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月代
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さかやき
ふりがな文庫
“
月代
(
さかやき
)” の例文
「大層寢起きが良いな、八。挨拶だつて尋常だし、
月代
(
さかやき
)
だつて、當つたばかりぢやないか、
何
(
ど
)
つかに結構な婿の口でもあつたのかえ」
銭形平次捕物控:276 釣針の鯉
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「こいつ相当にやるな!」と思ってこの男の人相を見直すと、頭のところの
月代
(
さかやき
)
の中に、大小いくつもの
禿
(
はげ
)
が隠れつ見えつしている。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
小姓が
襖
(
ふすま
)
を静かに引くと、
白髪
(
しらが
)
交
(
まじ
)
りの安井の頭と、
月代
(
さかやき
)
に赤黒いしみが
斑
(
ぶち
)
になっている藤井又左衛門の頭とが、並んで平伏していた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
月代
(
さかやき
)
の伸びた荒くれ男どもは本職の渡世人らしく、頬冠りや向う鉢巻で群がっている
穢苦
(
むさくる
)
しい老若は、近郷近在の百姓や地主らしい。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
月代
(
さかやき
)
も
髭
(
ひげ
)
も伸び放題だし、
垢
(
あか
)
じみた着物や
袴
(
はかま
)
は継ぎはぎだらけで、ちょっと本当とは思えないくらい尾羽うち枯らした恰好である。
日日平安
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
いつまでもひとりで寝かしておきたかねえんだ。無精ったらしいっちゃありゃしねえ。寝ていて
月代
(
さかやき
)
をそれとは、何がなんですかよ
右門捕物帖:28 お蘭しごきの秘密
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
五分
月代
(
さかやき
)
の時代めいた頭が、
浮彫
(
うきぼり
)
のようにきりっとしていて、細身の大小を落し差しと来たところが、約束通りの浪人者であった。
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
客は
毛受
(
けう
)
けという
地紙
(
じがみ
)
なりの小板を胸の所へ
捧
(
ささ
)
げ、
月代
(
さかやき
)
を剃ると、それを下で受けるという風で、今と反対に通りの方へ客は向いていた。
幕末維新懐古談:05 その頃の床屋と湯屋のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
朝の内に
月代
(
さかやき
)
、
沐浴
(
ゆあみ
)
なんかして、家を出たのは
正午
(
ひる
)
過
(
すぎ
)
だったけれども、
何時
(
いつ
)
頃薬師堂へ参詣して、
何処
(
どこ
)
を歩いたのか、どうして寝たのか。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
長髪に
月代
(
さかやき
)
をのばして仕合い道具を携えるもの、和服に白い
兵児帯
(
へこおび
)
を巻きつけて
靴
(
くつ
)
をはくもの、散髪で書生羽織を着るもの、思い思いだ。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「何んの禿げたるもんか、入れ毛なんぞしてえへん。」と、千代松は頭の祕密を押し隱すやうに、右の手で
月代
(
さかやき
)
の
邊
(
あたり
)
を押へた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
むかしは男は
月代
(
さかやき
)
といふものを剃つたものだが、それは髭を剃る以上に面倒くさいものであつた。伊勢の桑名に松平定綱といふ殿様があつた。
茶話:12 初出未詳
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
のりになりて首を
揺
(
うご
)
かすと、権太も釣込まれてその通に首を揺かし、極りの悪き風にて顔を下げ、
月代
(
さかやき
)
の上に右の手を
載
(
の
)
す。
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
七月に蘭軒は病中ながら
月代
(
さかやき
)
をした。「七月九日疝積追々快方には御座候得共、未聢と不仕候間、月代仕度奉願上候所、早速願之趣被仰付候」
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
月代
(
さかやき
)
は
簑
(
みの
)
のやうにのび
面
(
つら
)
は狐のやうに
痩
(
やせ
)
たり、幽灵とて立さわぎしものちは笑となりて、両親はさら也人々もよろこび
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
彼地
(
あちら
)
の若い衆は顔を出して皆
後方
(
うしろ
)
へ冠ります、
成
(
なる
)
たけ顔を見せるように致しますから、髷の先と
月代
(
さかやき
)
とが出て居ります。
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その日も千代子は坐ると
直
(
すぐ
)
宵子を相手にして遊び始めた。宵子は生れてからついぞ
月代
(
さかやき
)
を
剃
(
そ
)
った事がないので、頭の毛が非常に細く
柔
(
やわら
)
かに延びていた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
譴責中は
月代
(
さかやき
)
や髭を剃ることも出来ぬから、長く伸びた月代で髭も蓬々としていたから、何だか怖く、また衰えた風体をしていたので、気の毒に思った。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
今あるのは猿が
瓢箪
(
ひょうたん
)
で
鯰
(
なまず
)
を押へとる処と、
大黒
(
だいこく
)
が
福禄寿
(
ふくろくじゅ
)
の頭へ
梯子
(
はしご
)
をかけて
月代
(
さかやき
)
を
剃
(
そ
)
つて居る処との二つである。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
現われた武士は浪人らしくて、
尾羽
(
おは
)
打ち枯らした
扮装
(
みなり
)
であって、
月代
(
さかやき
)
なども伸びていた。
朱鞘
(
しゅざや
)
の大小は差していたが、鞘などはげちょろけているらしい。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
重成の首は
月代
(
さかやき
)
が延びていたが異香薫り、家康これ雑兵の首にまぎれぬ為の
嗜
(
たしなみ
)
、惜む可きの士なりと浩歎した。
大阪夏之陣
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
頭は
月代
(
さかやき
)
が広く、あお向いた
頸元
(
くびもと
)
に小さな
髷
(
まげ
)
が
捩
(
ねじ
)
れて附いていて、顔は口を開いてにこやかなのは、
微酔
(
ほろよい
)
加減で
小唄
(
こうた
)
でもうたっているのかと思われました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
般若
(
はんにゃ
)
の
留
(
とめ
)
さんというのは背中一面に般若の
文身
(
ほりもの
)
をしている若い大工の職人で、大タブサに結った
髷
(
まげ
)
の
月代
(
さかやき
)
をいつでも
真青
(
まっさお
)
に剃っている凄いような美男子であった。
伝通院
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
色が抜けるように白く、
月代
(
さかやき
)
のあとが青々として、髪の毛のつや/\しく黒いことは、今その首を扱っている娘の、肩から背中へ垂れている房々としたそれにも劣らない。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかもその顔色が土気色をしていて、
月代
(
さかやき
)
が延びて、髪の結びもみだれて、陰気この上もない挙動なのであった。何か村方の秘事について密告私訴するつもりではなかろうか。
丹那山の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
芝居に出る浪人者のように
月代
(
さかやき
)
を長くのばして、肌寒そうな
服装
(
みなり
)
をした四十恰好の男が、九つか
十歳
(
とお
)
ぐらいの男の子と一緒に、筵の上にしょんぼりと坐って店番をしています。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
無反
(
むぞり
)
の
長物
(
ながもの
)
を落差しにし、右を懐手にして、左手で竿をのべている。
月代
(
さかやき
)
は蒼みわたり、身なりがきっぱりとしているから浪人者ではあるまい、相当の
家中
(
かちゅう
)
と見わけられるのである。
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
吃驚
(
びっくり
)
して見上げると、腰を
屈
(
かが
)
めた供の男の前に、立ちはだかった一人の浪人——
月代
(
さかやき
)
が伸びて、青白い四角な、長い顔、
羊羮色
(
ようかんいろ
)
になった、黒い着付けに、茶黒く汚れた、
白博多
(
しろはかた
)
の帯
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
重ずべき病中とて
苦
(
くるし
)
からず
月代
(
さかやき
)
せよとの御意なれば掛りの
役人
(
やくにん
)
も是非なく
御櫛
(
おくし
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
挿絵には、頭の
月代
(
さかやき
)
の所に蟻を戴いた亭主が妻子と共に梨のシンや
茄子
(
なす
)
のヘタなどを乾して日和ぼこりをして居る所へ、蝉を頭に戴いた男が悄然として訓戒を受けて居るさまが描かれてある。
春水と三馬
(新字新仮名)
/
桑木厳翼
(著)
円珍十兵衛が家にも
詣
(
いた
)
りて同じことを
演
(
の
)
べ帰りけるが、さてその翌日となれば源太は
鬚剃
(
ひげそ
)
り
月代
(
さかやき
)
して衣服をあらため、今日こそは上人のみずから我に御用仰せつけらるるなるべけれと勢い込んで
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
に其の五分
月代
(
さかやき
)
中村仲蔵
(新字新仮名)
/
山中貞雄
(著)
「ヘエ——じゃないよ、相手の
選
(
え
)
り好みをしているうちに、
月代
(
さかやき
)
の
光沢
(
つや
)
がよくなってよ、せっかくのいい男が薄汚くなるじゃないか」
銭形平次捕物控:086 縁結び
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
今に、その傷が
禿
(
は
)
げて
凹
(
くぼ
)
んでいるが、
月代
(
さかやき
)
を
剃
(
そ
)
る時は、いつにても剃刀がひっかかって血が出る、そのたび、長吉のことを思い出す。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
まさに絶えなんとする息の下で、お前の母は、原士の
長
(
おさ
)
の老武士へ頼んだ。——孫兵衛が改心するまで
月代
(
さかやき
)
をのばすことはなりませぬ。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しばらくぶりで半蔵の目に映る勝重は、その年の春から新婚の生活にはいり、青々とした
月代
(
さかやき
)
もよく似合って見える青年のさかりである。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
しかし、右門は答えずにぷいと表へ出ていくと、行きつけの権十郎床で、何を考え出したものか、しきりと念入りに
月代
(
さかやき
)
を当たらせました。
右門捕物帖:06 なぞの八卦見
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
ところが間もなく光政は参覲のため江戸へ出立することになり、その日が来ると、長門は急に
月代
(
さかやき
)
を
剃
(
そ
)
り衣服を
更
(
か
)
え、門を開いて外へ出た。
備前名弓伝
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
手甲脚絆に草鞋に合羽、振分の小荷物が薄汚れて、
月代
(
さかやき
)
の伸び按配も長旅の終りと読める。肩で息して首を振りながら
釘抜藤吉捕物覚書:09 怨霊首人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
左樣
(
さやう
)
でござります。
愚老
(
ぐらう
)
の
頭
(
あたま
)
を
草紙
(
さうし
)
にして、
御城代樣
(
ごじやうだいさま
)
のお
月代
(
さかやき
)
をする
稽古
(
けいこ
)
をなさいますので、
成
(
な
)
るたけ
頭
(
あたま
)
を
動
(
うご
)
かしてくれといふことでござりまして。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
六月の十五日は、私の誕生日で、その日、
月代
(
さかやき
)
を
剃
(
そ
)
って、湯に入ってから、
紋着
(
もんつき
)
の
袖
(
そで
)
の長いのを
被
(
き
)
せてもらいました。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何ういうことでございますか水色に染紋の
帷子
(
かたびら
)
を着まして、茶献上の帯を締め、
月代
(
さかやき
)
を少し生やして居ります。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
……
月代
(
さかやき
)
の跡も青々しい水の垂れそうな若侍がツト姿を現わした。鶯谷で姫を救った深編笠の侍である。
善悪両面鼠小僧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
月代
(
さかやき
)
と鬚は近頃剃ったものらしいが、何を使ってどうして剃ったものか、アチコチに
切込疵
(
きりきず
)
だらけで、ところマンダラに毛が残っているのが、ホコリだらけの町人
髪
(
あたま
)
。
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
考えてみると日本でも徳川時代には武士はちゃんと
月代
(
さかやき
)
を剃った。病気のときのほかは綺麗に剃った。それであるから男のみじまいは何も今日の西洋のみに限ったことではない。
独居雑感
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
月代
(
さかやき
)
を剃って貰ったり、あの残酷な微笑を含んだ眼でじっと視つめて貰ったりする、そのことだけが羨ましいのでなく、殺されて、首になって、醜い、苦しげな表情を浮かべて
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
正面には一間に一間半位の小さい家をかいて、その看板に「御かみ
月代
(
さかやき
)
、
代
(
だい
)
十六文」とかいてある。その横にある窓からは一人の男が、一人の
髯武者
(
ひげむしゃ
)
の男の髯を
剃
(
そ
)
つて居る処が見える。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
茶店に休んで、青竹の欄干に
凭
(
よ
)
りながら、紺地に金泥で唐詩を
摺
(
す
)
った扇子で、海からの風の他に
懐中
(
ふところ
)
へ風を
扇
(
あお
)
ぎ入れるのは、
月代
(
さかやき
)
の
痕
(
あと
)
の青い、色の白い、若殿風。
却々
(
なかなか
)
の美男子であった。
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
あしたは
月代
(
さかやき
)
でもして、それから改めて出かけるつもりであった。もう再び故郷の佐野へは帰らない。江戸に根を据えてしまう覚悟であるから、さすがに一夜を争うにも及ばないと思った。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
御助け下され有難く御禮
言葉
(
ことば
)
に盡し難し少々は
打疵
(
うちきず
)
を受たれども然までの怪我にも是なしと云ながら女房は後藤を
熟々
(
よく/\
)
見
(
み
)
るに
月代
(
さかやき
)
は
蓬々
(
ぼう/\
)
と
生
(
はえ
)
眼
(
まなこ
)
鋭
(
する
)
どき六尺有餘の大男なれば又々仰天なし一旦命を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
“月代(さかやき)”の解説
さかやき(月代)とは、江戸時代以前の日本にみられた成人男性の髪型において、前頭部から頭頂部にかけての、頭髪を剃りあげた(抜き上げた)部分を指す。さかやきを剃った髪型のことは、野郎頭や半髪頭と表現される。
(出典:Wikipedia)
月
常用漢字
小1
部首:⽉
4画
代
常用漢字
小3
部首:⼈
5画
“月代”で始まる語句
月代際
月代毛
月代頭