差配さはい)” の例文
らばとつて、一寸ちよつとかへるを、うけたまはりまするでと、一々いち/\町内ちやうない差配さはいことわるのでは、木戸錢きどせんはらつて時鳥ほとゝぎするやうな殺風景さつぷうけいる。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むずかしいけれど、二人で死ぬことに比べれば、やってみる値打はあるでしょう、あたしすぐ差配さはいさんに相談してみるわ。
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
差配さはいを探して、その家を見せて貰ったが、長い間貸家だったせいか、じめじめしていて、家の中は陰気に暗かった。
貸家探し (新字新仮名) / 林芙美子(著)
きとほるやうに蒼白あをじろきがいたましくえて、折柄をりから世話せわやきにたりし差配さはいこゝろに、此人これ先刻さきのそゝくさをとこつまともいもとともうけとられぬとおもひぬ。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
へい、今日けふは休みましてござります、きまして差配さはいさん少々せう/\ねがひがあつて出ました。「アヽなんだイ。金「私共わたしども隣家となり源八げんぱち修業しゆげふに出ますばうさんナ。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
この家は裏家なれど清く住なし何業とはなけれど豊げなり。後に聞けばその辺三四ヶ所の地所家作の差配さはいをなす者なりとぞ。予がこの家に宿して八日目の事なりき。
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
また、それらの者を差配さはいとして、土着民の協力をうながしつつ、まず極力、陣中に物資を収めていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
差配さはいのお内儀は、いかにも申し訳なさそうに、私の顔を見ながらこうびるように答えた。
私はかうして死んだ! (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
巨万の財産を死蔵して、珍書画の蒐集に没頭していた故伯爵が四五年前に肺病で死ぬと間もなく未亡人は、旧邸宅の大部分を取毀とりこわして貸家を建てて、元銀行員の差配さはいを置いた。
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「今月中というから晦日みそかだろう。今日差配さはいが知らせて来たんだ」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そんな奴も差配さはい内になくッちゃあお祭の時幅が利かねえ。せがれは稼いでるし、稲荷町の差配は店賃の取り立てにやあ歩行あるかねえッての、むむ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「実は、わしの手許てもとにも一名、そういう工事の差配さはいや土地の事情に通じている男をひとり留めおいてある。同時にこれへよんで、吉田六郎太夫と合議させてはどうだろう」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
絹と木材の集散地で、河見家でも広い木山を持っているため、庄屋のほかに藩の山方の差配さはいを命ぜられてい、屋敷のまわりにはきこりたちの長屋があった。——国吉はその長屋で生れた。
榎物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あらためてふまではけれどわたしにはおやもなし兄弟きようだいもなし、差配さはい伯父おぢさんを仲人なかうどなりさとなりにてゝものなれば、離縁りゑんされてのどころとてはありませぬ、うぞ堪忍かんにんしていてくだされ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「いや、差配さはいが一人専門についている」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いゝえ、それまででもないんです……だれにもとひますうちにも、差配さはいさんへは、けて内證ないしようになすつてくださいまし。」
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それらは手業てわざ掛り、牡蠣灰かきばい掛り、畑掛り、油絞り掛り、舂場つきば掛り、見張番所掛り、そのほか寄場差配さはい、医者、教師などもいるそうだが、これらはのちにひきあわせるということであった。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
至極しごくそゝくさとおちつききが差配さはいのもとにきたりて此家このいへたしといふ、案内あんないして其處此處そここゝ戸棚とだなかずなどをせてあるくに、其等それらのことは片耳かたみゝにもれで、たゞ四邊あたりしづかとさはやかなるをよろこ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
問返とひかへすうちにも、一層いつそうめう夢路ゆめぢ辿たど心持こゝろもちのしたのは、差配さはいふのは、こゝに三げんかなへつて、れいやなぎさかひに、おなじくたゞかき一重ひとへへだつるのみ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
差配さはいどのがえられてとはゝことば繰返くりかへしてなにわけらねど今直いますぐに此家こゝ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
黙りやで殆んど口はきかないけれども、色の浅黒いおも長な顔や、六尺近い長身の躯つきに、どこかの大店おおだなの隠居といったような品のよさがあり、武助という差配さはいまでが一目置いているようであった。
落葉の隣り (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
にはたゞかき一重ひとへ二階にかい屋根續やねつゞきとつてもい、差配さはいひと差配さはいながら、前通まへどほりと横町よこちやうで、引越蕎麥ひつこしそばのおつきあひなかにははひつてらぬから、うち樣子やうす一寸ちよつとわからぬ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
オヽおまへ留守るす差配さはいどのがえられてといひさしてしばたゝくまぶたつゆ白岡鬼平しらをかきへいといふ有名いうめい無慈悲むじひもの惡鬼あくき羅刹らせつよと蔭口かげぐちするは澁團扇しぶうちはえんはなれぬ店子共たなこども得手勝手えてがつて家賃やちん奇麗きれいはらひて盆暮ぼんくれ砂糖袋さたうぶくろあましるさへはしかばぐる目尻めじり諸共もろとも眉毛まゆげによぶ地藏顏ぢざうがほにもゆべけれど
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)