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しず
ふりがな文庫
“
徐
(
しず
)” の例文
私も私で、まるできのうも私達がそうしていたように、押し黙ったまま、お前の隣りへ他の椅子をもっていって
徐
(
しず
)
かに腰を下ろした。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
月は、森の樹々のたゆたう波の上に
絶間
(
たえま
)
なく黄ろい焔を散らす青金の火の円のすがたして、
徐
(
しず
)
かに昇った。星がひとつひとつ現われた。
精
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
甲板
(
デッキ
)
を
徐
(
しず
)
かに歩いたり、お互いにじろじろ見かわしたり、または同船していることを知らずにいた知人に偶然出逢ったりしていた。
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
湯の流れは絶えず浴槽へそそいで、
徐
(
しず
)
かに、温かに、そして滑らかに全身の肌をなでては、又岩間へと、優しい音を残して姿をかくす。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
トいいながら
徐
(
しず
)
かに
此方
(
こなた
)
を振向いたお政の顔を見れば、何時しか額に
芋蠋
(
いもむし
)
ほどの青筋を張らせ、
肝癪
(
かんしゃく
)
の
眥
(
まなじり
)
を釣上げて
唇
(
くちびる
)
をヒン曲げている。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
▼ もっと見る
お銀様は、その肉片と神尾主膳の
面
(
おもて
)
と、うろたえ騒ぐ福村の挙動を見比べながら、
徐
(
しず
)
かに縄を引いてみると手ごたえがあります。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
殊に、其の餌つき方が、初め数秒間は、緩く引いて、それから、
徐
(
しず
)
かにすうツと餌を引いてく。其の美妙さは、
全
(
まる
)
で詩趣です。
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
鶴見はこうやって濡縁に及ぼして来た朝日の
脚
(
あし
)
どりを
徐
(
しず
)
かにながめていたが、やや暫く立ってから、ふと昨夜読んだ本のことを思い起した。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
そう
言
(
い
)
いながら、
私
(
わたくし
)
は
成
(
な
)
るべく
先方
(
むこう
)
を
驚
(
おどろ
)
かさないように、
徐
(
しず
)
かに
徐
(
しず
)
かに
腰
(
こし
)
を
降
(
おろ
)
して、この
可愛
(
かわい
)
い
少女
(
しょうじょ
)
とさし
向
(
むか
)
いになりました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
頭の中で電光のように、こう考えまわしつつ……何ともいえず息苦しい、不可思議な昂奮に
囚
(
とら
)
われつつ、私は又も、
徐
(
しず
)
かに眼を開いてみた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼
(
か
)
の人の眠りは、
徐
(
しず
)
かに覚めて行った。まっ黒い夜の中に、更に冷え圧するものの
澱
(
よど
)
んでいるなかに、目のあいて来るのを、覚えたのである。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
火曜日の朝ごとに各の身分に応じ隊伍を編み泉水に
赴
(
おもむ
)
き各その定めの場について夥しく快げにかつ
徐
(
しず
)
かにその
膀胱
(
ぼうこう
)
を
空
(
あ
)
くる。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「うん。あいつか。おお方そんな事だろうと思った」末造は優しい目をして、女房の逆上したような顔を見ながら、
徐
(
しず
)
かに金天狗に火を附けた。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「新聞に罪はないよ。」男は
徐
(
しず
)
かにこう言い放って、突然立ち上がって、あらゆる陰気な考えを一
時
(
じ
)
に遠く
擲
(
なげう
)
ったらしい様子をして、こう云った。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
夫が出てしまうと、奥さんは戸じまりをして、
徐
(
しず
)
かに陰気らしく、指の節をこちこちと鳴らしながら、部屋へ帰った。
罪人
(新字新仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
今日は日曜である、霧の深いローネ・タールに鳴り渡る鐘の音に別れて、シュピーツ行の電車は
徐
(
しず
)
かに動きはじめた。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
女は年のころ十七、八で、
翠
(
あお
)
い袖、
紅
(
あか
)
い
裙
(
もすそ
)
の
衣
(
きもの
)
を着て、いかにもしなやかな姿で西をさして
徐
(
しず
)
かに行き過ぎました。
中国怪奇小説集:14 剪灯新話(明)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
小太郎は、編笠をきたまま、畝を越えて、草を踏んで、
徐
(
しず
)
かに、男の方へ近づいた。男は、ゆっくりと、だが、手際よく、煙管を、腰へ差して、立上った。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
信一が
空嘯
(
そらうそぶ
)
いて威張って居る所へ、今度はすうッと
徐
(
しず
)
かに襖が開いて、光子が綺麗に顔を洗って戻って来た。
少年
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
園は往来を歩きながら、不思議な力が、
徐
(
しず
)
かに、しかしたしかに自分の体じゅうに満ちてくるのを感じた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
足芸の利用 さてこういう時に急いでやるときっと踏み
損
(
そこな
)
うからまあそろそろやるべしと考え
徐
(
しず
)
かにその杖に力を籠めて自分の身体を上に上げることに掛りました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
女は年のころ十七、八で
翠袖
(
すいしゅう
)
紅裙
(
こうくん
)
の
衣
(
きぬ
)
を着て、いかにも
柔婉
(
しなやか
)
な姿で、西をさして
徐
(
しず
)
かに過ぎ去った。
世界怪談名作集:18 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
瞿佑
(著)
喝采
(
やんや
)
の声のうちに渠は
徐
(
しず
)
かに
面
(
おもて
)
を
擡
(
もた
)
げて、情を含みて浅笑せり。口上は扇を
挙
(
あ
)
げて
一咳
(
いちがい
)
し
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼は
徐
(
しず
)
かにそれを云ったのだ。けれども使丁は聞きかえした。相手の変化に
面喰
(
めんくら
)
っていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
三人
(
みたり
)
は
徐
(
しず
)
かに歩みて、今しも
壑
(
たに
)
を
渉
(
わた
)
り終わり、坂を上りてまばゆき夕日の道に
出
(
い
)
でつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
二人は遠眼にそれを見ていよいよ
焦躁
(
あせ
)
り渡ろうとするを、長者は
徐
(
しず
)
かに制しながら、
洪水
(
おおみず
)
の時にても根こぎになったるらしき
棕櫚
(
しゅろ
)
の樹の一尋余りなを
架
(
か
)
け渡して橋としてやったに
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
夕方、
静
(
しずか
)
になった墓地に往って見る。
沈丁花
(
ちんちょうげ
)
、
赤椿
(
あかつばき
)
の枝が
墓前
(
ぼぜん
)
の
竹筒
(
たけつつ
)
や土に
插
(
さ
)
してある。
線香
(
せんこう
)
の
烟
(
けむり
)
が
徐
(
しず
)
かに
颺
(
あが
)
って居る。不図見ると、地蔵様の
一人
(
ひとり
)
が
紅木綿
(
べにもめん
)
の着物を
被
(
き
)
て居られる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
玉の出来ぬよう混ぜながら少しずつ
徐
(
しず
)
かに加えて本文の如く器械にて寄せるなり。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
妾の再び三たび頼み聞えしには答えずして、
徐
(
しず
)
かに沈みたる
底
(
そこ
)
気味わるき調子もて、かかる
大
(
だい
)
それたる事に加担する上は、当地の警察署に告訴して大難を
未萌
(
みほう
)
に
防
(
ふせ
)
がずばなるまじという。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
子分は見る見る面をゴム
毬
(
まり
)
のように
膨
(
ふく
)
らませたと思うと、
起動桿
(
きどうかん
)
をグッとひいた。地底機関車は、獣のような
呻
(
うな
)
り声をあげて、
徐
(
しず
)
かに動き出した。——三吉はヒラリと、車の背後に飛びついた。
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
やがて女は、
徐
(
しず
)
かに前に進んで、
釣瓶
(
つるべ
)
にすがって、斜めに井戸を覗きます。
怨
(
うら
)
めしやとも何とも言いませんが、凄さが身に
溢
(
あふ
)
れて、立ち止った見物は一様に水をかけられたような心持になるのでした。
銭形平次捕物控:005 幽霊にされた女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
自分だけは
徐
(
しず
)
かに馬をあゆませてホテルに帰った。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
ところが
徐
(
しず
)
かに考えてみたら、そうではない。
国民教育の複本位
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
徐
(
しず
)
かな
歩附
(
あるきつ
)
きで、立派な行列を作って、
降
(
お
)
りて
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
裁判長ガスコインは
徐
(
しず
)
かに太子に向って
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
「世話はする気です」と
徐
(
しず
)
かに云う。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
玄庵
(
げんあん
)
は
徐
(
しず
)
かに
手
(
て
)
を
振
(
ふ
)
った。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
皆々
(
みな/\
)
徐
(
しず
)
かに入る。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
私も私で、まるできのうも私達がそうしていたように、押し黙ったまま、お前の隣りへ他の椅子をもっていって
徐
(
しず
)
かに腰を下ろした。
楡の家
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
翌あさ、太陽が黄ばんだ海草の上に黄ろく、平和が島の上にも水の上にもあった、その時コラムと弟子たちは
徐
(
しず
)
かに海の方に歩いて行った。
魚と蠅の祝日
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
その進んで行く橋板の上はベットリと血だらけですから、ややもすればそれに
辷
(
すべ
)
って、足を
浚
(
さら
)
われようとする間を選んで
徐
(
しず
)
かに歩きました。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
父が
徐
(
しず
)
かに其を
取除
(
とりの
)
けると、眼を閉じて少し口を
開
(
あ
)
いた眠ったような祖母の
面
(
かお
)
が見える……一目見ると厭な色だと思った。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
至って心やすい番人よりその大好物なる米と炙肉汁の混ぜ物を受け
徐
(
しず
)
かに吸いおわり、右手指でその入れ物ブリキ
缶
(
かん
)
の底に残った米を拾い食うた後
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
木蔭からそっと首をのばして窺うと、牛飼いもない一
輌
(
りょう
)
の大きい車が牛のひくままにこちらへ
徐
(
しず
)
かにきしって来た。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
きょうは男が奮発して、久し振に葉巻を
喫
(
の
)
んで見た。
徐
(
しず
)
かに煙を吹きながら湖水の波や、その向うの岩の頭に薄黄いろい夕日の差しているのを眺めている。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
次の間に入って
跪
(
ひざまず
)
いたしづ枝が、「小泉様がお出でになりました」と案内をして、
徐
(
しず
)
かに隔ての障子を開けた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
挙げ下げとも、枯枝、竹枝の束などに引ツかけないやうに、
徐
(
しず
)
かにやるだけの辛抱で、幾らも釣れるです。
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
するとお母さんは
徐
(
しず
)
かに火吹竹を置いて、両手を腰の上に組んで体を
屈
(
かが
)
めながらゆっくりと立ち上った。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そしてまた一回の苦行が終り、その贖いの歓喜を
恣
(
ほしいまま
)
になし得るとき、
徐
(
しず
)
かに「南無」と唱えるのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
はじめ判事らが出廷せしとき、白糸は
徐
(
しず
)
かに
面
(
おもて
)
を
挙
(
あ
)
げて渠らを
見遣
(
みや
)
りつつ、
臆
(
おく
)
せる
気色
(
けしき
)
もあらざりしが、最後に顕われたりし検事代理を見るやいなや、渠は色
蒼白
(
あおざ
)
めて
戦
(
おのの
)
きぬ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
徐
常用漢字
中学
部首:⼻
10画
“徐”を含む語句
徐々
徐徐
徐行
緩徐調
徐六岳
徐家滙
徐晃
徐州
徐盛
徐福
徐庶
緩徐
徐鉉
徐氏
徐葆光
徐元直
徐大盡
徐城
徐四
徐商
...