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持余
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もてあま
ふりがな文庫
“
持余
(
もてあま
)” の例文
旧字:
持餘
しかも彼は依然として屈伏しないばかりか、更に疲労衰弱のけしきも見えないので、係りの役人たちもほとほと
持余
(
もてあま
)
してしまった。
拷問の話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「返礼には伊豆ほとほと
持余
(
もてあま
)
して
居
(
を
)
りまする。恐れながらこれは
御上
(
おかみ
)
へお願ひ申し上げますより
外
(
ほか
)
に致し方も御座りますまい。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
巣を造るか造らないに
最早
(
もう
)
こういう難題が持上ろうとは、三吉も思いがけなかった。お杉やお倉ですら
持余
(
もてあま
)
している宗蔵だ。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
門衛の
持余
(
もてあま
)
すを見て、
微笑
(
えみ
)
を含みたるお丹乞食、杖をもって門の柱を、とん。「同宿、構わずに、しけ込めしけ込め。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それで手強く幕府へ懸合っで老中共も
持余
(
もてあま
)
している時、毒殺だと噂された位急に死んでしまったのである。
死際
(
しにぎわ
)
に
鍵屋の辻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
▼ もっと見る
自然主義発生当時と同じく、今なお理想を失い、方向を失い、出口を失った状態において、長い間
鬱積
(
うっせき
)
してきたその自身の力を独りで
持余
(
もてあま
)
しているのである。
時代閉塞の現状:(強権、純粋自然主義の最後および明日の考察)
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
母は堅く信じて疑がわないので、僕等も
持余
(
もてあま
)
し、
此
(
こ
)
の鎌倉へでも来て居て精神を静めたらと、無理に勧めて
遂
(
つい
)
に
此処
(
ここ
)
の別荘に
入
(
いれ
)
たのは今年の五月のことです。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ところが、
持余
(
もてあま
)
し気味になってみると、そこがこの花の自然の納まり場所であるらしい。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
流石
(
さすが
)
の目科も
持余
(
もてあま
)
して見えたるが此時彼方なる寝台の下にて
狗
(
いぬ
)
の
怖
(
こわ
)
らしく
嘈
(
うな
)
るを聞く、是なん
兼
(
かね
)
て聞きたる藻西太郎の
飼犬
(
かいいぬ
)
プラトとやら云えるにして今しも女主人が身を
危
(
あやう
)
しと見
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
いささか
持余
(
もてあま
)
したかたちだったが、やがて、彼は出し抜けにからからと笑いだした。
狂女
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
小説家の
奇癖
(
きへき
)
には慣れっこになっている雑誌記者も、春泥の人嫌いを
持余
(
もてあま
)
していた。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
亭「へえ、どうも世間じゃア
余
(
あんま
)
り
好
(
よ
)
く申しやせんが、お客様ゆえ断る訳にも
往
(
ゆ
)
きやせんで、お泊め申して置くとは云うものゝ、実は
持余
(
もてあま
)
して
居
(
お
)
るんでやす、
後
(
あと
)
が
恐
(
こお
)
うござりやすからなア」
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
一々底意ありて
忽諸
(
ゆるがせ
)
にすべからざる女の言を、彼はいと
可煩
(
わづらはし
)
くて
持余
(
もてあま
)
せるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
その頃辰夫のほかに全く友達を持たなかったので退屈を
持余
(
もてあま
)
していたから。
母
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
尾州から父に伴われて父の任地島根に行き、
殆
(
ほと
)
んど幼時の大部分を島根に暮した。その頃の父の同僚であって
叔姪
(
しゅくてつ
)
同様に親しくした鈴木老人その他の話に由ると、
頗
(
すこぶ
)
る
持余
(
もてあま
)
しの茶目であったそうだ。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
蒸暑い夏の或真夜中に、お島はそこらを
開放
(
あけはな
)
して、
蚊帳
(
かや
)
のなかで寝苦しい体を
持余
(
もてあま
)
していたことがあった。
酸
(
す
)
っぱいような蚊の
唸声
(
うなりごえ
)
が
夢現
(
ゆめうつつ
)
のような彼女のいらいらしい心を
責苛
(
せめさいな
)
むように耳についた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
少しでも明るいところへ
抱
(
かか
)
へ出すと、かれは火のつくやうに泣き立てるので、両親も
乳母
(
うば
)
も
持余
(
もてあま
)
して、よんどころなく彼女を暗い部屋で育てた。
梟娘の話
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
今宮辺の堂宮の絵馬を見て暮したという、
隙
(
ひま
)
な
医師
(
いしゃ
)
と一般、仕事に悩んで
持余
(
もてあま
)
した
身体
(
からだ
)
なり、電車はいつでも乗れる。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
階下
(
した
)
で繁の泣声が聞える——輝子も、節子も、一人の小さなものを
持余
(
もてあま
)
しているように聞える——その
度
(
たび
)
に岸本は
口唇
(
くちびる
)
を
噛
(
か
)
んで、二階から
楼梯
(
はしごだん
)
を駆下りて来て見ると
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
裸松そのものがあぶれ者で
持余
(
もてあま
)
されていただけに、それを倒した勇者の評判が高い。で、例によって輪に輪をかけられて、街道の次から次へと二人の行く先が指さしの的となる。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
はや
其
(
そ
)
の
谷川
(
たにかは
)
の
音
(
おと
)
を
聞
(
き
)
くと
我身
(
わがみ
)
で
持余
(
もてあま
)
す
蛭
(
ひる
)
の
吸殻
(
すひがら
)
を
真逆
(
まツさかさま
)
に
投込
(
なげこ
)
んで、
水
(
みづ
)
に
浸
(
ひた
)
したら
嘸
(
さぞ
)
可
(
いゝ
)
心地
(
こゝち
)
であらうと思ふ
位
(
くらゐ
)
、
何
(
なん
)
の
渡
(
わた
)
りかけて
壊
(
こは
)
れたら
夫
(
それ
)
なりけり。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
お繁はまた母に抱かれたまま泣出して、乳を
宛行
(
あてが
)
われても、
揺
(
ゆす
)
られても、
泣止
(
なきや
)
まなかった。お雪は
持余
(
もてあま
)
した。仕方なしにお繁を
負
(
おぶ
)
って、窓の側で
起
(
た
)
ったり坐ったりした。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
駐在所でも
終末
(
しまい
)
には
持余
(
もてあま
)
して、彼等が悪事を働かない
限
(
かぎり
)
は、
其
(
その
)
ままに捨てて置くらしい。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
いつぞやはまた上野の山下で、
持余
(
もてあま
)
し
者
(
もの
)
の茶袋を、ちょいと指先をつまんで締め上げて、ギュウと参らせてしまったところなんぞは、どのくらい
柔術
(
やわら
)
の方に達しておいでなさるんだか底が知れねえ。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
はやその谷川の音を聞くと我身で
持余
(
もてあま
)
す蛭の
吸殻
(
すいがら
)
を
真逆
(
まっさかさま
)
に投込んで、水に
浸
(
ひた
)
したらさぞいい
心地
(
ここち
)
であろうと思うくらい、何の渡りかけて
壊
(
こわ
)
れたらそれなりけり。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何
(
ど
)
うあっても
彼
(
あ
)
の邸には居られませぬと思い入ったる
気色
(
けしき
)
に、兄も殆ど
持余
(
もてあま
)
して、これには何か仔細があろう、妹の片言ばかりでは証にならぬから、兎もかくも一応先方へ問合せた上
お住の霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
上手に
拵
(
こしら
)
えるよりも上手に捨てるのが本当の色師だ、いい幸いでお譲りを受けて、
持余
(
もてあま
)
し
物
(
もの
)
をおっつけられて、それで色男で
候
(
そうろう
)
と
脂下
(
やにさが
)
っているには、がんりきは、こう見えても少し年をとり過ぎた
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「まあ、どうしたんだろう、この児は」とお雪は
持余
(
もてあま
)
している。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
……けんども、やきもきと
精出
(
せいだ
)
いて
人
(
ひと
)
の
色恋
(
いろこひ
)
で
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
むのが、
主
(
ぬし
)
たち
道徳
(
だうとく
)
の
役
(
やく
)
だんべい、
押死
(
おつち
)
んだ
魂
(
たましひ
)
さ
導
(
みちび
)
くも
勤
(
つとめ
)
なら、
持余
(
もてあま
)
した
色恋
(
いろこひ
)
の
捌
(
さばき
)
を
着
(
つ
)
けるも
法
(
ほふ
)
ではねえだか、の、
御坊
(
ごばう
)
。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「判らないの。」と、少しく
持余
(
もてあま
)
したようなお葉の声も
湿
(
うる
)
んで聞えた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
予は万々
然
(
さ
)
ることのあるべからざる理をもて説諭すれども、
渠
(
かれ
)
は常に
戦々兢々
(
せんせんきょうきょう
)
として
楽
(
たのし
)
まざりしを、
密
(
ひそ
)
かに
持余
(
もてあま
)
せしが、今
眼前
(
まのあたり
)
一本杉の五寸釘を見るに及びて予は
思
(
おもい
)
半
(
なか
)
ばに過ぎたり。
黒壁
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これには彼等もほと/\
持余
(
もてあま
)
したが、まへに云ふような事情であるから、彼等は自分たちの責任上、無理無体にも彼女を連れ出さなければならなかつた。そのうちに、彼等の一人が
斯
(
こ
)
う云ひ出した。
梟娘の話
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
大きな、ハックサメをすると
煙草
(
たばこ
)
を落した。
額
(
おでこ
)
こッつりで
小児
(
こども
)
は泣き出す、負けた方は笑い出す、
涎
(
よだれ
)
と何んかと一緒でござろう。鼻をつまんだ
禅門
(
ぜんもん
)
、
苦々
(
にがにが
)
しき
顔色
(
がんしょく
)
で、指を
持余
(
もてあま
)
した、
塩梅
(
あんばい
)
な。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
持
常用漢字
小3
部首:⼿
9画
余
常用漢字
小5
部首:⼈
7画
“持”で始まる語句
持
持出
持前
持主
持上
持合
持来
持囃
持病
持參