左様さよう)” の例文
旧字:左樣
左様さようでございますね。私も永年この辺に住んでおりますが、そんなものは見かけたことも、うわさに聞いたこともございませんね」
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
なんとなく心配しんぱいそうなかおで、左様々々さようさよう左様さよう、と、打湿うちしめってってるかとおもうと、やれヴォッカをせの、麦酒ビールめろのとすすめはじめる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
左様さようです、原書は誠に必要な原書ですが、これを私が奥平様にお買上げを願うと云うのは、この代金を私が請取うけとって、その金は私が使つかっ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
およそ相手が左様さように手の込んだらし方をすると云うのは、彼を嫌っているのではなくて、彼に興味を抱いている證拠ではないのか。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もし又、否やを申す者があるならば、一品宮様の御罰までもない。身共がこの和尚と同様に一刀の下に斬棄きりすてる役柄故、左様さよう心得よ
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その頃はお政も左様さようさネと生返事、何方どっち附かずにあやなして月日を送る内、お勢のはなはだ文三に親しむを見てお政もついにその気になり
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
読者方あなたがたの御新造様が決して左様さようなさもしいことを遊ばす気遣いは毛頭ございませんが、我々仲間の左衛門尉さえもんのじょうには兎角ありがちのことで
左様さような考えから、今日の神経に許されうる最も便宜的な世界に於て、真実らしき文章の形式を考案したいと考えているのである。
文章の一形式 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
左様さよう、近頃はトンと聞かぬが、天正十八年(一五九〇)に一族九戸政実くのへまさざねそむいた時、南部の福岡城で用いたということが伝わっている」
左様さよう、その冒険というのは外でもない、わしは、今後の事情がそれを許すなら、潜水服を着て、あの海底地震帯へ下りてみようと思う」
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
左様さようでござりましたか。では、この飴はお子供衆におあげなさるのでござりますか。』と、そのについて亭主はいた。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
私見に依れば河に在りては左様さような場所は、徒渉としょう地点として選ばれるものであるから、瀬を伴っている地名は其処が徒渉地点であることを示し
マル及ムレについて (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
三蔵 左様さようでござんすか。手前もしがない者でござんす。ご叮嚀なお言葉で、お心のうちは大抵みとりまするでござんす。
沓掛時次郎 三幕十場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
目科は怒りもせず「左様さよう、馬鹿さが過るかも知れぬ、事に由ると僕が全くの馬鹿かも知れぬ、けれども今に判然と合点の行く時が来るだろうよ」
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
左様さよう先祖せんぞといえば先祖せんぞであるが、むし人間にんげん遠祖えんそ人間にんげん創造者つくりぬしったがよいであろう。つまり竜神りゅうじんがそのまま人間にんげん変化へんげしたのではない。
それから、大山おおやまいわお〕とか井上いのうえかおる〕とかいう如きは、左様さようの政治上の野心のある人でない。特に、大山の如きは政治の趣味すら持たれぬ様である。
混乱に混乱を重ねた私の頭です。不統一な位は許して下さい。ではもう止します。最後です。もう筆をとるのもこれつきりです。左様さようなら。左様なら。
遺書の一部より (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
左様さようですか? それは善い事を伺いました。では何分願います。どうも仙人と御医者様とは、どこか縁が近いような心もちが致して居りましたよ。」
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
左様さよう、床には四ヶ月も居たろうか、すると驚いたのは母が現在自分の夫[以下、四字分の伏字あり]した事である。
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
「ええ……左様さようだ……貴方がたの父親さんは、こう大きなふところをして、一ぱい書籍ほん捩込ねじこんでは歩かっせる人で……」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
見ませんでしたよ。そうさ、かれこれもう六、七年になるかなあ、夏でした。いや秋! 左様さよう、やはり夏だったね。年寄りの日本人の行商人がひとり絵を
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
「いいえ、まだ百人一首の取り方も存じませぬ、左様さようなお席へ出ましては、かえって失礼に存じまする故」
左様さよう……半としもした頃のことでしたね……やはり、その刑事部の今度は三号法廷で、或る放火事件の公判があったんです……むろん係りの判事さんも検事さんも
あやつり裁判 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
左様さようなら一寸ちょっと革嚢カバンさげてゆきかゝれば亭主ていしゅ案内するを堅く無用と止めながら御免なされと唐襖からかみ開きて初対面の挨拶あいさつおわりお辰素性のあらまし岩沼子爵の昔今を語り
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……こんなことを考え出したら、もうこの手紙を書き続ける気がしなくなりました。もう筆を置きます。出すか出さないか分りませんけれど、ともかくも左様さようなら。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
(そして相当の長さにわたつて信教に関する力強い訓戒が語られ、最後は次の様に結んである)では、もう一度左様さようなら、愛しい妹よ、そして何卒なにとぞあなたを救ふ唯一者
ジェイン・グレイ遺文 (新字旧仮名) / 神西清(著)
っぽけな山を指さしたら、左様さよう、あれは、そう、ミュルレンのうしろの山ですがなと考えてた、篦棒奴べらぼうめ、ミュルレンの西にあればミュルレンのうしろの山にきまっていらあ。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
左様さよう、左様、至極しごくもっともなご質問です。私の方は太陰暦を使う関係上、月曜日が休みです。」
茨海小学校 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
自分の職務上病傷兵を救護するには、敵だの、味方だの、日本だの、清国しんこくだのといふ、左様さような名称も区別もないです。ただ病傷兵のあるばかりで、その他には何にもないです。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
左様さようさ、もう随分になりますねえ、と言うより、殆んど憶えがないくらいですよ。」
……左様さようでございましょうが、お見世みせ支配しはいは、大旦那様おおだんなさまから、一さいあずかりいたしてります幸兵衛こうべえ、あとで大旦那様おおだんなさまのおたずねがございましたときに、らぬぞんぜぬではとおりませぬ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「お邪魔でなければ、五時頃ちょっとお礼に行きますよ。左様さようなら、フェリシテ」
フェリシテ (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
左様さよう——そなたの人相、気魄きはくをうかがうに、一かたならぬ望みを持つものと観た——と、いうても驚くことはない——わしは、自体他人の運命さだめうらのうて、生業なりわいを立てるもの——何も
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
左様さよう、やっぱり十代にしないと芝居になりませんね。おおかた十八九でしょう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いや、犬が豪い嫌いでしてね、それも此頃までは左様さようでもなかったのですが、或所で見て貰いましたらば、あなたには犬難の相があると申されましてね、それから犬が全然さっぱり嫌いになりました。恐水病は恐ろしい病気ですからな」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「はい、左様さようで……」
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
左様さようなら」
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
左様さようさ、ず日本一の大金持おおがねもちになって思うさま金を使うて見ようと思いますと云うと、兄が苦い顔してしかったから、私が返問はんもんして
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それで学部長様に左様さよう申し上げましたれば、それならば後から物を持たしてやるから、お茶受けに差し上げてくれいとのことで……ヘイ
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
左様さよう左様さようさそれはそうだ。』と、イワン、デミトリチはひたいあせく、『それはそうだ、しかしわたしはどうしたらよかろう。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
駕「左様そうでげすか、オヤ/\/\成程居ない、気のせえおもてえと思ったと見える、成程何方どなたも入らっしゃいません、左様さようなら」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
果してわが地球は、そのころ、左様さような異変を起すであろうか。もしそのような異変を起すものとせば、その原因は、如何なることであろうか。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それを今と成ッて、モウ官員は思切る……左様さようサ、親の口は干上ッてもかまわないから、モウ官員はおめなさるが宜いのサ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
次には関税問題に於ても左様さようである。国家の存立上、各々その国に於てある度にまで関税を課せざるべからざる事情の有る事は諒恕りょうじょせなければならぬ。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
「ヘエヘエ左様さようでございましたか、とんでもないことをお聞かせいたしました。いえもう、私にしても、こんな話は繰り返したいわけじゃございません」
飛騨判官朝高という人は、かつ飛騨国ひだのくに地頭職じとうしょくを勤めたことが有るように記憶しています。左様さよう、何でも鎌倉時代の中葉、北條時宗ほうじょうときむね頃の人でしたろう。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
修行の功を試すためには左様さような美人を実際に連れて来て眼の前に据えつゝ観念をらすことなどもあると云う。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「コレ、この遠眼鏡とおめがねで一度御覧下さいませ。イエ、そこからでは近すぎます。失礼ですが、もう少しあちらの方から。左様さよう丁度その辺がようございましょう」
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今に直なら夫まで無言で問ずにも居ようが真に今直遣るのかえ目「左様さよう、裁判所から倉子に出頭を命じたのが午後三時だから倉子は二時半に家を出るだろう、 ...
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
左様さようでございますか。どんなに本人ほんにんにとりまして満足まんぞくなことでございましょう。』とはは自分じぶんのことよりも、わたくし前途ぜんとにつきてこころつかってくれるのでした。