけたままで、酒を飲みはじめ、夜中の三時ごろになって、やっと、わが家に帰った。
野狐
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
はる子は、骨組みのしっかりした肩を動かして窓をあけると、
框
(
かまち
)
へ手と足とを一どきにかけるような恰好をし、もう身軽く外の闇へ消え込んでしまった。
雑沓
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
……かくて、飾り
框
(
かまち
)
の後ろに隠れ、耳をそばだて、じっと聴いているうちに、彼は心の底ではっとした。管弦楽はある小節の真中でぴたりと止っていた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
親達は碌にお互の話もしないで食事が終ると、土間
框
(
かまち
)
に腰を下ろして地下足袋をはいて出かけた。こんどは勘三が先きに立ち、ミツは後からついて行つた。
神のない子
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
「狐と間違へられては大変ですネ」と篠田は
莞然
(
くわんぜん
)
笑
(
わらひ
)
傾けつ、
框
(
かまち
)
に腰打ち掛けて雪に
冰
(
こほ
)
れる
草鞋
(
わらぢ
)
の
紐
(
ひも
)
解かんとす
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
然し派手な着物をきて鼻先から額に汗をにぢませた女共が遠慮会釈もなく
框
(
かまち
)
の上へどつこいしよと荷物を投げ込み、犬屋の店先であるかのやうに口々に吠え
老嫗面
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
私は、すべりのよくない障子を開けて、窮屈な土間から
框
(
かまち
)
へ上った。すると、奥に頑丈そうな白髪の老婆が、恐しい眼付をして、こちらをじっと睨んでいた。
貸間を探がしたとき
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
歴史的社会的存在の
框
(
かまち
)
を通って反映されて初めて、イデオロギーはイデオロギーの資格を得る筈であった。
イデオロギー概論
(新字新仮名)
/
戸坂潤
(著)
幸子は顔を
顰
(
しか
)
めて、彼を見ながらだんだん後へ
退
(
さが
)
ってゆくと、
上
(
あが
)
り
框
(
かまち
)
から落ちかけようとして手を拡げた。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
或る日、仕事を終えて久し振りに活動写真でも見に行こうと思い、
框
(
かまち
)
に腰を下して、残りの焼酎をちびりちびりと飲んでいると、小森さあん、と女の声がした。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
そういう建物の中で、部屋の中に上り
框
(
かまち
)
のようなものを作って床板を張り、古い畳が敷き並べてあった。
満洲通信
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
それはそのお婆さんがある日上がり
框
(
かまち
)
から座敷の長火鉢の方へあがって行きかけたまま
脳溢血
(
のういっけつ
)
かなにかで死んでしまったというので非常にあっけない話であったが
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
あぐねたような曇り日の
下
(
もと
)
、次第に三人の姿のそれぞれにそれぞれの方角で小さくなってゆくおもての景色を、ボンヤリ上り
框
(
かまち
)
へ腰を掛けて次郎吉は見送っていた。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
窓のガラスだとか、襖の
框
(
かまち
)
や引手だとか、家の中のあらゆる滑かな箇所が、次々と検査されて行った。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
框
(
かまち
)
に腰をかけて阿賀妻は
草鞋
(
わらじ
)
を脱いだ。取った
脚絆
(
きゃはん
)
と手甲をそれぞれの
紐
(
ひも
)
で
結
(
ゆわ
)
えてその隅に置いた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
猪之介は漸く上り
框
(
かまち
)
の端の方へ腰を掛けて、腰の煙草入れの
叺
(
かます
)
の破れかゝつたのを探りながら
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
眼の前には、二本の柱で区画された一段高い内陣があって、見ていると、その闇が、しだいにせり上がって行くかと思われるほど、
框
(
かまち
)
は一面に、真白な月光を浴びていた。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
早口にそういって自分は
足袋跣足
(
たびはだし
)
で片足つま先立って下駄を出している。実枝も立ち上っていっしょに慌て、ほれ、ほれ、と台所の
上
(
あが
)
り
框
(
かまち
)
に置いてあった弁当包みを渡した。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
妾宅は
上
(
あが
)
り
框
(
かまち
)
の二畳を入れて僅か
四間
(
よま
)
ほどしかない古びた
借家
(
しゃくや
)
であるが、
拭込
(
ふきこ
)
んだ表の
格子戸
(
こうしど
)
と
家内
(
かない
)
の
障子
(
しょうじ
)
と
唐紙
(
からかみ
)
とは、今の職人の
請負
(
うけおい
)
仕事を嫌い、
先頃
(
さきごろ
)
まだ
吉原
(
よしわら
)
の焼けない時分
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
壁には、外国の名優の写真らしいのが、銘々白い
框
(
かまち
)
の縁に入れて三つかかっていた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
三歩すすむと、あがり
框
(
かまち
)
に中腰になつてゐる教師との間は、もう何寸もなかつた。礼をすると、少年の頭はいやでも、教師の着物の膝がしらにつかへた。少年は教師の体臭をかいだ。
少年
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
叔父
(
おじ
)
や、祖父などが、二三人、私の家の狭い
上
(
あが
)
り
框
(
かまち
)
のところで、酒を呑み始めた。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
彼は、小半日も上り
框
(
かまち
)
の板の上でひねっていたが、どうもうまく行かない。
二銭銅貨
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
框
漢検1級
部首:⽊
10画
“框”を含む語句
上框
窓框
框際
床框
店框
框張
黒框
羽目框
締框
簀框
竪框
發射框
画框
木框
昇框
寝框
家框
外框
塗框
下框